変幻G在!! ~ゴーレム駆使して異世界サヴァイヴ~

狩間けい

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27話

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魔物の塒……というより集落を発見し、その門前に居たゴブリン達の視界を奪う。

前世の創作物では夜目が効く設定も多々あったが、門の脇に篝火が設置されている以上は明るいほうが動きやすくはあるのだろう。

色なんかは把握し辛いだろうしな。

水のゴーレムから放った霧で連中に目眩ましをすると、箱型ゴーレムに乗った俺達はそれに乗じて浮遊しながら接近した。


「ギッ!?」
「ギャギャッ?」


近づくと、ゴブリンたちの困惑する声が聞こえてくるので倒そうとするのだが……霧は俺の視界も奪っており、大ゴブリン達のように脳へ直接小型のゴーレムを出現させる手は使えない。

俺がわかるのは魔石の位置であり、頭の位置は目で確認する必要があるからだ。

霧は結合しているわけではないからか自在に操れたりはしないし、霧の中に存在する物の形や数はわからないしな。

魔石を破壊することで倒せるのであれば魔石を狙えばいいのだが、そうでなかった場合に騒がれて援軍を呼ばれてしまうだろう。

少なくとも、先程俺達から逃げた連中は居るはずだからな。

で、見えない中で連中をどう倒すかだが……


「ギャボッ!?」
「ゲボボッ!」


霧の発生を止めた水のゴーレムがゴブリン達を覆うと即座に凍りつき、とりあえずは騒がれることを防ぐのに成功した。

もちろんそのまま放置はしない。

霧を別の魔石で回収してゴブリン達の姿を視認すると、その脳内に小型の丸鋸型ゴーレムを出現させて暴れさせる。

……もういいかな、大ゴブリンやオークよりも時間を掛けたし。

というわけで2体のゴブリンを頭部だけ解凍すると、耳や鼻から血を流していて動かなかった。

隣でその様子を見ていたアニスエラが、周囲を見回しながら話しかけてくる。


「……静かなままだし、中の連中には気づかれていないようね」

「そのようですね。で、こいつらはどうしましょうか」

「放って置いてもいいんじゃないの?」

「いえ、中にいる連中だけがここの住人とは限りません。外出している連中もいると考えたほうがいいでしょうから、隠しておいたほうがいいですね」


あれだけの数だったのでここの魔物全てが出てきていたと言われてもわからなくはないが、いつ獲物が通るかわからない待ち伏せに総力を投入するとは思えない。

よっぽど獲物に飢えていたのなら理解はできるが、大ゴブリンの態度ではそこまで切羽詰まっているようには見えなかった。

頭の良さそうだったアイツが、そんな現場で指揮を取っていたとなると……


「可能性として、あの大きいゴブリンに上司がいることも考えておいたほうがいいでしょう」

「アイツが中間管理職だったってこと?」

「その可能性があるってだけです。アイツより厄介なやつがいると考えて動いたほうがいいでしょう」

「でもそんなのが中に居るなら、逃げた連中を見て警戒態勢に入ってるはずじゃない?その割には静かだと思うんだけど」

「ええ。だから今この集落の中に居るのは俺達が追ってくる可能性を考慮できない程度の連中だけで、頭が回る連中は出払ってるのかもしれません」

「出払ってるって……あ」


アニスエラはあることに気づいたようだ。

それに対し、俺は頷いてから答える。


「ええ。南側の街道に出現していた魔物達もここの住人なのかもしれません。で、向こうでは人間の戦力が揃っているようですから……それに対応するためにもっと強い魔物は出かけてるんじゃないでしょうか?」


それが今この集落があまり騒がしくない理由であり、大ゴブリンほどの奴が夜の待ち伏せなどをやっていた理由でもあるのではないかと予想した。

急ぎではないが戦力が減るのをわかっていたから、北側の街道で待ち伏せをしていたのだろう。

北側の街道なら人数も少なく、たとえ反撃されてもそこまで大きな被害は出ないだろうしな、

もしかすると……ゲームでうちの村を襲うことになるのは、南側の街道で予想以上に戦力が減ったからか?

そのまま南側の街道沿いにある村や街を襲わないのは、それができないほどに戦力が減ったからではないだろうか。

アニスエラにそこまで話すと、彼女は顎に手を当てて難しい顔をする。


「あり得なくはないわね。なら、このゴブリン達は隠しておかないと」

「ええ。というわけで……」


ここで俺は小型の魔石を2つ用意し、ゴブリン達の身体に埋め込ませた。

それを見て、アニスエラがその行動の意図を察する。


「え、もしかして……」


彼女がそう言った直後、2体のゴブリンはその場から音もなく消え去った。

そう、俺は連中を"格納庫"に仕舞ったのだ。

ゴーレム化さえできれば"格納庫"には入れられるので、奴らの死体もゴーレム化出来ないかと思いついたんだよな。

ゴーレムの修復能力で怪我を治せるとわかっているが、それを人や馬に使えるということは部分的にゴーレム化しているということだろう。

ならばと、身体全体をゴーレム化すれば"格納庫"に入れることも可能だろうと思い至ったわけだ。

予想通りの結果に満足すると、俺はアニスエラに警告しておく。


「さ、中に入りますよ。捕まっている人が居るでしょうからローラーは使えませんし、騒ぎになって外にいる連中へ報告しに行かれるのも不味い。なので門番を倒したのと同じように片付けていきます」


