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初めての冒険 Ⅵ
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港町ルナレアから王都に向け馬が出た日と同時に、アート一行は国内周回船に乗り込んだのである。
初めての海原はとても開放的で清々し気分に成れる。
甲板で潮風に当っているとキャロルがやって来た。
「随分と急がれたましたね」
「母上から圧力がかかったら流石に諦めないと行けなく成からさ」
「私としては諦めて頂いた方が良かったのですが・・・」
「次の街にはどの位で着くの?」
「東の都市ハルキアには4日かかります」
ゾネス皇国・東の都市ハルキア
ハルキア港から東に50海里も行くと非常に流れの強い暖流があり、それに乗ってしまうと一気に魔王国近辺へと運ばれてしまう為、ルナレアと違い近海漁業が主な収入源と成っている。
また、街から馬車で5日ほど揺られると山岳の街ザブーンがある。
「ハルキアの戦力は?」
「ルナレアと比較しますと、人・船共に3割程です」
「それでも中々戦力を置いてるのだね」
いや、暖流だから少なめで済んでると考えるべきだろうか、寒流であったなら流れに乗って魔物が襲撃してくるとも限らないからな。
「そろそろ昼食ですので食堂へ向かいましょう」
「皆に声かけて一緒に行こう」
俺とキャロルは船内に戻るとそれぞれの部屋へ寄り、食堂へぞろぞろと向かったのだった。
5人の食卓には航行中の船内とは思えないほどバランスの良い食事が並んでいた。
「頂きます」
アートが食事を始めると、リリスに続きキャロルもスプーンを手にした。
「クリスとエマは要らないの?」
「少し体調が悪くて・・・」
クリスの言葉にエマが力なく頷く。
「あれが船酔いと言うものです」
「ほほう、辛そうだ」
「アートは感心しないの!」
そう言い残しトイレへと走って行った。
「何故あなた達は平気なの?」
「私は慣れてますからね」
「俺は魔法で耐性を上げてる」
「私もこの島に来る時の経験を生かして魔法で耐性を付けました」
「ずるい・・・アートの魔法で直せないの?」
「無理かな、辛抱するしか無いと思うよ」
「私も失礼するわ」
その後2人が戻って来る事は無かったのである。
食後アートは独り甲板へ上がった。
一面真っ暗な世界に光り輝く星の数々、これは神秘的だ。
俺にはまだまだ知らない事が多い、何れは国を出て様々な場所に行ってみたいものだな。
「こんばんは」
突然の挨拶に慌てて振り向くと、1人の女性が立っていた。
「こんばんは」
暗闇で顔は良く見えないが何歳か年上なのだろう。
「とても素敵な夜ですね」
「ええ、良い気分に成れます」
俺の横に来た彼女は空を見上げ瞳を輝かせていた。
その横顔は、風になびく髪も含め気を取られるのには十分だったのである。
「私の名はケイラ、ザブーン陸軍参謀補佐を拝命してます、以後お見知り置きを」
「私はアトムと申します」
「お城から調査に来られた方々ですよね、ルナレアの海軍基地でお見かけしました」
「そうでしたか、今回はザブーンまで周れませんが良い所なのでしょうね」
「良い所ですよ、歓迎しますので是非1度遊びに来て下さい」
「ありがとうございます」
「私はこれで、またお話しましょう」
ケイラは上品な足取りで船内へと戻って行った。
ザブーンか・・・覚えておこう。
翌朝の朝食に2人の姿は無かった。
「キャロル、普通船では何をして時間を過ごすのか教えて欲しいのだけど・・・」
「アトム様は初めてですものね、甲板で運動や訓練する人もいますが、私のオススメは船室でノンビリと過ごすのが良いと思います」
「私には無理だわ、アトム食事が済んだら甲板で魔法の訓練しましょう」
