52 / 148
一章
四日目/石材を分析しよう
しおりを挟む
9月2日。月曜日。平日。
ぱちりと目を覚ます。
枕もとの時計を見れば午前6時半過ぎ。
誰に起こされるまでもなく、自然と目が覚める。
一人暮らしをするようになって染みついた癖。
人間の生態というのは不思議なものだ。
どうしてなんの合図もなく、毎度決まった時間に目を覚ますことができるのだろう。
夢の世界から、恣にダイブアウトをしているわけでもあるまいに。
ぼんやりと、朝陽が差し込む窓を見遣る。
今日も憎らしいほどいい天気だ。
なれども浪高し……かどうかは、窓の外を見てもわからない。
俺の住むこの安アパートの二階の部屋は、別に海沿いに面しているわけでもない。
寝台から立ち上がる。
さて、ちゃきちゃきと出勤の準備を……
……する必要は、ないんだったな。
だが、いたずらに惰眠を貪るつもりもない。
今日はちゃんと予定があるのだ。
さっさと身なりを整えて、朝食を食べて。
今日の少し、身体を動かそう。
流石に4日連続で半日フルダイブ漬けは……なんか身体に悪そうだからな!
*────
朝食を済ませ、少しおき、30分ほどの慣れないジョギングを終え、自宅に戻ってくる。
せっかくだ。軽く筋トレして、そのあとは禊いでしまおう。
通勤、通学途中の人々を尻目に行うジョギングはやや気まずいものがあった。
いいのだ、別に彼らは俺の存在など気にも留めていないだろう。
平日にぶらぶらしてるにーちゃんなどと思われてはいないはずだ。
違うんです。有休を消化しているだけなんです。
それにしても、夏の朝晴れというか、微かに薄雲のかかる、絶好のアウトドア日和だったな。
外に出て、なにかをしたくなるような陽気になりそうではある。
でも今日は、外に出かけるわけではないんだ。すまんな。
俺は今日も惑星カレドに行くことにするよ。
いいだろ、別に。
貴重な休日をゲームに費やしてなにが悪いというのか。
というか、先ほどから俺はいったい誰に言い訳を繰り返しているんだ。
「平日にいい大人が昼間っからゲームを?」という社会的通念に囚われた俺に、だな。
滅せよ。
*────
さてさて、本日も公式情報チェックタイム。
なにか目ぼしい情報はあるかなーっと。
(……ない、か)
特に新規のお知らせや仕様修正の告知はないようだ。
まだ『犬2』が始まって4日目。
そう頻繁にアップデートや修正を繰り返すようでは、開発もユーザーも混乱してしまう。
とはいえ、もしもゲームが進行不能になったり地面が抜けたりするようなことが簡単に起こるようであれば、すぐさま対応の知らせがあるだろう。
特に緊急の対応がないというのなら、それが一番だ。
その通りではあるのだが……。
(……でもたぶん、もうあるよなぁ)
この『犬2』の世界は、概ね現実準拠な仮想世界を物理的に演算している。
あの世界の物体には質量があり、作用反作用といった物理法則に支配されている。
ならば恐らく、採用されている物理エンジンの穴をついたバグはなにかしら存在しているはずだ。
バグというのは、隙間のようなもの。
バグのないゲームなどありえない。
思い描いた通りでない仕様をバグというのなら、現実だってバグまみれだ。
ましてや『犬2』にも技能や転移という「通常の物理演算に素直に従わないゲーム的な処理」が存在する以上、その処理と物理演算の間にはどこかで不一致が生じ、その空隙にバグは生じてしまうことだろう。
もうゲームが始まって4日目だ。
3日もあれば、かつての検証勢の誰かしらがバグを発掘しているだろう。
俺ですら、初手でバグを起こせたのだ。
寝食を忘れてバグの発掘作業に従事する彼らにできないはずがない。
となると、今現在の公式の対応は「バグは確かにあるが、致命的なものはなく、複雑なものについてはある程度のフィードバックが溜まるまでは静観」といったところか。
(……。)
検証勢の巣窟、検証スレ。
それが今回も建てられているかどうか、俺はまだ確認していない。
俺がテレポバグを既に成功させたように、他のプレイヤーもなにかしらのバグに出逢っている可能性が高い。
俺がやったテレポバグも、きっと誰かが俺と同じやり方で引き起こしているだろう。
