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創造の魔女 Ⅱ

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 朝目覚めると優雅に朝食を取り何をするか考え始めた。

 うーん、ボッチもつまらないわよね・・・。

「そう言う訳で相棒を創作しましょう」

瞳は片手を床にかざすと小さな可愛い黒猫が作られた。

「可愛い娘が出来たわ、貴方の名前はチャムとしましょう」

黒猫は嬉しそうに瞳の足へまとわり付くと一言発した。

「お腹空いたニャ」

「貴方話せるの?」

「他の人とは無理だけど瞳となら話せるニャ」

 これは思っても無い誤算だった、癒やされるだけで無く話し相手まで出来てしまったのだ。
瞳は黒猫に食事を与えた。

「貴方の名前だけどチャムで良かった?」

「良い名前ニャ」

「良かったー、私これからダンジョンを作ると言う仕事が有るんだけど一緒に来る?」

「もちろん瞳の相棒なのだから今日は行くニャ」

 今日は・・・? まいっか

 
 瞳とチャムは1階へと上がって来た。

「中々の出来でしょう?」

「自然が多いのは良いけど空が暗いですニャ」

「空と言っても天井だしな」

「瞳は誰ニャ?」

「そっか! 作れば良いんだね」

瞳は両手を天井にかざし景色を思い描いた。
すると次第に天井は青く染まり始め雲が出来上がり、爽やかな風が吹き始めたのだった。

「チャムのお陰で最高の世界に成ったよ、ありがとうね」

チャムを抱えると部屋の外れにある森林の中に転移した。

「次はここから上に上がれる階段を作りますよ」

「私は寝てるニャ」

 チャムに作業は難しいだろうから寝てても良いか。

 瞳はまず上への石段を作り、2階の小部屋も下と同じ位の広さに拡張した。
階段の登り口を1番低い所に設定して少しずつ岩で段差を付けて行く。
彼女は2階を山岳の様にしようと考えてるのである。

 このフロアには山羊とかを放して特別な薬草も植えとこうかな。
レベルは・・・50位を平均で良いか。
しかしこのままでは単純な景観に成ってしまうな。

「よし! 奥は少し雪原にしよう、暑い所から寒い所へきっと辛いだろう」

 残りの植物や動物は明日で良いか、今日はもう疲れたし帰ろう。

転移でチャムの元へ飛ぶと仰向けで気持ち良さそうに寝ているでは無いか。
瞳がチャムのお腹を弄る。

「わしゃわしゃわしゃ」

「な、何する・・・ニャ」

「余りにも気持ち良さそうだったからね、所で語尾のニャって・・・」

「猫語ニャ」

「今は良いか、今日は終わりにして帰るよ」

チャムは素早く瞳の肩へ飛び乗ると瞳は地下1階へと転移した。

「買い物に行って来るけど何か食べたい物ある?」

「猫と言えば魚ニャ」

「はいはい」

 明日は野菜にしてやろう・・・・


 扉を開けるとそこは教会だった。
教会の外へ出ると工事中の様で迂回をさせられる。

「世の中信心深い者が多いんだな、あの神を見たら皆どんな顔をするんだろうか」

 瞳は思い出し笑いをしながら買い物を急いだ。
一通りの買い物を済ませた瞳は違和感を感じたのだった。
分かった!
この世界には男性がいないんだ・・・イケメンを拝む事が出来ないのか、スーツ神め大事な事を伝え忘れやがったな。

 余談だが後にこの場所が建て替えたアカデミーの地下祭壇に成る場所である。

 瞳は家に戻ると直ぐに直通連絡を入れた。

「お久しぶりですね、順調ですか?」

「順調ですかじゃないよ、この世界には男がいないじゃないか」

「瞳さんは結局紙を読まなかったのですね、その扉から出る国が特別なだけですよ」

「あ・・・ああそんな事書いてあったかな?」

「それともう1つテレビ見たいのが有りますよね、それで世界のあちこちを見る事が出来ますよ」

「それは素晴らしいわね」

「鑑賞は出来ませんし、エッチィのはお約束である不思議な光で遮られますけどね」

「貴方私を覗いたのね・・・」

「紙を読んだだけですよ」

「こっちは順調だから心配しないで良いわよ」

「信用してます、それではまた」

 新しい情報は手に入ったけど何か恥ずかしい事をさらけ出してしまった気もする。


 瞳は翌日からもダンジョンを作り続けた。
3階には大海原と点在する小島を作り、4階には樹海を作り上げた。

「後はボスキャラと宝箱ね」

ボスキャラは全てレベル100にして宝箱は鍵が無ければ罠が発動し戦闘に成るよう仕組んだ。

「これって盗賊などなら簡単に開けちゃうんだろうな」

「そうですニャ」

「多少は配らないと行けない、放した動物は地球の美味しい者ばかりだし多少は厳し目でも良いでしょうね」

1人と1匹は4階の階段を登ってくると瞳がため息を付いた。

「ここは拡張しないのかニャ」

「5階は終点、地下への転送陣を書いて私の元へ飛んで来る様にするのよ」

 5日目にしてダンジョンは完成した。

「チャム明日は正面から外へ出てみようか、私は外だと大した魔法が使えないのよね」

「了解。お供しますニャ」


 翌日1人と1匹は幻影の外へ出たのだが・・・

「なんじゃこりゃー」

周囲には軍隊だらけの状態であった。
瞳に気付いた兵士が上級そうなテントへと案内をする。

「お連れしました」

「やっと会えたか、そこに腰掛けてくれ」

瞳は言われた通りにすると冷えた茶が出された。

「私はなカルバス王国2世と申す、実は相談が有って会いに来たのじゃ」

「相談ですか?」

「5日程前な神の信託が降りて、この地に新しいダンジョンが発見されるだろうと」

 スーツ神め優しさか嫌がらせか、とにかく余計な事してくれたな。

「ダンジョンは明日から入れますが最低レベル40の動物がいますよ」

「最低で40か・・・パーティーなら何とか成るかのう」

「ここで一番強い方はレベルいくつですか?」

「騎士団長と冒険者ギルド長が共に50じゃな」

 案外レベルって低いんだな・・・

「では体験してみましょうか、もし事故で死んでも無料であの建物の中で生き返れますから、あ! でもその後3日間は再度入る事が出来ませんからね」
 
 王様を加えた4人は特別にダンジョンの中へと入って行ったのである。

「おおー、なんと素晴らしい所じゃ」

「2階や3階・4階も凄いですよ」

「見てみたい物じゃな」

「今度機会が有りましたらね、さてと探すのは面倒だし作ってしまいますか」

瞳が両手を前にかざすと親牛が現れた。
咄嗟に身構える騎士団長とギルド長

「陛下はお下がり下さい」

「うむ」

「そろそろ良いですかね、これは牛と言う動物で本来草食のおとなしい子なんですが、ここの子は普通に襲ってきます、レベルは60前後ですね」

瞳が指をパチンと鳴らしたのを合図に牛はギルド長に向け突進して行った。
槍で受け止めた彼は少しずつでは有るが後ろへと押されている。

「なんて力だ」

その隙を付いて騎士団長が背後から斬りかかるが、後ろ足での蹴りが鋭く近づく事さえ出来ない。

「ならば側面だ」

横へ回り込んだ騎士団長は剣を構えた瞬間、牛によってギルド長が吹き飛ばされて来たのだった。

「2人じゃきついな」

「そうでしょうね、牛も本来は群れで行動する物ですからやりにくかったと思いますよ」

この言葉を聞いた2人の顔から血の気が引いて行ったのは言うまでもないだろう。




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