ヒトの世界にて

ぽぽたむ

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3話 【旅—フナデ—】

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「……エネルギーの充電、と言うことは今日はこれ以上何も出来ぬのか?」
「そうだな、今日はこれ以上のことは出来ないだろう……ナノマシンの死体はまだ残っているが動作に問題はない、傾斜復元も終わったが後は動くためのエネルギーが足りない。俺でも流石にこれ以上は何も出来ないな」

 アルゴナウタイを起動し終えてアレスは一息、他の三人は何処か唖然としたよ様子だ。
 それはそうだろう、500年前の遺産が今でもしっかりと動いている事に驚きを隠せない。
 この手の知識がある程度あるディータでもここまでの遺産を見るのは初めてでそれが動くのなど考えたことも無い。

「お、おいアレス。この船ってどこまで動けるんだ?」
「そうだな、ナノマシンの掃除には時間はかかるが動かすことはエネルギーがあれば問題ないだろう。武装は使えないが動かす程度の事なら問題ない」
「わぁ……と言うことはエネルギーの充電が終わればこの船が動くんですね……!」

 三人とも何処か感動したようにアレスの方を見ている。
 自分達の想像を遥かに超えた遺産の力に心が躍っているのが解る。
 しかしそれ故に、アレスは言わなくてはならない事があった。

「動くのはいいが、この船は便宜上どうあっても戦艦だ……今武装は使えないが危険な物であるのは変わりない」
「ふ~む、成る程の……しかし要は使い方じゃろ? 何処かに戦いを挑む為に使うのではない、そうじゃの……家として使えるかも知れぬの!」
「あぁ~そういうやそろそろあの家の契約更新があって引き払うかまた住むかを決めないと行けなかったな」
「……あの家は三人の家では無かったのか?」
「元々はディータさんの家に住んで居たんですけど……色々あって借家に住むことになったんです」
「そういえば、この船は家としてはどうなんじゃ? その辺りに雑魚寝することになるのかの?」
「いや、そうだな……15人程なら生活に問題は無いだろう。トイレも浴槽もキッチンも完備されている」
「え、えらく生活感のある戦艦だな」
「15人って結構大きな住居になりますね」

 アルゴナウタイの機能を回復した時に調べたのでこの船には小さな個室も8つあるのでかなり余裕がある。
 その上で食堂やらお風呂場やらがあるのでここまで来ると戦艦と呼んでいいのかも解らない。
 ここまでの移住性があるにも関わらずある程度の攻撃にも耐えられる構造、バリアー使用時の断熱性もしっかりしているというアレスの時代にもびっくりな性能である。

「俺の生きていた時代でもここまでの戦艦は珍しい……とは言えこの戦艦がまともに動けるようになるには今日一日中充電が必要だろう……今日出来るのはここまでだな」
「それは残念じゃの……エネルギーはどうやって充電するんじゃ?」
「この戦艦に使われているのは俺と同じクロノスだ、日の光に当てて充電し外に出れば風でも充電出来るようになる、外に出るまでの充電は明日まで我慢だな」
「へぇ……なんでもエネルギーになるってのはやっぱり便利だな」
「そうですね、あ……それならそろそろお昼ご飯にしませんか? キッチンは船の中の物を使えるでしょうか?」
「恐らく無理だな、掃除も必要だろうしエネルギーが無い……洞窟の外に出よう」

 流石に500年と言う月日が流れてはキッチン等も機能を停止しているだろう。
 クロノスを本格的に起動しナノマシンを本格的に稼働させればキッチンや浴槽も再び使えるようになるだろう。
 食事に関しては洞窟の外には前の遺跡調査でディータが作った石の竈門があったのでそれを使う方が早いだろう。
 なので四人は一度外に出ることにした。



「ん?」
「どうかしたのか? アレス」

 アルゴナウタイから出て外を目指して歩こうとした時だった。
 アレスが何かを見つけたのか辺りを見渡す。
 そんなアレスの姿を不思議そうにディータが見つめる。

「……熱源だ。大きさからして三人の人がいる」
「あ? なんだ気配なんて感じねぇぞ?」

 気配を感じる様な事も出来るトリトが首を傾げるが周囲の熱源を探知できるアレスとは索敵範囲の種類と幅が違う。

「三人……? 三人と言うと……」
「そこに隠れてないで出てこい、警告を無視するなら発砲する」
「は、発砲ですか!?」

 三人という数に心当たりがあるのかディータが考えるのと同時にアレスが衛星から武器を転送する。
 大型のリボルバー式の拳銃、拳銃としては少々大型のコードW03G(グラス)&B(バウンス)L500、実弾を発射するアレスに取ってはとても扱いやすい武器だ。

「相手が何を考えているか解らんからな、ゆっくりと手を上げて出てこい」
「銃って500年前もそんなデザインなんだな……って向こうの角に居んのか? その距離で当たるのか?」
「十分だ」

