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捨てられ伯爵夫人

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 「もう君のことを愛することは無いだろう」

 夫であるジグリーム伯爵令息は、私にそう告げた。私は、それに対して別に怒ったり驚くことは無く、「あぁ。やはりな…」という思いであった。
 ジグリーム伯爵令息が私を嫌った理由としてはただひとつ、最近、夜の営みを多く断っているからだ。ジグリーム伯爵令息は性欲が物凄く、ほぼ毎日夜の営みに迫られる。
 しかし、私は忙しいのもあったり、あまり性的な行為というものが好きではなく、苦手であるがために、ここ最近はずっと断り続けていた。

 すると、どうだろう。ジグリーム伯爵令息は私に対しての態度がどんどん冷たくなっていく。昔のように愛してくれないだのもう俺への愛は冷めたのだだの、私が夜の営みを断るからといって浮気をしていると疑惑をかけられたこともあった。

 そして、そのストレスも加わり、余計に性的な行為をしたくなくなって、ここ3ヶ月ぐらいは一度もしていない。

 「謝る気も無いのだろう。ならばなおさらだ。」

 謝る気…確かに、微塵もない。何せ性的な行為をしないだけであの態度をとるような男は、いらない。

 「それで謝るのか!謝らないのか!はっきりしないか!」

 「えぇ。謝りませんわ。」

 「な、何だと!?聞き間違いか!?」

 「いえ。私も最近、あなたの態度が気に入らないのです。私は昔のような優しいあなたは好きですが、何度も性的な行為をせがむようなクズ男は別に好きではありません。」

 すると、彼の顔色は変化した。

 「は、発言を直せ!今すぐに訂正しろ!それが夫、なおかつ伯爵令息への態度か!発言か!」

 あぁ。うるさい。早く離婚したい。

 「訂正いたしません。離婚届けを出しましょう。もう私達はうまくやっていける気がしませんわ。」

 すると、彼は少し戸惑いながらも

 「おぉ。互いに一致したな。離婚しよう。」

 と、強がるように言った。そして、私と彼、ジグリーム伯爵令息は離婚届けに印をしっかりと押し、互いに一致で離婚をした。

 (今度こそ、ずっと一緒にいられるような良い男の人を探そう。)

 頭の中は、次の夫のことで頭がいっぱいであった。私は、彼の父であるマルゲータ伯爵やその妻のウェネス令嬢、そして私の親族もろもろにも止められたりしたが、事情を話して納得させた。マルゲータ伯爵も、息子のジグリームの欠点をしっかりと受け入れてくれた。私のせいではないと強く言ってくれた。

 私は、荷づくりをして、離婚してすぐに隣国への移住をすることにした。離婚となると、やはり少しここには居づらくなるので(またジグリーム伯爵令息と会わないように)隣国へ行き、指輪を捨てて、新たな出会いを求めることにしたのだ。

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 「ふぅ。ここはいいですわね…」

 緑がいっぱいで気持ちの良い風が吹く隣国のアドワート王国。ここは、自然も豊かで美男美女が多いと評判の良い国である。

 今日泊まる宿を探しながら、国を探訪した。心が洗われる。あの憎きジグリーム伯爵令息の顔だなんて忘れてしまうぐらいだ。

 そして、歩き疲れたので、カフェでオレンジジュースなんかを飲みながら、外の景色をボーッとして眺めていると、奥からとある行列がやって来た。王宮の方からである。

 「クラリス王子様だー!!!」

 そう。これは王子様の馬車を護衛する行列だ。その中心に馬車に乗った王子様がいる。なかなか派手である。

 

 「ん?おい…馬車を止めてくれ。一度ここで降りたい…」


 すると、突然馬車が止まった。

 ざわめきが周囲で起こる。すると、馬車から王子様の姿が…

 「やぁ。そこの、カフェでオレンジジュースを嗜んでいるお嬢さん…君だ。」

 私のもとへと王子様は歩いてきた。

 「クラリス王子…どうなさいました?」

 「いやね。この女の子が目に留まって…」

 「失礼。名前を伺っても?」

 「あ、はい…アナラマと申します。隣国のメルガディス王国から来ました。」

 「なるほど。君は、夫や恋人は?」

 「い、…」

 「そうか。ならば、少しこないか?デートをしよう。まだ出会って間もないが、どうやら僕は、君にひとめぼれをしてしまったようなのだよ。」

 とても眩しいイケメン王子様スマイルで、そう言われた。何だこのオーラは。あの男ジグリーム伯爵令息とは全く違う。これが王子様というものなのか?

 私は、これは神様から与えられた好機チャンスであると思い、このイケメン王子様に手を取られ、馬車に乗り込んだ。


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