そうした情報が一番集まっていそうなのが検証スレだ。
そのあたりの情報共有や、運営への報告状況のすり合わせなどを行うために、恐らくは立っているであろう検証スレを覗きに行きたい気持ちはある。
そこに行けば『犬』の頃の知人・友人たちに、また出逢えるかもしれない。
(……落ち着け、まだ4日目だろう)
ネットの海から情報を浚うのは、一週間は我慢すると誓ったのだ。
この一週間は自分で楽しもう。それからでも決して遅くはない。
なにせこのゲームはMMO。
これから末永く続いてくれる……はずの……ゲームなのだから。
ゆっくりと進めて行けばいい。
無理に最新情報を追わずとも、ゲーム開始直後は、誰もがそれぞれの開拓の最前線に立つことができるのだから。
雑事を済ませ、昼食を取り、カノンとの待ち合わせの時間になる。
さぁ、今日もあの惑星に旅立つとしよう。
ニューロノーツ先生、本日も宜しくお願い致します。
こんだけ連日使い倒してると、だめな主人認定されそうだな……。
そして、視界は暗転する。
*────
「ボンジュール、カノン。待たせた?」
「あ……っ! こんにちはっ、フーガくんっ」
ダイブインは無事に成功。
拠点である脱出ポッドの中で視界を取り戻すと、そこにカノンの姿を認める。
むっ、5分前行動ではなかったのか。諮ったなカノン……っ!
「いま来たばかりだから、大丈夫、だよ?」
「ならよかった。ま、時間に間に合うように来てるわけだからいいよな?」
「うんっ」
昨日に引き続き、カノンは今日もほんのり機嫌がよさそうだ。
なにかいいことでもあったのだろうか。
卵や夏野菜が安かったとか。
……カノンって自炊勢なのかな。
この世界ではじめて調理を行うとき、それは判明するだろう……。
カノンの装いは、少し馴染んできた彼女の普段着。
深い藍色のチュニックに青のズボン。
肩に軽く羽織った黒いウール地のケープ。
……もう一種類くらいバリエーションがあってもいいかもな。
気分に応じていろいろ着替えられる方が、選び甲斐があるだろう。
今は落ち着いた色合いだし、今度は暖色を基調にした華やかな感じのとか。
俺の装い? それはまあ、おいおい。
脱出ポッドの採光窓をみれば、既にセドナの日は落ちたあと。
こちらの時刻は夜七時前後と言ったところ。
既に【夜目】は取得済みなので、野外活動に躊躇いはない。
むしろ【夜目】の習熟のために、積極的に外に繰り出してもいいくらいだが……。
あいにく、今日やることは決まっているのだ。
「じゃ、活動開始と行くか。予定通りで問題ない?」
「んっ。素材の分析と、道具作りと、木材の採取……だよね?」
「ああ。問題ないならそれで行こう」
できれば今日のうちに家具作りまで行ってしまいたい。
まずは採ってきた石調べるぞ、石!
*────
圧縮ストレージの中から、昨日採ってきた2種類の岩塊を取り出す。
俺とカノンでそれぞれ一つずつ、計4つの岩塊。
このうち2つは柱状玄武岩の柱から採取した、玄武岩質の岩塊。
俺が採取したのは、なにか雪華のような水晶が混ざっているもの。
一方カノンには、対照実験のために通常のものを採取してもらった。
この二つを比べれば、玄武岩に混ざったこの雪華がいったいなんなのか判明するだろう。
あとの2つは、拠点南の花崗岩質の岩場で適当に採取したもの。
こちらは俺とカノンのものに明らかな違いがあるわけではない。
それぞれの岩塊は、概ね縦15cm、横20cm、厚さ5cmから10cmといったところ。
……うん、あらためてみるとそこそこのサイズだな。
よくぞ運んだものだ。
「じゃあ、カノンが採ってくれた玄武岩から行くか」
「ん、入れてみるね」
カノンが岩塊を大切そうに抱え、分析装置の中に入れる。
……ここまで散々玄武岩だと言ってきた手前、これで玄武岩じゃなかったら、俺はとんだピエロだが。
――――――――――――
■鑑定結果
アルカリ玄武岩|(岩石類)
■計測結果
質量:5.72 kg
容積:1798.74 cm^3
密度:3.18 g/cm^3
温度:――
――――――――――――
「あっ、合ってた、みたい?」
「アルカリ……?」
「#アルカリ玄武岩」とは。
これってセドナのトレンドになりませんか?
