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第四章 刀の卷 氷面下の駆け引き
4-06 カウントダウン
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巨漢が、地面に突き刺さっていた鉄槌を乱暴に引き抜くと、その勢いのまま左へ大きく振り払った。
俺はすかさず頭を低くして身をかわす。鋭い冷風が頭髪をなでるように掠めていく――あれがもし当たっていたら、頭ごと吹き飛ばされていたに違いない。
同時に、俺の居合はすでに抜かれていた。
狙いは奴の腋下――急所だ。
刀尖が正確に筋肉を裂く。だが、金色の光が傷口から瞬き、まるで時間を巻き戻すかのように、その裂傷がたちまち癒えていく。
……は? いや、チートかよ。
これ、どう考えても無理ゲーだろ。
巨漢は狂ったように笑い、再び鉄槌を高く振り上げた。
その動きは見え見えの予備動作。蓄力の気配も丸わかり。攻撃の方向も基本は縦か横、二択しかない。
だが、どちらも一撃必殺だ。
俺は身体を軸に、最小限のステップでそれらをかわす。一撃、二撃、三撃――
案の定、三撃目の後にわずかに長い隙が生まれた。
――今だ!
腰を捻り、左足で地を蹴る。
右足を踏み込むと同時に、片手で突きの構え。刃を一直線に突き出し、奴の左目を狙う――はずだった。
だが。
「ッ……!?」
信じられないことに、奴は左手で俺の刀を素手で掴んできた。
刃が手のひらを裂き、血飛沫が勢いよく吹き出す。
それでも奴は痛みを無視して、俺をぐっと引き寄せた。
咄嗟に俺は、和泉守兼定を手放す。
刀はその腕力で放り投げられ、雪の向こうへと消えた。
直後、奴の鉄槌が突き出される。
俺はとっさに両手でその先端を押さえ――
吹き飛ばされたように見せかけながら、その力を後方への回転運動に変換して受け流す。
後方には、木造の小さな倉庫。
食糧でも保管しているのだろう、壁は脆そうだ。
俺は身体をぎゅっと縮め、頭と腹を守るように構えを取る。
そして――
ドガァッ!
板張りの壁を突き破り、まるでシュートされたサッカーボールのように倉庫の中へ叩き込まれた。
巨漢が獣のように吼えながら、砕けた木片を踏みしめて突入してくる。
その勢いで、俺の落下地点めがけて鉄棒が振り下ろされた。
まるで無免許の暴走車両が商店のガラスを突き破るときのような、あの突進――。
俺は横転して間一髪でかわし、両手で地面を押して跳ね起きる。
そして、奴の鉄棒に両足で踏み込んだ。全身の重心をかけて、上から押さえつけるように。
だが――
巨漢は俺の体重をものともせず、咆哮と共に鉄棒を力任せに振り上げてきた。
その反動で空中に浮かんだ俺は、とっさに喉元を狙って飛び蹴りを放つ。
しかし、奴はなんとその蹴りを真正面から受け止めた。首を引いて喉を守り、顎で俺の足を挟み込んで固定する。
「――ッ!」
空いていた奴のもう片方の手が、俺に向かって伸びてくる。
まずい――!
俺は腰を捻って体勢をズラし、もう片方の足で連撃を叩き込む。
一発、二発、三発――鼻梁、額、そして眉間。
蹴るたびに奴の顔が後ろへ仰け反り、ついに倉庫の外へと押し返した。
ようやく顎のロックが緩み、俺は足を抜く。
その勢いで腹筋を巻き上げ、空中から奴の頭頂に掌打を叩き込む――!
