お姉様を泣かせましたね?

柚木ゆず

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エピローグ リリナの場合 俯瞰視点(2)

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「!? なんですの!?」

 あの日から3日後の深夜。大きなベッドでスヤスヤと眠っていたリリナは、目を見開きながら飛び起きました。
 なぜならば、建物内に悲鳴が響き渡ったからです。

「き、気のせい……? 夢の中の出来事……? それとも、まさかげんじつに――ひいぃぃ!?」

 気のせいでも夢の中の出来事でもない、現実の出来事なのだとすぐに実感させられました。新たに聞こえてきた、大きな大きな悲鳴によって。

「なにが、起きているの……!? だっ、誰か来なさい!!」

 とにかく身を守らないと――。自身の安全を確保するべく声を張り上げ、しかしながら、反応はありません。
 普段ならどんなに遅くとも30秒以内には誰かしらが駆け付けるのに、1分経っても2分経っても誰も来てはくれませんでした。

「ご、強盗……!? 泥棒……!? に、やられた……!? そんなはずないわよね!? 返事なさいっ! 来なさい!! 来てご主人様を守りなさい!!」

 高い金で有能なボディーガードを雇っているのよ――。簡単にやられるはずがない――。
 そんな思いで更に声を張り上げますが、結果は同じ。その声に返事はありませんでした。

「全員、やられてしまった……!? ま、マズい……。失敗した……!!」

 何度も大声を出して、何者かに『人がいる』という情報を与えてしまった。もしも建物内にいる人間を全員殺してから物を盗る強盗なら、殺されてしまう。
 リリナは身体を震わせながらベッドから降り、高速で首を巡らせる。大急ぎで隠れられそうな場所を探し、大急ぎでクローゼットの中に隠れました。

((……気付くな……! 気付かないで……!!))

 胸の前で手を組みながら必死に祈り、両耳に全神経を集中させます。

((来ないで……! 来ないで……! 来ないで……!! 来ないで――ひぃ!?))

 願いは届かず。鍵がこじ開けられる音が響き渡り、無情にも扉が開きました。

『いないぞ! 逃げたか!?』
『窓は空いていないし、外で待機している連中が声を出していない。この部屋のどこかに隠れているはずだ!』

((!!!!!!! 隠れない……! 隠れないぃ……!! かっ、神様ぁ! わたくしを助けてっ!)))

 クローゼットは調べませんように――。クローゼットは調べませんように――。

 高速で何度も何度も繰り返し、何度も何度も助けを求めます。

((大丈夫……! 大丈夫……!! 大丈夫……!! 大丈夫……!!))
『ベッドの下にはいない。そっちはどうだ?』
『こっちにもいない。そこのカーテンの裏はどうだ?』
『駄目だ。いない』
((諦めて帰れ……!! 諦めて帰れ……!! 諦めて帰れ……!! 諦めて帰ってよぉぉぉぉぉ……!!))
『ここも外れだ。あとはどこだ……?』
『あそこだ。あのクローゼットが怪しい』

 またしても、願い届かず。複数の足音がだんだんと近づいてきて、ついに――かちゃりと、クローゼットが開けられてしまったのでした。

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