わからんが、玄武岩ではあるようだからいいか。
地球のそれと同じような岩石というだけでかなり安心できる結果だ。
では、その成分やいかに。
――――――――
■化学組成|(%)
SiO2 45.4
Al2O3 14.7
CaO 10.5
FeO 9.21
MgO 7.80
Fe2O3 4.09
TiO2 3.21
Na2O 3.02
K2O 0.89
―― 1.3
――――――――
「なるほど……なるほどなっ!」
「なに、が?」
「わからん」
しかし、そうか。
抽出可能成分という形で示してくれた植物と違って、岩石はこういう風に化学組成を教えてくれるわけだな。
確かに岩石に成分もなにもないよな。分析すべきはその化学組成の方だろう。
地質学者ならこれを見てふむふむと言えるのかもしれないが、これは俺たちが見ても仕方ないかもしれんな……。
俺の取ってきた雪華入り玄武岩との比較のために、一通りは覚えておこう。
あ、でも二酸化ケイ素がだいたい半分を占めていることは分かるぞ。
チタンや鉄、マグネシウムが酸化物として含まれていることもわかる。
アルミナもあるが……前作で生産ガチ勢はこいつに相当苦戦してたな。
製造装置先生の御業を以てしても、アルミナからアルミニウムは簡単には取り出せなかったらしい。
いわゆる氷晶石とか、外付けの専用炉とか必要だったらしい。詳しくはよく知らないけれど。
チタンはレアメタルの一種。これはたしか計器類の作成にも使ったはずだ。
そこそこの比率で含まれているが、これは……どうだ。
量を集めればそのあたりの機器類の素材にもなる……のか?
今は単なる石材としてみたほうが良いだろう。
で、結論は。
――――――――――――――
■適正評価
【石材適正】優良 【※詳細】
――――――――――――――
「よかった。無事に石材として使えるみたいだ」
「ん、採ってきた甲斐、あったね」
玄武岩の石材って日常ではあんまり目にしない気がするけど……あるところにはあるのだろうか。
現実における石材としての評価には採取のしやすさとか加工のしやすさが基準に含まれるだろうから、現実で見かけないからといって石材として不向きとは判断できない。
少なくとも分析装置的には十分実用に堪えるという判断なのだろう。
ありがたい。
「この、詳細って、なんだろ?」
「ん、たぶんどういう意味で優良なのかを教えてくれてるんだろうけど……」
木材の時に等級だの吸水率だの出てたし、それに相当するものだろうか。
カノンの言葉を受けて、詳細ボタンをポチっと押してみる。
――――――――――――――
モース硬度 6.6
圧縮強度 1500 kgf/cm^2
曲げ強度 140 kgf/cm^2
引張強度 55 kgf/cm^2
剪断強度 200 kgf/cm^2
吸水率 0.35%
耐熱度 570℃
熱伝導率 1.8kcl/mh℃
熱膨張率 7.0
……
……
――――――――――――――
「……カノン。この石は石材として優良だ。いいな?」
「う、うん……」
俺たちはパンドラの箱を開けてしまったようだ。
この詳細については、普段は見なくてもいいだろう。
見る人が見れば、この石材をどう使うのがいいのかわかるのだろうが……。
いいんだよ、俺たちにはとってはある程度硬ければそれで。
耐熱度を調べられることは覚えておいていいかもしれない。
あ、でもモース硬度はなんか聞いたことあるな。
鉱物図鑑とかに組成と一緒によく載ってる気がする。
確かダイヤモンドが10のやつ。
*────
「よし、玄武岩はこれでおっけー。次行ってみよー」
