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19.リリアム兄弟の巻:(一話の)リリアム兄弟視点
中央都市リリアム。名前は立派なものの、それほど重要な都市でもないし、それほど有名なものもない。敷いて言うなれば、一番を誇る大規模な風俗街、だろうか。
サーヴァルとマーヴルの兄弟は、そんな都市を領有する侯爵家の子どもとして生まれた。生まれた双子はそっくりな顔をしており、そしてどちらもかなりな不細工であった。幸い両親の容姿もそれほど良くないため、冷遇はされなかった。家で働く者も大半が醜く、双子は彼らに甘やかされ我儘に育った。
彼らは外に出て自分の容姿で打ちのめされても、その我儘精神はなくなることはなかった。
二人でなら、大丈夫。
サーヴァルにとってマーヴルは、そしてマーヴルにとってサーヴァルは自分の半身であり、かけがえのない存在であった。皆が自分を見放しても、半身だけは大丈夫。二人でいれば、大丈夫・・・・・・。それを胸に、二人で強く生きてきたのだ。街へ行くときだって、手を繋いで歩いていれば、怪物を見るような目も、大人からの罵声も、何も怖くはなかった。
彼らは自分たちの領有する領の一部、風俗街の店でもデカい顔をしていた。醜い者は、普通の娼館へは滅多なことでは入れない。入れたとしても、ハエのような扱いしかされないであろう。しかし、醜い者専用の風俗店ならば、例え迎える者も醜くても店に入ることはできる。
兄弟は数ある風俗店の中でも特に、『desire』という店がお気に入りだった。そこのキャストは顔は悪いが出来がよく、金を出しても不快にならない接待ができる。例え文句を言いつけても、笑って頭を下げてくれるのだ。
普段鬱憤が溜まっている彼らにとって、『desire』は、鬱憤を晴らすために行く場所であった。
ある日、閉まっている扉を叩いて無理に開けさせた。店長は困っていたが、そっちの言い分など知らない。行きたいと思ったから来たのである。そのような態度だからかこの店のキャストからは嫌われているが、二人は気にしていなかった。
店長は青い顔を懸命に下げ、『今日は休みで誰もいない』と謝ってきた。だがサーヴァルとマーヴルにはそんな事情は通用しなかった。仕事の方でむしゃくしゃすることがあり、誰彼構わず八つ当たりをしたかったのである。平謝りをする店長が『新人ならいるのですが・・・』と漏らし、だったらその新人に相手をしてもらおうということになった。
「ちょっ、店長!そんないきなり・・・」
「ちょっと、客に挨拶なしってどういう――」
キャストルームを区切るカーテンを乱暴に開き乱入してきた曲者に双子が文句を述べようとしたが、その姿が目に入った途端、言葉が止まった。
「お客様、申し訳ありませんでした。今日お相手させていただく、ヨヨギ ナナミと申します。よろしくお願いいたします」
「ふん!本当に新人だね。まるで教育がなってないよ!ほら、早く部屋に案内してよね。君みたいにヒマじゃないんだから」
「そうだよ。ほらほら早く!!」
二人はしばらく固まっていたが、気を持ち直す。サーヴァルが嫌味を、そしてマーヴルが合いの手を入れ、新人のイケメンホストを詰った。きっと彼も内面は汚い奴のはず。顔の良い者は大抵そうなのだ。醜い奴にキツく言われただけで、すぐにキレて罵倒してくるだろう。そうしてこなかったら、キレて本性を出すまで詰り続けてやるっ。
二人はナナミ、という男のことを詰り続けた。彼は全くホストの経験がないらしく、ただの素人であった。それを理解したとしても決して悪い対応でないはずなのに、二人は彼の一挙手一投足に対し文句をつけた。
『グズ』『僕たちは客だぞ』『ちゃんと働け!』
そんな暴言の数々に耐えこんな醜い自分たちに対して普通に接してくるナナミを、正直すごいと思った。だがそれ以上に、完璧な接客をする彼に腹が立った。どこか綻びを見つけられたならまだ溜飲も下がったのかもしれないが、目の前のキャストには弱点の一つもなかったのだ。二人は躍起になって、ナナミを責めた。
「ねぇ、聞いてる?」
「もうっ、ちゃんと仕事してよっ!」
マーヴルが嫌なイントネーションを付けてナナミの足首を蹴飛ばすと、突然すごい力で手首を掴まれた。
「ちょっ!!何す――
何をするのだと叫ぼうとしたマーヴルに、何が起きているのか未だにわかっていないサーヴァル。そんな二人に、ナナミの低い声が告げられた。
「ムカつくテメーらにはお仕置きしてやるよ」
そこからは、すごかった。まずサーヴァルは手首を拘束されたままヴァージンを奪われ、その間口に物を詰められ手首を縛られ、動きと声を封じられていたマーヴルが、兄の後に激しく抱かれた。思わず潮吹きまでした彼らは、ぐるんと目を回して気絶をしてしまった。
目が覚めたのは、それからしばらく立ってから。二人は同時に目を覚ました。脱がされていたはずの服は着せられており、汚れていたはずの肌は綺麗にされている。彼がやってくれたのだと、すぐにわかった。態と怒らせることがなかったら、すごく優しくて真面目な男性である。こんな最悪な客にもちゃんと後始末をしてくれるのだから。
彼を怒らせてしまったものの、二人はその怒った彼の行動を、起きてしばらくしてからも信じられなかった。
いくら怒ったとしても、不細工を抱くなんてことは100%あり得ない。顔の良い奴にとって醜い者を抱くなど、絶対にできるものではないからだ。いくら怒りにまかせたからといって、乱暴にするといっても、暴力に訴える以外はなかった。
美しい彼が、こんな醜い自分たちのことを抱いてくれた・・・・・・。
普通であれば、侯爵令息である彼らに乱暴をした彼は許されない。しかし顔至上主義であるこの世界においては、見目の悪い者と見目の良い者が争った場合、9割方後者の方が優遇されるのだ。サーヴァルトマーヴルは話し合い、店長を連れて情けない顔で戻って来たナナミを素通りし、店長に大金貨を渡して屋敷に帰った。
大金貨は大金だ。しかし、その価値が彼にはあると思ったのだ。
それから数日後、二人は再び『desire』を訪れた。受付でナナミを指名すると、嫌そうな顔をしたナナミが姿を現す。
「また僕たちが来てやったんだから、」
「感謝してよね!」
今度こそは嫌われないようにしようと決めていたのに、口から出るのは憎まれ口。面倒そうにするナナミの姿に、二人は唇をぐっと噛んだ。
半個室へと案内され、そこへ座りドリンクを飲んでは時折フルーツを摘まむ。自分から言葉を発することができず、できてもつまらない世間話ですぐに会話が終わり、三人の間には非常に気まずい空気が流れていた。
二人のグラスが空になり、ナナミがお替わりをどうするか尋ねようと口を開き掛けたとき、サーヴァルとマーヴルは意を決してナナミの袖を摘まんだ。顔を寄せて、いつもでは言えない本音を述べる。
「ねぇ・・・・・・、今日は君のこと怒らせないから・・・だから・・・・・・」
「今日はちゃんと、ゆっくり、僕たちを・・・・・・」
「「抱いてくれない?」」
やっと言えた本音にナナミはポカンとしたが、みるみるうちにその顔がにやけた顔に変わっていった。そして今までの素直になれない自分たちに打ち勝った褒美のような、ナナミの極上の笑みが、リリアム兄弟に向けられた。
「はい・・・・・・喜んで」
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