「良いよリリス」
どうもリリスは活発的なようだ、ルナレアの街での事と良い船の生活も1日で飽きてしまってる様だ。
「私は部屋で待機しててよろしいですか?」
「護衛は良いのかな?」
「狭い船内大丈夫かと思います」
キャロルはキャロルで軍港を離れた事により、気が抜けてる様だがミスに繋がらない事を祈っておこう。
食事を済ませリリスと共に甲板へ上がった。
「誰もいませんね」
「まだ食事中の人が多いのかな」
「それではアトムの魔法を見せて貰いたいな」
銀の髪から上目遣いに見てくる青い瞳、甘えたような声で頼まれたら断れるはずが無い。
「俺の扱える魔法は光属性だけなんだよね」
そう言いながら海へ向け右手を伸ばした。
「ホーリー・アロウ」
光の矢が数本空を飛んで爆発する。
「光魔法か凄いのね」
「そうなの?」
「今まで精霊族とエルフ族、人族なら特別な神官、それ以外で使えるのを聞いた事が無かったですからね」
「そうなんだ・・・」
まずい事言ってしまったかな
「アトムは何者なのかなぁ?」
「あはは・・・ただの人族だよ」
「まぁ今は良いわ」
怖い怖い。
「今度はリリスの魔法を見せてよ」
「私は闇系以外使えるわ、光は回復・修復・状態異常系で珍しい所では姿を隠したり、一定の距離を一瞬で移動したりとかかな」
「凄いな、今度ゆっくりと光魔法を教えてくれる?」
「良いわよ」
リリスの力は本物だな。
「アトムおはよう」
リリスが警戒して俺の後ろへ隠れる、瞬時として軍人だと見抜いたのだろう。
「おはようケイラ」
「そちらはアトムの大切な人かな?」
俺はリリスの素性を隠したまま友人として紹介した。
ケイラは俺達が光魔法を使う事に疑問を持っていた様だが、最終的には自分を抑え納得した様だ。
「アトムは別としてリリスさんはアカデミーなど行かなくても十分な気がしますけど?」
「私もまだまだですし、アトムと一緒にいる為必要な事なのですよ」
「あら、ご馳走様」
俺の腕をしっかり掴み、頬をピンクに染めてるリリスはとても可愛いと思えた。
「私はお邪魔な様ね、またゆっくりお話しましょう」
「ケイラまたね」
ケイラは振り向きアートの言葉に片手を上げて合図したのだった。
「アトム、あの人は危険な気がするわ」
「軍人さんだからね」
「それだけじゃ無いのだけどな・・・」
「ん?」
「何でも無いわ、冷えて来たから私達も中に降り温かい物でも飲みましょう」
アートとリリスは腕を組んだまま食堂へと向かったのだった。
残り2日の工程を無事に終え、船はハルキアへとたどり着いた。
クリスとエマは、キャロルに抱えられながらの上陸と言う情けない形に成ったのは言うまでも無いだろう。
「皆様は宿屋でお休みに成ってて下さい、私は軍港に話を通してきます」
「よろしく」
キャロルと別れた一行は、数件ある宿屋から1つを選んで受付を済ませた。
「5名様ですね、3名と2名の2部屋ならご案内出来ますがよろしいですか?」
「出来れば3部屋欲しいのだけど・・・」
「それは他の宿屋に行っても無理かと思います」
「仕方が無いか、それでお願いします」
俺が軍の施設に泊めさせて貰えば良いかな。
アートは3人部屋の鍵をクリスに渡した。
「アトムはどっちで過ごすの?」
「軍の施設に泊めて貰うよ、クリスとエマで1部屋使って後はリリスとキャロルでお願いするね」
「分かりました、取り敢えず邪魔に成るのでキャロルさんが来るまで部屋に上がってましょう」
「そうだね、リリスを1人には出来ないからね」
4人は2階へ上がると、それぞれの部屋へと別れたのである
船旅って意外と疲れるのだな、陸に降りてから急に疲れが出て来た様だ。
「アート少し眠っても良いわよ、キャロルさんが来たら起こして上げるわ」
「ありがとう・・・皆揃ったら街の探索に行こう・・・」