「よ、よーっ」
さて、通常の玄武岩は分析は終わった。
では続いて、俺が採取した雪華入り玄武岩……なんかそんな名前の岩石が現実にもありそうだが……も調べてみよう。
好奇心としては、こっちが本命だ。
――――――――――
■鑑定結果
未登録|(岩石類)
■計測結果
質量:4.92 kg
容積:1556.96 cm^3
密度:3.16 g/cm^3
温度:――
――――――――――
カノンの運んだ岩塊より俺が運んだ奴の方が軽いじゃねぇか……。
なにカノンに自分より重い方持たせてんだよお前……。
見た目同じくらいの大きさだったから気づかなかったよ……。
じゃ、なくて。
「未登録扱いなのか。でも見た感じ、同じ玄武岩質だったよな」
「なにか混ざってると、別物になる?」
「あの白い結晶のしわざか」
ならば化学組成を見てくれよう。
この白い結晶はなんじゃらほい。
――――――――――
■化学組成|(%)
SiO2 42.7
Al2O3 14.6
CaO 10.4
FeO 9.26
MgO 7.74
Fe2O3 4.08
TiO2 3.00
Na2O 2.98
K2O 1.00
NaCl 0.07
―― 3.50
――――――――――
うん?
ちょっと不純物が多いけど、含有比率も含めて、ほとんど同――
「えっ」
「あっ」
NaCl?
「フーガくん、一番下のって、たしか……」
「えんかなとりうむ」
「塩、だよね?」
「塩、だよな」
塩なんだが。
えっ、あの雪華みたいなやつ、塩なの。
あれ、岩塩って玄武岩に混じったっけ。
岩塩の成因って、確か昔の海水がなんちゃらじゃなかったっけ。
0.07%ってどれくらいだ。
本体が5kgだから……3.5gくらいか。
あれ、けっこう入ってるぞこれ。
小さじ一杯弱採れるってことだよな。
ほぼ100%塩化ナトリウムでできた岩塩に比べれば微々たるものだが……
セドナ高地。柱状節理。
火山活動で隆起した台地。
つまり、これはあれか。
このセドナ付近が、かつて海だった可能性がありうるのか。
セドナのどこかには、岩塩そのものが析出している場所がある可能性もある?
「うーん、これは4日目にして大発見だなぁ」
なんか面白そうな見た目の石があるからと採取してみれば、まさか岩塩混じりとはな。
この俺の目にはまるで見抜けなかったわ。
NaClの文字を見て思わず中断してしまっていた分析結果を引き続き追えば、
――――――――――
■抽出可能成分
塩|(塩化ナトリウム)
――――――――――
先ほどの玄武岩の分析時にはなかった、抽出可能成分の表示。
まあ、そうなるよな。
岩塩というわけではないし、塩の結晶そのものの分離になるのかな。
分離の仕方はよくわからないが……。
――――――――――――――
■適正評価
【石材適正】優良 【※詳細】
――――――――――――――
最後に通常の玄武岩と同じ適正評価を加えておしまいだ。
……この石は石材に使うのはちょっともったいないな。
なにせ塩だ。
1,000m級の高地として外界と隔絶されているセドナで塩が手に入るなどとは思わなかった。
「よろこべカノン。塩サラダが食えるかもしれんぞ」
「けっこう美味しそう、かも?」
塩の供給がこれからの生活に与える影響は極めて大きい。
肉に魚に葉っぱに木の実に。
その辺の自然素材がことごとく料理として立ち上がってくる。
もちろん保存にも。このゲームは食材は時間経過で普通に劣化するからな。
これは今後も採取したいな。
あの辺り、ちょっと本格的に採掘してみるか?
