女性恐怖症な俺のもとに義理の妹が来るってマジですか?

高桐AyuMe

文字の大きさ
4 / 6

同じにはならない

 スマホのアラームが仕事をしなかったことに怒りと安心を覚えながらベットから起き上がる。
 今日も学校だ。ボーっとしてられない。
 寝巻のまま、一回の洗面所に向かう。
 洗面所で顔を洗って、ようやく頭が覚醒した。
 そうだ、昨日は親父の結婚相手の娘が来たのか。
 ふと、鏡に写った自分を見た。酷く暗く見える。ただ部屋が暗いだけなのか。
 何だか気分まで暗くなりそうで自室に戻る。
 ただでさえ朝は憂鬱だ。自分から気分を下げてもいいことはない。
 いつもなら寝巻のままリビングへと行くのだが、同居人がいるなら話は別だ。
 どうせならと制服に着替えてリビングに足を運ぶ。
 だが、リビングには誰もいなかった。
 テーブルにはラップにくるまれた朝食らしきものが置いてあった。
 彼女が作ったのだろうか。
 昨日は冷たく突き放してしまった。
 突然、昨日のことがよみがえり、申し訳の念が俺に押し寄せる。
 取り敢えず、作ってくれたならばいただくとしよう。
 そう思って近づくと、紙切れが一枚置いてあった。
 読んでみると、こう書かれてあった。
 
 先に行ってます。良かったら食べて下さい。

 ラップにくるまれた朝食を見る。
 ……黒い塊が何個かあった。
 そして、俺はそこで初めて時計を見た。
 時計の長針はもうすぐ一限目の開始を知らせるところまで近づいていた。


 昼休み、俺は弁当も作ってこなかったことを思い出し、購買に行くことにした。
 結局、一限目に遅刻して赤っ恥を搔いた。
 まさか、そんな時間までぐっすりとは。自分でも初めてでなかなかに驚いている。
 そのせいか、授業中はいつも眠気と格闘しているのにもかかわらず、今日は一段と目がさえていた。
 てきとうな購買パンを口に押し込んで、教室を見渡した。
 ……教室の後方に人だかりがあった。
 男子女子問わず、一つの机を取り囲んでいる状態だ。
 はたから見ればいじめに見えるが、聞こえてくる声はどれも楽しそうだった。
 その机をの持ち主、その中心にいる人物は俺はもう知っていた。
 神山明日香。
 親父の結婚相手の娘で、昨日俺の家に同居しに来た女の子だ。
 冷静に考えてやばいことが起きている。

 突然義理の妹が家に来た。しかも同級生とな。
 どこのライトノベルだと文句の一つくらいは出てしまうだろう。
 漫画で見た世界を俺が実際に体験しているのは何とも摩訶不思議だった。
 不思議なだけで、それがいいことだとは思っていない。
 一般的な男子高校生に当てはまらない俺にとっては冗談じゃないと、吐き捨ててしまいそうになる。
 周りの奴らには転校してきた理由は話したのだろうか。
 でも、そうだったら誰かしら俺のもとを訪ねてくるだろう。
 そもそも学校側が隠しているんだから、暴露するのはおかしいのか。
 ばれてもばれてなくても、俺が学校で彼女と関わらないのは変わりないことであるが、せめて昨日と同じ学校生活が送れることを切に願った。


 帰宅しても彼女はまだ帰ってきていなかった。
 一日にしてクラスの人気を勝ち取ったら、そう簡単には帰れないのだろうか。
 一生そんなことにはならない俺にとっては生涯理解できない事象だな。
 制服を脱ぎ捨て、部屋着に着替えるとキッチンに立つ。
 流石に夕飯に炭を食う気にはなれなかった。
 別に料理ができないならやらなくてもよかったのに。
 それでもやってしまう。彼女の優しが今はただただ苦しい。
 昨日のことを思い出してまた苦しみだした心を自ら𠮟咤して作業に没頭した。
 そうこうしているうちにガチャリ、と玄関から音がした。
 彼女が帰ってきた。
 俺は一度深呼吸する。
 大丈夫だ、と何度も呟いて覚悟を決める。
 顔を上げたとき、彼女が廊下からひょっこりと顔をのぞかせてきた。

「ただいま。身支度してくるね」
「ああ、……おかえり」

 何とか絞り出した俺の返答を聞いてニカっと笑みを浮かべてトトトッと階段を駆け上る音が聞こえた。
 胸の苦しみはない。呼吸は乱れていない。
 大丈夫だ、問題ない。
 本当だったらキメ顔まで用意したいところだが、小恥ずかしいためやめておく。
 さっきに席について彼女を待つことにした。
 さっさと食べてしまって彼女との対面を避けるのが俺としてのこの場の最適行動だ。
 俺が悪人だったらそんなことためらいなしにできたんだろうな。
 だけど、前に言った通り。俺は悪人にはなれない。
 だから、せめて昨日のことは謝りたいと、心の底から思っている。
 彼女が下りてきて、向かいの席に座った。

