跼蹐のゴーレムマスター~ビビリ少女ラヴィポッドはゴーレムに乗って~

現 現世

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第26話 氷の化身

「さあ、ユーエスを助けるわよ! 最高のゴーレムを作りなさい!」

 ルムアナが声高に言い放った。

「最高の……ゴーレム」

 ラヴィポッドの脳内を、甘美な響きが反芻する。
 逼迫する状況にあったため、ゴーレム錬成すらも事態の好転に必要な一工程として捉えていた。
 しかし状況がどうあれ、最高のゴーレムを作ることはラヴィポッドの目標でもある。

 本当にゴーレムでユーエスを助けられるのだろうか。
 そんな心配が強かった。
 けれどそこに少しだけ、前向きな気持ちを足しても良いのかもしれない。

「や、やってみます……!」

 気合十分。

 使用するマナ結晶も一番大きいものを選んだ。
 大きすぎて土人形の中に埋め込めず、胸部にグリグリと押し付けるに止める。

 続けて汚染地帯調査のために新調した護身用の短剣を抜く。
 浅めの傷をつけて術者の、ラヴィポッドの血液を垂らしたいところだが。

「……」

 震えながら白目を剥いていた。
 この大事な局面でまたしても怖気づいてしまう。
 都合よく血が流れていればよかったが、生憎と怪我は擦り傷くらいのもの。
 垂らせる程の血は流れていない。

「どうしたの?」

 ルムアナが目敏く、ラヴィポッドの様子がおかしいことに気づく。

「こ、こっちのセリフですよ!」

「……何を言っているの?」

 会話が成り立たない。
 やっぱりおかしいわよね、と訝しげな目を向けるルムアナ。

 ハニはそんな二人を見て苦笑い。
 二代目のゴーレムを錬成する際、同じような状況に立ち会ったこともあり、大方の事情を察していた。
 ルムアナにヒソヒソと耳打ちする。