だが。
「ガッ!」
奴は自らの頭を、俺の手のひらへぶつけてきた。
激痛。
距離を取って跳び退く。掌が痺れている。
拳だったら、確実に骨が折れていた。
巨漢は止まらない。
大股で詰め寄り、鉄棒を振り抜く。
俺は八卦掌の「走圏」で弧を描くように相手の左背後へ回り込み、続けざまに太極拳の「引進落空」で奴の力を利用し、勢いのまま前方へ崩す――はずだった。
だが。
奴は咄嗟に鉄棒を地面へ叩きつけ、その反動を使って自ら跳び上がった。
金色の光が全身を包み、負ったはずの傷が瞬時に癒えていく。
……クソッ、考えてる暇もねぇ。
右から左へ、再び鉄棒が唸りを上げて飛んできた。
俺は身を沈め、首を傾けてギリギリで回避。
そのまま、奴の踏み出した足の甲を右足で押さえ込む。
そして太極拳の「四正推手」――奴の体重を利用し、背後から押し出す。
一見穏やかなこの技は、正確に決まれば足を破壊するほどの破壊力がある。
……が。
奴は筋力で足を引き抜いてきた。
数歩よろけながらも、すぐに振り返り、鉄棒を容赦なく振り下ろす。
距離が近すぎる。
避けきれない。
――なら。
一歩、前へ踏み込む。
肘に肩と腕を押し当てて力の支点を潰す。
今だ――!
地を蹴り、肩で押し返す。
「震脚」――全体重をぶつけ、奴の体勢を崩す。
巨漢の身体が後方へ倒れ、雪を巻き上げて地に沈む。
俺はすかさず後退し、距離を取ろうとした――
が、甘かった。
倒れたままの体勢で、奴は腕力だけで鉄棒を投げつけてきた。
「っ――!」
寸前で身を捻り、右へ転がる。
直後、背後で轟音。左耳に焼けるような痛み。耳鳴りが止まらない。
ただの風圧でこれだ。
どこかの家にでも直撃したんじゃないか――そんな余裕もなかった。
目の端に映ったのは、四肢を使って突進してくる巨体。
……まるで、四足歩行のほうが自然であるかのように。
「っくそ!」
次の瞬間、両腕で掴まれ、空中へ。
奴の膝が、背骨を狙って突き上げられている――
死ぬ。
反射で動いた。
右腕で奴の後頭部を抱え、体を捻って前方へと放り投げる!
巨漢の体が宙を舞い、地に叩きつけられる。
俺も地面に転がる。
右肩から異音。
「クソ……外れたか」
右肩が脱臼している。激痛。
時間が経てば経つほど、俺は削れていく。
そして奴は、再生し続ける。
――間違いない。
これは、「死」へのカウントダウンだ。
俺はすかさず頭を低くして身をかわす。鋭い冷風が頭髪をなでるように掠めていく――あれがもし当たっていたら、頭ごと吹き飛ばされていたに違いない。
同時に、俺の居合はすでに抜かれていた。
狙いは奴の腋下――急所だ。
刀尖が正確に筋肉を裂く。だが、金色の光が傷口から瞬き、まるで時間を巻き戻すかのように、その裂傷がたちまち癒えていく。
……は? いや、チートかよ。
これ、どう考えても無理ゲーだろ。
巨漢は狂ったように笑い、再び鉄槌を高く振り上げた。
その動きは見え見えの予備動作。蓄力の気配も丸わかり。攻撃の方向も基本は縦か横、二択しかない。
だが、どちらも一撃必殺だ。
俺は身体を軸に、最小限のステップでそれらをかわす。一撃、二撃、三撃――
案の定、三撃目の後にわずかに長い隙が生まれた。
――今だ!
腰を捻り、左足で地を蹴る。
右足を踏み込むと同時に、片手で突きの構え。刃を一直線に突き出し、奴の左目を狙う――はずだった。
だが。
「ッ……!?」
信じられないことに、奴は左手で俺の刀を素手で掴んできた。
刃が手のひらを裂き、血飛沫が勢いよく吹き出す。
それでも奴は痛みを無視して、俺をぐっと引き寄せた。
咄嗟に俺は、和泉守兼定を手放す。
刀はその腕力で放り投げられ、雪の向こうへと消えた。
直後、奴の鉄槌が突き出される。
俺はとっさに両手でその先端を押さえ――
吹き飛ばされたように見せかけながら、その力を後方への回転運動に変換して受け流す。
後方には、木造の小さな倉庫。
食糧でも保管しているのだろう、壁は脆そうだ。
俺は身体をぎゅっと縮め、頭と腹を守るように構えを取る。
そして――
ドガァッ!
板張りの壁を突き破り、まるでシュートされたサッカーボールのように倉庫の中へ叩き込まれた。
巨漢が獣のように吼えながら、砕けた木片を踏みしめて突入してくる。
その勢いで、俺の落下地点めがけて鉄棒が振り下ろされた。
まるで無免許の暴走車両が商店のガラスを突き破るときのような、あの突進――。
俺は横転して間一髪でかわし、両手で地面を押して跳ね起きる。
そして、奴の鉄棒に両足で踏み込んだ。全身の重心をかけて、上から押さえつけるように。
だが――
巨漢は俺の体重をものともせず、咆哮と共に鉄棒を力任せに振り上げてきた。
その反動で空中に浮かんだ俺は、とっさに喉元を狙って飛び蹴りを放つ。
しかし、奴はなんとその蹴りを真正面から受け止めた。首を引いて喉を守り、顎で俺の足を挟み込んで固定する。
「――ッ!」
空いていた奴のもう片方の手が、俺に向かって伸びてくる。
まずい――!
俺は腰を捻って体勢をズラし、もう片方の足で連撃を叩き込む。
一発、二発、三発――鼻梁、額、そして眉間。
蹴るたびに奴の顔が後ろへ仰け反り、ついに倉庫の外へと押し返した。
ようやく顎のロックが緩み、俺は足を抜く。
その勢いで腹筋を巻き上げ、空中から奴の頭頂に掌打を叩き込む――!
だが。
「ガッ!」
奴は自らの頭を、俺の手のひらへぶつけてきた。
激痛。
距離を取って跳び退く。掌が痺れている。
拳だったら、確実に骨が折れていた。
巨漢は止まらない。
大股で詰め寄り、鉄棒を振り抜く。
俺は八卦掌の「走圏」で弧を描くように相手の左背後へ回り込み、続けざまに太極拳の「引進落空」で奴の力を利用し、勢いのまま前方へ崩す――はずだった。
だが。
奴は咄嗟に鉄棒を地面へ叩きつけ、その反動を使って自ら跳び上がった。
金色の光が全身を包み、負ったはずの傷が瞬時に癒えていく。
……クソッ、考えてる暇もねぇ。
右から左へ、再び鉄棒が唸りを上げて飛んできた。
俺は身を沈め、首を傾けてギリギリで回避。
そのまま、奴の踏み出した足の甲を右足で押さえ込む。
そして太極拳の「四正推手」――奴の体重を利用し、背後から押し出す。
一見穏やかなこの技は、正確に決まれば足を破壊するほどの破壊力がある。
……が。
奴は筋力で足を引き抜いてきた。
数歩よろけながらも、すぐに振り返り、鉄棒を容赦なく振り下ろす。
距離が近すぎる。
避けきれない。
――なら。
一歩、前へ踏み込む。
肘に肩と腕を押し当てて力の支点を潰す。
今だ――!
地を蹴り、肩で押し返す。
「震脚」――全体重をぶつけ、奴の体勢を崩す。
巨漢の身体が後方へ倒れ、雪を巻き上げて地に沈む。
俺はすかさず後退し、距離を取ろうとした――
が、甘かった。
倒れたままの体勢で、奴は腕力だけで鉄棒を投げつけてきた。
「っ――!」
寸前で身を捻り、右へ転がる。
直後、背後で轟音。左耳に焼けるような痛み。耳鳴りが止まらない。
ただの風圧でこれだ。
どこかの家にでも直撃したんじゃないか――そんな余裕もなかった。
目の端に映ったのは、四肢を使って突進してくる巨体。
……まるで、四足歩行のほうが自然であるかのように。
「っくそ!」
次の瞬間、両腕で掴まれ、空中へ。
奴の膝が、背骨を狙って突き上げられている――
死ぬ。
反射で動いた。
右腕で奴の後頭部を抱え、体を捻って前方へと放り投げる!
巨漢の体が宙を舞い、地に叩きつけられる。
俺も地面に転がる。
右肩から異音。
「クソ……外れたか」
右肩が脱臼している。激痛。
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これは、「死」へのカウントダウンだ。
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