マガイモノサヴァイヴ

狩間けい

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第108話

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「えーっと、どういう意味でしょうか?」


街を離れる件などを伝えに"銀蘭"を訪れた俺。

メリアさんの件も頼むつもりだったのでフェリスへの面会を求め、それはすぐに叶って彼女の部屋に案内された。

だがそこで2人きりになると彼女は俺に抱き着き、「じゃ、ヤろっか♡」などと言い出したのでその理由を尋ねた。

フェリスは黒いミニトマトを食べたと聞くし、彼女が何かしらの特殊な能力を持っていればそれは成長しているのだと思われる。

なのでその成長した能力を試したいのかとも思ったのだが、この部屋は狭くはないが戦えるほど広いわけでもない。

まぁ、腕相撲のような狭い範囲でもできる力試しぐらいなら可能ではあるので、そういった類の勝負でもしたいのかとも予想した俺だったが……彼女の答えは抱き着いてきたその態度に準拠したものだった。


「どういう意味って、男と女がヤるって言ったらアレに決まってるじゃない。アンタのチンポを私の……」

「あー、意味はわかりました。で、どうしてそういう話になるんでしょうか?」


発言の意図は理解できたので彼女の言葉に割り込むと、その考えに至った経緯を聞くことにする。

前々からというか、初対面のときからマジックアイテムを消滅させたお詫びとしてモノを咥えられたりはしたので、相手にはよるだろうがそういったことに対しての忌避感がなさそうだとは思っていた。

だが、彼女の常軌を逸した筋力で実際に性行為をすればでモノが締め潰される懸念があり、だからこそ力加減ができる口淫までに留められていたはずである。

なのでそれ以上の行為を望むというのは基本的に考えられなかったのだが、彼女の説明で一応の理解はできることになった。


「ほら、アンタの黒いミニトマトってあったでしょ?あれを私も食べてみたのよ。ウェンディに聞いてない?」

「それは聞きました」

「そう。で、食べた結果なんだけど……ちょっと手を出して」

「はあ」


フェリスが握手でもするように右手を出してきたので、俺もそれに合わせて出してみる。

そうしてお互いの右手が合わさると、彼女は腕相撲のようなものを提案してきた。


「このままお互いに押し付け合うわよ。ああ、アンタは最初から全力を出さないようにね」

「?はあ……」


彼女の力はある程度知っているので手加減をしろと言われた意味がわからなかったのだが、とりあえずは言う通りに実行してみる。


「じゃあいくわよ。せー、のっ!」

グィッ


フェリスの掛け声とともに右手に力を込めた俺だったのだが、その直後には予想外の事が起きた。


「キャッ!」

トッ、トトッ

「っ!?」


何故かあっさりとフェリスの身体が揺らぎ、よろめいた彼女はなんとか体勢を整えるために足音を鳴らす。


「えっ、大丈夫ですか?」

「ふぅ、大丈夫よ。でも手加減してって言ったじゃない」

「すみません、手加減をしたつもりではあるんですが……どういうことですか?」

「私は手加減してないわ。でもあっさりと負けたでしょ?つまり力が弱くなってるってことよ」

「はあ?大丈夫なんですかそれ」


俺は手加減をしたのだがそれはあくまでもフェリスを相手にした場合を基準にしており、弱体化した彼女は人並みの筋力になっていたからあっさりと負けることになったようだ。

だがしかし、これは不味いことなのではないだろうか?

彼女の力があってこそ"銀蘭"の立場は保たれているのだし、"宝石蛇"の件は片付いたとしても玉座を狙うノーランド家が潰えたわけではないので彼女の力はまだ必要なはずだ。

彼女自らが招いた事態ではあるが、そのきっかけは俺である。

俺に責任はないはずだが原因ではあり、それが元で不味いことが起きているとなれば気にしないわけにもいかないだろう。

そう考えて動揺している俺に、フェリスは再び先ほどと同じ力比べを提案してきた。


「まぁ、もう一度やればわかるわ。ほら」

「は、はぁ……」


そうして再び力比べを始めると……


「ぐっ」

ぐぐぐ……

「フフン♪」


二度目の最初は普通の女性を基準にしてかなり手加減をしたのだが、今度は徐々に力を込めて全力を出しても彼女の右手は微動だにしなかった。

壁を押しているような気分になるも、この力がフェリスに残っていることを確認し安堵する。

ということは、つまり……


「力に制限を掛けられるようになったってことですか?」


力比べを終えたフェリスにそう質問すると、彼女は頷いて事情を説明する。


「そういうことね。力の加減そのものは元々できてたんけど、無意識に入ってしまう力もあったから……これでその場合も一定以上の力は入らないし、アンタともヤれるってわけ♪」

「いや、それじゃただヤれるようになっただけってことですか?」

「そういうわけじゃないわ、ちゃんと他にも利点はあるのよ。どちらかというとそれが主な効果なんでしょうけど」

「それはどんな?」

「どうやら自分に起きた異常を解除できるみたいなのよ」

「えっ、それはこの間の操られるようなことにも効くんですかね?」

「そこまではわからないわね。でもとあるスキルには効果があったから、操る力に対しても通用する可能性はあるわ」


"銀蘭"内にフェリスへ通用するスキルを持っている人がいたらしく、それを解除できたことでその効果を確認したそうだ。

まあ、それならそれで良い事なのだが……


「何と言うか、貴女には都合の良い効果ですね」


"宝石蛇"の件で操られたことを考えれば、それを解除できるかもしれないというのは都合がいいというか……もはや注文通りと言ってもいいぐらいなのではないだろうか?

