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二章
二十一話 解放の条件
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「貴女が店主様に一言言えば朱里さんたちを解放してあげるわ」
「……?」
「卯月ちゃんと結婚してくださいって言うのよ」
「でも、それは卯月ちゃんが桜を咲かせたらって話じゃ……」
「貴女は卯月ちゃんの手助けをするのでしょう? だったら、自分を幸せにするよりも妹と幸せにしてくださいって頼み込むのよ。妹が幸せになることが私の幸せですって、そう言いなさい」
「ですが、それで庵様が聞くとは……きゃっ……いっ……」
私はお母様の足で頭を踏まれた。
「貴女は仮にも女なんだから、店主様に夜這いでもなんでもして必死に頼み込めばいいのよ。
こんな貧相な身体じゃ相手されるのは無理かもね。それが無理なら泣き落としでもしなさいよ!!」
「……そんなの、む……」
「朱里さんたちが死んでもいいの? あっ、そうだ。ここに用心棒を呼びましょうか。……それで朱里さんを女にしてもらうの。ねっ、いい考えでしょう?」
「やめ、て……」
お母様のいう用心棒、それは困ったときになんでも言うことを聞いてくれる奴隷のような存在。
私が卯月ちゃんの心を傷つけたと難癖をつけられた日、私は用心棒の暴力によって、精神をボロボロにされた。
用心棒が行うのは暴力だけではない。殺人はおろか、時には女性の身体を弄ぶこともある。
「朱里さんは貴女と年齢が変わらないにも関わらず、未だに処女なんでしょ? いいえ、あの娘は処女で間違いない。だから用心棒に頼みましょう。心も身体も壊せば、私たち神無月家に歯向かうこともなくなるでしょう?」
「そんな……やめてください」
「だったら母である私の言うことを聞きなさい」
「……」
久しぶりに会ったのにお母様はなにも変わっていない。卯月ちゃんの幸せのためなら手段は選ばない。母はそういう人だ。
「卯月ちゃんは優秀よ。だから、五日後の朝までには桜を咲かせることができる。それまでは貴女もこの国に居ていいわ。卯月ちゃんの舞を近くで見るといい。そうしたら貴女の穢れも少しは浄化されるに違いない」
「卯月ちゃんが庵様と結婚したら、私は元いた国に戻れと言っているんですね」
「あら、物わかりがいいじゃない。……どんな手を使ってもいいわ。卯月ちゃんが店主様と上手くいくようにしなさい。そうすれば朱里さんたちを解放してあげる。少しでも逆らう姿勢を見せれば朱里さんが無傷で帰ってくるとは思わないで。……用心棒はいくらでもいる。貴女の行動を監視することくらい簡単よ」
「……わかりました」
「いい子ね、緋翠さん。ねぇ、貴女のその目には私はどう映っているのかしら?」
私の見えないほうの目に触れるお母様。
……翼のことを言っているのだろうか。ううん、きっと違う。お母様は私の力に気付いていない。
「卯月ちゃん想いな素敵なお母様です。見た目も美しく、性格も良い。そして、神無月家の幸せを常に願っている。……そして、使用人である私にもとても優しいです」
「……そうよね。よく言えたわね、緋翠さん。そうよ、貴女は使用人でゴミ。でも、女性で生まれてきたのだから、誘惑することくらい簡単でしょう? 店主様だって男なんだから、貴女の下手くそな泣き落としでもそれなりに効果はあるはずよ」
「……はい」
私はもうお母様の娘なんかじゃない。それはわかっていた。今は奴隷と言われても、それを受け入れる。
朱里さんの命がかかっているんだ。朱里さんは私なんかのために捕まった。それなら私が助けないと。私は友人なんか作るべきじゃなかった。
朱里さん、本当にごめんなさい。ちゃんと助けるから。だから少しの間、待っててください。
私が桜ノ国を去るまで、あと五日……。
「……?」
「卯月ちゃんと結婚してくださいって言うのよ」
「でも、それは卯月ちゃんが桜を咲かせたらって話じゃ……」
「貴女は卯月ちゃんの手助けをするのでしょう? だったら、自分を幸せにするよりも妹と幸せにしてくださいって頼み込むのよ。妹が幸せになることが私の幸せですって、そう言いなさい」
「ですが、それで庵様が聞くとは……きゃっ……いっ……」
私はお母様の足で頭を踏まれた。
「貴女は仮にも女なんだから、店主様に夜這いでもなんでもして必死に頼み込めばいいのよ。
こんな貧相な身体じゃ相手されるのは無理かもね。それが無理なら泣き落としでもしなさいよ!!」
「……そんなの、む……」
「朱里さんたちが死んでもいいの? あっ、そうだ。ここに用心棒を呼びましょうか。……それで朱里さんを女にしてもらうの。ねっ、いい考えでしょう?」
「やめ、て……」
お母様のいう用心棒、それは困ったときになんでも言うことを聞いてくれる奴隷のような存在。
私が卯月ちゃんの心を傷つけたと難癖をつけられた日、私は用心棒の暴力によって、精神をボロボロにされた。
用心棒が行うのは暴力だけではない。殺人はおろか、時には女性の身体を弄ぶこともある。
「朱里さんは貴女と年齢が変わらないにも関わらず、未だに処女なんでしょ? いいえ、あの娘は処女で間違いない。だから用心棒に頼みましょう。心も身体も壊せば、私たち神無月家に歯向かうこともなくなるでしょう?」
「そんな……やめてください」
「だったら母である私の言うことを聞きなさい」
「……」
久しぶりに会ったのにお母様はなにも変わっていない。卯月ちゃんの幸せのためなら手段は選ばない。母はそういう人だ。
「卯月ちゃんは優秀よ。だから、五日後の朝までには桜を咲かせることができる。それまでは貴女もこの国に居ていいわ。卯月ちゃんの舞を近くで見るといい。そうしたら貴女の穢れも少しは浄化されるに違いない」
「卯月ちゃんが庵様と結婚したら、私は元いた国に戻れと言っているんですね」
「あら、物わかりがいいじゃない。……どんな手を使ってもいいわ。卯月ちゃんが店主様と上手くいくようにしなさい。そうすれば朱里さんたちを解放してあげる。少しでも逆らう姿勢を見せれば朱里さんが無傷で帰ってくるとは思わないで。……用心棒はいくらでもいる。貴女の行動を監視することくらい簡単よ」
「……わかりました」
「いい子ね、緋翠さん。ねぇ、貴女のその目には私はどう映っているのかしら?」
私の見えないほうの目に触れるお母様。
……翼のことを言っているのだろうか。ううん、きっと違う。お母様は私の力に気付いていない。
「卯月ちゃん想いな素敵なお母様です。見た目も美しく、性格も良い。そして、神無月家の幸せを常に願っている。……そして、使用人である私にもとても優しいです」
「……そうよね。よく言えたわね、緋翠さん。そうよ、貴女は使用人でゴミ。でも、女性で生まれてきたのだから、誘惑することくらい簡単でしょう? 店主様だって男なんだから、貴女の下手くそな泣き落としでもそれなりに効果はあるはずよ」
「……はい」
私はもうお母様の娘なんかじゃない。それはわかっていた。今は奴隷と言われても、それを受け入れる。
朱里さんの命がかかっているんだ。朱里さんは私なんかのために捕まった。それなら私が助けないと。私は友人なんか作るべきじゃなかった。
朱里さん、本当にごめんなさい。ちゃんと助けるから。だから少しの間、待っててください。
私が桜ノ国を去るまで、あと五日……。
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