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しおりを挟む嬉しそうな鈴音の隣に、申し訳なさそうに研が腰掛ける。テレビの前に設置されたソファに座る二人に、動揺を態度に出さないよう気をつけながら紅茶の入ったカップを置く。『ありがとう!』と天真爛漫に笑う鈴音に対し、研はすこぶる遠慮深げだ。その他人行儀なのも、今の裕には癇にさわった。
鈴音がゲームに誘ってくれたが、何となく気乗りがせずに断ってしまう。話を聞いていると、研はどうやらもうすぐ帰る鈴音に強請られ連れて来られたらしく、鈴音に倣って不慣れな操作に努めている。
身を寄せ合ってゲームをする彼らを見ていると、再び暗雲のようなもやもやが胸に立ち上ってくる。
元々休憩しようと思っていたことから、裕は椅子へ座りソファではしゃぐ二人の様子を静かに見守ることにした。入れ直した紅茶を少しずつ飲みつつ、ゲームオーバーとなった研のしょげた姿を眺める。
「お腹空いてきちゃった・・・・・・」
紅茶を飲み終わる頃、ゲームを続けている研を放置し鈴音が腹をさすりながらテーブルへとやって来た。
時計はもうすぐ4時を示している。夕食前だが、まぁいいかと戸棚の中からクッキーの缶を出すと鈴音がやった!と小躍りして椅子に着いた。
「研治さん、休憩しよ-」
「う、うん・・・・・・もう少し・・・・・・」
言った直後にゲームオーバーの効果音が流れた携帯をソファに置き、疲れた顔をした研がいつも座る場所へ座る。
「あれ?そう言えば、研は?上で何かやってんのかな?」
「気晴らしに外出て行ったっきり戻ってこないんだよねー。どこ行ってるのかな?」
「け、んならさっき外ですれ違ったよ。調べ物しに図書館に行くってさ」
「へぇ、そうなんだ。連絡してくれればいいのに」
鈴音の疑問に事実を伝えると、研が慌てながら言い訳をする。それに態とらしく、だが本音を漏らすと、向かいに座る研の肩がわかりやすくビクッと跳ねた。
我ながら、ネチネチとした嫌なセリフだと思ったが、やきもちを妬くのもいい加減我慢の限界にきているのだ。
起こっているのがわかっているのだろう。研が上目遣いに窺ってくるが、裕は知らぬふいをして顔を逸らした。
「僕ちょっとトイレ。研治さん、帰ってきたら次のやつやろ!」
クッキーを食べ終え、手拭きで手を拭った鈴音がパタパタとレストルームへと走って行く。扉が閉まる音を確認すると、研があからさまに肩の力を抜いて溜息を零した。
「研、どうしてこんなことになってるの?」
「偶々だよ。偶々暑くて前髪縛ってて、偶々汗を拭くのに眼鏡を外してて、でその時に偶々鈴音と会ったんだ」
本当のことだろうが、言い訳に聞こえてならない。
「俺、知ってるんだから。俺に秘密で鈴音と出かけたり、メールのやり取りしているの。こないだだって、勉強だとか嘘ついて、鈴音と映画館行ってきたんでしょ」
ここ数日間感じた寂しい気持ちや、汚い嫉妬、苛立ちも爆発しそうになっていた。知らない間に交流を深めて、恋人の自分とは行かないのに二人で出かけて、映画見て、楽しそうにメールのやり取りをして。
今まで溜まっていた汚い感情が、一気に溢れ出す。
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