64 / 74
62話『少女の役目』
しおりを挟む
いくら考えても、俺がシズクとヒマワリにとっての大事な存在とは思えなかった。
本当に俺だけが二人を親友と思っているのかもしれない。
いつしか好きになっていたシズクにすら、俺は何も思われていないのなら、どうすればいいのだろう。
「───やっぱり死んだ方がいいのか?」
俺のつぶやきに応えてくれる者はもちろん居ない。
だけど、俺のこんな心でも、俺には唯一無二の大事な人がいた。
例え、その人が俺を邪魔だと思っていても、居なくてもいいと思っていたとしても、俺はその人を守らねばならない。
その為にも、俺はこんな空間から出なきゃ行けなかった。
『お兄ちゃん!! 起きて!』
目を閉じて、妹を思い浮かべただけで、心の中から黒いものが抜けていく感覚があった。
そして、待っている妹の言葉を思い浮かべるだけで、暗い考えも無くなってきて、次第に普通に考えるようになっていた。
「ありがとな」
その場には居ない妹に感謝の言葉を言い、俺はシズク達の元へと帰るため、自分が最も必要とされていた場面、いや、一番仲良かった場面を思い出す。
「そういや、あいつらと居ると全部が楽しい思い出だな」
どんなことを思い出しても楽しかった。
三人で一部屋の時も、勝手に俺の近くへと寄ってきて、隣で寝ている。
三人で街を歩いていた時も、二人は喧嘩しつつも俺を楽しい気持ちへとさせてくれた。
例え、俺は二人が俺のことを友達だと思っていなくても、俺は二人を絶対に友達、いや、親友だと信じている。
そして、やっぱり二人が俺のことを仲間だと思ってくれていると信じる。
「俺はもう孤独じゃない!!!」
大きな声で叫び、暗闇へと響き渡らせる。
『君は心から信頼できる人が増えたようだね』
言葉と共に、暗闇が晴れていく。
真っ黒だった部屋は、灰色を基調とした壁に塗り変わり、誰もいなかった筈の部屋に倒れている二人の女の子がいた。
そして、全ての暗闇が晴れた時、俺が居たのは、全面を壁に囲まれた部屋だった。
扉は一つしかなく、窓も天井に一つだけある部屋だ。
そんな部屋に、倒れているシズクとヒマワリ。そして俺。それに含めて、部屋の真ん中にある素朴な木の椅子に座り、長い長い白髪を垂らしながら上を見上げ、窓から空をみる少女が居た。
「あら、起きたのね」
俺に気付き、少女は首も動かさないまま、こちらを見ることもなく喋りかけてくる。
「お前は一体……」
「安心して。私はなにもしてないわ。二人も直に目が覚めるわ」
「そんなことを聞いてるんじゃない。俺はお前について聞いてるんだ」
「私? 私は何者なんだろうね。役目は分かっている。貴方たちお気に入りの監視。それに加えて、試練を突破した人をこの部屋へと導くこと。それ以外はなにも与えられていない」
「記憶が、ないのか?」
「記憶? そんなもの分からない。名前なんて元々ないのかもしれないし、あるのかもしれない。あぁ、あとはそうね、あそこにいる人形の本体だ」
白い髪の少女は、木の椅子から降り、部屋の端に居る見たことのある人形を指差した。
「パペットドールか」
「えぇ。生まれた時から一緒だわ」
「まぁそれはいい。で、お前はなんで俺たちのことを監視してるんだ? 」
「知らない。ただ役目があったから監視しただけ」
「これからも監視するのか?」
「えぇ。役目は終わってない。だから、ここまで来たあなたに付いていく」
「シズクとヒマワリに聞かないと流石に連れてけねえぞ? それに、パペットドールも一緒だと尚更だ」
「パペットドールは置いていく。この神殿の守り主だから。街は守りきれなかった。ごめんなさい」
とうやら、この少女はパペットドールと共に、神殿が出来た時から街を守っていたらしい。
根は優しいのだろうか。
表情も一切変わらないことからなにも読み取れない。
「────エンマ?」
後ろから声が聞こえた。
振り返り見ると、そこにはシズクが立っていた。
目を擦りながら、俺を見て、隣にいる少女を不思議に思いながら。
「……んん……」
続いてヒマワリも起き、ようやく三人が揃った。
少女は起きてこちらを見る二人をじっと見つめていた。
この少女が何者か分からない。
監視役としてこいつを連れて行っていいのか、だが、こいつは誰かから監視役を命じられている。
それは、この世界を操っているものかもしれない。
そして、この少女は役目以外には特になにもわからない赤子のようなものだった。
俺は本能かどうか分からないが、この少女を守りたいと思ってしまった。
どこかこの少女の面影が妹に似てるからだろうか……