 アレスが拳銃を向けている角は60メートルは離れている。
 かなり遠いがアレスの精度と銃の精度的には当てられる範囲だ。

「い、今出る! 出るから撃たないでくれ……!」
「おん? なんじゃアドニスか」
「うげ、アドニスかよ」
「あ、アドニスさん」

 手を上げながら出てきたのはサングラスをかけた緑髪のエンスだった。
 その他にも小太りで背の小さな男のエルフと細身で背の高い男でリザードマンの魔族を連れておりその二人も手を上げて出てくる。

「知り合いか?」
「うむ、銃を下ろしても良いぞ……たく、お主こんな辺境にまで追っかけに来たのか?」
「あ、当たり前じゃないか! ディータ、君に会えなくて僕がどんなに辛い思いをしたか分かってるかい!?」
「「そーだそーだ!」」

 後ろの二人の男は護衛なのだろう、アドニスと共に講義を行っている。

「事情が分からん」
「ディータの追っかけだよ、こんなババアのどこがいいんだか」
「ババア言うでないわ、前に言ったじゃろ? 今ワシは恋よりも冒険が好きなんじゃよ、求婚は断ると言ったじゃろ金持ちの坊ちゃん」
「ぐ、ぐぬぬ……! 僕はもう坊ちゃんなんて歳じゃないぞ!?」
「そーだそーだ! アドニス様は今年で17歳だぞ!」
「父上のキニュラス様の企業も継いで成功してる若社長なんだぞ!」
「あ、社長就任決まったんですね、おめでとうございます」
「その若さで社長就任か……大きな出世だな」
「あははどーもどーも……違う! 今度こそ、僕はディータさんをお嫁に貰いに来たんだ!!」

 ドーン! と言う効果音が鳴りそうな位ふんぞり返って腕を組んでいる。
 そんな姿にアレスはポカーンとしローデ以外の二人は呆れている。

「……話が見えんのだが」
「えっと、前にディータさんの家に住んでいた頃にディータさんに一目惚れしたらしくて……それからずっとアプローチしてきてるんです」
「ぶっちゃけ良く折れねぇって思うぜ……今回で何回目の告白だったっけか?」
「確か37回目じゃな、全くこりん奴じゃ……ほれ、帰るぞアレス」
「む、待て待て待て待て! 前から居る護衛に関してはどうでもいいが」
「誰がどうでもいいだテメェ」
「「ひえ」」
「……お、おほん。その男は誰だ!? も、もしかして彼氏か!? た、確かに君好みのイケメンだが僕だって!」
「阿呆、此奴はそういう感じではない。全く……行くぞ」

 アレスの手を引いて歩き出すディータにアドニスが物申す。
 一見すると今の彼氏と逃げようとしている様にも見えなくはないだろう。
 どうでもいい呼ばわりされたトリトがアドニスに殺気を込めて睨みつけたりするとアドニスのお供の二人が震える。
 そんな状況を無視しつつもディータはアレスと共に洞窟の外に出ようとする。

「お、おい! 僕を無視するな!」
「無視はしとらんじゃろ……今日はここでの用は終わっておるからの、明日この船が動くのが楽しみなんじゃよ」
「さ、さっき傾きを直してるのを見たけどちょっとしか動かなかったじゃないか!?」
「えっと、それは船の充電が終わってなくて……明日になれば動かせるんですよ」
「な、なにぃ~~~~!?」
「……動く所を見ていたのか? 今朝方から追跡されていたと言うことか」

 アレスの熱源探知に引っかからない様にどうやって、と思ったがアドニスのお供にエルフが居た。
 四人が通った後にアレスの熱源範囲外で草木や動物から情報を聞けば追跡は可能だろう。

「全くその執念を別の方へ持っていけば良いのにのぉ、仕方ない。ローデ、騒がしくなるから外でのご飯は抜きじゃな」
「はぁい、えっとお昼少し遅くなってしまいますけど大丈夫ですか?」
「まぁオレはいいぜ、アドニスがいちゃあゆっくり飯も食えねぇからな」
「オレも構わない、十分エネルギーは残っている」
「く、ぐぅ……!」
「ぼ、坊ちゃんどうします?」
「フラれるのは何時ものことですが、今回はなんか扱いもぞんざいっすね」

 少々扱いが悪いのはディータが明日を楽しみにして気が早っているからである。
 このアルゴナウタイが動く所を早く見たい、そう思うと今日の夜眠れるか少し不安になっている位だ。
 ご飯を食べながらもアレスにアルゴナウタイの事を聞きたくて堪らないのだ。
 そんな姿を、アドニスはどう見ただろうか。
 楽しそうにアレスの腕引きながら歩いていくディータを見て。
 本当はアレスの知識知っている事を、アルゴナウタイについてのあれこれを教えてもらいたい、と言うだけなのだが。
 側から見れば恋人と楽しそうに歩いている様にしか見えなかった。

「アイネ、イアス、二人とも土の魔法使いを集めろ……!」
「え? 坊ちゃん?」
「何をするんですかい?」

 エルフのアイネが首を傾げリザードマンのイアスが少し嫌な予感がしたのか顔を顰める。
 感じる悔しさの様な感情に奥歯を思いっきり噛み締めてギラついた目で鼻息を荒くするのだった。



