再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです

星空永遠

文字の大きさ
1 / 8

一話

しおりを挟む
「千夏さん、久しぶりです!」
「わっ……」

ちょうど仕事が終わり家に帰る途中、名前を呼ばれた。すると返事をする間もなく、いきなり抱きしめられた。

「ちょっ。誰かと間違ってませんか?」

目の前にいる彼は白馬の王子様が降り立ったんじゃないかってくらいカッコよくて。身長はもうすぐ190いきそうなくらい高身長で、スーツだって明らかにオーダーメイドで高そう。

普通の人がスーツを着てても、「ふーん」ってくらいにしか思わないのに……。彼はスーツ越しでも鍛え上げられたであろう筋肉がチラ見えしている。

そんな彼が私の知り合いなはずない。絶対に。

「間違ってません。桜井千夏さんですよね? 今は保育士でしたっけ? 昔、子供が好きだって俺に話してましたし、今の仕事はピッタリですね」
「へ?」

私が保育士だってことを知ってる? 子供は昔から好きだったけど、彼にいつそんなこと話したっけ? 記憶がない。

「あ、すみません。その反応だと俺のこと覚えてないですよね」
「ご、ごめんなさい」

「謝らないでください。無理もないですよ」
「え?」

「だって俺と千夏さんが最後に会ったのは6年も前の話なんですから」
「そんな前に?」

思い出そうとしても思い出せない。なぜだろう? こんなに素敵な人なら記憶の片隅に残っていてもおかしくないはずなのに。

藤堂とうどういつきです。約束通り、千夏さんに相応しい男性になって帰ってきました」

「んっ!?」
「久しぶりの千夏さんの唇、相変わらず甘いですね」

「へっ?」

頭をガシッと押さえられたと思ったら、そのまま彼のほうにグイっと引き寄せられて、強引にキスされた。彼とは初めてキスをするはずなのに、なんだか懐かしいような……。

彼とのキスは初めてじゃない。今まで忘れてしまっていただけ。私にとっては思い出したくない記憶だったから。

「藤堂さん」
「千夏さん、どうしましたか?」

「今更どんな顔して私の前に現れたんですか!?」

私は藤堂さんの胸板を押し、拒否するように距離をとった。

6年前の藤堂さんは今とは身なりも……お世辞にも綺麗とは言えなかった。どちらかといえば小汚い。それが第一印象。
私がそう感じるのも無理はない。出会った頃の藤堂さんはその場暮らしの、所謂ホームレスだったから。それが何故、童話に出てくるような王子様みたいな見た目に変わっているの?

私が保育士をする前、ただのスーパーのバイトをしていた時、私は藤堂さんと出会った。最初は同情からだった。バイトの帰り道、捨てられた仔犬のような格好でうずくまっていたから声をかけて、それから一時的だが私のアパートで一緒に暮らした。

それなりに仲も深まり、私も藤堂さんのことを異性として気になり始めたころ、藤堂さんは突然私の前から姿を消した。せめて次の行先くらい手紙に残してくれたら良かったのに……と私は嘆いた。

私の手料理を食べ、十分な睡眠を取れたから、私は用無しってこと? そんなの、あんまりだ。それとも他の女が見つかったのか。本人に聞こうにも家を出て行ったあとで聞けずじまいだった。

私は藤堂さんという存在を記憶から完全に抹消していた。思い出すだけ私が辛い思いをするだけだから。それなのに、藤堂さんは再び私の前に現れた。私は会いたくなかった。

「6年前はすみませんでした。突然いなくなって千夏さんも驚きましたよね」
「……」

驚くどころか、私にとってはトラウマだ。そのせいで男性に不信感を抱いて、あれから恋人はおろか、男性の影すらない。私はもう28歳。本来なら交際よりも結婚を本気で考える年齢だ。なのに過去が邪魔して前に進めない。

「でも千夏さんも悪いんですよ」
「え?」

「俺を拾って間もない頃に男性のタイプを聞いたら、自分と同じくらい収入が安定してる人が良いとか、自分は家事が得意だから専業主婦が良いとか俺の前でいうから」
「あれは冗談に決まってるでしょ。今時、専業主婦で暮らしていける女性なんているわけない」

