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破滅の始まり。(元妻・由里香視点)
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なじみのフレンチレストランでランチを済ませた私は、午後一時に経営している美容室に行った。いつものように私が社長室に入ろうとすると、話があると店長の菜々子も社長室に入ってきた。
「話って何?」
私は自分専用の椅子に座り、座らずに立っている店長の菜々子と机を挟んで対面した。
「私、店を辞めます」
「いつ?」
「今です」
店長菜々子の突然の退職願い。
「辞めますと言って、すぐに辞められないわよ。あなた店長でしょ? 無責任すぎない?」
「人として最低最悪な行為をした社長の下で働きたくありません」
「最低最悪な行為? 何のこと?」
菜々子が私を睨みつけた。雇われ店長ごときが生意気ね。
「不倫です」
「不倫? 私が? 身に覚えがないわね」
自分が不利になることをわざわざバラす必要はない。
「最近テツさんがお店に来なくなったのは、仕事が忙しくなったからではなく、離婚したからですよね? 離婚の理由は社長の不倫ですよね?」
「証拠は?」
菜々子はズボンのポケットからスマホを取り出した。画面を指で触り操作している。
「三日前の動画です」
菜々子は手に持っているスマホの画面を私に見せた。画面には、私とあの人が車内で唇を重ねている動画が再生されていた。
「その動画、スタッフに見せたら名誉毀損で訴えるわよ。よく考えるのね」
「誰かに見せるつもりもないし、言うつもりもありません」
「その動画が三日前のものなら、私が離婚したあとの行為。不倫していたとはならないわよね?」
「離婚したと認めるのですね」
「そんな些細なことを隠す必要もないわ」
「いつ離婚したのですか?」
「言う必要あるのかしら?」
また菜々子が私を睨みつける。
「私、社長が離婚する前に何度かこの動画の男性と社長が二人でいるのを目撃しています。最初は取引先の人かなと思っていました」
「私がその動画の人と不倫していた。というのはあなたの想像よね?」
「ホテルから出てくるのを見たこともあります」
証拠の写真を見せないから、菜々子のハッタリかもしれないけど……
「……いくら欲しいの?」
「お金はいりません」
「……分かったわ。辞めていいわよ。あなた程度の代わりは掃いて捨てるほどいるから」
「強気ですね。その自信は何処からくるものなのか、私には理解できませんね」
そう言って、菜々子は手に持っていたスマホをポケットに入れた。
「凡人のあなたに理解できないのは当然よ」
「社長は自分は選ばれた人間。とでも思っているみたいですね」
「都内で事業を成功させている私が特別じゃないのなら、あなたは何? ゴミ以下?」
「事業が成功しているのは、テツさんのおかげで、社長の実力ではありません」
「アレのおかげ? 人間ATMのアレが? アレはこの店の業務終わりの清掃作業をしていただけで、経営に携わっていないのに、どうしてアレのおかげになるの?」
「確かにテツさんは美容室の経営には関わっていません。ですが、テツさんのスタッフのケアや、お客様への丁寧な対応があるからこそ、ここは繁盛していたのですよ? そんなことも知らなかったみたいですね。午後出勤で三時間くらいしかお店にいないから、知らないのも無理ありませんね」
「——ふふ、そういうこと。菜々子さん、そうなら早く言ってくれたらよかったのに」
「何ですか? 私が何を言うんですか?」
菜々子は私が何を言っているのか分からない。といった表情をしている。ゴミ以下なので分からないのも仕方がない。
「菜々子さん。あなた、アレが好きなのね。アレが居なくなったから辞めるのね。言ってくれたらあげたのに」
「……最低ですね。テツさんを愛していなかったのですか?」
「愛? そんなものアレと初めて会った時からないわよ。私が知る男性の中で、一番将来有望だったから声をかけ結婚したの。時間をかけて私の都合のいい男に育てたけど、私を裏切ったから別れたの。アレより有望な男性を手に入れたしね」
アレの裏切り行為。それは私の命令に従わなかったこと。私の命令、それは、親に電話をするな。そんな簡単なことも守れないATMはもういらない。
「……これで心置きなく辞められます。素敵な社長が実はゲスだと分かってよかったです。先程も言いましたが、動画は使わないし、あなたのゲスさは誰にも言わないので安心していいですよ。私の予想では、私が何もしなくても、あなたはこれから自滅して破滅の道へと進んで行くと思いますから。では、失礼します」
菜々子は頭を下げずに社長室を出て行った。彼女と入れ違いで、私が頼んでいたコーヒーを女性スタッフが持ってきた。
「理奈さん、ありがとう。あなた、今から店長になってね。菜々子さん辞めたのよ。消費者金融からお金をかりていて、その借金が膨らんで返せなくなったらしいの。ホスト通いで貢いでいたみたい。借金返済と貢ぐ為に今後は風俗で働くからって、今、退職したの。だから、店長お願いね」
副店長の理奈は私の話に驚きながらも、店長になるのを了承した。
菜々子は最近生意気になってきたと思っていたから、辞めてくれて清清した。
私が自滅して破滅すると菜々子は言った。アレがいなくなったくらいで? 最近二号店もオープンして売り上げも右肩上がり。破滅なんてする訳がない。
ひと段落したので、私はバッグからスマホを取り出し電話をかけた。
