唯一の男が女人国家を男女共存国家へと変えて行く物語

マナピナ

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初めての冒険 Ⅸ

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 兵士達がケイラを拘束してる中、クリスは口に左手を当て右手で抱き合う2人を差しながらオロオロしていた。

「私に任せときなさい、ファイア・アロウ、サンダ・アロウ」

エマの魔法が容赦なく2人を貫こうと飛んで行く。

「シールド」

間一髪でアートが防御魔法を唱える。

「エマ!危ないじゃないか」

「アートこそ何抱き合ってるのよ、クリスが泣いてるじゃない」

「おい私は別に・・・」

「仕方が無いだろうリリスは怖い思いをしたのだからさ」

その言葉と同時にリリスは更に懐深くへ顔をうずめるのだった。

「あの4人は学園生活が始まっても一緒にいられるのかしら?」

キャロルは独り言の様に呟くのだった。


 アートは拘束されてるケイラの元に行き人払いをした。

「まさか皇太子殿下だったとはね」

「色々事情があってね、さて今回の件で教えて欲しい事があるのだけど話してくれるよね?」

ケイラは黙って静かに頷いた。

 聞き出した情報によると、ケイラの仕事はルナレアに浸透し留学生の見極めが任務だったのだが、精霊族が入国した事に寄って新たな任務が下されたと言う。

「それがリリスの誘拐」

「そうです」

 先住民であるザブーンの民は、ゾネス皇国が建国された時に全ての男性が国外追放された事へ対する不満が根強く残ってる為、今回の皇太子殿下発表に憤る者が多かったらしい。

「それで何故精霊族が狙われる?」

「たまたま精霊族であっただけで、フリーシアの民なら種族は関係なかったのです」

「長寿なら構わなかったと言う事?」

「その通りです、それにフリーシアは迫害されて来た国故に民を大切にすると聞いてましたから」

なるほど、リリスが傀儡でもゾネス開放を唱えればフリーシアも自然と介入してくると言う事だな。

「未遂とは言え、国家反逆に手を貸したのだから処罰は覚悟出来てるな」

「はい」

アートは兵士達に、ケイラを王都へ護送する様に命じて仲間の元へと戻った。

「キャロル、事情を説明するから王都へ手紙を飛ばして欲しい」

「かしこまりました」

「クリスも無事で良かった」

「あ、ありがとう」

責任を感じ落ち込んでいたクリスに笑顔が戻ったのである。


 5人がハルキアへ帰った時にはすっかり日も暮れていた。

「私はアート様の代わりに軍へ出頭しお礼を伝えてきます」

「ありがとう、頼むよ」

「私達はどうする?」

クリスが元気いっぱいに問い掛けてくる。

「悪いけど俺は宿屋に戻るよ」

「私も疲れた」

「リリスは?」

「クリスにお任せしますわ」

 リリスが一番疲れてるだろうに、凹み気味なクリスに付き合って元気付けようとは優しいのだな。

「クリス、リリスも明日出港だから遅くならない様にね」

『はーい』

 アートは2人を見送りエマと一緒に宿屋へ戻ったのだった。


 クリスとリリスは1軒の食堂に入っていた。

「この丼飯美味しい」

「魚が新鮮で酢飯と良く合いますね」

「精霊族って花の蜜などを主食にしてると思ってたよ」

「偏見ですわ・・・ふふふ」

和やかな雰囲気の中、突然クリスが真顔に成った。

「リリスはアートの事を何処まで本気なの?」

「何処まで?」

「いや、その・・・」

クリスの両手が胸の前で合わさりモジモジし始めた。

「ふふふ、クリスは以外に乙女なのですね、私は結婚こそ出来ませんがアートの子は欲しいと思ってますよ」

「子供ーーーー」

「シー、声が大きいですよ」

クリスが慌てて口を塞ぐ。

「クリスはどうなのかな?」

「私は・・・第一正妃に成りたいな・・・なんてね」

「応援しましょうか?」

「本当に!」

「良いですよ、その代わり私の側室入も応援して下さいね」

