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全ては詐欺である

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『全ては詐欺である』

 表情は見えない。

 その人物の口元だけが笑みの形を作り、静かに、とでも言うようにその口元に立てられた一本の人差し指が当てられる。



 世界最強と呼ばれる存在がいる。

 曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。
 曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。
 曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者
 曰く、最強にして無敗、ランクNo.1も超えた最強ランクNo.0

 だが、その正体は一切不明。
 男か女かオカマか、年齢も不詳なら、生まれも公爵家の捨て子だとか転生者とか生まれながらの救世主だとか、数え上げたらキリがない。
 それら全てを合わせて、誰も見たことがないという。

 それが、世界最強ランクNo.0




 さて、これから騙るのは1人のチンケな詐欺師の物語。

 詐欺師は真実を語らない。

 それは詐欺にかけられた者、解明する者、それぞれの真実でもって答えを出すものなのだから。

 騙されているのは、彼ら彼女らか、それとも彼か。
 それとも……。


 それはそう、例えばこんな話。
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