 聞き終えたルムアナはラヴィポッドを見て溜息を吐いた。

「なんだ、そんなこと……ほら、貸してみなさい」

 ラヴィポッドが自分で傷をつけるのが怖いなら、代わりにやってあげる。
 早く短剣を渡しなさい、と催促するように手を伸ばした。

 しかしラヴィポッドはルムアナの手を見て意味を察すると、絶対に渡さないとばかりに短剣を抱える。

「る、ルムアナさんだけは嫌です! 指丸ごと千切っちゃいそうですから!」

 暗に乱暴者、と言われた気がしてルムアナの顔が引き攣り、眉はピクピクと動いた。

「へ、へぇ~。私、そういう風に見えてたの、ね!」

「ああ!」

 ルムアナが不意を突いて短剣を引っ手繰る。
 ラヴィポッドの腕を脇で挟んで伸ばさせた。

 示し合わせていたようにハニがラヴィポッドの背後に回り込み、抱くように頭を押さえつつ目隠しした。

「な、なにするんですか!?」

「刺さるとこ見たら余計痛く感じるでしょ?」

「真っ暗でいつ痛くなるかわかんない方が怖いです!」

「ありゃ、そっか」

 ハニが目隠しを解く。

 ラヴィポッドは視界が開くなり、手に突き付けられた短剣を見て顔を青褪めさせ、

「……や、やっぱり目隠しお願いします」

 と前言撤回した。

「はーい」

 ハニが再びラヴィポッドの目元を手で覆う。

 目隠しが終わったのを見て取ったルムアナは、

「痛くしないから、力抜きなさい」

 ギュッと握った手を無理やり開かせる。

「や!」

 だが尚もラヴィポッドは手に力を込めて抵抗した。

「動いたら危ないわよ。指切れちゃってもいいの?」

 ピクッ、とラヴィポッドの動きが止まる。

「良い子ね。行くわよ?」

 ゴクリと唾を呑み込んで、その時が訪れるのを待った。

「さーん……」

 ルムアナがカウントダウンを始める。

 三秒後が一生来なければ。
 ブルブル震え、届かぬ願いをしながら痛みに備える。

「にーい……」

 つぷっ。

「……ふぇ?」

 ラヴィポッドは一指し指に何かを感じて少々間抜けな声を発した。
 不意に訪れた感覚に理解が追い付かない。

「いーち……」

 ルムアナがラヴィポッドの指先を土人形の上まで誘導し、傷口を挟み込んで血を絞る。

「……痛っ、痛いです!」

 漸く指に伝わる感覚が痛みだと気づいたラヴィポッド。
 血が滴り、土人形に染みていく。

「ぜーろ。はい、終わったわよ」

 ルムアナが告げると、目隠しが外された。

 ラヴィポッドは自身の指を見て、カウントダウンの途中に刺されたのだと思い至る。
 傷口を見ていると痛みが増していく気がして、あまりの恐ろしさに気絶した。

「起きてー、ゴーレム作るんでしょ?」

 しかしハニがラヴィポッドの体を揺らすと、

「ゴーレム!」

 ハッと意識を取り戻した。

「……特殊な教育でも受けているの?」

 ルムアナの呟きを他所に、ラヴィポッドが土人形に手を翳しマナを送る。

 一定量のマナが流れ込むと、土人形が輝きを放った。
 思わず目を瞑る程の輝きは、やがて収束。
 代わりにプシュー、と煙が出て土人形を覆った。

 煙の中で徐々に大きくなる影。
 影の巨大化が終わると煙が晴れ、ついにその姿を現す。

 そこには、クレイゴーレムが膝をついて佇んでいた。

「おおー!」

 三度目でもこの瞬間は垂涎もの。
 ラヴィポッドは瞳をキラキラと輝かせ、クレイゴーレムを見上げた。

「た、たったこれだけのことで、本当にゴーレムが錬成できるのね……」

 ギンガの灰の希少性や、実はラヴィポッドがクリアしている諸条件を知らなければルムアナのような反応になるのは当然だろう。
 アロシカやドリサ騎士団も同様の反応を見せていた。

 周囲の反応に気づきもしないラヴィポッド。
 手慣れた手つきでクレイゴーレムの腹部から伸びる管を千切った。
 管は形を変えて石板に。

 しっかりと両手で石板を持ち、クレイゴーレムの手に乗って肩まで運んでもらう。

「よしっ」

 時はきた。
 ラヴィポッドが防壁を解き、ユーエスの氷魔術の痕跡をビシッと指さす。

「クレイゴーレム、あの氷ぜーんぶ食べちゃって!」

 最初の命令。
 クレイゴーレムは目をチカチカと点滅させ、気合を入れるようにダブルバイセップスをキメる。
 そして無数のフォールンが蠢く戦闘跡へ駆け出した。

 主を瘴気から守るため、フレイムゴーレムが慌てて続く。

 ◇

「あ、合図くらいしなさいよ……!」

 突如として防壁が解かれ、フォールンが雪崩れ込む。
 ルムアナが不平を言う頃には、ラヴィポッドとクレイゴーレムの背中は既に遠かった。

 部隊の指揮を任されている騎士が速やかに号令を下し、隊列を組む。
 ルムアナとハニもそこに加わった。
 フレイムゴーレムが離れたため、火魔術を使えるものは数人掛りで瘴気対策の巨大な火球を出す。

 フォールンは一体一体が並外れた速度と硬度を持つ、驚異的な怪人。
 ドリサ騎士でも一人では到底敵わない。

 ならば今できるのは時間を稼ぐこと。

 負傷者を出来得る限り抑え、騎士団長の体を守り抜き。
 ラヴィポッドが戻って来るまで耐える。

 魔術によって強風を起こし、或いは土や水の壁を生み出すことでフォールンの動きを阻害した。
 多少動きは鈍る。
 しかしその程度でフォールンは止まらず。

 魔術を抜けてきたフォールンを、騎士たちがその盾で食い止める。

 そこへ火魔術師たちが作っていた火球を動かし、フォールンを呑み込んだ。

 ドリサ騎士団は道中での遭遇戦で、フォールンの弱点を見つけていた。

 瘴気は熱や冷気に弱い。
 瘴気から発生したフォールンもその性質を引き継いでいたのだ。

 ただ火魔術をぶつけるだけでは外骨格に阻まれてしまう。
 だがその守りを突破することさえ出来れば。

 巨大な火球に呑み込まれたフォールン。
 口から入った炎が体内を焼き尽くしていく。
 外骨格の防御も意味をなさず、内側から滅されたフォールンが落ちた。

 一体ずつであれば着実に倒していける。

 しかしそれでは到底、無数のフォールンを捌き切ることは出来ないが……

 騎士が盾で食い止めようとしていたフォールンが、石の拳に叩き潰された。

 この場に残されたストーンゴーレムの加勢。
 ラヴィポッドに何も言われずともついていったフレイムゴーレム然り。
 命令がなくとも自らの判断で動くことがあるらしい。

「味方だと、こうも頼もしいとは……」

 訓練場にて、何度もストーンゴーレムと戦い完膚なきまでに叩きのめされたドリサ騎士団。
 その圧倒的なパワーを知るが故に、この加勢は彼らの士気を高めた。

 ストーンゴーレムだけではフォールンの全速力に反応出来ない。
 だが今はドリサ騎士団の魔術による妨害のおかげで、フォールンを捉えることが出来る。

 ストーンゴーレムによる蹂躙が始まった。



 一方、アロシカは。

「あいつ、やっぱすげぇ奴だった……」

 ゴブリンとの戦闘では別行動だったため、ラヴィポッドの魔術の腕前はわからなかった。
 ゴーレムについてもいきなり現れたので何なのかわかっていなかった。

 今はわかる。

 大地の棘の防壁。
 ゴーレム錬成。
 どちらも並大抵の魔術師には不可能な芸当だ。

 ちょっと戦ってみたら才能があった程度のアロシカとは比べるべくもない。

 悔しい。

 何故かそう思った。

 ラヴィポッドを遠い存在だと感じることが、嫌だと思った。

「絶対追いつく……!」

 アロシカは駆け出し、死したフォールンの足首を掴む。
 身体をマナで強化し、ユーエスがそうしていたように、フォールンを武器にして振るった。

「くっ!」

 硬い外骨格同士がぶつかる感触。
 腕に伝わる強い衝撃に、歯を食いしばった。
 それでも止まることはしない。

 フォールンと同速以上では動けないが、目で追うくらいなら出来る。
 末恐ろしい程の戦闘センスと瞬発力で、襲い来るフォールンに対してフォールンを叩きつけた。

 僅かにタイミングがずれればフォールンから手痛い一撃をもらってしまう、綱渡りのような攻防。
 それを幾度となく成功させ、更には戦闘を繰り返す中で動きを最適化していった。