まあ、そのあたりはおいおい考えよう。
この石については、このあとそのまま製造装置で粉砕してみよう。
実際に塩が作れるのか、ちゃんと食塩なのか、一度試しておきたい。
「よし、塩はいったん置いといて、花崗岩の方も行ってみようか」
「んっ、どんどん行こっ」
このゲームの分析、やっぱ楽しいな……。
前作でももうちょっとがっつりやってもよかったかもなぁ……。
ぱちりと目を覚ます。
枕もとの時計を見れば午前6時半過ぎ。
誰に起こされるまでもなく、自然と目が覚める。
一人暮らしをするようになって染みついた癖。
人間の生態というのは不思議なものだ。
どうしてなんの合図もなく、毎度決まった時間に目を覚ますことができるのだろう。
夢の世界から、恣にダイブアウトをしているわけでもあるまいに。
ぼんやりと、朝陽が差し込む窓を見遣る。
今日も憎らしいほどいい天気だ。
なれども浪高し……かどうかは、窓の外を見てもわからない。
俺の住むこの安アパートの二階の部屋は、別に海沿いに面しているわけでもない。
寝台から立ち上がる。
さて、ちゃきちゃきと出勤の準備を……
……する必要は、ないんだったな。
だが、いたずらに惰眠を貪るつもりもない。
今日はちゃんと予定があるのだ。
さっさと身なりを整えて、朝食を食べて。
今日の少し、身体を動かそう。
流石に4日連続で半日フルダイブ漬けは……なんか身体に悪そうだからな!
*────
朝食を済ませ、少しおき、30分ほどの慣れないジョギングを終え、自宅に戻ってくる。
せっかくだ。軽く筋トレして、そのあとは禊いでしまおう。
通勤、通学途中の人々を尻目に行うジョギングはやや気まずいものがあった。
いいのだ、別に彼らは俺の存在など気にも留めていないだろう。
平日にぶらぶらしてるにーちゃんなどと思われてはいないはずだ。
違うんです。有休を消化しているだけなんです。
それにしても、夏の朝晴れというか、微かに薄雲のかかる、絶好のアウトドア日和だったな。
外に出て、なにかをしたくなるような陽気になりそうではある。
でも今日は、外に出かけるわけではないんだ。すまんな。
俺は今日も惑星カレドに行くことにするよ。
いいだろ、別に。
貴重な休日をゲームに費やしてなにが悪いというのか。
というか、先ほどから俺はいったい誰に言い訳を繰り返しているんだ。
「平日にいい大人が昼間っからゲームを?」という社会的通念に囚われた俺に、だな。
滅せよ。
*────
さてさて、本日も公式情報チェックタイム。
なにか目ぼしい情報はあるかなーっと。
(……ない、か)
特に新規のお知らせや仕様修正の告知はないようだ。
まだ『犬2』が始まって4日目。
そう頻繁にアップデートや修正を繰り返すようでは、開発もユーザーも混乱してしまう。
とはいえ、もしもゲームが進行不能になったり地面が抜けたりするようなことが簡単に起こるようであれば、すぐさま対応の知らせがあるだろう。
特に緊急の対応がないというのなら、それが一番だ。
その通りではあるのだが……。
(……でもたぶん、もうあるよなぁ)
この『犬2』の世界は、概ね現実準拠な仮想世界を物理的に演算している。
あの世界の物体には質量があり、作用反作用といった物理法則に支配されている。
ならば恐らく、採用されている物理エンジンの穴をついたバグはなにかしら存在しているはずだ。
バグというのは、隙間のようなもの。
バグのないゲームなどありえない。
思い描いた通りでない仕様をバグというのなら、現実だってバグまみれだ。
ましてや『犬2』にも技能や転移という「通常の物理演算に素直に従わないゲーム的な処理」が存在する以上、その処理と物理演算の間にはどこかで不一致が生じ、その空隙にバグは生じてしまうことだろう。
もうゲームが始まって4日目だ。
3日もあれば、かつての検証勢の誰かしらがバグを発掘しているだろう。
俺ですら、初手でバグを起こせたのだ。
寝食を忘れてバグの発掘作業に従事する彼らにできないはずがない。
となると、今現在の公式の対応は「バグは確かにあるが、致命的なものはなく、複雑なものについてはある程度のフィードバックが溜まるまでは静観」といったところか。
(……。)
検証勢の巣窟、検証スレ。
それが今回も建てられているかどうか、俺はまだ確認していない。
俺がテレポバグを既に成功させたように、他のプレイヤーもなにかしらのバグに出逢っている可能性が高い。