「むっふっふっふ~……」
「どうかしたのか?」

 借家に帰ってお昼ご飯を食べ終えたディータがソファーでゆったりしながら怪しい笑いを浮かべている。
 アレスはそんなディータに首を傾げるが。

「明日船を動かせるのが楽しみなだけだよ、ほっとけほっとけ」
「うるさいぞトリト! 良いではないか、ワシは今までずっと冒険を楽しんで来たがこんなに大きな発見をしたのは初めて何じゃぞ!? 30年もこの身一つで色々な国を回って来たがどこに行っても朽ちた部品の様な物を見つけるのが精一杯じゃった」
「朽ちた部品……? 何だそれは」
「む、興味があるのかの? なら少し待っておれ」

 そういうとソファーから降りて自分の部屋へ歩いてく。

「……というか30年も冒険をしているのか」
「20そこらで冒険者を始めたって言ってたぜ? 魔族としちゃあそりゃ成人だけどサキュバス族としては珍しいな」
「二十歳にもなれば結婚や子供を産む方が多いですね」
「そうなのか……そういえば、今の人は平均寿命とかどうなっているんだ?」
「平均寿命? あぁ~オレら海人とかエンスは170まで生きれるか?」
「そうですね、エルフや獣人の方は190歳まで生きられますし……魔族の方は種族よって違いますけど200年は生きるでしょうか?」
「なん、だと……」

 自分の知識と食い違った平均年齢にアレスが言葉を失う。
 アレスの開発された時代の人間の平均年齢は約120年だった。
 平均年齢が年々上がっている事はアレスの時代にも議題になることがあったがそれにしても平均年齢が上がりすぎている気がする。

「俺の時代と比べて人の平均寿命は長くなっているな……」
「そうなのか?」
「あぁ、驚いた、俺の時代とは食べ物が変わって無いのに平均寿命がここまで伸びてるとは」
「というか昔と同じ料理が今も出されている事が私は驚きです……」
「そういえばそうだな……俺の時代から料理の技術はそのまま引き継がれていったんだろう」
「お~い、持って来たぞ~」

 じゃらじゃらと音の鳴る麻袋を持ってディータが階段を降りてくる。

「ほれ、これじゃ、あまり強く握るでないぞ? 経年劣化で脆くなっておるから部品が崩れる」
「分かった……っ!? こ、これは……!」

 麻袋の中身を見たアレスが驚きの表情を見せる。
 機械の彼にしては珍しい、と思える様な表情だがディータの持っていた部品はそれ程の物だった。

「ど、どうしたんじゃ……?」
「この部品は俺の時代の武器の一部だ……どれも風化していて使うことも修理する事も出来ないが……」
「ほう……! お主の時代の武器か……! しかし直せないと言うのは寂しいのぉ」
「こいつの時代の武器だと危険じゃねぇのか?」
「というか武器そのものが危険ですよ……」
「……まぁその通りだな、これと似た武器を持ってはいるが強力な分危険だ、こういった部品は各地で見つかってるのか?」
「そうじゃの、各地の遺跡で見つかっておる。風化具合的に使うことは出来ないし用途も解らなかったからあまり価値はないんじゃがの」
「その方が良いだろうな、価値がある武器は争いの種になる」

 過去の遺産で争いが起こるのはアレスも気分が悪い。

「武器としての価値があれば怪獣退治も楽になるんだがなぁ」
「そうですね、怪獣は色々な所で脅威になっていますから」
「……怪獣?」
「む、お主の時代には怪獣はおらんかったのか?」
「いない、怪獣とは何だ?」
「そうじゃの……魔族とも違う異形で人に対して明確な敵意を持って人に害をなすもの、じゃな」
「だな、絵もないから何とも言えねぇけどな、人の共通言語を話さないのも特徴だな」
「この辺りはまだ被害は少ない方ですけど他の国では大きな被害もあるみたいですし人の集まる場所を率先して狙っているとの噂もあります……」
「成る程、それ故に戦争が無いのに軍が必要だったりしているのか」

 理性なく、侵略を目的にせず破壊のみを行う。
 それは確かに意味が分からない。
 縄張りを主張せず侵攻のみを行うのでは自然の動物とは思えない。
 怪獣と呼ばれるモノを見ていないが目下人の脅威なのだろう。

「なるほどなぁ、だから腕っ節のある人を集めてるんだな国が」
「でも、ちょっと怖い雰囲気ですよね……」
「腕が立てば良いのじゃからな、素行は採用基準では無いのじゃろう。実際前科持ちが軍にスカウトされる事もあるらしいからの」

 人間性より腕を、そう考えねばならない程の脅威が怪獣にはあるのだろう。

「……怪獣というのは、この付近にもいるのか?」
「この国は比較的安全じゃよ、遺跡探索という半分娯楽の様な事が出来るのも怪獣の脅威が少ないからじゃ」
「そうですね、ですけど東の方は怪獣の脅威や気候も厳しい環境です……」
「国の面積としては一番大きいんだけどなぁ、1年の8割は冬の様な気候で雪の量も多いんだとよ」
「この辺りは四季もあって穏やかじゃからのぉ……と、話し込むのは良いのじゃがそろそろワシはレポートを書き留めにいってくるぞ?」
「レポート……?」
「アストラノートの調査記録です、ディータさんは資料をまとめる事もしててその資料をギルドに持って行ってお金をもらうんです」
「まぁディータの日記見てぇなもんだけどなぁ……」
「別に良いじゃろ、最近は書くことも多くてワシは満足しておるのじゃよ」

