お江戸物語 才蔵とお艶

らんふぁ

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四章 蝉時雨

ニ話

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「……てなワケで野郎をとっ捕まえたんだが、張り込んでいる間、まぁ、蝉の煩い事、煩い事、イライラしたぜ」

苦笑しながらお艶は亭主に団扇で風を送ってやる。
「確かにねぇ……。だけど、アレは恋の唄なんだとさ。何年も土の中で過ごして、地上では僅か一週間しか生きられない蝉のね」

驚く才蔵「お前、そんな事、どこで聞いた?」

「与力の鳩村様。ホラ、去年だか一昨年だか、子供達と川辺の木で蝉採りなさっていた事があっただろ?その後、子供が木から落ちそうになって……」


思い出した才蔵は合点した。「あ、そうそう、助けようとして、自分が落ちたんだよな。あん時か。びしょびしょになったんで、俺の着物をお貸ししたんだった。…変わったお人さ。鈴虫を飼うのがお上手だそうで。まあ、お前は大奥様のトコで奉公してたしな……」

お艶は13の歳から才蔵と祝言を挙げる時まで、鳩村与力の母親の元で奉公していたので、その倅とも縁が深い。

「だから嫌って程、よ~く知ってるよ。虫好きな与力様。で、その時に蝉の恋の唄の話を聞いたんだよ。短い命の中、必死で相手を求めてるってね……」

「そうか……恋の唄ねぇ。なら、少しは我慢してやるか」そう言うとニヤリとし、「俺のは短い恋の唄じゃねぇな。何せガキの頃からだ。年期が入ってる。」

2人は幼なじみである。
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