開け放たれた窓から心地よい潮風が入り込んでくる、今のアートでは到底あがらう事が出来ず直ぐに夢の世界へと吸い込まれて行ったのであった。
初めての海原はとても開放的で清々し気分に成れる。
甲板で潮風に当っているとキャロルがやって来た。
「随分と急がれたましたね」
「母上から圧力がかかったら流石に諦めないと行けなく成からさ」
「私としては諦めて頂いた方が良かったのですが・・・」
「次の街にはどの位で着くの?」
「東の都市ハルキアには4日かかります」
ゾネス皇国・東の都市ハルキア
ハルキア港から東に50海里も行くと非常に流れの強い暖流があり、それに乗ってしまうと一気に魔王国近辺へと運ばれてしまう為、ルナレアと違い近海漁業が主な収入源と成っている。
また、街から馬車で5日ほど揺られると山岳の街ザブーンがある。
「ハルキアの戦力は?」
「ルナレアと比較しますと、人・船共に3割程です」
「それでも中々戦力を置いてるのだね」
いや、暖流だから少なめで済んでると考えるべきだろうか、寒流であったなら流れに乗って魔物が襲撃してくるとも限らないからな。
「そろそろ昼食ですので食堂へ向かいましょう」
「皆に声かけて一緒に行こう」
俺とキャロルは船内に戻るとそれぞれの部屋へ寄り、食堂へぞろぞろと向かったのだった。
5人の食卓には航行中の船内とは思えないほどバランスの良い食事が並んでいた。
「頂きます」
アートが食事を始めると、リリスに続きキャロルもスプーンを手にした。
「クリスとエマは要らないの?」
「少し体調が悪くて・・・」
クリスの言葉にエマが力なく頷く。
「あれが船酔いと言うものです」
「ほほう、辛そうだ」
「アートは感心しないの!」
そう言い残しトイレへと走って行った。
「何故あなた達は平気なの?」
「私は慣れてますからね」
「俺は魔法で耐性を上げてる」
「私もこの島に来る時の経験を生かして魔法で耐性を付けました」
「ずるい・・・アートの魔法で直せないの?」
「無理かな、辛抱するしか無いと思うよ」
「私も失礼するわ」
その後2人が戻って来る事は無かったのである。
食後アートは独り甲板へ上がった。
一面真っ暗な世界に光り輝く星の数々、これは神秘的だ。
俺にはまだまだ知らない事が多い、何れは国を出て様々な場所に行ってみたいものだな。
「こんばんは」
突然の挨拶に慌てて振り向くと、1人の女性が立っていた。
「こんばんは」
暗闇で顔は良く見えないが何歳か年上なのだろう。
「とても素敵な夜ですね」
「ええ、良い気分に成れます」
俺の横に来た彼女は空を見上げ瞳を輝かせていた。
その横顔は、風になびく髪も含め気を取られるのには十分だったのである。
「私の名はケイラ、ザブーン陸軍参謀補佐を拝命してます、以後お見知り置きを」
「私はアトムと申します」
「お城から調査に来られた方々ですよね、ルナレアの海軍基地でお見かけしました」
「そうでしたか、今回はザブーンまで周れませんが良い所なのでしょうね」
「良い所ですよ、歓迎しますので是非1度遊びに来て下さい」
「ありがとうございます」
「私はこれで、またお話しましょう」
ケイラは上品な足取りで船内へと戻って行った。
ザブーンか・・・覚えておこう。
翌朝の朝食に2人の姿は無かった。
「キャロル、普通船では何をして時間を過ごすのか教えて欲しいのだけど・・・」
「アトム様は初めてですものね、甲板で運動や訓練する人もいますが、私のオススメは船室でノンビリと過ごすのが良いと思います」
「私には無理だわ、アトム食事が済んだら甲板で魔法の訓練しましょう」
「良いよリリス」
どうもリリスは活発的なようだ、ルナレアの街での事と良い船の生活も1日で飽きてしまってる様だ。
「私は部屋で待機しててよろしいですか?」
「護衛は良いのかな?」
「狭い船内大丈夫かと思います」