俺がやったテレポバグも、きっと誰かが俺と同じやり方で引き起こしているだろう。
そうした情報が一番集まっていそうなのが検証スレだ。
そのあたりの情報共有や、運営への報告状況のすり合わせなどを行うために、恐らくは立っているであろう検証スレを覗きに行きたい気持ちはある。
そこに行けば『犬』の頃の知人・友人たちに、また出逢えるかもしれない。
(……落ち着け、まだ4日目だろう)
ネットの海から情報を浚うのは、一週間は我慢すると誓ったのだ。
この一週間は自分で楽しもう。それからでも決して遅くはない。
なにせこのゲームはMMO。
これから末永く続いてくれる……はずの……ゲームなのだから。
ゆっくりと進めて行けばいい。
無理に最新情報を追わずとも、ゲーム開始直後は、誰もがそれぞれの開拓の最前線に立つことができるのだから。
雑事を済ませ、昼食を取り、カノンとの待ち合わせの時間になる。
さぁ、今日もあの惑星に旅立つとしよう。
ニューロノーツ先生、本日も宜しくお願い致します。
こんだけ連日使い倒してると、だめな主人認定されそうだな……。
そして、視界は暗転する。
*────
「ボンジュール、カノン。待たせた?」
「あ……っ! こんにちはっ、フーガくんっ」
ダイブインは無事に成功。
拠点である脱出ポッドの中で視界を取り戻すと、そこにカノンの姿を認める。
むっ、5分前行動ではなかったのか。諮ったなカノン……っ!
「いま来たばかりだから、大丈夫、だよ?」
「ならよかった。ま、時間に間に合うように来てるわけだからいいよな?」
「うんっ」
昨日に引き続き、カノンは今日もほんのり機嫌がよさそうだ。
なにかいいことでもあったのだろうか。
卵や夏野菜が安かったとか。
……カノンって自炊勢なのかな。
この世界ではじめて調理を行うとき、それは判明するだろう……。
カノンの装いは、少し馴染んできた彼女の普段着。
深い藍色のチュニックに青のズボン。
肩に軽く羽織った黒いウール地のケープ。
……もう一種類くらいバリエーションがあってもいいかもな。
気分に応じていろいろ着替えられる方が、選び甲斐があるだろう。
今は落ち着いた色合いだし、今度は暖色を基調にした華やかな感じのとか。
俺の装い? それはまあ、おいおい。
脱出ポッドの採光窓をみれば、既にセドナの日は落ちたあと。
こちらの時刻は夜七時前後と言ったところ。
既に【夜目】は取得済みなので、野外活動に躊躇いはない。
むしろ【夜目】の習熟のために、積極的に外に繰り出してもいいくらいだが……。
あいにく、今日やることは決まっているのだ。
「じゃ、活動開始と行くか。予定通りで問題ない?」
「んっ。素材の分析と、道具作りと、木材の採取……だよね?」
「ああ。問題ないならそれで行こう」
できれば今日のうちに家具作りまで行ってしまいたい。
まずは採ってきた石調べるぞ、石!
*────
圧縮ストレージの中から、昨日採ってきた2種類の岩塊を取り出す。
俺とカノンでそれぞれ一つずつ、計4つの岩塊。
このうち2つは柱状玄武岩の柱から採取した、玄武岩質の岩塊。
俺が採取したのは、なにか雪華のような水晶が混ざっているもの。
一方カノンには、対照実験のために通常のものを採取してもらった。
この二つを比べれば、玄武岩に混ざったこの雪華がいったいなんなのか判明するだろう。
あとの2つは、拠点南の花崗岩質の岩場で適当に採取したもの。
こちらは俺とカノンのものに明らかな違いがあるわけではない。
それぞれの岩塊は、概ね縦15cm、横20cm、厚さ5cmから10cmといったところ。
……うん、あらためてみるとそこそこのサイズだな。
よくぞ運んだものだ。
「じゃあ、カノンが採ってくれた玄武岩から行くか」
「ん、入れてみるね」
カノンが岩塊を大切そうに抱え、分析装置の中に入れる。
……ここまで散々玄武岩だと言ってきた手前、これで玄武岩じゃなかったら、俺はとんだピエロだが。
――――――――――――
■鑑定結果
アルカリ玄武岩|(岩石類)
■計測結果
質量:5.72 kg
容積:1798.74 cm^3
密度:3.18 g/cm^3
温度:――
――――――――――――
「あっ、合ってた、みたい?」
「アルカリ……?」
「#アルカリ玄武岩」とは。
これってセドナのトレンドになりませんか?
