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1話

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ワイワイ……
ジャバジャバ……


ざあざあと流れる川で洗い物をしている女性達が居る中、俺は手にしたそれを見ながら小さく呟く。


「マジか……転生、ってやつか?」


それが前世を思い出した俺の第一声だった。



現世の俺はジオという男で、現在11歳である。

前世では33歳の寄形 地央よせがた じおという日本人の男だった。

名前が同じなのは偶然だろうか。

多少はネット小説を嗜んでいてファンタジー物が好みだったのもあり、子供の姿であるこの状況が転生したのだろうとすぐ推察できたが……死んだ覚えはない。

事故にあった覚えが無ければ急病になった覚えもないんだよな。

こんな状況である以上は死亡していると思われ、後始末などで親兄弟には申し訳無さを感じるが……まぁ、どうしようもないか。



さて、俺が見ているのは魔石という物であり、全ての魔物が体内に持つ物である。

そう、魔物だ。

ここは日本等が存在していた世界と違って人を襲う魔物が存在し、それを剣や魔法で倒す世界。

その中世辺りの時代であることを、現世で学んだであろう記憶から推察している。



そんなことを考えていた俺に声をかけてくる人がいた。


「ジオ君、どうしたの?」


その声が発せられた方を見ると、そこには広く空いた胸元から深い谷間を披露している女性が。

今いる川の側にある俺の家から30mほど離れた隣家に住むサリーさんだ。

セミロングの茶髪で人一倍目立つ胸部をお持ちであり、おっとりした感じの美女である。

元は旦那さんと娘さんの3人家族だったそうだが、3年前に旦那さんを亡くしたのをきっかけにこの村へ娘さんと2人で移住してこられた方だ。

その経緯は色々込み入っているようなので後ほど。



そんな彼女だが洗い物で少々川に入るため、濡れるのを気にしてスカートをある程度捲りあげており、その上しゃがんでいたので下着がやや見えていた。

現世の母の下着を目にしたことがあるので大体わかっているが、俺が知る範囲では紐パンが主流みたいなんだよな。

時代的にゴム紐は作られていないのかな?