キャロルはキャロルで軍港を離れた事により、気が抜けてる様だがミスに繋がらない事を祈っておこう。
食事を済ませリリスと共に甲板へ上がった。
「誰もいませんね」
「まだ食事中の人が多いのかな」
「それではアトムの魔法を見せて貰いたいな」
銀の髪から上目遣いに見てくる青い瞳、甘えたような声で頼まれたら断れるはずが無い。
「俺の扱える魔法は光属性だけなんだよね」
そう言いながら海へ向け右手を伸ばした。
「ホーリー・アロウ」
光の矢が数本空を飛んで爆発する。
「光魔法か凄いのね」
「そうなの?」
「今まで精霊族とエルフ族、人族なら特別な神官、それ以外で使えるのを聞いた事が無かったですからね」
「そうなんだ・・・」
まずい事言ってしまったかな
「アトムは何者なのかなぁ?」
「あはは・・・ただの人族だよ」
「まぁ今は良いわ」
怖い怖い。
「今度はリリスの魔法を見せてよ」
「私は闇系以外使えるわ、光は回復・修復・状態異常系で珍しい所では姿を隠したり、一定の距離を一瞬で移動したりとかかな」
「凄いな、今度ゆっくりと光魔法を教えてくれる?」
「良いわよ」
リリスの力は本物だな。
「アトムおはよう」
リリスが警戒して俺の後ろへ隠れる、瞬時として軍人だと見抜いたのだろう。
「おはようケイラ」
「そちらはアトムの大切な人かな?」
俺はリリスの素性を隠したまま友人として紹介した。
ケイラは俺達が光魔法を使う事に疑問を持っていた様だが、最終的には自分を抑え納得した様だ。
「アトムは別としてリリスさんはアカデミーなど行かなくても十分な気がしますけど?」
「私もまだまだですし、アトムと一緒にいる為必要な事なのですよ」
「あら、ご馳走様」
俺の腕をしっかり掴み、頬をピンクに染めてるリリスはとても可愛いと思えた。
「私はお邪魔な様ね、またゆっくりお話しましょう」
「ケイラまたね」
ケイラは振り向きアートの言葉に片手を上げて合図したのだった。
「アトム、あの人は危険な気がするわ」
「軍人さんだからね」
「それだけじゃ無いのだけどな・・・」
「ん?」
「何でも無いわ、冷えて来たから私達も中に降り温かい物でも飲みましょう」
アートとリリスは腕を組んだまま食堂へと向かったのだった。
残り2日の工程を無事に終え、船はハルキアへとたどり着いた。
クリスとエマは、キャロルに抱えられながらの上陸と言う情けない形に成ったのは言うまでも無いだろう。
「皆様は宿屋でお休みに成ってて下さい、私は軍港に話を通してきます」
「よろしく」
キャロルと別れた一行は、数件ある宿屋から1つを選んで受付を済ませた。
「5名様ですね、3名と2名の2部屋ならご案内出来ますがよろしいですか?」
「出来れば3部屋欲しいのだけど・・・」
「それは他の宿屋に行っても無理かと思います」
「仕方が無いか、それでお願いします」
俺が軍の施設に泊めさせて貰えば良いかな。
アートは3人部屋の鍵をクリスに渡した。
「アトムはどっちで過ごすの?」
「軍の施設に泊めて貰うよ、クリスとエマで1部屋使って後はリリスとキャロルでお願いするね」
「分かりました、取り敢えず邪魔に成るのでキャロルさんが来るまで部屋に上がってましょう」
「そうだね、リリスを1人には出来ないからね」
4人は2階へ上がると、それぞれの部屋へと別れたのである
船旅って意外と疲れるのだな、陸に降りてから急に疲れが出て来た様だ。
「アート少し眠っても良いわよ、キャロルさんが来たら起こして上げるわ」
「ありがとう・・・皆揃ったら街の探索に行こう・・・」
開け放たれた窓から心地よい潮風が入り込んでくる、今のアートでは到底あがらう事が出来ず直ぐに夢の世界へと吸い込まれて行ったのであった。
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