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第一章 竜の巻 ようこそ、異世界へ。
1-15 魔法使い
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白い閃光と炎が弾け、熱風が頬を叩く。睫毛が焼ける匂いがした。
怪獣たちが目を血走らせ、「ガアアア!」と吠えながら縄を引きちぎる。繊維が裂ける乾いた音。鎖が地面を跳ねる。太い爪が土を抉り、盗賊へ突進する。獣の荒い呼気が煙に混じり、湿った唾液が飛ぶ。
「なんだそれは!?」
「火……火の魔法だ!」
「魔法使いだ!火を操ってる!」
「裂、裂爪獣が……!!」
声が裏返り、足音が散る。
怪獣の前肢が振り下ろされ、革鎧が裂ける音が響いた。四人が巻き込まれる。
一人は横から弾き飛ばされ、肋骨が内側へ沈んだまま息を吸えずに倒れ込む。口を開けたまま空気を掴もうとするが、喉から出るのは乾いた笛のような音だけだ。
二人目は尾に薙ぎ払われ、数メートル吹き飛ぶ。背中から地面に叩きつけられ、腕があり得ない方向へ曲がる。叫ぶより先に意識が飛んだらしい。
三人目は足を踏み砕かれ、膝から下が不自然に潰れる。這いずろうとするが、次の瞬間、顎を噛み砕かれ、声が途切れた。
最後の一人は逃げようと振り向いたところを背中から掴まれ、地面に叩きつけられる。衝撃で肺の空気が一気に抜け、白目を剥いた。
血と土が混ざり、湿った臭いが広がる。
十八匹。
怪獣が「グオオオ!」と咆哮し、地面が震えた。
俺は短剣を抜き、トラックの影から飛び出す。煙が喉を焼き、視界が揺れる。怪獣に弾き飛ばされた盗賊の横を抜ける。潰れた鎧の隙間から、折れた骨が覗いている。
十九匹。
槍を構えた男に迫る。
踏み込み、跳ぶ。両脚で首を挟み、体を捻る。骨が軋む感触。男は地面に叩きつけられ、後頭部が鈍い音を立てた。動きが止まる前に、短剣を喉元へ押し込む。熱い液体が指にかかる。
二十匹。
刃は抜かない。
そのまま男の体を踏み越え、次へ向かう。
槍を振り上げた別の男が後ずさる。目が泳ぎ、足がもつれる。穂先が空を切る。
右へ転がり、立ち上がりざま腰の短剣を奪う。脇腹へ押し込むと、男は息を詰まらせたような声を漏らし、力を失う。膝が崩れ、槍が落ちる。
二十一匹。
怪獣がさらに二人を弾き飛ばす。誰かが「助けろ」と叫ぶが、その声もすぐに獣の咆哮に呑まれた。
混乱は収束しない。
血が土に滲み、二十三匹は片付いた。
山へ駆け上がる。黒革帽子とマチェットの姿を探すが、煙と影の中に溶けて見えない。
そのとき、別の連中が駆け込んできた。……いや、逃げ込んできた顔だ。目が泳ぎ、武器の握りが甘い。
油圧ジャッキを取り出す。
手のひらサイズではない。拳2つ分ほどのボトルジャッキだ。ずしりと重い。
廃車の下へ潜り込み、フレームの下に差し込む。地面との隙間はわずかだが、傾斜を作れば十分だ。
レバーを差し込み、ゆっくり上下させる。
ギィ……ギィ……と内部のピストンが伸びる音。
車体の片側がわずかに持ち上がる。
さらにポンピング。鉄板が悲鳴を上げ、重心がじわじわと横へ移る。
タイヤ交換するつもりはない。
目的は、傾かせることだ。
十分に角度がついたところで、フレームに足をかけ、体重を乗せて押す。
鈍い音とともに、バランスが崩れた。
廃車が横へ滑り落ちる。
鉄板同士が擦れ合う絶叫のような音。
地面を震わせながら下へ転がる。
「ま、待て待て待て!」
「押すな!俺が下だ!」
「足が、足が抜けねえ!」
「やめろぉぉぉ!」
二人が巻き込まれた。
一人は肩から挟まれ、鎧ごと地面に縫い付けられる。息が漏れるが声にならない。目だけが激しく動き、やがて動かなくなる。
もう一人は逃げようとして転び、車体に弾かれて背後の鉄屑へ叩きつけられる。首が不自然に折れ、体がそのまま静止した。
二十五匹。
遠くで怒号が上がる。
「中央班が全滅だ!」
「左班もほぼ全滅!」
「右班何してんだ!?」
「なんなんだよこれ……!」
「聞いてねぇぞ、こんな話!」
「撤退だろ!?撤退だろこれ!」
「若頭はどこだよ!」
声に怒りよりも焦りが混じる。武器を握る手が震え、視線が定まらない。
俺は廃材の影へ戻り、呼吸を整える。
怪獣の遠吠えが空気を震わせ、土煙が視界を遮る。悲鳴と咆哮が混ざる。
ここまで騒がせた。松尾はともかく、瑚依の隠れ家までは気づかれていないはずだ。
シャツが汗で肌に張りつき、掌が血で滑る。鉄と獣臭が鼻に残る。
拾った槍に救命胴衣を括りつけ、旗のように掲げて地面へ突き立てる。黄色が夜目にも浮く。
「い、いたぞ!」
「黄色だ、黄色!」
「一人だろ!?囲め!」
「そ、そうだ!まだ人数的に俺たちが……」
「人数!?化け物相手に!?」
「近づくな、あいつ火の魔法を使うぞ!」
「若頭に知らせろ!」
声がぶつかり合う。
先頭の男がこちらへ走る。だが足取りは一定ではない。何度も振り返り、仲間の姿を探しながら近づいてくる。
俺はあえて廃材の影から半身を晒した。
男の目が見開かれる。
「み、見つけたぞ!こっちだ!」
俺は一瞬だけ動きを止め、驚いたように身を引く。わずかに躊躇う素振りを見せてから、背を向けた。
「逃がすな!」
男が叫び、後方の二人が合流する。三人が隊列も崩さず突進してくる。
矢が飛ぶ。
一本、二本、三本。
耳元を裂き、廃材に突き刺さる。鉄に当たる乾いた音。火花が散る。俺の体には触れない。
走りながら、残骸の隙間を抜ける。行き止まりのように見える袋小路へ入る。
背後の足音が荒くなる。
追う側の呼吸だ。
獲物を追い詰めたと勘違いした呼吸。
「追い込んだぞ!」
「囲め!」
男たちは勢いのまま踏み込む。足元の油膜が月光を鈍く反射していることに気づかない。
燃料オイルの溜まり。機体から漏れたものだ。
三人が滑りながら踏み込む。靴底がぬめり、わずかに体勢が崩れる。
それでもクロスボウを構える。
だが、手が震えている。
矢を番える指先がぎこちない。
恐怖は消えていない。ただ、興奮が上書きしているだけだ。
「お、お前も……ただの人間……だ」
先頭の男が呟く。喉が乾き、声が割れる。
俺はポケットから発炎筒を引き抜いた。
ああ、知ってる。
心の中でだけ呟き、躊躇なく足元へ投げ込む。
赤い火花が油膜に触れる。
一瞬。
次の瞬間、地面が燃え上がる。
低く這う炎が一気に広がり、三人の脚を包む。油に火が走り、炎は膝まで跳ね上がる。
「ぎゃああああ!」
「熱い!熱い!」
一人が転倒する。燃え移る。もう一人が踏みつけ、さらに油を広げる。火は消えない。服地に染み込んだ燃料が燃え続ける。
焦げた布の臭い。皮膚の焼ける臭い。
男が地面を転がる。だが油の上だ。炎はまとわりつき、離れない。
クロスボウが手から落ちる。
俺は立ち止まり、P229へ持ち替えた。
引き金を引く。
一発。
炎の中で体が跳ねる。
二発。
悲鳴が途切れる。
三発。
燃えながら崩れ落ちる。
情けではない。
確実に殺すためでもない。
「こっちだ!」
