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七章 戸惑いと本気の恋

50話

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「はぁ~……どうしよう」

夏休みがあと何日かで終わるある日のこと、私は深いため息をつきながら、部屋の机に突っ伏していた。

夏祭りの日、私は会長さんから告白を受けた。それはもうとてつもなく真剣で、愛のある告白を。
会長さんが私のことを好きだっていうのも驚きだったんだけど、まさか私が黒炎くんに気持ちを伝える前に告白されるなんて思ってもみなかった。

私が思ってる以上に会長さんは恋のことになると積極的なのかもしれない。

私はアカリちゃんのことを含めて黒炎くんのことをもっと知らなきゃ! ってウジウジ考えて未だに告白出来てないし。いや、告白しようとしたけどハプニングがあってそれどころじゃなかったというか……。

それとも会長さんみたいに後先のこと考えずに突っ走るのが正解なのかな? 別に貶してるわけじゃないんだけど。
だけどそれは会長さんがカッコいいから許されるわけで、私なんかただの平凡な高校生だよ? こんな私が黒炎くんに釣り合うとはとても思えないんだけど。って、また自暴自棄になってる。

一人になると暗いことばかりを考える癖、いい加減なおさないと。

会長さんには申し訳ないけど、やっぱり真剣に考えても今は黒炎くんのことが好きで会長さんのことは先輩としては好きだけど、異性として好きかと聞かれると好きじゃないと答えが出てしまう。それどころか会長さんの告白のことを思い出すと黒炎くんへの気持ちがどんどん募っていく。私も黒炎くんに好きですって伝えるべき?

「でも、その黒炎くんと連絡出来ないんだけどね」

私からメールしても、夏祭りのメールを最後に返事は返ってこなかった。黒炎くん、今頃何してんだろ。

「会長さんに告白を断る連絡しないとな……」

携帯を見て会長さんに連絡を取ろうにも、私は会長さんの連絡先を知らなかった。
これ、もしかして学校始まるまで連絡出来ないんじゃ……うーん、困った。

ずっと返事を待たせてるのもなんだか悪いし早めに連絡したいんだけど……と思っていたら、知らない番号から着信があった。

「誰だろう? も、もしもし」

しまった。携帯を触っていたからつい反射的に出てしまった。

「星ヶ丘高校の如月紅蓮です。霧姫朱里の携帯で間違いないですか」

「会長さん!?」

それはまさかの会長さんで。って、電話でも相変わらずフルネーム呼びでお堅い話し方なんだなぁ。

「霧姫朱里、今日は貴方に話したいことがあって……」

「奇遇ですね。私もです」

告白の返事をそろそろしろって事だよね? 私の番号を知ってるのは黒炎くんから聞いたからなのかな。
私の答えはとっくに決まっている。
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