「今の俺だったらできます」
「へ?」

「千夏さん好みの男になったから……だから千夏さんの前に現れたんです」
「私は貴方のせいで次の恋愛にいけないのよ…どうしてくれるの?」

押さえていた感情が溢れだし、涙が零れ落ちた。

「そんなに俺のことを想ってくれていたなんて嬉しいです」
「っ」

再び抱きしめられた。嫌なはずなのに。拒絶して突き放せばいいのに……。どうして出来ないんだろう? 鼻をくすぐる柑橘系の匂い。出会った頃とはかなり変わってしまったけれど、一つだけ変わってないところがある。

「千夏さん、大好きです」

私を惑わす甘いマスク。これだけは昔と何も変わっていない。この笑顔に私は堕とされ、昔もキス以上のことをしたっけ。辛い思い出ばかりじゃない。楽しい思い出だってある。中には思い出したくないほど恥ずかしい記憶だって。

「聞いてください千夏さん」
「なんですか?」

「俺と結婚前提に付き合ってください」

「え……えぇ~!?」

両手を握られたと思ったら、婚約指輪を私の指にはめる藤堂さん。私は突然のプロポーズに開いた口が塞がらなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

初恋をこじらせたやさぐれメイドは、振られたはずの騎士さまに求婚されました。

石河 翠
恋愛
騎士団の寮でメイドとして働いている主人公。彼女にちょっかいをかけてくる騎士がいるものの、彼女は彼をあっさりといなしていた。それというのも、彼女は5年前に彼に振られてしまっていたからだ。ところが、彼女を振ったはずの騎士から突然求婚されてしまう。しかも彼は、「振ったつもりはなかった」のだと言い始めて……。 色気たっぷりのイケメンのくせに、大事な部分がポンコツなダメンズ騎士と、初恋をこじらせたあげくやさぐれてしまったメイドの恋物語。 *この作品のヒーローはダメンズ、ヒロインはダメンズ好きです。苦手な方はご注意ください この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

ダメンズな彼から離れようとしたら、なんか執着されたお話

下菊みこと
恋愛
ソフトヤンデレに捕まるお話。 あるいはダメンズが努力の末スパダリになるお話。 小説家になろう様でも投稿しています。 御都合主義のハッピーエンドのSSです。

どうしようもない幼馴染が可愛いお話

下菊みこと
恋愛
可愛いけどどうしようもない幼馴染に嫉妬され、誤解を解いたと思ったらなんだかんだでそのまま捕まるお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

君に何度でも恋をする

明日葉
恋愛
いろいろ訳ありの花音は、大好きな彼から別れを告げられる。別れを告げられた後でわかった現実に、花音は非常識とは思いつつ、かつて一度だけあったことのある翔に依頼をした。 「仕事の依頼です。個人的な依頼を受けるのかは分かりませんが、婚約者を演じてくれませんか」 「ふりなんて言わず、本当に婚約してもいいけど?」 そう答えた翔の真意が分からないまま、婚約者の演技が始まる。騙す相手は、花音の家族。期間は、残り少ない時間を生きている花音の祖父が生きている間。

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。 絶対に離婚届に判なんて押さないからな」 既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。 まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。 紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転! 純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。 離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。 それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。 このままでは紘希の弱点になる。 わかっているけれど……。 瑞木純華 みずきすみか 28 イベントデザイン部係長 姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点 おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち 後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない 恋に関しては夢見がち × 矢崎紘希 やざきひろき 28 営業部課長 一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長 サバサバした爽やかくん 実体は押しが強くて粘着質 秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?

初恋に見切りをつけたら「氷の騎士」が手ぐすね引いて待っていた~それは非常に重い愛でした~

ひとみん
恋愛
メイリフローラは初恋の相手ユアンが大好きだ。振り向いてほしくて会う度求婚するも、困った様にほほ笑まれ受け入れてもらえない。 それが十年続いた。 だから成人した事を機に勝負に出たが惨敗。そして彼女は初恋を捨てた。今までたった 一人しか見ていなかった視野を広げようと。 そう思っていたのに、巷で「氷の騎士」と言われているレイモンドと出会う。 好きな人を追いかけるだけだった令嬢が、両手いっぱいに重い愛を抱えた令息にあっという間に捕まってしまう、そんなお話です。 ツッコミどころ満載の5話完結です。

処理中です...