「分かった、お互いに協力しあって行こう」

クリスとリリスが手を組んだ瞬間だった。

 
 朝の日課であるクリスとエマの引き剥がしを行ったアートは、女装してから部屋を出た。

「昨夜は着替えず寝てしまったな、気を付けなければ皆に迷惑を掛けてしまう」

独り言を呟きながら食堂へ入って行く。

「リリス、キャロルおはよう」

「おはよう」

「おはよう、アトムの分は直ぐにお持ちしますね」
 
「ありがとう」

キャロルが急いで厨房の方へ消えて行く。

「リリス、気分はどう?」

「もう大丈夫、食事も美味しいわ」

「それは良かった」

 もっと気弱い娘だと思っていたが、やはり王族だからかあの位の事をひきずり殻に籠もる様な事は無いんだな。

「お待たせしました」

「ありがとう、いただきます」

 今日から船の生活が再開される、次の街ランバーまでは7日掛かると聞いたが、暇なのが憂鬱だよなぁ

 最北の都市ランバー、かつて魔王国へ出兵した時に拠点と成った都市である。
今でも海軍だけで無く空軍も配置されており、哨戒体制は万全とされているのだった。
 
 3人が食事を終えようとしてる所でクリスとエマが食堂へ入って来た。

「おはよう」

「ございます」

気の無い挨拶をするクリスとエマ。

「どうした? 2人共元気無いね」

「気にしないで・・・船に乗るのが嫌なだけだから」

「あ、船酔いね」

「それなら私が魔法で耐性を上げますよ」

「リリス・・・ありがとう」

「うんうん、感謝」

「朝食どうしますか?」

キャロルの問にクリスとエマは同時に首を振ったのであった。

「それでは軽食を用意しときますね」

「キャロル、2人の為にすまない」

「気にしないで下さい」

彼女も昨日の事をそれなりに反省している様で、今日は今までよりも気遣いが良く成っている気がする。


 宿屋を後にした5人は乗船する為港へと向かった。

「キャロルと軍に挨拶をしてくるから、リリスの護衛を頼むね」

「今度は失敗しないから安心して良いよ」

「任された」

「先に乗船してて良いからね」

アートとキャロルは3人と別れ軍港へと向かい消えて行った。

「あのぅ、乗船前に買い物をしたいのですが宜しいですか?」

「良いけど何を買うの?」

「水着が欲しいなと思いまして、甲板は暑いですからね」

「それなら私も買おう、エマも買うでしょ」

「私はいらない・・・特に暑い季節じゃないし」

「ええー」

「貴方と比べられても傷つくだけだから」

「ん?」

「何でも無いわ!」

「それでは買いに行きましょう」


 アートとキャロルが船に乗り込み1時間ほどして、ランバーへ向かい出港した。

 今回は個室が取れたから有り難い、今日は夕食まで籠もって休みを取ろう。
明日からは調査した事を少しづつ纏めて行かないとだし。

「面倒だな・・・Zzzz」

 その頃、クリスの部屋では明日からのお色気作戦に付いて、リリスと打ち合わせをしていた。

「クリスは幼い頃から一緒だったのよね?」

「アートと私、エマは生まれた時期も同じで兄妹の様に育ってきたわ」

「それって恋愛の対象に成って無いのでは無いかしらね」

「どう言う事?」

「この国って女人国家だったから、殆どの若者が恋愛と言うものを知らないで育ってるのだわ」

「はぁ」

「特にアート、彼が恋愛に疎いと言う事がいけないのよね」

「それは私も思うわ、毎晩ベッドに忍び込んでも何も無いからね」

「クリスは十分綺麗だと思うしエマだって可愛い娘よ、アートをその気にさせるには少し行き過ぎた行動を取った方が良いかもね」

「なるほど、それで具体的には?」

「既成事実!」

「ええーー」

クリスは恥ずかしそうに俯いてしまった。

「応援するから頑張りなさい」

「ありがとう」

クリスは水着を握りしめ何かを決意したのだった。


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