本当に俺だけが二人を親友と思っているのかもしれない。
いつしか好きになっていたシズクにすら、俺は何も思われていないのなら、どうすればいいのだろう。
「───やっぱり死んだ方がいいのか?」
俺のつぶやきに応えてくれる者はもちろん居ない。
だけど、俺のこんな心でも、俺には唯一無二の大事な人がいた。
例え、その人が俺を邪魔だと思っていても、居なくてもいいと思っていたとしても、俺はその人を守らねばならない。
その為にも、俺はこんな空間から出なきゃ行けなかった。
『お兄ちゃん!! 起きて!』
目を閉じて、妹を思い浮かべただけで、心の中から黒いものが抜けていく感覚があった。
そして、待っている妹の言葉を思い浮かべるだけで、暗い考えも無くなってきて、次第に普通に考えるようになっていた。
「ありがとな」
その場には居ない妹に感謝の言葉を言い、俺はシズク達の元へと帰るため、自分が最も必要とされていた場面、いや、一番仲良かった場面を思い出す。
「そういや、あいつらと居ると全部が楽しい思い出だな」
どんなことを思い出しても楽しかった。
三人で一部屋の時も、勝手に俺の近くへと寄ってきて、隣で寝ている。
三人で街を歩いていた時も、二人は喧嘩しつつも俺を楽しい気持ちへとさせてくれた。
例え、俺は二人が俺のことを友達だと思っていなくても、俺は二人を絶対に友達、いや、親友だと信じている。
そして、やっぱり二人が俺のことを仲間だと思ってくれていると信じる。
「俺はもう孤独じゃない!!!」
大きな声で叫び、暗闇へと響き渡らせる。
『君は心から信頼できる人が増えたようだね』
言葉と共に、暗闇が晴れていく。
真っ黒だった部屋は、灰色を基調とした壁に塗り変わり、誰もいなかった筈の部屋に倒れている二人の女の子がいた。
そして、全ての暗闇が晴れた時、俺が居たのは、全面を壁に囲まれた部屋だった。
扉は一つしかなく、窓も天井に一つだけある部屋だ。
そんな部屋に、倒れているシズクとヒマワリ。そして俺。それに含めて、部屋の真ん中にある素朴な木の椅子に座り、長い長い白髪を垂らしながら上を見上げ、窓から空をみる少女が居た。
「あら、起きたのね」
俺に気付き、少女は首も動かさないまま、こちらを見ることもなく喋りかけてくる。
「お前は一体……」
「安心して。私はなにもしてないわ。二人も直に目が覚めるわ」
「そんなことを聞いてるんじゃない。俺はお前について聞いてるんだ」
「私? 私は何者なんだろうね。役目は分かっている。貴方たちお気に入りの監視。それに加えて、試練を突破した人をこの部屋へと導くこと。それ以外はなにも与えられていない」
「記憶が、ないのか?」
「記憶? そんなもの分からない。名前なんて元々ないのかもしれないし、あるのかもしれない。あぁ、あとはそうね、あそこにいる人形の本体だ」
白い髪の少女は、木の椅子から降り、部屋の端に居る見たことのある人形を指差した。
「パペットドールか」
「えぇ。生まれた時から一緒だわ」
「まぁそれはいい。で、お前はなんで俺たちのことを監視してるんだ? 」
「知らない。ただ役目があったから監視しただけ」
「これからも監視するのか?」
「えぇ。役目は終わってない。だから、ここまで来たあなたに付いていく」
「シズクとヒマワリに聞かないと流石に連れてけねえぞ? それに、パペットドールも一緒だと尚更だ」
「パペットドールは置いていく。この神殿の守り主だから。街は守りきれなかった。ごめんなさい」
とうやら、この少女はパペットドールと共に、神殿が出来た時から街を守っていたらしい。
根は優しいのだろうか。
表情も一切変わらないことからなにも読み取れない。
「────エンマ?」
後ろから声が聞こえた。
振り返り見ると、そこにはシズクが立っていた。
目を擦りながら、俺を見て、隣にいる少女を不思議に思いながら。
「……んん……」
続いてヒマワリも起き、ようやく三人が揃った。
少女は起きてこちらを見る二人をじっと見つめていた。
この少女が何者か分からない。
監視役としてこいつを連れて行っていいのか、だが、こいつは誰かから監視役を命じられている。
それは、この世界を操っているものかもしれない。
そして、この少女は役目以外には特になにもわからない赤子のようなものだった。
俺は本能かどうか分からないが、この少女を守りたいと思ってしまった。
どこかこの少女の面影が妹に似てるからだろうか……
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる