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第二章 竜の卷 脱出
2-00 洞窟:松尾真一郎視点
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デカいクッションみてえな装置を広げ、宮崎真理絵が俺と瑚依を抱き締めた瞬間、地面がズズズッと崩れ落ちた。足場が消え、スクラップの破片がカラカラと奈落へ吸い込まれる。くそ、今度は落下一本勝負だ。真っ暗な縦穴に、命綱なしのバンジージャンプみてえに体がゴオオオと引きずり込まれる。風がビュウウウと耳元を裂き、瓦礫が肩を掠め、俺のカピバラの体がガタガタ震えた。
心臓がドカドカうるせえ。鼓動が喉まで上がる。
それでも、瑚依の胸の鼓動が伝わってくる。ドクドク鳴ってるくせに、妙に落ち着いてやがる。宮崎との再会に賭けてるのか、それともただの無鉄砲か。安心しきった顔を横目に、俺の視界がチカチカした。
視界がパッと明るくなった瞬間、クッションが膨らみ、ドンッと衝撃を受け止める。ズルズルと縮みながら勢いを殺し、俺たちはドスンと地面へ辿り着いた。装置がしぼむのを横目に、目の前の景色がゆっくりと焦点を結ぶ。
鍾乳石みてえな岩がゴツゴツ突き出す、異様な空間だった。洞窟の岩壁には金属片がゾクゾク貼り付き、磁石に吸われたみてえにガチンッと固定されている。錆びた鉄片、銅の残骸、ねじれた骨組みがゴロゴロ転がり、奥には海軍機の残骸や、古びた廃工場じみた遺構が闇に沈んでいた。空気は湿って重く、油と鉱石の匂いが鼻を刺す。
何百年も前のものらしい鍋や、合羽の支え具がポツポツ落ちている。水滴がポタポタと天井から落ち、黒ずんだ岩肌を伝って光を反射する。どこからともなく差す淡い光が、金属をビカリと照らし、不気味さを際立たせていた。
俺はクッションから転がり出て、足元を見る。砂地だ。昔、家族と行った海岸の砂に似ているが、水晶みてえな石英が混じり、チカチカ光る。墓守の連中がいねえのが唯一の救いだ。
何だ、この状況は。
混乱のまま、鈍く光る物体を蹴ってしまった。
「痛っ!」
拾い上げると、十センチ四方の銅合金の板だ。「金星発動機 五二型 昭和十九年製 三菱航空機株式会社」と刻まれている。
背筋がゾクッとした。タイムマシンに足を突っ込んだかよ。
恐怖を押し殺す間もなく、「まっちゃん!」と瑚依が叫び、宮崎を凝視する。
背が高い。ショートヘアが首筋に落ち、風が吹くたび鋭く揺れる。切り揃えられた髪は刃物みてえな緊張感を崩さない。厚いメガネの奥から、冷たい視線がこちらを測る。知性と疲労が混ざった目つき。三十代の影が頬に落ち、戦いと時間に刻まれた皺がうっすら浮かぶ。
服装もただ者じゃねえ。現代の衣服に、鎧じみた装備が混ざっている。青か黒を基調にしたローブの上から金属装甲が肩と胸に埋め込まれ、鈍い光を放つプレートが戦士の風格を漂わせる。フード付きのマントが背中に広がり、縁には回路じみた模様がチカチカと光る。腕には細身のガントレット。装飾の奥に、通信か武器か、何かを仕込んでいる雰囲気だ。タイトなカーゴパンツとブーツは実用的だが、肩のプロテクターが突き出し、ついさっきまで戦場にいた女の匂いがする。ローブの裾が揺れるたび、現代と未来が奇妙に交錯していた。
瑚依が震える腕で彼女を抱き、涙を溢す。
「えーと、『まっちゃん』?」
期待で顔を輝かせる瑚依に、宮崎は眉を寄せて首を傾げた。
「すみませんが、どこかでお会いしましたか?」
体をわずかに引き、口元がピクッと動く。
「まっちゃん……だよね?」
