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47話『崩壊した街』

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 俺達が神秘の街へと転移した時、周りは既に夜を迎えていた。
 転移といっても、時間は経過し、もちろんお腹もすく。

「ふぅ。神秘の街とか久々だな」

「そうねぇ。私とエンマがまだあんまり仲良くなった時? いや、今も仲良くないか!」

 シズクは笑い、それに釣られて俺も苦笑いするが、正直、内心ちょっとだけ悲しくなったのは言うまでもない。

 好きな人に仲良くないと言われたら悲しむのが普通だと思うが……

「って、なに二人だけで話してんの!? 私もいるよ!?」

「あ、ごめんなさいね。ちっちゃくて見えなかったわ」

「ほんと、あんたはイラつくわねぇ……」

 会話をすれば見事に絶対喧嘩する二人を見てどうしても俺は笑ってしまう。

「さてと、二人とも喧嘩はやめてさっさと宿屋でも行こうぜ」

「それもそうね。こんなお子様相手してる暇はないものね」

「誰がお子様ですって!?」

「あなたの事よ? 自覚してないのかしら」

 今にも殴りかかりそうなヒマワリをなんとか宥め、俺たちは街へと歩く。

 転移した場所は、街から少しだけ離れた場所だ。
 と言っても、徒歩1分くらいで着くのでほぼ街に転移したといっても、いいと思うが。

「なぁ、なんか街の中静かじゃね?」

「それ! 私も気になってたの! こんな馬鹿女相手しないで先に言えばよかったわ!」

「あら、もちろん私も気になってたわよ? なんか私たちの声が響くし、街の外に明かりの一つもないなんておかしいと思ってたしね」

「そうやって、すぐ対抗しないの」

「「エンマは黙ってて!」」

 黙れと言われてしまった俺は、1人街へと歩く。
 俺が先に行くと、なんだかんだ言いつつも、二人は仲良く足並み揃えて俺のあとを着いてきた。

 ほんと、仲がいいのか悪いのか分からない。

「あれ? 門番もいない?」

 普通ならいるはずの門番がいなく、街の門は解放されていた。
 これはなにかあったのかもしれない。

「シズクたち! ちょっと急ぐぞ!!」

「え? うん! 分かった!」

「ちょっと! 私走るの苦手なのにー!!」

 シズクだけ走るのが遅く、走るのが速いヒマワリがドヤ顔でシズクのことを煽っていた。

「はぁはぁはぁ……で、なんで急いだのよ……」

 街へと入り、息切れしたシズクが俺へと訊ねる。

「いやな、明らかにおかしくねえか? 街の中に入ったのに、どの家も真っ暗だし、中心の方見てみろ。明らかに変な色の光が見えるだろ?」

 俺が指差す方向には、町の中心広場がある。

 街の入口からだと良く見えないが、どう見ても悪い色の光だけは見えていた。

 その色はなんと紫だ。

「とりあえず行ってみようよ!」

 好奇心に負けたのか、ヒマワリが俺たちをリードして町の中心へと連れていく。

「なんだよ……これ……」

 町の中心。怪しい紫色の光の正体はやはり、この街をここまで静かにした原因だった。

 光の近くにいたのは、フードを着た、人形。
 ツギハギだらけの人形が光を囲むようになにかを唱えている。

「……お前達、逃げろ……」

 広場には無数の人が倒れていた。
 その中で息がまだあった1人が俺達に気付き、逃げるように伝える。

 もちろん、ここに倒れている数十人を超える人は全て、プレイヤーだ。









 どうやら、この人形達はプレイヤーを殺して魂を奪っているようだった。
 あの紫色の光は魂の集合体だろう。

「エンマ!とりあえず、迎撃するよ!」

「分かった! 念のため、みんな魔法で戦ってくれ!」

「魔法なら任せておいてちょうだい!」

 近接戦闘だと何が起こるか分からない。
 だが、軽く20は超える人形たちが俺達に気付き、一斉に殺しにかかってきている。それも、腕の結合部分などから、刃を出しながら。

 こいつらが、プレイヤーの魂を使って何をしようとしてるかは分からないが、とにかく今の俺達には魔法で迎撃するしかなかった。
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