記憶の先に復讐を

秋草

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第二章

貴族の誤算

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 何でも聞いてくれと言った手前、答えを渋ることができなくなった俺だったが、すぐにそれを後悔することになった。

「ジル様と私は、どのような関係だったのですか?」
「一応は貴族と侍女、つまりは主従の関係だったな。だが、実際はもっと深い仲だったよ。所謂恋人関係、というやつだ」
「恋人……」

 そう呟いたソフィアが妙に納得したような顔だったので理由を聞いてみたら、「王子に自分が恋人だと言われた時よりもしっくりきたから、ジル様は私にとって本当に大切な方だったのだと思って」とはにかみ笑いを浮かべながら言われた。王子、なりふり構わずにも程があるだろう……。

「じ、ジル様は、その、私にどのように接してくださっていたのでしょうか?」

 うん、この表情は恋愛話に目を輝かせる少女そのものだな。俺は別に話してもいいが、君の話だぞ? 恥ずかしくならないのか?

「そうだな……まずは俺が初めて君に会った時のジルのことから話そうか」

 立ち話もなんだろうと思い、木陰に俺の上着を敷いてソフィアを座らせる。俺は彼女の隣に腰を下ろし、大木にもたれかかった。

———そんな具合に始まった思い出話。始まりこそ良かったものの、最終的に俺はソフィアからの催促に次ぐ催促のおかげで、ジルを恨みたくなるほどに糖度が高めの恋物語を散々話す羽目になった。そして同時に、今更ながらに知ることになったのだ。ジルがいかに多くの甘ったるい言動やら行動を繰り返していたかを。

「他はっ? 他に何かありませんか?」
「もう勘弁してくれ」

 結局最初の覚悟はどこへやら、自ら頭を抱えて物語りを終えることとなった。……まあ、ソフィアが再会後では一番の笑顔を見せてくれたから、悔いはない。穴を用意されたら速やかに飛び込みたい気はするが。

「そう、ですか。すみません、ずっとお話しさせてしまって」
「いや、構わない」

 頼む、そんな残念そうな笑い方をしないでくれ。一方的に話を終わらせた罪悪感で「実は他にも」などと口が滑りそうになる。

「おかげさまでジル・ラーカイズというお方のことは少しだけ分かりました。ですが……それほど大切にしてくださった方のそばに、なぜ私は今いないのでしょうか」

 月の輝きに影が差すようにソフィアの笑顔が翳る。まあ、過去を知って現状を理解したとなればそうなるよな。

「ジルは、四年前から行方不明になっている。そのことと君の記憶喪失がどう関係してるのかは分からないが….とりあえず詳しいことは週末、王子を交えての話の時にしよう」

 王子にジルのことを話せば、どんな形にせよきっと力になってくれるだろう。たとえそれが、自分に不都合な結果を生むことになってもだ。

「ジルの失踪には十中八九貴族が絡んでいるだろうが、この件に関して言えば王子は首謀者側とは無関係だと思ってくれていい。だから今はまだ、心配せずに王子に守られていてくれ」


 ジル、一人で寂しくはないか? 苦しんではいないか? 待っていてくれ、必ず、俺が二人を救ってみせるから。

 なあ、ジル、お前はまだ……倒れていないよな?
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