 鼻歌を歌いながらディータは自分の部屋へ帰っていく。

「お~し、ならオレはちょいと出かけてくるわ」
「あら、それなら帰りにお夕飯の買い出しをお願いして良いですか?」
「あいよ~」
「ふむ、では俺も少し部屋でやることが出来た、夕飯の支度は手伝えるだろうから後で呼んでくれ」
「分かりました」



(衛星システムアイテール起動……アクセス開始)

 自室に戻ったアレスはベッドに座って目を閉じていた。
 自分の通信システムを使って武器転送用のシステムを起動したのである。

《システムアイテール起動完了、ご用件は何でしょうか?》
(衛星システムを使って地上の様子をどこまで拡大できる?)
《回答、拡大レンズの破損を確認、自己修復不可能です。外部ツールでの入れ替えを推奨しまう》
(……ダメか)

 昨日の夜と同じ回答だった。
 アレスと繋がっている衛星システムは490年程前に何らかの要因で拡大レンズが破損していた。
 武器の転送システムに影響はないのだがこの星の様子を詳しく見る事が出来なくなっていた。
 490年というとアレスの時代の技術がまだ残っていてもおかしくはない。
 それなのに修復がされてない、と言うことは何らかの要因があって宇宙に出ることがなくなったのだろう。
 結果拡大レンズは無くなったが写真を撮ることは出来るという器用な壊れ方をしているのでこの星にある全ての大陸の大まかな形がわかる程度の情報しか仕入れることが出来なかった。

(俺が眠っている間にこの星に何が起こっていたんだ……? 戦争の結果、怪獣、魔法、魔族……分からない事が多すぎる)

 遺伝子改造の結果とはいえまるで御伽噺の様に様々な種族が暮らしているこの世界を不思議に思っていた。
 それ故にアルゴナウタイを起動すれば他の衛星システムにアクセス出来るかも、と思ったのだが。

(恐らく、無理だろうな……)

 この星の周りにある衛星システムは一つではない。
 アレスの時代にはお互いに妨害電波を出しながらも沢山の衛星システムが稼働していた。
 衛星における情報は戦争時代において強力な武器となっており衛星システムを妨害するシステム、またそのシステムを妨害するシステムを、と泥沼の応酬を繰り返していた。
 そんな衛星システム達が全て破棄、または破壊されている。
 では、アレスの武器転送システムはどうなのだろうか。

(俺の武器転送システムは月にあったから破壊を免れた様だな……しかしそうなると今度は月の衛星システムに直接行って拡大レンズを直さなければ……嫌そんな範囲活動が可能なら既に大陸の情報は全て手に入れている頃だろうな)

 この時代の科学技術は中世レベルにまで下がっているとアレスは推定している。
 そんな時代で宇宙用ロケットを作ったのならば途方もない労力がかかるだろう。
 第一今の技術で大気圏突入に耐えうる耐熱性を得られるのかが問題である。

(……俺のアクセス出来る衛星システムは全て無くなっている、ならば俺の目で、足でこの世界を見て周らなければならないだろう)

 アルゴナウタイという足はその為にも必要だった。
 ロボットであるアレスとはいえその身一つで世界各地を周れるとは思っていない。
 足となり家にもなりえるアルゴナウタイはまさに渡りに船だった。
 問題は。

(……ディータ達は、どうするのだろうな)

 ふと、そんな事を考えてしまった。
 三人と知り合ってまだ二日も経っていないのに彼女達の事を頭の隅で考えている。
 人は食事をするし効率が悪い事もするから一緒に旅をするのは適切ではない。
 そもそもあの三人も今の生活があるのだから、今の家が借家とはいえ慣れた場所から人は動きにくいともデータは言っている。
 遺跡探索の手伝いをするとはいったが世界の状況を確認したいとも思っている。
 そのせめぎ合いに少し悩んでいる、と言うべきだろう。
 ロボットである彼が悩む、というのも不思議な話だがそれこそがコスモAIの特徴なのだろう。
 より人間に近い感情を、思考を、旧世代のAIとはまた違った新世代のAIの力だ。

(アルゴナウタイ自体俺以外の人は動かせないだろうから管理は自然に俺のものになるだろう……後は三人次第、か)

 この時代の人ともっと情報を交換したいがそれは彼女達次第だ。
 そう考えて明日に備える為アレスは静かに過ごそうと機能を最低限動かして休止モードに移行する。

(そういえば後でローデが夕飯の手伝いに呼ぶだろうな……俺は味覚を感じないが団欒しながらの食事も良いものだな……博士、折角なら俺はこの世界を見てみたいと思っている……だから——)