そう言った俺に、彼女は複雑そうに言葉を返してくる。


「言っておくけど……ここの魔物を片付けるのが最優先よ」


必要なら人間は見捨てろということだろうが、アニスエラが非情な女だというわけではない。

失敗すればもっと多くの被害が出ることになるんだしな。

なので、俺は彼女の腰を抱き寄せてから答える。


「わかってますよ」

「……ならいいわ。行きましょ」

「了解」


そうして、俺達は再び霧に紛れながら魔物の集落に侵入した。




視界3mほどの霧の中。

箱型ゴーレムに乗って門を飛び越えた俺達は、そのまま浮遊しつつ魔石の反応がある方へ向かう。

集落の中で手前の方にある反応に近づくと、薄っすらと建物が見えてきた。

箱型ゴーレムは前面を下へ向け、小窓から地上を見下ろす形にしているのだが……見張りなどは居ないように見える。

なのでその建物へ更に近づき様子を窺うと、門番だったゴブリン達と同じように急な視界不良で困惑していた。

俺は4体ほどの彼らを処理すると、ドアのないこの小屋の中だけを霧から解放する。


「見張りの待機所かしら?警備員室みたいね」

「ですね」


中の様子を見た俺達の感想はそれだった。

おそらくだが……門で問題が発生するとここの連中が動き、門への加勢や奥への連絡などをするのではないだろうか。

やはり、門番を静かに始末しておいたのは正解かな。

奥へ連絡されて、攫ってきていた人間を人質にされかねなかった。

まぁ……その場合の対応は決まっているが。





その後、俺達は集落にあるいくつもの建物を調べ、その中に居た魔物を片付けたのだが……人間は1人も居なかった。

ただ、その中で一番奥の建物は地下洞窟への入口になっており、そこに居たゴブリン達は剣を装備していたんだよな。

それだけここが重要ではあるのだろう。

まぁ、彼らはそれを振るうことなく倒れたわけだが。

そんな地下への入口を見てアニスエラが呟く。


「表の建物に居ないってことは……人間はこの奥なんでしょうね」

「おそらくは。ただ、地下となると空気の心配が」

「ここの連中はみんな呼吸をしてるみたいだし、そんな連中が使ってるんなら何処かから換気できてるんじゃない?」

「あぁ、確かに。えーっと……霧は使うとして、灯りはどうするかな」


地下なので当然暗い。

そんな中、霧の中と言えど灯りを灯せば目立つはずだ。

しかし、灯りがないとこちらも非情に動きづらくなる。

身体の大きいオークも利用するからか、地下洞窟は箱型ゴーレムのままでも入れる広さではあるし、最悪壁にゴーレムを擦りながら進む事も考えたのだが……そこでアニスエラが提案する。


「ねぇ、"格納庫"のゴブリンはゴーレムになってるんでしょ?なら、そのゴブリンに松明を持たせて先行させたらどう?」

「あぁ、なるほど。俺達の前方数m先に居ろと命じておけば操作は自動でいいか」


魔物達に遭遇しても、仲間だと思って油断してくれるかもしれないしな。

というわけで、俺は"格納庫"から1体のゴブリンゴーレムを出現させると火の着いた松明を持たせ、進行方向を箱型ゴーレムの向きで調整しながら地下洞窟へ侵入していった。





「「ぐ」」


地下に入る前からわかってはいたが、外よりも非情にきつい臭いが俺達の嗅覚を襲う。

一応、草の繊維で作った布で大きめのハンカチを作ってあったので、それで口元を覆ってマスク代わりにしてはいるのだが……

隣で同じように口を覆うアニスエラ。

地下なので声が響く可能性もあり、小声で彼女に確認する。


「大丈夫ですか?」

「あんまり。でもここで帰るわけにもいかないわ」


ここで彼女だけ外で待機してもらうのは、外出から戻って来る魔物がいた場合が非情に危険だ。

まぁ、本人もそのつもりはないようなので前進することに。


ヒタ、ヒタ、ヒタ……


霧の中、浮遊する俺達の数m前をゴブリンゴーレムが松明で照らしながら進む。

すると、近くの小部屋にあった反応が動き出した。


「グルルルル……」


この唸り声は魔狼という、狼の魔物のものである。

狼だからか鼻が効くようで、地上でも俺達にいち早く気づいたのはこいつらだった。


「グル……ッ!?」


しかし、霧もあって俺達を視認できず、警戒しているところをササッと氷漬けにして始末する。

同じような小部屋を片付けながら進んでいると……しばらくして、遠くから騒ぐ音が聞こえてきた。


「ギャッ、ギャッ」
「ギャヒッ」


おそらくゴブリンであろうその声と共に、肌を打ち鳴らす音と呻き声が。


パンパンパンパン……

「ウゥッ、グッ、アッ……」


……人の声だな。

そんな声がいくつも聞こえ始め、人が居るのならとその状況を確認するために霧を流し込まないまま近づいてみる。

数が減ったからか見張りがおらず、俺達は入口の陰から部屋の中を覗き込んだ。

すると……魔石の反応でわかってはいたが、かなりの大部屋に大勢の魔物と2、30人の囚われている女性がおり、女性のほぼ全てが犯されている最中だった。
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