瑚依が一歩踏み出し、目を潤ませる。鼻をすすり、声が震える。
「それは知人に呼ばれている渾名ですが……」
宮崎がメガネを押し上げ、瞬きをする。
「今日が初対面のはずです」
肩を落とし、今度は俺に顔を向けた。レンズの奥で目が泳ぎ、助けを求めるみてえに突き刺さる。
心臓がドカドカうるせえ。鼓動が喉まで上がる。
それでも、瑚依の胸の鼓動が伝わってくる。ドクドク鳴ってるくせに、妙に落ち着いてやがる。宮崎との再会に賭けてるのか、それともただの無鉄砲か。安心しきった顔を横目に、俺の視界がチカチカした。
視界がパッと明るくなった瞬間、クッションが膨らみ、ドンッと衝撃を受け止める。ズルズルと縮みながら勢いを殺し、俺たちはドスンと地面へ辿り着いた。装置がしぼむのを横目に、目の前の景色がゆっくりと焦点を結ぶ。
鍾乳石みてえな岩がゴツゴツ突き出す、異様な空間だった。洞窟の岩壁には金属片がゾクゾク貼り付き、磁石に吸われたみてえにガチンッと固定されている。錆びた鉄片、銅の残骸、ねじれた骨組みがゴロゴロ転がり、奥には海軍機の残骸や、古びた廃工場じみた遺構が闇に沈んでいた。空気は湿って重く、油と鉱石の匂いが鼻を刺す。
何百年も前のものらしい鍋や、合羽の支え具がポツポツ落ちている。水滴がポタポタと天井から落ち、黒ずんだ岩肌を伝って光を反射する。どこからともなく差す淡い光が、金属をビカリと照らし、不気味さを際立たせていた。
俺はクッションから転がり出て、足元を見る。砂地だ。昔、家族と行った海岸の砂に似ているが、水晶みてえな石英が混じり、チカチカ光る。墓守の連中がいねえのが唯一の救いだ。
何だ、この状況は。
混乱のまま、鈍く光る物体を蹴ってしまった。
「痛っ!」
拾い上げると、十センチ四方の銅合金の板だ。「金星発動機 五二型 昭和十九年製 三菱航空機株式会社」と刻まれている。
背筋がゾクッとした。タイムマシンに足を突っ込んだかよ。
恐怖を押し殺す間もなく、「まっちゃん!」と瑚依が叫び、宮崎を凝視する。
背が高い。ショートヘアが首筋に落ち、風が吹くたび鋭く揺れる。切り揃えられた髪は刃物みてえな緊張感を崩さない。厚いメガネの奥から、冷たい視線がこちらを測る。知性と疲労が混ざった目つき。三十代の影が頬に落ち、戦いと時間に刻まれた皺がうっすら浮かぶ。
服装もただ者じゃねえ。現代の衣服に、鎧じみた装備が混ざっている。青か黒を基調にしたローブの上から金属装甲が肩と胸に埋め込まれ、鈍い光を放つプレートが戦士の風格を漂わせる。フード付きのマントが背中に広がり、縁には回路じみた模様がチカチカと光る。腕には細身のガントレット。装飾の奥に、通信か武器か、何かを仕込んでいる雰囲気だ。タイトなカーゴパンツとブーツは実用的だが、肩のプロテクターが突き出し、ついさっきまで戦場にいた女の匂いがする。ローブの裾が揺れるたび、現代と未来が奇妙に交錯していた。
瑚依が震える腕で彼女を抱き、涙を溢す。
「えーと、『まっちゃん』?」
期待で顔を輝かせる瑚依に、宮崎は眉を寄せて首を傾げた。
「すみませんが、どこかでお会いしましたか?」
体をわずかに引き、口元がピクッと動く。
「まっちゃん……だよね?」
瑚依が一歩踏み出し、目を潤ませる。鼻をすすり、声が震える。
「それは知人に呼ばれている渾名ですが……」
宮崎がメガネを押し上げ、瞬きをする。
「今日が初対面のはずです」
肩を落とし、今度は俺に顔を向けた。レンズの奥で目が泳ぎ、助けを求めるみてえに突き刺さる。
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