「よ~しそれでは今日こそあの船を動かすかのぉ!」
「お前少しは荷物持つの手伝えっての」

 次の日になって快晴の朝日を浴びながら昨日の遺跡に入った四人がアルゴナウタイのドックを目指す。
 ウキウキのディータに対して大きなリュックを背負ったトリトが悪態をつく。

「……あまり聞かない方が良いと思っていたが、どうしたんだこの荷物の量は」
「ふふ、内緒ですよ」

 楽しそうに微笑むローデに首を傾げる。
 何か企んでいる、というよりは驚かそうと悪戯を考えている顔だった。
 実害がなさそうならば放置しておこう、と勘繰ることもしないでおいた。

「……よし、昨日と同じように俺について来てくれ昨日と違って足元は見やすくなっているが余計な物は触らないでくれよ?」
「うむ、ワシらはこの船の事をよく知らぬからの」
「昨日の動く箱……確かエレベーターだったか? スイッチが多いしなぁ……」
「ダメですよ兄さん変な所触っちゃ……」

 昨日と同じ様にエレベーターに乗ってアルゴナウタイの内部に入る。
 今思うと500年前のエレベーターが正常に稼働しているのはアレスから見ても驚きの技術だ。
 
「少し待っててくれ、ライトを点ける」

 エレベーターを降りたアレスがスイッチを押すと昨日は足元が少し見えた程度の通路に光が灯り真昼の様に明るくなる。

「何じゃ眩しい……!」
「お、おぉ何だこれ……細長いランタンか……?」
「炎、とは少し違う光ですね……昨日の時も不思議でしたけど……これって何なんですか?」
「これはアポロンライトと言われる帯電発光金属だ、電気のエネルギーを貯めておいて光らせる事が出来る装置だな」
「ほほぉ……昨日使えなかったのはそれに回す電気のエネルギーが足らなかった、という事かの?」
「そうだ、これを回す程のエネルギーがなかった」

 昨日の状況ではアルゴナウタイの傾斜を直すのでエネルギーが精一杯だった。
 太陽光に当てる効率を考えるとどうしても傾斜を直しておきたかった故に他に使えるエネルギーを最大限に節約した結果だったのだ。

「ふむ、それで一日経ってどれ程のエネルギーが溜まったのかの?」
「推定だが……約20%だろうか……クロノスはエネルギー効率はそこそこ良いがそれは外にでてこそ意味がある、太陽光だけでなく風や雨の水分もエネルギー変換出来る様になるからな」
「20って……それで動くのか?」
「スペック的に20%あれば6時間低速で移動できる筈だ、それに外に出ればエネルギーを充電しながら動くことが出来る」
「あ、そうですね、風も水もエネルギーに出来るんですから動いながらも充電できるんですね」

 万能変換器ともいわれるクロノスは500年前の人が開発した当時最先端のエネルギー技術である。
 どんなエネルギーをも溜める事が出来てクロノスのエネルギーとして放出する事が出来る。
 それまでの科学では考えられないテクノロジーだった。

「昨日電力が足らなくてハッチを開く事が出来なかったが……今日はそれもやって外に出られるようにしよう。よし、昨日と同じ席に座ってくれ」
「おぉ、遂にこの船が動くんじゃな……! 楽しみじゃ楽しみじゃ~」
「あぁおいはしゃぐなよ……」
「ふふ、ディータさん楽しそうですね」

 船橋の扉を開くとディータが早々と中に入る。
 余程楽しみなのか鼻歌を歌いながら見た目通りの少女の様に昨日座った椅子と同じ椅子に座る。
 そんな彼女に溜息を吐きながらトリトが、微笑みながらローデも昨日と同じ場所に座る。

「よし、それじゃあ起動するぞ揺れるかも知れないから座っててくれ……万能変換器クロノス起動、前方ハッチ開閉準備」

 前日と同じ様に黒い板に様々な文字が合わられる。
 相変わらずその文字を読むことは出来ないが今はそれを置いておく。
 気分が高揚し、何処かソワソワとした様子でディータが今か今かとアルゴナウタイが動くのを見守る。

「エネルギー充電率23%、機能停止ナノマシン排出、重力操作装置起動……アルゴナウタイ起動!」

 その言葉と共に唸る様なタービンの回る音が静かに響く。
 500年前の部品だというのにこの滑らかな駆動音、劣化の無い装甲、内部構造。
 アレスの時代ですらこの完成度を誇る機体は中々見ることが出来なかったレベルだ。
 船体表面のサビの様になっていたナノマシンの死体達は船体から噴き出た風に吹き飛ばされ汚れが目立つが白銀色の装甲が露わになっていく。

(この時代においてもここまで劣化を抑えられる戦艦を作れるとはな、どんな技術を持っていたのか気になる所だ……)

 ロボットである自分が当時の価値観で戦艦を作ればきっと動くだけの箱を作っていただろう。
 巨大な家とも呼べるこのアルゴナウタイを作る思考を思いつく発想すら無かった。

「よし、ハッチ開閉……これで外に出られる様になるな」
「おぉ素晴らしい……! うむ、うむうむ……! やはりこのアルゴナウタイに住むのは正解じゃったな!」
「……何を言っている?」