そう言っているだけだ。
銃声が夜に響く。
炎と硝煙の匂いが混じり、空気が揺れる。
遠くで、別の足音が止まった。
二十八匹。
……数字が合っているかどうかは、もうどうでもいい。
怪獣たちが目を血走らせ、「ガアアア!」と吠えながら縄を引きちぎる。繊維が裂ける乾いた音。鎖が地面を跳ねる。太い爪が土を抉り、盗賊へ突進する。獣の荒い呼気が煙に混じり、湿った唾液が飛ぶ。
「なんだそれは!?」
「火……火の魔法だ!」
「魔法使いだ!火を操ってる!」
「裂、裂爪獣が……!!」
声が裏返り、足音が散る。
怪獣の前肢が振り下ろされ、革鎧が裂ける音が響いた。四人が巻き込まれる。
一人は横から弾き飛ばされ、肋骨が内側へ沈んだまま息を吸えずに倒れ込む。口を開けたまま空気を掴もうとするが、喉から出るのは乾いた笛のような音だけだ。
二人目は尾に薙ぎ払われ、数メートル吹き飛ぶ。背中から地面に叩きつけられ、腕があり得ない方向へ曲がる。叫ぶより先に意識が飛んだらしい。
三人目は足を踏み砕かれ、膝から下が不自然に潰れる。這いずろうとするが、次の瞬間、顎を噛み砕かれ、声が途切れた。
最後の一人は逃げようと振り向いたところを背中から掴まれ、地面に叩きつけられる。衝撃で肺の空気が一気に抜け、白目を剥いた。
血と土が混ざり、湿った臭いが広がる。
十八匹。
怪獣が「グオオオ!」と咆哮し、地面が震えた。
俺は短剣を抜き、トラックの影から飛び出す。煙が喉を焼き、視界が揺れる。怪獣に弾き飛ばされた盗賊の横を抜ける。潰れた鎧の隙間から、折れた骨が覗いている。
十九匹。
槍を構えた男に迫る。
踏み込み、跳ぶ。両脚で首を挟み、体を捻る。骨が軋む感触。男は地面に叩きつけられ、後頭部が鈍い音を立てた。動きが止まる前に、短剣を喉元へ押し込む。熱い液体が指にかかる。
二十匹。
刃は抜かない。
そのまま男の体を踏み越え、次へ向かう。
槍を振り上げた別の男が後ずさる。目が泳ぎ、足がもつれる。穂先が空を切る。
右へ転がり、立ち上がりざま腰の短剣を奪う。脇腹へ押し込むと、男は息を詰まらせたような声を漏らし、力を失う。膝が崩れ、槍が落ちる。
二十一匹。
怪獣がさらに二人を弾き飛ばす。誰かが「助けろ」と叫ぶが、その声もすぐに獣の咆哮に呑まれた。
混乱は収束しない。
血が土に滲み、二十三匹は片付いた。
山へ駆け上がる。黒革帽子とマチェットの姿を探すが、煙と影の中に溶けて見えない。
そのとき、別の連中が駆け込んできた。……いや、逃げ込んできた顔だ。目が泳ぎ、武器の握りが甘い。
油圧ジャッキを取り出す。
手のひらサイズではない。拳2つ分ほどのボトルジャッキだ。ずしりと重い。
廃車の下へ潜り込み、フレームの下に差し込む。地面との隙間はわずかだが、傾斜を作れば十分だ。
レバーを差し込み、ゆっくり上下させる。
ギィ……ギィ……と内部のピストンが伸びる音。
車体の片側がわずかに持ち上がる。
さらにポンピング。鉄板が悲鳴を上げ、重心がじわじわと横へ移る。
タイヤ交換するつもりはない。
目的は、傾かせることだ。
十分に角度がついたところで、フレームに足をかけ、体重を乗せて押す。
鈍い音とともに、バランスが崩れた。
廃車が横へ滑り落ちる。
鉄板同士が擦れ合う絶叫のような音。
地面を震わせながら下へ転がる。
「ま、待て待て待て!」
「押すな!俺が下だ!」
「足が、足が抜けねえ!」
「やめろぉぉぉ!」
二人が巻き込まれた。
一人は肩から挟まれ、鎧ごと地面に縫い付けられる。息が漏れるが声にならない。目だけが激しく動き、やがて動かなくなる。