『——只今、電波の届かないところにあるか、電源が入っていないため、かかりません——』
今日も繋がらない。あの人と電話が繋がらなくなって三日目。昇進して部長になり、これまで以上に仕事が忙しくなるから、電話が繋がりにくくなると言っていたけど……。
「話って何?」
私は自分専用の椅子に座り、座らずに立っている店長の菜々子と机を挟んで対面した。
「私、店を辞めます」
「いつ?」
「今です」
店長菜々子の突然の退職願い。
「辞めますと言って、すぐに辞められないわよ。あなた店長でしょ? 無責任すぎない?」
「人として最低最悪な行為をした社長の下で働きたくありません」
「最低最悪な行為? 何のこと?」
菜々子が私を睨みつけた。雇われ店長ごときが生意気ね。
「不倫です」
「不倫? 私が? 身に覚えがないわね」
自分が不利になることをわざわざバラす必要はない。
「最近テツさんがお店に来なくなったのは、仕事が忙しくなったからではなく、離婚したからですよね? 離婚の理由は社長の不倫ですよね?」
「証拠は?」
菜々子はズボンのポケットからスマホを取り出した。画面を指で触り操作している。
「三日前の動画です」
菜々子は手に持っているスマホの画面を私に見せた。画面には、私とあの人が車内で唇を重ねている動画が再生されていた。
「その動画、スタッフに見せたら名誉毀損で訴えるわよ。よく考えるのね」
「誰かに見せるつもりもないし、言うつもりもありません」
「その動画が三日前のものなら、私が離婚したあとの行為。不倫していたとはならないわよね?」
「離婚したと認めるのですね」
「そんな些細なことを隠す必要もないわ」
「いつ離婚したのですか?」
「言う必要あるのかしら?」
また菜々子が私を睨みつける。
「私、社長が離婚する前に何度かこの動画の男性と社長が二人でいるのを目撃しています。最初は取引先の人かなと思っていました」
「私がその動画の人と不倫していた。というのはあなたの想像よね?」
「ホテルから出てくるのを見たこともあります」
証拠の写真を見せないから、菜々子のハッタリかもしれないけど……
「……いくら欲しいの?」
「お金はいりません」
「……分かったわ。辞めていいわよ。あなた程度の代わりは掃いて捨てるほどいるから」
「強気ですね。その自信は何処からくるものなのか、私には理解できませんね」
そう言って、菜々子は手に持っていたスマホをポケットに入れた。
「凡人のあなたに理解できないのは当然よ」
「社長は自分は選ばれた人間。とでも思っているみたいですね」
「都内で事業を成功させている私が特別じゃないのなら、あなたは何? ゴミ以下?」
「事業が成功しているのは、テツさんのおかげで、社長の実力ではありません」
「アレのおかげ? 人間ATMのアレが? アレはこの店の業務終わりの清掃作業をしていただけで、経営に携わっていないのに、どうしてアレのおかげになるの?」
「確かにテツさんは美容室の経営には関わっていません。ですが、テツさんのスタッフのケアや、お客様への丁寧な対応があるからこそ、ここは繁盛していたのですよ? そんなことも知らなかったみたいですね。午後出勤で三時間くらいしかお店にいないから、知らないのも無理ありませんね」
「——ふふ、そういうこと。菜々子さん、そうなら早く言ってくれたらよかったのに」
「何ですか? 私が何を言うんですか?」
菜々子は私が何を言っているのか分からない。といった表情をしている。ゴミ以下なので分からないのも仕方がない。
「菜々子さん。あなた、アレが好きなのね。アレが居なくなったから辞めるのね。言ってくれたらあげたのに」
「……最低ですね。テツさんを愛していなかったのですか?」
「愛? そんなものアレと初めて会った時からないわよ。私が知る男性の中で、一番将来有望だったから声をかけ結婚したの。時間をかけて私の都合のいい男に育てたけど、私を裏切ったから別れたの。アレより有望な男性を手に入れたしね」
アレの裏切り行為。それは私の命令に従わなかったこと。私の命令、それは、親に電話をするな。そんな簡単なことも守れないATMはもういらない。
「……これで心置きなく辞められます。素敵な社長が実はゲスだと分かってよかったです。先程も言いましたが、動画は使わないし、あなたのゲスさは誰にも言わないので安心していいですよ。私の予想では、私が何もしなくても、あなたはこれから自滅して破滅の道へと進んで行くと思いますから。では、失礼します」
菜々子は頭を下げずに社長室を出て行った。彼女と入れ違いで、私が頼んでいたコーヒーを女性スタッフが持ってきた。
「理奈さん、ありがとう。あなた、今から店長になってね。菜々子さん辞めたのよ。消費者金融からお金をかりていて、その借金が膨らんで返せなくなったらしいの。ホスト通いで貢いでいたみたい。借金返済と貢ぐ為に今後は風俗で働くからって、今、退職したの。だから、店長お願いね」
副店長の理奈は私の話に驚きながらも、店長になるのを了承した。
菜々子は最近生意気になってきたと思っていたから、辞めてくれて清清した。
私が自滅して破滅すると菜々子は言った。アレがいなくなったくらいで? 最近二号店もオープンして売り上げも右肩上がり。破滅なんてする訳がない。
ひと段落したので、私はバッグからスマホを取り出し電話をかけた。
『——只今、電波の届かないところにあるか、電源が入っていないため、かかりません——』
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