 目をキラキラ輝かせながらアレスにとって完全に予想外の発言にAIの思考が停止する。

「何をと何も、ワシらはお主が許すならこのアルゴナウタイで一緒に冒険をしようと思っているのじゃ」
「俺が、許すなら……?」
「そりゃそうだろ、この船はお前じゃねぇと動かせねぇし遺跡の物は見つけた人の物って決まりがあるからな、オレらじゃこの船は見つけられなかった以上この船はお前の物だろうよ」
「ふふ、その為に昨日借家の契約更新はしない、と兄さんが行ってきてくれたんです」
「……つまり、その大荷物は」
「うむ、ワシらの生活用品じゃな生活スペースもある事じゃし住んでしまおうと思っておる!」
「……その計画、俺が拒否したら、どうなっていたんだ?」
「「「……あぁ!?」」」

 三人とも、拒否される、という事態を想定してなかったのだろうか。
 今更になってしまった、と言いたげな表情をしている。
 が、その中でディータだけがす、といつも通りの表情に戻った。

「と、言いたい所じゃがそう言われる可能性も考えてはおった、この船は未知の兵器である以上危険と言われ破棄される可能性もの、しかしそしたらそうしたらでワシらはまた別の場所へ旅をする予定じゃった」
「そろそろこの一帯の遺跡も調べ終えた頃合いだかんなぁ」
「私達はそうやって国の色んな所へ旅をしてきたんですよ?」
「……そうか、なら俺も一緒に旅をしたい」
「勿論歓迎じゃ、むしろワシらがこの船に世話になるんじゃからの……ワシらを船員に加えて欲しいくらいじゃ、船長殿?」
「……俺が、船長?」
「まぁオレたちはこの黒い板に出てくる文字もわかんねぇしな……」
「今度教えてくれますか? アレスさん」
「いや、それなら現代の文字に変換しておく……よし、前方ハッチ開閉、外に出るぞ?」
「おー!」

 楽しそうなディータの掛け声と共に土や草木が上に重なってしまったハッチが大地を引き裂くように開いていく。
 外の明かりが砂埃に紛れてドックの中に入り混んでくる。
 白銀の装甲が太陽に光に照らされて輝く。

「よし……前進開始——な、何だ!?」

 アルゴナウタイがゆっくりと前進を始めよう船体の半分がハッチから出た位の事だった。
 アルゴナウタイの前に大きな岩の壁が突然道を塞ぐように現れる。
 ブレーキをかける事で衝突を防ぐ事は出来たのだがまるで岩が木が生えてくるのを早送りで見ているかの様に地面から生えてきた。

「これは……土の魔法じゃな」
「あぁ、たく何だ急に……」
「……魔法か」
「あ! み、皆さんこれを見てください!」

 ローデが座っている機関長の椅子の近くにある索敵を行うレーダーや外の様子を見れる測的長席にある戦艦の外を見れるカメラからの映像に声をあげる。
 そこにはアドニスとそのお供、そして数人の魔法使いの様なエルフやエンスが岩壁の前に立っておりアドニスが船橋にも聞こえてくる大きさで笑い声を上げていた。



「アドニス! お主何のつもりじゃ!」

 アルゴナウタイを止めて四人が外に出る。
 そこには少し疲れた表情をした魔法使い達と得意気に笑っているアドニスとお供達がいる。

「はっはっはっは!! こうすればその船も外に出られないだろ!? このまま岩壁で押し潰してやる!!」
「さっすが坊ちゃん! これであの船もスクラップですよ!」
「本当に良いんかなぁこれで……」

 アドニスとエルフのアイネが盛り上がる中少し冷めた目でイアスが呆れている。
 他の魔法使い達も少し引き気味だ。

「アドニスらしくねぇ随分な作戦じゃねぇか?」
「そうですよ、こんな乱暴な事しちゃ……」
「うるさい! 僕がこんなにアタックしてるのにそれでもこんなガラクタに目を向けてばっかりで! こんな所で砂やサビまみれになるよりも君には綺麗なドレスを着ている方がいいんだ! 冒険なんてくだらない事なんてしないで僕と一緒に来てくれよ! この船が気になるなら僕がこの岩壁で押し潰すから!」

 血走った目で興奮気味にひたすら声を上げる。
 狂っている、というよりかは怒っている、という表現が正しいだろう。
 愛しの人にフラれ続けて堪忍袋の緒が切れたというべきだ。

「嫌、そもそもあんな岩壁でナノマイオイ装甲はびくとも——」
「ほう……冒険がくだらぬとな……?」
「あ、やべ」

 アルゴナウタイの事を知っているアレスからすれば岩壁でアルゴナウタイが壊れる無いことは知っている。
 そんな事よりも、ディータがドスの効いた声でボソ、っと呟く事にトリトが固まる。