あったとしても希少だろうし魔物に盗賊などまで存在するらしいので、輸送に危険が伴う現状では田舎の村であるここに届く機会も希少なのかもしれない。

形自体は色々あるようだが……サリーさんは割と面積が少ない物を履いてらっしゃる。


「……ジオくぅん?」

スッ


彼女はジト目で再び俺の名前を呼び、同時に足を閉じた。

見すぎたか。

一応、前世の記憶を思い出す以前の俺もそういったことに興味を持ち始めていたらしかった。

それはサリーさんにも知られていたようだが、キツく注意されるほどではなかったようだ。

その理由は俺の両親との関係性による。



この世界には冒険者という、依頼を請けて魔物を狩ったり護衛をしたりする仕事が存在する。

彼女の旦那さんは父と共にその冒険者をやっていて、仲間で友人だったのもあり、うちの両親とは仲が良かったそうなのだ。

サリーさんと母は元から友人だったようで、2人組の男女がそれぞれくっついた感じらしい。

基本的に優しい上にそんな関係もあってか俺にはだいぶ甘く、今も怒っているわけではないようなので……俺は軽く謝りつつ、声をかけられる原因になった魔石を彼女に見せる。


「す、すいません、ちょっと気になって。これ、ここで拾ったんですけど……」


「もう……って魔石じゃない。その大きさだとそんなに強い魔物じゃなさそうね」


俺が見せた魔石は直径1cmほどの球体で、基本的には大きさが魔物の強さに直結しているからかそう評価された。

ここは俺達の村の端の方ではあるが川も含めて木の塀に囲われた中なので、周辺の魔物はそこまで強くないのもあって基本的には入ってこれない。

となると……


「川の中を通って塀を潜ってきたんですかね?」

「川の中には柵があるし、破られていないかは毎日調べてるはずよ?特に騒ぎにはなってないから……」

「じゃあ、普通に流れてきたのかもしれませんね」

「でしょうね。ここまで入ってきてたのなら死体が残ってて騒ぎになってたでしょうから」


この川は村を囲う塀の端を掠めるように通っており、その上下に柵があるので魔物がここで死んだのなら下流の柵に引っかかってるか。

それに……体内にあるはずの魔石だけが落ちてる時点で魔物が侵入しているわけがないな。

そんな話をしている俺達に別の女性が近づいてくる。


「どうしたの?アンタ達」


それはサリーさんと同じく、スカートを太ももまで上げた女性で……現世での母だった。

レベッカという、20代に見える気の強そうな顔でバランスの取れた体型の中々な美人さんだ。

他人だったら全然アリだが、母という関係上のない俺にはただの親である。


「これを拾ったんだよ」

「ああ魔石ね。流れてきたのかしら」

「今そう話してたところよ」


母の言葉にサリーさんがそう返していると、もう1人女性がこちらへ近づいてくる。

サリーさんの娘でリーナさんだ。

俺より3つ上の14歳ではあるが、母親に似たのか彼女の胸部も中々の成長を見せている。

顔は父親似らしいと聞く活発な感じの美少女であり、それを補強するように赤っぽい髪をポニーテールに近い形にしていた。

先程までは同年代の友人達と洗い物をしながらお喋りをしていたようだが、それが終わったのかサリーさんの下へ戻ってきたようだ。


「あ、魔石。ジオ君が拾ったの?」

「うん」

「へぇ、運が良いね」


彼女がそう言うのは魔石が換金できるからだろう。

この世界にはマジックアイテムなる物が存在しており、物によっては魔石を動力とする場合があるそうだ。

それらの数は少ないが、有力者などの裕福な家で使用されることが多く需要がそれなりに高いらしい。

よって、俺が拾った物も多少の小遣いになると見てそう言ったのだろう。


「その大きさだと100コールぐらいだろうけど、無駄遣いはするんじゃないよ?」


母がそう言うので、これは俺の物にしていいらしい。

100コールか……この国コルドール王国の通貨だが、前世での100円ぐらいなんだよな。

基本的に金銭には硬貨のみが使われており、10コールの鉄貨から銅・銀・金と一桁ずつ価値が上がっていくそうだ。

それ以上の取引は契約書が作成され、それ自体が金銭と同等に扱われるらしい。

1コールの貨幣もあったらしいのだが、石製だったのもあって損壊が多く廃止されたようだ。

金属の硬貨よりも偽造はしやすかっただろうけど一番下の硬貨じゃ大して利益は出ないだろうから、あくまでも偶然による損壊が原因なんだろうな。

で、この田舎である村では偶に馬車でやってくる商人以外に使い道はなく、運べる荷物の量に限りがある以上は生活に必要な物がほとんどで嗜好品はあまり無いし少々お高い。

そんな事情もあり、記憶では少し前に商人が村を訪れ既に去っているし……暫くは保管しておくことにしよう。



さて、そんな俺だが気になったことがある。

リーナさんは俺が魔石を拾ったことを運が良いと言っていたが、俺は前世の記憶を取り戻す前から魔石の位置を感じ取っていたようなのだ。

まぁ、それを実感したのは前世の記憶を取り戻した後なのだが。

つまり……俺は魔石の位置を把握できるのではないだろうか?

となれば、落ちている魔石を拾って稼げるかもしれないな。

魔物を倒すということは今のところ考えていない。

魔物は弱いと言われているゴブリンでも成人男性ぐらいの力はあるそうだし、個体によってはより力が強かったり頭が良い奴もいたりするらしいからな。

創作物でよく出てくる、スキルなどと呼ばれる特殊能力としては地味かもしれないが……まぁ、得するだけなので十分ではあるか。

そう思いつつ洗い物を終えた母達と家に帰ると、その後はサリーさん母娘と畑へ向かった。
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