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二章
十九話 嫉妬
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「どうして咲かないのよ……」
「……」
あれから数時間が経った。
卯月ちゃんは舞を踊っていたけれど、御神木は桜を咲かせてはくれない。
「やっぱり、ただの枯れ木なんじゃないの?」
「だから、これは本当に……」
「卯月。そんなに婚約相手のいうことが信用出来ないのか?」
「!? て、店主様……嫌ですわ。ただの枯れ木と言ったのは緋翠お姉ちゃんのほうです」
「え?!」
卯月ちゃんに背中を押されて、気づけば庵様の目の前にいた。
「緋翠。お前には、この御神木がただの枯れ木に見えるのか?」
「っ……はい」
卯月ちゃんに無理やり言わせられた。私はそんなこと、一ミリだって思っていない。
本当は今すぐにでも取り消したいけれど、卯月ちゃんの前だと、それは出来なかった。
「……そうか」
庵様の六枚の翼が下がっている。私の心無い言葉で庵様を傷つけてしまったんだ。
どうしよう。どうすれば、庵様は元気になるの?
私が今すぐ謝れば、許してもらえるだろうか。
「それで、君の力で花は咲きそうか?」
「今すぐには無理でも明日があります。……五日もあれば必ず大丈夫です! 五日後の朝までに咲かせれば、私と結婚してくれるんですよね!?」
「……あぁ。俺は一度交わした約束を破るつもりはない」
「……」
庵様は本当に卯月ちゃんと結婚するつもりなんだ。それは御神木が桜を咲かせることが出来ないことをわかっていて、その条件を出しているのか。
それとも、桜が咲けば卯月ちゃんに巫女としての素質があるなら、互いのメリットが一致するから結婚したいって意味なのか、どっちなのだろう。庵様の本心はわからない。
それにしても、一瞬で咲かせると啖呵をきった卯月ちゃんでも桜を咲かせることは難しいんだ……。
卯月ちゃんの巫女の力は本物だ。力の使い方だって上手いし、才能は神無月家の中でもずば抜けている。
卯月ちゃんが出来ないなら、とてもじゃないが私なんてもっと無理だ。巫女の才能はおろか、力さえ、まともに使えないのだから。
「しばらく休憩したら、また再開します。ねぇ、店主様。私に国を案内してくれませんか?」
「……わかった」
「店主様って見た目からは想像もつかないほど男らしいんですね。腕にもこんなにも筋肉がついて……毎日、団子を作る練習をしていたのでしょう?そんな丹精込めて作られた店主様のお団子、一度でいいから食べてみたいですわ」
「っ……!」
私は卯月ちゃんの能力のせいで動けなかった。
卯月ちゃんは庵様の腕に自身の胸を当てるようにして、庵様にくっついた。その姿はまるで本物の恋人みたいで、私はまともに見ることが出来なかった。
思わず逸らしたくなるほど、辛い現実。けれど、卯月ちゃんが庵様の妻になれば、この光景を毎日のように見ることになる。私は耐えられるだろうか。
卯月ちゃんの言っていた通り、お母様と一緒に国に戻ったほうがいいのだろうか。
……あの場所は私にとっての地獄。戻るくらいなら、自らの命を捨てたほうがマシだ。だから、あの日の私もそうしたんだ。
「今日は私と一緒に寝ませんか? 夫婦が同じ布団で寝るのは当然でしょう?」
「まだ俺の妻になるとは決まっていないだろ」
「私なら必ず店主様の条件を達成することが出来ますわ。だからお願い。私と寝てください。……それとも、私じゃ女としての魅力が足りませんか?」
「そんなことはない」
「だったら、いいですよね?」
「……あぁ」
私ですら庵様と寝る部屋は別々なのに……。
卯月ちゃんはいつになく積極的だ。強引な女性ははしたないとお母様に言われて育てられた。
でも、それは私の見た目が醜いから、どんなことをしても男性を落とすことが出来ないから言われてきた言葉だったのだろうか。
……私の片目は見えない。卯月ちゃんは綺麗な瞳をしている。誰だって美しい女性のほうが好きなはずだ。
庵様もそうなのだろうか。さっきまで安心していたのに……安心が不安に変わる。
卯月ちゃんに嫉妬するなんて、私はなんて醜いんだろう。
……嫉妬? 私は庵様を取られそうになって嫌な気持ちになってるっていうの?
どうして? なんでなの?
私は庵様の隣にいるだけで満足なはずなのに……。それ以上、望むことはないはず。
幸せにしてやると言われ、私も庵様の支えになるといった。それでいいじゃない。
私はなにを不安になっているの?