「どうかしたか?」
「お、おいディータ落ち着け? な? こんな狭い場所でやるなよ!?」
「そ、そうですよ!ね?ね?」

 ローデまでもがディータを宥める様に慌てているのが解る。
 そんな状況にアレスもアドニス達も首を傾げることしかできない。

「お、おい、何だお前ら!?坊ちゃんを無視するな!」
「……坊ちゃん、なんか雰囲気やばないですかい?」
「そ、そんな事はない……! さぁディータ、今こそ僕のお嫁さんになると——」
「くうぅぅぅ……お、おおおおおおおおおお!!!」

 翼を大きく開き、咆哮と共に全身に金色の炎の様な物を纏い始める。
 魔力を大きく高めているのだが。

(ディータの熱源が大きく上昇してる……いや待てこれは魔法にしても凄まじい温度だ、プラズマ兵器にも負けない温度を何故生身で纏える!?)
「うわっやべ離れろローデ!」
「は、はいぃぃぃ!」

 トリトとローデがわき目も振らず全力でアルゴナウタイの影に駆け出す。

「も、もしかして岩壁を壊す気かいディータ!? この岩壁は土の魔法使い数人で組み上げたんだよ!? 君一人じゃどうしようもないぞ!?」
(熱源なおも上昇……熱源としてしか解らないがこれは相当なパワーじゃないのか?)
「ぼ、坊ちゃん、こりゃ逃げた方がいいですって!?」
「お、おいおい!この岩壁が破られる筈がないだろうよ!?」
「ワシの冒険の邪魔をするんじゃあないわ馬鹿者が!! ゼヤァ!!」

 アイネとイアスが言い合いをしてる中、溜め込んだエネルギーを放出する様にディータが大きくジャンプする。
 一瞬で昨日開けた天井を突き抜けて空へ羽ばたく。

「ま、まるでロケットだな……魔法というのはここまでの事を……」
「お、おいアレスそこから離れろ!!」
「あ、危ないですよー!?」
「え? 金色の炎にあの動き……う、うわあああああああ!? 岩壁から離れろーーーー!!」

 ディータが一度空中で旋回し空中で止まる。
 朝方だというのにまるで夜に輝く一番星の様に太陽にも負けない輝くを放つ。
 そんな姿を見たアドニス達が顔を真っ青にして慌てて逃げ出すが彼女の事を知っているのならそれはもう遅い、というのも理解しているだろう。
 唯一その全てを理解していなかったアレスだけが呆然と立ち尽くす中。

「おい、一体何が——」
「うおおおおおりゃあああああああああ!!!」

 事情を説明して貰おうと口を開いた瞬間だった。
 まるで隕石の様な速度で空を飛んだディータが岩壁に向かって飛び蹴りをするかの様に足を伸ばして落下、いやここまでの速度だと最早光とも言えるような、金色の炎を纏っている事もあって閃光とも言える速度で岩壁に突撃する。
 その様子は本来人の目には光にしか見えないだろうがアレスにはディータが岩壁を蹴る瞬間がはっきりと見えた。

(飛び蹴りを落下の衝撃と炎をジェットの様に使って強化している、のか? いや、それだけならただ激突して足を砕くか最悪命を落とすだけだしあんなに炎の温度を高める必要はな——)

 そこまで思考した所で、岩壁が大爆発を起こして砕け散る。
 アレスが最後に見たのは岩壁に足をぶつけた瞬間急激に熱が下がったディータだった。
 その熱が全岩壁に注ぎ込まれた瞬間、岩壁が大爆発を起こした、というのを理解する頃には爆風と岩片がアレスに襲いかかっていた。
 計算した所岩片はアレスに当たることは無かったので動く事も無かったが爆風はアレスの髪の毛を靡かせる。

「……魔法とは、ここまでの物だったか」

 爆風が収まってアレスが最初に見たのは粉々に砕かれた岩壁で満足気にこちらに歩いてくるディータだった。
 爆発に巻き込まれたアドニス達はまるでボロ雑巾の様にその辺に転がっている。
 スキャンをした所打身程度の怪我はしているが生きている。

(あの爆発で打身で済んだのか……随分と運が良かったな)
「ふぅ、スッキリしたのじゃ……! なぁんじゃお主、綺麗な黒髪がボサボサじゃぞ?」
「これは髪の毛ではないのだが……ディータ、今のは何だ? まるでミサイルの様だった」
「みさいる? 今のはワシの必殺技じゃ! ワシの得意とする炎の魔力を限界まで高めて敵にぶつけるという単純な物じゃが威力はこの通りじゃよ。巷では鮮黄(せんおう)の流星など言われておるくらいじゃぞ」
「鮮黄の流星……名前の通りだな。所で、今日の服……そんなに黒かったか?」

 借家を出た時は丈の短い青黒いワンピースを着ていた気がする。
 それが今は真っ黒になって、尚且つ今にもちぎれそうな位ボロボロになっている様な気がする。

「ん? 何を言ってあいやしまった耐熱服にするのを忘れ——」
「あ」

 外からの風がボロボロになった、否自らの炎で炭化したディータの衣類を攫うように崩していく。
 服が、という事は勿論下着も炭化しており砂が舞う様に風に流されそのままディータが産まれたままの姿をアレスに晒す事になる。