もう一人は逃げようとして転び、車体に弾かれて背後の鉄屑へ叩きつけられる。首が不自然に折れ、体がそのまま静止した。
二十五匹。
遠くで怒号が上がる。
「中央班が全滅だ!」
「左班もほぼ全滅!」
「右班何してんだ!?」
「なんなんだよこれ……!」
「聞いてねぇぞ、こんな話!」
「撤退だろ!?撤退だろこれ!」
「若頭はどこだよ!」
声に怒りよりも焦りが混じる。武器を握る手が震え、視線が定まらない。
俺は廃材の影へ戻り、呼吸を整える。
怪獣の遠吠えが空気を震わせ、土煙が視界を遮る。悲鳴と咆哮が混ざる。
ここまで騒がせた。松尾はともかく、瑚依の隠れ家までは気づかれていないはずだ。
シャツが汗で肌に張りつき、掌が血で滑る。鉄と獣臭が鼻に残る。
拾った槍に救命胴衣を括りつけ、旗のように掲げて地面へ突き立てる。黄色が夜目にも浮く。
「い、いたぞ!」
「黄色だ、黄色!」
「一人だろ!?囲め!」
「そ、そうだ!まだ人数的に俺たちが……」
「人数!?化け物相手に!?」
「近づくな、あいつ火の魔法を使うぞ!」
「若頭に知らせろ!」
声がぶつかり合う。
先頭の男がこちらへ走る。だが足取りは一定ではない。何度も振り返り、仲間の姿を探しながら近づいてくる。
俺はあえて廃材の影から半身を晒した。
男の目が見開かれる。
「み、見つけたぞ!こっちだ!」
俺は一瞬だけ動きを止め、驚いたように身を引く。わずかに躊躇う素振りを見せてから、背を向けた。
「逃がすな!」
男が叫び、後方の二人が合流する。三人が隊列も崩さず突進してくる。
矢が飛ぶ。
一本、二本、三本。
耳元を裂き、廃材に突き刺さる。鉄に当たる乾いた音。火花が散る。俺の体には触れない。
走りながら、残骸の隙間を抜ける。行き止まりのように見える袋小路へ入る。
背後の足音が荒くなる。
追う側の呼吸だ。
獲物を追い詰めたと勘違いした呼吸。
「追い込んだぞ!」
「囲め!」
男たちは勢いのまま踏み込む。足元の油膜が月光を鈍く反射していることに気づかない。
燃料オイルの溜まり。機体から漏れたものだ。
三人が滑りながら踏み込む。靴底がぬめり、わずかに体勢が崩れる。
それでもクロスボウを構える。
だが、手が震えている。
矢を番える指先がぎこちない。
恐怖は消えていない。ただ、興奮が上書きしているだけだ。
「お、お前も……ただの人間……だ」
先頭の男が呟く。喉が乾き、声が割れる。
俺はポケットから発炎筒を引き抜いた。
ああ、知ってる。
心の中でだけ呟き、躊躇なく足元へ投げ込む。
赤い火花が油膜に触れる。
一瞬。
次の瞬間、地面が燃え上がる。
低く這う炎が一気に広がり、三人の脚を包む。油に火が走り、炎は膝まで跳ね上がる。
「ぎゃああああ!」
「熱い!熱い!」
一人が転倒する。燃え移る。もう一人が踏みつけ、さらに油を広げる。火は消えない。服地に染み込んだ燃料が燃え続ける。
焦げた布の臭い。皮膚の焼ける臭い。
男が地面を転がる。だが油の上だ。炎はまとわりつき、離れない。
クロスボウが手から落ちる。
俺は立ち止まり、P229へ持ち替えた。
引き金を引く。
一発。
炎の中で体が跳ねる。
二発。
悲鳴が途切れる。
三発。
燃えながら崩れ落ちる。
情けではない。
確実に殺すためでもない。
「こっちだ!」
そう言っているだけだ。
銃声が夜に響く。
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