上 下
23 / 24

番外編:家族下

しおりを挟む
俺は願掛けとして、酒断ちをした。
風呂あがりの冷えたビールに未練があったが、神様にでもすがりたい気持ちだったのだ。

病院で色々指導を受けながら体調をコントロールする。

栄養の方は曲がりなりにでもプロなので、資料とにらめっこしながら完璧にこなす。

もっと肉が食べたいとか醤油や甘味をと泣き言を言われても、鬼になって味気無い物を食わしたりする。
以前よりも徹底して塩分は減らした。

二人で病院主催のパパママ教室にも通い、若い妊婦たちに混ざって乳児の入浴法などの指導も受けた。
年齢のせいか目立っていたようだが、恥ずかしがらずに堂々と質問もしてやった。

だんだんとお腹も目立ち始め、妊婦なんだなと実感がわいてくる。

病院に通う頻度も増え、それにつれて不安感も大きくなってくる。

彼女もナーバスになる事が増え、些細な事で涙ぐんだり、気が立ってみたりする。

そして、入院する事になった。

「ごめんね。
私がちゃんとしてないから入院になっちゃって。」

ずいぶんと落ち込んでいるようだ。

「裕子のせいじゃないよ。
初めから入院の予定だったろう。
ちょっと早まっただけだ。
泣いてたらお腹の子に笑われるぞ。」

「うん、そうなんだけどさ。
トイレに行く時くらいしか起きちゃ駄目なんて嫌になっちゃうな。」

「お腹の子とのんびりしてたら良いさ。
もうちょっと育ってから出て来いよ。」

彼女のお腹を撫で、話し掛ける。
もう一月ほど育ったら帝王切開で出産させる予定だ。

「頑張って大きくなってね。」

自分のお腹を撫でる彼女の顔はもう、母親の顔をしていた。





そして、俺たちの子供が誕生した。
2800グラムの元気な女の子だ。

母親である裕子の産後も順調で、祝いのビールを飲み過ぎて怒られてしまった。


老後は二人きりでお茶でも飲もうと思っていたのに、子宝に恵まれた。

人生設計をつくり直す必要があるが、それも又楽しいものだ。

ボチボチ健康で、家族に囲まれて暮らすのも良いものだ。
しみじみ思う幸せな時間を過ごしている。



夫、青山省吾
妻、青山裕子
長女、青山のぞみ
犬、雑種オス、リッキー

家族です。


しおりを挟む

処理中です...