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62.【迷える子羊なお客様】9~モモの”ナナミ”?~
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「えっ、もうネコ見つかったの!?」
「はっや~!!」
「そうなんだ。モモがご飯あげてたらしくて」
朝、起きてきた皆に早速ネコが見つかったことを話す。昨夜寝るのがあれだけ遅くなったにも関わらず、皆猫探しへのやる気で早起きをしてくれたのだが、朝一で収束の報告をすることになるとは思いもしなかった。
よかったよかったと朝食を食べるキャストたちの脇で、モモが拗ねた様子で
スープを啜っている。
「で、モモは一体どうしたの?」
シノが声を落として聞いてきた。カシアも『なんか機嫌悪いな』と言いながらパンを囓る。
「それが・・・・・・」
ナナミが眉を下げながら、説明しようと口を開く。実は、モモは“ナナ”と離れたくないのだ。
せっかく自分に懐いた猫。可愛くて、可愛くてしょうがなかったらしい。近々、店長に頼んで店で飼う許可を貰おうとしていたのだという。それはまぁ・・・拗ねるな。とナナミは何とも言えない気持ちになった。何となく、小さい頃動物を飼いたいと想っていたのを思い出す。両親が仕事で忙しそうだったため、思っても黙っていたのだが。よく、世話が大変だとか、亡くなってしまったときにショックが大きいことを耳にする。子どもだと本当の意味でそれが理解出来ないと思うし、今だから命のあるものを世話することの責任重大さがわかるが、やっぱり子どもにとっては生き物をペットにすることにとてつもない魅力を感じるのだ。と、何目線で見ているのかわからない感想。
「まぁまぁ、猫なんか、ここらへんいっぱいいるでしょ。店長に頼んで店で飼ってもらえばいいじゃん」
ぶすくれているモモの頭を、シノがわしゃわしゃと撫でながら慰める。カシアも、そうそう、と続けた。
「ダメだもん!!“ナナミ”じゃなきゃ、ヤダもん!!」
「ヤダもんってなぁ・・・・・・て、“ナナミ”?」
「何々・・・?あの猫、“ナナミ”って言うの?」
「あ・・・・・・ぅ・・・・・・」
しまったといった顔をするモモに、シノとカシアがにやにやと迫る。見る見るうちに真っ赤に染まっていくモモと、反対ににやりと口の端を上げる二人。そして安全地帯だと思って見守っていたナナミにも、二人の面白そうだという笑顔が向けられた。
「だってさ、ナナミ」
「猫ちゃんだって、ナナミ」
「・・・にゃあ」
ナナミは思わず、そう鳴いた。(目の前の三人だけでなく、周囲にいたみんなが全員顔を両手で覆ったので、見るに堪えなかったのかなと反省)
***
モモが“ナナ”を“ナナミ”と命名したのは、見た目が理由ではない。最初の出会いはモモがおやつをこっそり失敬して裏庭で隠れて食べていたときだった――(因みにここで、シノとカシアのツッコミが入る)――、植物の影から小さな黒い塊が出現したと思ったら、その正体は子猫の“ナナ”だった。
動物が好きなモモは一気に心を躍らせ、しゃがみ込むと手の平を見せながら『おいで、おいで』と手招いた。しかし警戒していたのか、ナナはモモのことを下からじぃっと観察し、近づこうとはしなかった。醜い自分を品定めしているのかと自虐的になっていると、突然子猫が近づいてきて、引っ込めようとしていたモモの手に頭をすり、と触れさせたらしい。そこでハートを掴まれたのだという。
まるで心情を探るように観察し、少しでも気持ちが落ち込んでいたりすると励ますように身体をすり寄せてくる。容姿に関係なく寛大な態度で、思わず顔が綻んでしまうほど伝わる温かい愛情に、抱きしめて離したくなくなってしまう。クールだが、思いやりのある子。まさに、ナナミくんだもん・・・。モモは唇を突き出して呟いた。
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