「………………————————っっっ!?」
「ふむ、う~む……」

 サキュバスとはいえ流石に恥ずかしいのか顔を真っ赤にして蹲るディータを見てしまった以上何かを言った方がいいのかと数秒間思考する。
 フォローするべきか、もういっそ見てみなかったフリをするべきか、その選択をほんの数秒で決められたのはきっと彼が超高性能AIを持っているからに他なら無かったりあったりするのだろう。

「少し、健康体からは痩せすぎじゃないか? 胸部とか、平均するともう少し大きくても——」
「じゃかましいわあああああああああ!!!」
「ディータさん! 服ですー!」

 考えうるに最低最悪の選択をした超高性能AIはディータの魂からの咆哮と共に恥も見聞も捨て去ったドロップキックを顔面に放つ。
 遠くから離れていたローデがディータの服を持って走ってくる中爆風にすら微動だにしなかったアレスがとうとう背中から倒れ込んだ。



「う、う~ん……」
「あぁ坊ちゃん、ようやく起きましたかい?」

 爆発の余波でそこそこの大きさの岩片が頭に当たって気絶していたアドニスが目を覚ます。
 その隣にはアイネとイアスもいてアドニスと同じように爆発の余波でボロボロになっている。

「え~と、何がどうなった? あの爆発からどのくらいだった?」
「あの爆発から5分位っすよ」
「あ、あの船が動き出しましたよ」

 爆発から5分後、服を着たディータ達は再びアルゴナウタイに乗り込んでいた。
 アルゴナウタイが静かな駆動音を出しながら動き始めるとアドニスが大きく溜息を吐いた。

「こんなにフラれたのって初めてだ……本当に、好きなんだけどなぁ」
「そりゃ今まではお父様の紹介された人とかお金目的ですり寄ってきた女ばっかりだったっすからね」
「お、おい……イアス」
「いいんだ……うん、何となく分かっていたよ」

 普段砂の多い所に座りたがらないアドニスが地面に直接座って項垂れている。
 その様子に部下としては少し同情するのだがアドニスがやりすぎているのも理解出来ている。
 集めた土の魔法使い達も相手がディータと知っては戦うのはごめんだといつの間にか逃げ帰ってしまった。

「あ~あ……僕はこれからどうすれば——」
「おぉ~い! アドニスは起きたかの~!?」
「え?」

 船橋の窓を開けてディータが顔を出す。
 アルゴナウタイの動きはとても静かでディータの声がよく聞こえるが距離があるので少し声を張っている。

「お主はな~! もう少し相手の事を思いやって考えて見るのじゃ~! 折角顔はいいんじゃからそうすればワシみたいな冒険馬鹿以外はしっかり堕とせると思うぞ~!」
「え、あ……う、うん……」
「くく、それじゃあまた機会があれば会おうかの~! ではな~!」

 その言葉と共に手を振ってからディータが窓を閉じる。
 唖然としながらその言葉の意味を噛み締めて力が抜けた様に笑う。

「はは、そうだ……そんな風に僕を僕として見てくれるから惚れたんだよ僕は……初恋、だよねこういうのって」
「まぁ初恋は叶いにくい物って古来から決まってますからね」
「そうっすねぇ……とりあえず相手の事を思いやって、っての頑張って見ますかい?」
「そうだね……どうせなら変わってやるさ、よーし先ずはここまで僕の護衛をしてくれた二人にご飯でも奢る所から始めるか!」
「「おぉー! さっすが坊ちゃん!!」」

 どこかスッキリした表情でアドニスが立ち上がる。
 砂埃まみれのその姿は今までのどの彼よりも輝いて見えただろう。



「ふう、さぁて……そろそろ行くかの! 船長殿!」
「ってもどこに行くんだ?」
「先ずはこの船のエネルギーをしっかりと充電してそこからだろうな……どこかの街を目指して食糧などの補給も大事だろう」
「そうですね、一応保存食多めに買ってますけど……それでも三日分でしょうか?」
「ふむ、それならばここより南にあるクレータの街があるの、普通は馬車で四日かかるが……」
「あぁ、この船なら二日もかからないだろう、後で地図をスキャンしていけばより正確に時間を算段出来るだろうな」

 低出力運転でも馬車より早いのは確実でその上馬と違い疲れない。
 現代の世界で一般精通している移動手段の中では最速だ。

「とりあえず南に行って、そこから色々な場所の遺跡を回って見たいと思っておる。過去に見た遺跡でもアレスが居れば新しい発見があるじゃろうからな!」
「……今回の様な発見が毎回あるとは限らないぞ?」
「そりゃそうだろうなぁ……でもそんなのはオレらにとっては何時もの事だったんだぜ?」
「えぇ、新しい発見がなければ仕方ないですし……そしたら外国にも行って見ませんか?」
「ほお、外国へ……それも良い。うむ! 今後がワクワクで堪らぬのぉ! では、出発じゃー!!」

 ディータの掛け声と共に、アルゴナウタイが速度を上げて走り出す。
 500年前に作られた戦闘用のロボットが長い眠りから目覚め世界を知るために旅に出た。
 この世界に何が起きたのか、それを彼が知るのはまだまだ先の話である。
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