自分でも自分の心がわからない。
『貴方はこの先、庵様とどうなりたいの?』もう一人の自分が、私に呟いた。そんな気がした。
「……」
あれから数時間が経った。
卯月ちゃんは舞を踊っていたけれど、御神木は桜を咲かせてはくれない。
「やっぱり、ただの枯れ木なんじゃないの?」
「だから、これは本当に……」
「卯月。そんなに婚約相手のいうことが信用出来ないのか?」
「!? て、店主様……嫌ですわ。ただの枯れ木と言ったのは緋翠お姉ちゃんのほうです」
「え?!」
卯月ちゃんに背中を押されて、気づけば庵様の目の前にいた。
「緋翠。お前には、この御神木がただの枯れ木に見えるのか?」
「っ……はい」
卯月ちゃんに無理やり言わせられた。私はそんなこと、一ミリだって思っていない。
本当は今すぐにでも取り消したいけれど、卯月ちゃんの前だと、それは出来なかった。
「……そうか」
庵様の六枚の翼が下がっている。私の心無い言葉で庵様を傷つけてしまったんだ。
どうしよう。どうすれば、庵様は元気になるの?
私が今すぐ謝れば、許してもらえるだろうか。
「それで、君の力で花は咲きそうか?」
「今すぐには無理でも明日があります。……五日もあれば必ず大丈夫です! 五日後の朝までに咲かせれば、私と結婚してくれるんですよね!?」
「……あぁ。俺は一度交わした約束を破るつもりはない」
「……」
庵様は本当に卯月ちゃんと結婚するつもりなんだ。それは御神木が桜を咲かせることが出来ないことをわかっていて、その条件を出しているのか。
それとも、桜が咲けば卯月ちゃんに巫女としての素質があるなら、互いのメリットが一致するから結婚したいって意味なのか、どっちなのだろう。庵様の本心はわからない。
それにしても、一瞬で咲かせると啖呵をきった卯月ちゃんでも桜を咲かせることは難しいんだ……。
卯月ちゃんの巫女の力は本物だ。力の使い方だって上手いし、才能は神無月家の中でもずば抜けている。
卯月ちゃんが出来ないなら、とてもじゃないが私なんてもっと無理だ。巫女の才能はおろか、力さえ、まともに使えないのだから。
「しばらく休憩したら、また再開します。ねぇ、店主様。私に国を案内してくれませんか?」
「……わかった」
「店主様って見た目からは想像もつかないほど男らしいんですね。腕にもこんなにも筋肉がついて……毎日、団子を作る練習をしていたのでしょう?そんな丹精込めて作られた店主様のお団子、一度でいいから食べてみたいですわ」
「っ……!」
私は卯月ちゃんの能力のせいで動けなかった。
卯月ちゃんは庵様の腕に自身の胸を当てるようにして、庵様にくっついた。その姿はまるで本物の恋人みたいで、私はまともに見ることが出来なかった。
思わず逸らしたくなるほど、辛い現実。けれど、卯月ちゃんが庵様の妻になれば、この光景を毎日のように見ることになる。私は耐えられるだろうか。
卯月ちゃんの言っていた通り、お母様と一緒に国に戻ったほうがいいのだろうか。
……あの場所は私にとっての地獄。戻るくらいなら、自らの命を捨てたほうがマシだ。だから、あの日の私もそうしたんだ。
「今日は私と一緒に寝ませんか? 夫婦が同じ布団で寝るのは当然でしょう?」
「まだ俺の妻になるとは決まっていないだろ」
「私なら必ず店主様の条件を達成することが出来ますわ。だからお願い。私と寝てください。……それとも、私じゃ女としての魅力が足りませんか?」
「そんなことはない」
「だったら、いいですよね?」
「……あぁ」
私ですら庵様と寝る部屋は別々なのに……。
卯月ちゃんはいつになく積極的だ。強引な女性ははしたないとお母様に言われて育てられた。
でも、それは私の見た目が醜いから、どんなことをしても男性を落とすことが出来ないから言われてきた言葉だったのだろうか。
……私の片目は見えない。卯月ちゃんは綺麗な瞳をしている。誰だって美しい女性のほうが好きなはずだ。
庵様もそうなのだろうか。さっきまで安心していたのに……安心が不安に変わる。
卯月ちゃんに嫉妬するなんて、私はなんて醜いんだろう。
……嫉妬? 私は庵様を取られそうになって嫌な気持ちになってるっていうの?
どうして? なんでなの?
私は庵様の隣にいるだけで満足なはずなのに……。それ以上、望むことはないはず。
幸せにしてやると言われ、私も庵様の支えになるといった。それでいいじゃない。
私はなにを不安になっているの?
自分でも自分の心がわからない。
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