「わ、おいしそう。いただきます」

 丁寧に手を合わせて箸を動かし始める彼女。随分と育ちがよく見える。
 それを見て、俺もぼそりと呟いて箸を伸ばした。
 ……うん、我ながらうまく作れている。流石に何年も一人で料理をこなしていればこれくらいなのは当然か。
 比べる対象がないんじゃ自慢するのもできないが、これに関しては誇ってもいい、俺の唯一の特技だ。
 ふと、彼女を見ると、目を輝かせて俺の方を見てきた。
 一瞬目が合った。俺がすぐそらしたけど。

「ねえ、これ勇柚が作ったの?」
「え、あ、うん。そう。家に一人で料理することが多いから……」
「すごいね! 同じ年の人が作ったとは思えないよ」
「そうかな……。もっとうまい人もいるんじゃないかな……。俺が作ってるのは時短ものだっかだし……」
「それでもすごいことだよ」

 彼女は箸を動かす手を速める明日香。そんなに気に入ってもらえたのならうれしいものだ。気分が上がるわけではないが……。
 無邪気に話す明日香と、素朴に答える俺。
 何とも対照的な構図だ。
 当の本人である俺はというと、段々と味が感じられなくなってきていた。
 それもそのはず、動悸がさっきよりも激しくなってきている。
 頭が真っ白になりつつある。
 限界、なのか……。
 だが、少しだけ俺に光が見えた。料理が盛られたお皿には何もなくなっていた。

「ごちそうさまでした」

 またもや丁寧に手を合わせて箸をおく。

「それじゃあ、作ってもらったし、食器は私が洗うね」
「あ、じゃあ、お願い」

 一刻も早く、ここを離れなきゃいけない。頭ではなく、体でそう感じた。
 正常な判断ができない。デジャブを感じたことも忘れ、俺はリビングから自室を目指す。
 だがそれは叶わなかった。
 誰かに腕を掴まれた。振り返ると昨日と同じように彼女が俺の腕をつかんでいた。

「ねえ、聞かせてよ」

 さっきの食事中とは打って変わって寂しそうに声を漏らす。その目は俺に悲しいという感情を訴えかけてきていた。
 俺の何を、という返答よりも先に彼女が続けた。

「昨日からなんか変だよ? 手を振り払った時も、今日の朝だって。声かけても起きなかったし、結局遅れてたし。学校にいるときもわざと避けてたよね」

 事実だ。だから何も言えない。
 何か変だということは俺が一番わかっていた。今までなかったことに驚いているんだから。
 俺の症状は放ってほいてしまったらこじらせてしまったらしい。
 明らかに症状は昔より悪化していた。

「ねえ、聞かせて。私、あなたに何かしてしまったの? 私にはわからないの。あなたが何を感じているのか。何が起きているのか。だから、教えて」

 彼女の心からの訴え。俺はその問いかけに答えるかどうか迷った。
 だけど、俺に真摯に訴えかける彼女の瞳が余計に息苦しくて、酸素が足りなくなって……。
 
 ふと、足の感覚がなくなった。
 力を入れようとしても、頭が動かない。
 頬がフローリングの床に着いたとき、ようやく自分が置かれた状況を理解する。
 俺、倒れて……、
 声が発する前、俺の視界は黒色に染め上げられた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

お兄様「ねえ、イケナイ事をしよっか♡」

小野
恋愛
父が再婚して新しく出来たお兄様と『イケナイ事』をする義妹の話。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

『桜色の高校デビューしたら、百合の美少女モデルに迫られて、なぜか女の子たちの争奪戦が始まりました』

杏仁豆腐
恋愛
中学時代、いじめが原因で引きこもっていた佐倉ひより。 「高校では変わりたい」と決意して、桜色の髪留めをつけて高校デビューを果たす。 しかし入学初日、 ひよりは校内で有名な“百合のように美しい”ファッションモデル、 朝比奈みゆに突然声をかけられる。 「ねえ、あなた……すごく可愛いね。友達になってもいい?」 それが、すべての始まりだった。 ひよりは誰も好きにならないと決めている。 でも、みゆはひよりにだけ距離が近くて、甘くて、独占欲が強い。 さらに―― ほんわか癒し系のこはる クールなS系美人のすみれ 子犬みたいな後輩のりん 真面目で巨乳の委員長まゆ なぜか女の子たちまでひよりを狙い始め、 気づけば毎日が恋と修羅場の連続に。 「私は誰も好きにならない……はずだったのに」 ひよりの心は、 桜のように揺れて、 百合のように誰かを求め始める。 これは、 “恋をしない”主人公と、 “恋を教えたい”美少女モデル、 そして彼女を奪い合う女の子たちが織りなす

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話