わからんが、玄武岩ではあるようだからいいか。
地球のそれと同じような岩石というだけでかなり安心できる結果だ。
では、その成分やいかに。
――――――――
■化学組成|(%)
SiO2 45.4
Al2O3 14.7
CaO 10.5
FeO 9.21
MgO 7.80
Fe2O3 4.09
TiO2 3.21
Na2O 3.02
K2O 0.89
―― 1.3
――――――――
「なるほど……なるほどなっ!」
「なに、が?」
「わからん」
しかし、そうか。
抽出可能成分という形で示してくれた植物と違って、岩石はこういう風に化学組成を教えてくれるわけだな。
確かに岩石に成分もなにもないよな。分析すべきはその化学組成の方だろう。
地質学者ならこれを見てふむふむと言えるのかもしれないが、これは俺たちが見ても仕方ないかもしれんな……。
俺の取ってきた雪華入り玄武岩との比較のために、一通りは覚えておこう。
あ、でも二酸化ケイ素がだいたい半分を占めていることは分かるぞ。
チタンや鉄、マグネシウムが酸化物として含まれていることもわかる。
アルミナもあるが……前作で生産ガチ勢はこいつに相当苦戦してたな。
製造装置先生の御業を以てしても、アルミナからアルミニウムは簡単には取り出せなかったらしい。
いわゆる氷晶石とか、外付けの専用炉とか必要だったらしい。詳しくはよく知らないけれど。
チタンはレアメタルの一種。これはたしか計器類の作成にも使ったはずだ。
そこそこの比率で含まれているが、これは……どうだ。
量を集めればそのあたりの機器類の素材にもなる……のか?
今は単なる石材としてみたほうが良いだろう。
で、結論は。
――――――――――――――
■適正評価
【石材適正】優良 【※詳細】
――――――――――――――
「よかった。無事に石材として使えるみたいだ」
「ん、採ってきた甲斐、あったね」
玄武岩の石材って日常ではあんまり目にしない気がするけど……あるところにはあるのだろうか。
現実における石材としての評価には採取のしやすさとか加工のしやすさが基準に含まれるだろうから、現実で見かけないからといって石材として不向きとは判断できない。
少なくとも分析装置的には十分実用に堪えるという判断なのだろう。
ありがたい。
「この、詳細って、なんだろ?」
「ん、たぶんどういう意味で優良なのかを教えてくれてるんだろうけど……」
木材の時に等級だの吸水率だの出てたし、それに相当するものだろうか。
カノンの言葉を受けて、詳細ボタンをポチっと押してみる。
――――――――――――――
モース硬度 6.6
圧縮強度 1500 kgf/cm^2
曲げ強度 140 kgf/cm^2
引張強度 55 kgf/cm^2
剪断強度 200 kgf/cm^2
吸水率 0.35%
耐熱度 570℃
熱伝導率 1.8kcl/mh℃
熱膨張率 7.0
……
……
――――――――――――――
「……カノン。この石は石材として優良だ。いいな?」
「う、うん……」
俺たちはパンドラの箱を開けてしまったようだ。
この詳細については、普段は見なくてもいいだろう。
見る人が見れば、この石材をどう使うのがいいのかわかるのだろうが……。
いいんだよ、俺たちにはとってはある程度硬ければそれで。
耐熱度を調べられることは覚えておいていいかもしれない。
あ、でもモース硬度はなんか聞いたことあるな。
鉱物図鑑とかに組成と一緒によく載ってる気がする。
確かダイヤモンドが10のやつ。
*────
「よし、玄武岩はこれでおっけー。次行ってみよー」
「よ、よーっ」
さて、通常の玄武岩は分析は終わった。
では続いて、俺が採取した雪華入り玄武岩……なんかそんな名前の岩石が現実にもありそうだが……も調べてみよう。
好奇心としては、こっちが本命だ。
――――――――――