「まとめてかかって来いよザコ虫!」

 燻っていた才はきっかけと目標を得て。
 加速度的な成長を始める。

 ◇

「ぬんっ!」

 駆けるクレイゴーレム。
 その肩でラヴィポッドが魔術を行使した。
 クレイゴーレムの左右に大地の棘が並び立ち、襲い来るフォールンが串刺しになる。
 そうして出来た道を進む最中、クレイゴーレムが後ろに手を伸ばした。
 後ろを追いかけていたフレイムゴーレムがその手を取る。

 土の手と炎の手が重なった瞬間、クレイゴーレムの足場が揺れた。
 するとびっくり箱のように大地が飛び出し、クレイゴーレムが勢いよく射出される。

「ひぃぃぃぃ! 調子乗ったあぁぁぁ!」

 身の危険を感じたラヴィポッドはクレイゴーレムの顔にしがみ付いて叫んだ。
 過行く景色が伸びて見えるような高速移動。
 下方を見ると、落ちれば即死級の高さに下腹部がヒュンとした。

 とにかく急がないと。
 気持ちが先行して手段を誤ったが、恐怖さえ除けば結果は上々。

 最速で進んだ一行は氷の大地に落下した。
 クレイゴーレムの重量で氷が砕け、轟音が響く。

 氷片のキラキラと舞う銀世界。

 別世界のようにヒンヤリとした空気が頬を撫でる。
 赤くなった頬が痺れ、吐息は白んで空に攫われた。

 そんな氷の世界に浸る間もなく。
 着地するなりクレイゴーレムは片手を氷につけて吸収を始めた。
 氷が腕に吸い込まれ、解けるように体積を減らしていく。

 フォールンはユーエスの氷を避けているのか近づいて来ない。

 全てを吸収し、銀世界がモノクロの世界へと様変わりした時。

 クレイゴーレムが水色の輝きを放つ。
 輝きは汚染地帯を包み込む程に眩く広がる。
 更に冷気が放出され、ミシミシと音を立てながら霜が降りた。

「どんなゴーレムになるんだろ……!」

 ワクワク。

 クレイゴーレムの石板を両手で持ち、次に目を開けた時どんなゴーレムが映るのかと進化に胸を躍らせた。

 すると。

「ん?」

 手に違和感を覚えた。
 なんだか力が抜けそうになり、石板を握りなおす。

 しかしその違和感が徐々に高まっていき、何が起きているのか気づく。

「石板にマナが吸い取られてる!?」

 今度は逆に石板を放そうと振り回すが、接着剤で貼り付けられているかのように離れない。

「なんでぇ~!」

 そうしている間にもマナは吸い上げられる。
 ラヴィポッドの宿す膨大なマナが、一滴も残さず搾り取られようとしていた。

 今までの進化では起こらなかった現象。
 それは他でもないユーエスの、最高峰の魔術師が生み出した氷を取り込んだことに起因している。

 進化までに必要な素材の量だけでなく、素材の質も影響しているなら。

 マナを超える力。
 エーテルを用いた至高の氷魔術。
 それによって生じる進化は通常の枠に収まり切らないだろう。

 ラヴィポッドは気づかない。
 石板の文字が書き換わっていることに。

『クレイゴーレム』から『フロストゴーレム』へ。

『フロストゴーレム』から『スノーゴーレム』へ。

『スノーゴーレム』から『アイスゴーレム』へ。

 そして。

『アイスゴーレム』から、『ブリザードゴーレム』へと。

 水色の輝きが弾け、強力な冷気が吹き荒れる。
 一帯の瘴気は死滅し、無数に散らばるフォールンが凍り付く。
 モノクロと紫だった世界には氷床が広がり、一瞬にして白く色づいた。

 マナを殆ど吸い尽くされたラヴィポッドが気だるげに瞼を上げる。


 それは、巨大な白熊のような姿をしていた。


 毛がなく、白く色づいた無機質な体。
 水色の氷結晶でできたクリスタルのような腕甲、足甲に胸当て。
 背には氷結晶が連なり、顔の上半分は氷の兜に守られている。
 長い鋭爪は主に害為すものを凍てつかせ、血を流すことすら許容しないだろう。
 逞しい牙はあらゆる障害を氷砕し、体から放たれる冷気は環境をも変える。

 かつて陸地を沈め、雨を奪い、多くの生命を絶滅に至らしめ。
 終焉にさえ洪水を齎した過酷な時代。
 適応能力の足りぬものを容赦なく淘汰する酷烈な氷が、主を守護するためだけにこの時代へ顕現した。
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