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第3章 妊娠・出産編

第28話

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その2年後、彼女はもう1人、子供を産んだ。

ベルティアは、出産の痛みを覚えていたのだった。

だが、子供がとてつもなく可愛くなり、もう1人、出産したのだった。

集落を離れ、2人目の時も、あの洞窟で産んだ。

その時は、今回もミリアのみが手伝いに入り、内密に出産が行われた。

その時も、リディーヌが、子供を取り上げた。

そして、その時も子供が産まれんとして、陣痛が最高潮になった時、やはり男の言葉で叫んだ。

これに関しては、かなり謎だった。

ベルティア以外、それについてのことを、誰一人として、知りはしないのだった。

2人目の子は、女の子なのだった。

 

その2年後、驚くことに、ベルティアは、3人目を妊娠した。

ベルティアが、例の洞窟へ行こうとしたら、いきなり、家で産気づいてしまった。

ゲオンは、急いでリディーヌを呼びに行った。2人の子供は、お産のために、ゲオンの実家へ預けていた。
 
ミリアが手伝いに来た時、ベルティアは、既に天使の姿となっており、叫んだ。

「ど……どうしよ、赤ん坊、出てきちまうっ!!我慢できねぇー―――――っ!!」

ベルティアが、『男言葉』で叫んでいた。
 

リディーヌは、まだ来ていない。
 
だが、ベルティアが男言葉になったらもう、産まれるということだ。

ベルティアは、極限にまで痛みが強まると、何故か男言葉になる。

「大丈夫、私が受け止めるから!」

ミリアは、ベルティアを勇気づけるように言った。

その後少しして、3人目の子で、男の子が生まれ落ちたのだった。

3度目のお産は、産婆であるリディーヌが来るのが、間に合わないのだった。


ベルティアは、ゲオンを仕事へ送り出した後、3人の子供を育てながら、家事を行い、ゲオンに尽くしていた。
 
3人目の子供が生まれてから、ゲオンとの暖かで優しく愛に包まれた平和な日常が続いていた。


……この幸せが、永遠に続いてほしい…!!ベルティアは、「永遠」を渇望した。
 
だが、いくら渇望しようが、この幸せにも必ず、終わりが来る。それが、人の世の儚さと苦しさと、そして悲しみだ。

世界はまるで、走馬灯のように移りゆく。それが、人の世の脆さだ。

人であるからこそ、小説や演劇のように「ラスト」が、必ず訪れる。自分の居た・・場所と違い、娑婆に「永遠」は存在しない。


時々、闇のような暗い考えが頭をもたげるのだった。

誰かが亡くなり、葬儀が執り行われるたび、ベルティアは、人の世の儚さ、脆さ、薄さを思い知らされた。

だが、暗い事ばかり考えても仕方がない。

そんな時、ベルティアは、わざと明るいことを考えるように努めながら、平和で楽しい日々を過ごしていたのだった。
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