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39話『必死な想いは届くのか?』

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 無事に51層まで辿り着いた俺たちは、音を警戒しつつ歩いていた。

 6人で四方八方を気にしながら、前に殺人ギルドの人達と出会った場所に戻る。

「ここで会ったんだよな……?」

 俺達がさっきまで戦っていた所は、魔法の痕跡が残っていた。
 不幸か幸いか分からないが、やはり殺人ギルドの人達はその場にはいなく、どこかへ行ってしまったようだ。

「みんな! 後ろから魔法!!」

 シズクの声がダンジョン内に響き渡り、俺は後ろに防御スキルを展開する。

「聖騎士スキルLv.2!【セイントガード!】」

 俺の展開したスキルは広範囲ということもあり、飛んでくる魔法は全て防ぐことが出来た。

 ただ、一度の魔法で俺の防御スキルが破られたとなると、これはあいつらが帰ってきたという事だろう。

 まぁ、魔法を俺たちに放ってくる時点で殺人ギルドの人達だとは思うが。

「さすがエンマだな。お前らが居なかったらちょっと俺達もやばかったぞ」

「そうね。ちょっと私も反応遅れちゃったし……」

 クウガとモエカの呟きに続いて、その言葉に同意するかのように頷くメンバー。
 そして、呟きもやみ、静かになったダンジョンに響く足音。

 俺たちのではない、魔法を放ってきた相手だった。

「くっくっくっ……まさか、ノコノコ戻ってくるとはねぇ……しかも、お仲間さんを連れてきちゃって、道連れにしたいのかな?」

 やっぱり殺人ギルドの面々だった。
 未だにフードを深く被った女の子は喋っている男の隣に立っている。

「ヒマワリ!! なぁ! お前なんだろ!?」

 俺はたまらずヒマワリらしき人へと声をかけた。

「…………」

 だが、ヒマワリからの返答はなかった。
 フードを深く被ったまま、多分、命令を待っている。

「なぁクウガ。お前らにあの男の相手を任せてもいいか? 俺たちはあのフードの方を相手にするから」

「あぁ!  任せてくれ。殺さないように無力化してみせるよ」

 あの男を俺達が相手していると、ヒマワリと話し合う時間がない。

 だから、四天王の人達に男の相手を頼んだ。この4人ならば、勝ってくれるだろう。

「フハハハハハハッ!! この私をその程度の4人で相手しようとするとは!面白い!!  ……ですが、そこの二人の相手を君に任せるわけだが、殺せるか?」

「……えぇ。大丈夫です。任せてください」

「それでこそ私の奴隷ですねぇ……任せましたよ」

「はい」

 この2人の会話を聞いて思ったが、多分ヒマワリは洗脳されている。

 そして、俺とシズクに出来ることはこの洗脳を解除することだが、どうも解除方法がわからない。

「それでは、あなた達にはここで死んでもらいます」

 男とヒマワリが離れ、四天王と俺達も離れる。

 ヒマワリが離れてすぐに魔法を溜め始め、俺たちに放とうとしていた。
 既に殺す気満々のようだ。

「ちょ、待て!ヒマワリ!!」

「……ぐっ……頭が……」

 魔法を放とうとしていたヒマワリが俺の言葉に頭を痛めている。
 これは、もしかしたら、ヒマワリの意識の本体が洗脳に抗い始めたからかもしれない。

「エンマ!! この調子で話しかけて! 多分、エンマの言葉なら洗脳解除出来るかもしれない!!」

 俺たちの離れた場所で、四天王と男が激しい攻防戦を繰り広げているのが見える。

 そんな時に俺はシズクの言う通り、ヒマワリへと話し掛けることにした。
 洗脳さえ解除すれば、俺たちの味方となってくれるかもしれない。

 もしくは、せめて殺人ギルドから抜けて、普通の女の子として暮らしてもらいたい。そんな願いを込めてだった。

「ヒマワリ!! 早く戻ってくるんだ!!」

「うるさい!!うるさいうるさいうるさい!!! 他の女の元にいったエンマなんて知らない!! そんなのいらない!! 殺して私も死ぬの!! だから、だから、これ以上話し掛けないで!!」

「ダメよエンマ!! この子は今洗脳によっておかしくなってるの!! エンマが言葉に負けないで!!」

 俺はその後もひたすらヒマワリに話しかけるが、反応に変わりはなかった。
 唯一、魔法を放ってこないということから、安全ではあるが、洗脳への解決策が見つからないという状況が続いていた。

「ヒマワリ! 頼む……もう、殺人なんてしようとしないでくれ……」

「…………うるさい!! 黙って!! 黒炎魔法Lv.5 【ダークフレイム!!!】」

 俺が何も対策していない時、俺の言葉にイラついたのか、俺へと魔法を放ってきた。

 当然俺に身体を守る術はなかった。

 そして、俺はそのまま黒炎へと包まれてしまった。

「エンマ!!!!」

 シズクの叫ぶ声が聞こえるが、それも炎の音によって少しずつ聞こえずらくなってしまった。

 俺はこのまま死んでしまうのだろうか。
 だが、不思議と黒炎に包まれているのに、あまり熱さや痛みを感じることはなかった。
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