そう言った俺にフェリスは自身の見解を述べてくる。


「もしかしてあのミニトマトって、食べた者の望む方向に能力を成長させるんじゃないかしら?」

「あー……言われてみれば」


あり得ない話ではない。

ウェンディさんは窃盗を疑われても潔白を証明できない"異空間への収納"という能力を持っていたが、黒いミニトマトを食べたことにより自分や他人を入れられることになった。

それによって疑いを晴らすことができるようになり、長年抱えていたその能力の危険性をかなり下げることができるようになったのだ。

まぁ、だからといって人前でホイホイ使えば便利な輸送手段として色んな人に目をつけられるだろうから、目立つ使い方はしないと言っていたが。

それを考えると、黒いミニトマトが本人の望む方向へ能力を成長させるというのは納得できる話ではあるんだよな。

そう考えている俺にフェリスは少し眉根を寄せる。


「……他にも心当たりがあるみたいね?女?」

「え?そうですが……」


若干機嫌を損ねたようなフェリス。

何だ?と思っていると彼女はその理由を口にする。


「ふーん……でもあの黒いミニトマトのことを知ってる人間はごく僅かよね?だから囚人に食べさせたときも目隠しをさせておいたんだし。それでもあれを食べさせられる気になった相手って誰かしら?」


ウェンディさんはフェリスに自身の能力について教えていないようだし、俺が勝手に教えるわけにもいかないよな。


「それは本人に確認してからでないと……」

「わかってるわよ。でもあれを食べさせられるぐらい親しいのは事実でしょう?だったら……」

ガシッ、グィッ


そう言いながらフェリスは俺の腕を掴み、奥のベッドへ連れて行こうとする。


「いやあの、どうしてそういうことになるんでしょうかね?お礼に身体をってことが結構あるんですが」


この街に来てから偶に発生するこの流れへの疑問をぶつけてみると、フェリスからはこんな答えが返ってきた。


「んー、それはアンタが何かしてあげても見返りを要求しないからじゃない?まともな女なら施されて当たり前なんて考えは持ってないでしょうし、多少なりとも自分の身体に興味がありそうならせめてものお礼にって考えてもおかしくはないわよ」

「あぁ……」


なるほど、そういう考え方なのか。

前世に比べればではあるが、女性であっても無条件で庇護されるべきだという考えは持っていないらしい。

となると俺が見返りを要求すれば……あ、そうだ。


「あぁ、だったらちょっとお願いがあるんですが」

「ん?何?」

「実は少しの間街を離れる予定でして……」


フェリスが腕は掴んだままだが話を聞く態勢になったので、一時的に街を離れることを伝えメリアさんの件を頼んでみる。


「ふーん、何処に何しに行くの?」


すると当然ながら街を離れる理由を聞かれるが、ウェンディさんへ言ったようにイリスの望まぬ縁談を回避するために婚約をでっち上げるという説明をした。

イリスが貴族であることを知っている彼女にはすんなり通り、それ自体は良かったのだが……


「それ、本当にあの娘と結婚することにならないでしょうね?」


と、そんなことを聞いてくる。


「そのつもりはありませんよ。俺はこの街に戻って来るつもりですし、シャーロット様からの報酬のこともありますから」

「あぁ、そっか。内容は知らないけどわざわざ別室で交渉したのよね?色々と確認しなきゃいけないからすぐには応えられないって言ってたけど」


まぁ、過去に存在した貴族の生き残りだったことにして欲しいという要望だったし、その可否や諸々の調整などがあるだろうからな。

シャーロットはフェリスに詳しく教えてはいないようなので、俺もこの場では語らないことにする。


「そうですね。詳しくは言えませんが……」

「そう……まぁ、それはいいんだけど。そのメリアって人を目にかけておいてほしいのは何故?どういう関係なの?」

「えーっと……イリスとの婚約話を証言してくれる役としてセリアを連れて行くんですが、メリアさんは彼女の母親なんですよ。ただ何と言うか、彼女も男に目をつけられそうな容姿なので……」

「ああ、それで"銀蘭"との関係を匂わせて変な男を近づかせないようにってことね」

「そういうことですね。セリアにわざわざ同行してもらうので、ある程度の保障というか安心してついて来てもらおうと」


この説明で納得したのか、フェリスは「まぁ、いいわ」と要望を聞き入れてくれた。

なので"お礼"に関してはこれで返してもらったことになったかと思っていると、


「じゃ、ヤるわよ」


と、彼女は再び俺の腕を引きベッドへ向かう。


「え、お礼は今の話で……」

「別に大した労力が掛かるわけでもないし、この程度であの件のお礼になるわけないでしょ。それに……」

「それに?」

「……単純にアンタとヤりたいのよ、気に入ったし。アンタが嫌ならやめておくけど、少なくとも私の身体が好みじゃないってわけじゃないわよね?」

「それはまぁ、そうですが……」


きっかけが彼女とは言えあれだけ身体を弄らせてもらったのだし、そこを否定するのは難しいだろう。

なのでそう肯定した俺に、フェリスは若干不安そうな顔で言ってくる。


「えっと……で締め潰されることはないんだけど、初めてだから喜んでもらえるかはわからないのよね」


そう言いながら彼女は刃物も通さなかった赤いチャイナドレスを脱ぎ、その下の裸体を惜しげもなく晒してみせた。


「良くなかったらやめてもいいから……ね?」


自分がしたいからだとも言っているがあくまでも俺へのお礼であり、初めてながらそこまで言うのであれば断るのも申し訳ない気がする。

というわけで……俺はフェリスからの"お礼"を頂くことにし、しばらくの時をこの部屋で過ごすことにした。
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