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春花とおくがカップ焼きそばの作り方を書いたら。
しおりを挟むきりきりと胃が痛い。
お腹が空いたなあと私はペンを置いた。
時計を見る。二十三時、半。
少し。三十分だけ。
そう思って台所へ降りた。
戸棚を開けるとカップ焼きそばがぽつんとあった。まるで私を待っていたかのように、ぽつんと、暗がりにビニルを光らせた。
私もそれを求めていたように手に取る。
十一時、半。
九時以降の食事は太ると言うけど…まあ、いっか。頭使うし──腹が減ってはなんとやら。
ティファールはそんなこんなの内にお湯を沸かしてくれた。
ぴりりと包装を破って、お湯を注ぐ。
こぽこぽと鳴る音が私のお腹を刺激する。
こぽこぽ、ぐぅ。
私のお腹は返事した。
待ち時間の五分でも勉強するのが受験生。私は単語帳を開いて、待った。
湯切りのお湯がシンクを打つ音にまさに私のお腹は音を上げ、ソース、かやくを入れ、そばを混ぜると今度は視覚的にまいってしまった。
頂きますの声は家族の寝静まった家に静かに響く。私の胸に軽い興奮が駆ける。
ずる、ずると食べ始めたら止まらなかった。頭には関係の無いCMを思い浮かべつつあっという間に平らげた。
さあ休憩は終わりだ。もうひと頑張りと部屋に戻る。机の上の解きかけの日本史に向かう。
しかし、小腹の満たされたお腹は、今度は睡眠を欲していた。
なんと欲張りなやつだ。我ながらあきれつつ、藤原不比等で抑えにかかる。長屋王、藤原四子、橘諸兄……睡魔はそのどれも打ち倒した。これ以上とない幸福の淵へと引きずり込まれる中、私は何故かカップ焼きそばを食べている時の事を思い出した。
ずる、ずる。
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