■鑑定結果
未登録|(岩石類)
■計測結果
質量:4.92 kg
容積:1556.96 cm^3
密度:3.16 g/cm^3
温度:――
――――――――――
カノンの運んだ岩塊より俺が運んだ奴の方が軽いじゃねぇか……。
なにカノンに自分より重い方持たせてんだよお前……。
見た目同じくらいの大きさだったから気づかなかったよ……。
じゃ、なくて。
「未登録扱いなのか。でも見た感じ、同じ玄武岩質だったよな」
「なにか混ざってると、別物になる?」
「あの白い結晶のしわざか」
ならば化学組成を見てくれよう。
この白い結晶はなんじゃらほい。
――――――――――
■化学組成|(%)
SiO2 42.7
Al2O3 14.6
CaO 10.4
FeO 9.26
MgO 7.74
Fe2O3 4.08
TiO2 3.00
Na2O 2.98
K2O 1.00
NaCl 0.07
―― 3.50
――――――――――
うん?
ちょっと不純物が多いけど、含有比率も含めて、ほとんど同――
「えっ」
「あっ」
NaCl?
「フーガくん、一番下のって、たしか……」
「えんかなとりうむ」
「塩、だよね?」
「塩、だよな」
塩なんだが。
えっ、あの雪華みたいなやつ、塩なの。
あれ、岩塩って玄武岩に混じったっけ。
岩塩の成因って、確か昔の海水がなんちゃらじゃなかったっけ。
0.07%ってどれくらいだ。
本体が5kgだから……3.5gくらいか。
あれ、けっこう入ってるぞこれ。
小さじ一杯弱採れるってことだよな。
ほぼ100%塩化ナトリウムでできた岩塩に比べれば微々たるものだが……
セドナ高地。柱状節理。
火山活動で隆起した台地。
つまり、これはあれか。
このセドナ付近が、かつて海だった可能性がありうるのか。
セドナのどこかには、岩塩そのものが析出している場所がある可能性もある?
「うーん、これは4日目にして大発見だなぁ」
なんか面白そうな見た目の石があるからと採取してみれば、まさか岩塩混じりとはな。
この俺の目にはまるで見抜けなかったわ。
NaClの文字を見て思わず中断してしまっていた分析結果を引き続き追えば、
――――――――――
■抽出可能成分
塩|(塩化ナトリウム)
――――――――――
先ほどの玄武岩の分析時にはなかった、抽出可能成分の表示。
まあ、そうなるよな。
岩塩というわけではないし、塩の結晶そのものの分離になるのかな。
分離の仕方はよくわからないが……。
――――――――――――――
■適正評価
【石材適正】優良 【※詳細】
――――――――――――――
最後に通常の玄武岩と同じ適正評価を加えておしまいだ。
……この石は石材に使うのはちょっともったいないな。
なにせ塩だ。
1,000m級の高地として外界と隔絶されているセドナで塩が手に入るなどとは思わなかった。
「よろこべカノン。塩サラダが食えるかもしれんぞ」
「けっこう美味しそう、かも?」
塩の供給がこれからの生活に与える影響は極めて大きい。
肉に魚に葉っぱに木の実に。
その辺の自然素材がことごとく料理として立ち上がってくる。
もちろん保存にも。このゲームは食材は時間経過で普通に劣化するからな。
これは今後も採取したいな。
あの辺り、ちょっと本格的に採掘してみるか?
まあ、そのあたりはおいおい考えよう。
この石については、このあとそのまま製造装置で粉砕してみよう。
実際に塩が作れるのか、ちゃんと食塩なのか、一度試しておきたい。
「よし、塩はいったん置いといて、花崗岩の方も行ってみようか」
「んっ、どんどん行こっ」
このゲームの分析、やっぱ楽しいな……。
前作でももうちょっとがっつりやってもよかったかもなぁ……。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる