【完結】バイトの後輩があまりにもショタで困る

のりたまご飯

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第二章 寒凪

ご飯を食べたら

全く関係はないが、ここでとあるバナナを見てみよう。
親指もないぐらいの大きさに、完熟しているが、全く変色のない黄色い皮。
先端は皮に包まれており果肉が全く見えない。
根元についているはずの葉っぱも、ひとつたりとも見当たらない。

それが俺が見た、ありのままのものだった。
バナナだぞ?バナナだからね?

「…先輩?」

お湯の中に座るりょうやが声をかけてきた。
妄想の世界から現実へと引き戻される。

「あっ…わり…」

「急にどうしたんですか…?」

それにしてもりょうやのについて考えるだなんて、、店長じゃあるまいし…。
俺は不純だ。忘れろ忘れろ…

改めて肩からお湯に浸かると、今日一日の疲れが吹っ飛ぶようだった。
暖かなお湯が体を包み込む。温度は高めだが、それがちょうどいい。

「気持ちいいな」

「はい…」

りょうやは相変わらずそわそわしている。
お湯で隠れてるから安心しな。

箱葉温泉の泉質はアルカリ性で、肌を滑らかにしてくれる優しいお湯だ。
このまま俺も若返らないだろうか。

子供の頃は早く大人になりたいだなんて言っていたが、大人になってしまうと子供に戻りたくなるものだ。
前者はいづれは叶うのに、後者は永遠に叶わないなんて、残酷な話だよな。

おっと、ここに大人のくせに子供の見た目をしているずるいやつがいるのを忘れていた。
おそらく口に出したら怒られるだろう。


「そろそろ露天にも行くか~」

「了解です…」

この宿の温泉にはどうやら露天風呂もあるようだ。
年明け早々の冷たい空気の中であったかいお湯に浸かれば、さぞリラックスできるだろう。

浴槽から上がると、お湯の中から見えていた窓の先にある露天温泉へ向かう。
引き戸を引いて外へと出ると、一桁の温度ほどであろう気温が体を攫う。

「くうううっっ」

「さ、寒い…」

外に出ている分だけ寒い。ならとっととお湯に入ろう。
中とは比べものにならないほどの湯気が出ている浴槽に入ると、軽くかけ湯をし、そのまま肩まで浸かる。

「っはぁぁぁ…」

思わず大きなため息が出てしまった。
これだよこれこれ。温泉はこうでなくっちゃ。

「今度は熱いぃ…」

外のお湯なだけあって、温度は高めに設定してあることだろう。
慣れないりょうやが熱く感じるのは自然なことだ。

「ああぁどうしよぉぉ…」

中に入れば熱い、外に出れば寒い。
そんな葛藤を繰り返しているりょうやをみると思わず笑ってしまう。

気を取り直し、壁に寄りかかりながら暗い空をゆっくりと眺めてみる。
竹でできた柵には、まだ雪が残っているようだった。
正月早々、風情を感じられてよかったと思うと同時に、連れてきてくれた店長に感謝をしよう。

結局その後、店長が現れてりょうやが襲われるなんていう展開もなく俺は安心した。

ちなみに店長は脱衣所で普通に座って俺たちを待っていた。悟りを開いたような顔をしていたのだが、温泉がそんなに気持ちよかったのだろうか。
改めて浴衣に着替えると、今度は四人で合流し晩御飯をいただくことになった。


旅館の晩ごはんだなんて、中学校の修学旅行以来だろうか。
あいにくその後は晩ごはん付きの宿なんて泊まる金がなかったものでね。

「おいし~~~!!!」

一口目から絶好調な鈴音は置いておくとして、晩御飯のビュッフェ会場にやってきた。
正直懐石料理のような、『ザ・旅館』のようなご飯が出てくるのかと思ったが、これはこれでいい。

「みんないっぱい食べてね~」

などといった張本人がそれほど料理をとっていない。
店長はダイエットでもしているのだろうか。

「美味しい…」

「よかったな。いっぱい食べたら身長も伸びるぞ」

「…伸び盛りの中学生じゃないんですから」

これは流石にアウトだっただろうか。いやしかし、俺は間違ったことは言っていない。
そうだよな?な?

和洋折衷の料理の数々に俺たちが舌鼓を打ったところで、今日の予定は以上となった。
手元のスマホをみると、すでに時刻は21時を回っていた。もう一回大浴場へ行こうかとも迷ったが、満腹の鈴音が眠そうな顔をしているので、また明日の朝にでも入りに行こうかと思う。

「僕たちも部屋に戻ります?」

「そうだな。」

時々他の客とすれ違いながら館内の廊下を歩き、自分たちの部屋まで辿り着いた。
昔ながらのドアにカードキーを使うギャップを感じつつ中へと入る。

16畳と広い部屋の和室には一式、布団が敷かれていたままだ。

「お昼迷惑かけちゃったんで布団敷きますよ…?」

「大丈夫だよ。自分の分は自分でできるし。」

「了解です…」

俺のがまだだったので、自分で箪笥から布団を出すと、シーツや布団をそれぞれかけてベッドメイキングは完了である。
敷きたての布団に体をバタンキューさせると、温泉で温まった体と柔らかな布団がマッチし、そのまま眠りにつきかけた。

「ま、流石にまだ寝ないよな」

「まだ9時ですし、僕はまだ眠くないですね…。」

「そういやさっきお酒飲んでなかったよな?」

「財布部屋に忘れたので身分証がなくて…。こんなんで頼んじゃったら皆さんに迷惑かかりますし。」

「そうだったのか…。」

俺はさっきビールを一缶飲んだが、りょうやはオレンジジュースを飲んでいたので聞いてみたが、そういうことだったか。
そういえば、さっき店長がきたときに何か差し入れを持ってきていたのをすっかり忘れていた。
何かを冷蔵庫の中に入れていたはずだが、まさか…と思い開けると、そこには見慣れた銀色の缶が数個ほど入っていた。
もちろん冷たい状態だ。キンキンに冷えてやがる。

「これ、さっき店長が持ってきたんだけど…」

りょうやに聞くと、目をきらきらとさせながら受け取った。
あれ、なんだか罪悪感が…。
未成年飲酒をさせているわけではないのに…

「お酒飲めるとは思ってなかったですっ…ありがとうございます…」

「お礼なら後で店長に言っときな~、おつまみもあるし、二人で飲んじゃおうぜ」

「はいっ!」

お酒数本を縁側の席に持ってくると、そのまま昼に本を読んでいた場所に腰を下ろす。
りょうやも同じように向かい側に座ると、お互いビール缶を開けて乾杯。
するとりょうやはグビグビと缶を傾け、アルコールを摂取し始めた。
俺は二杯目だが、さっきのご飯がちょっとだけきついかったので、少しずつ味を確かめながら飲んでいく。

りょうやは30分もしないうちに1本目を飲み終え、頬をうすいピンク色に染めながら2本目の蓋を開封した。

「りょうやのケーキが売れて本当によかったな~。おかげでお店大繁盛だったぞ。」

「ほんとじぶんでもびっくりです~!よくやった~ぼく~!!いえ~い!!」

「その後ボーナスとか出たの?」

「でるわけないじゃないですかあ!てんちょうけちだし…、まあせんぱいとりょこうにこれただけでじぶんはぜんぜんボーナスですよっ!なんて~、えへへ」

酔ったな…こいつ…
とまあ、その後もたわいのないことを話しながら、しばしの晩酌を楽しんだ。

「彼女さんの時は残念だったなぁ。大丈夫?まだ引きずったりしてないか?」

「もういまはだいじょうぶです!せんぱいがきてくれたおかげですよ~」

「そっか。そりゃあ嬉しい話だな。」

「…先輩、、」

「んあ?」

りょうやをみると、さっきみたいなヘラヘラした顔とは反対に、ピンク色になった頬をこちらに向けながら、真面目に俺をじっと見ていた。

「守ってくれますかって、僕聞きましたよね…?」

「えっ?」

「だーかーらー、クリスマスイブの夜…、僕を守ってくれるかって…聞きましたよね…」

「…そう言ったな。」

「だったら…、今…、そうですね…、、もし、先輩が守ってくれるんだったら……」

しばらく黙り込むりょうや。次に口を開くと、

「ぎゅーってしてくれませんか?」

「…えっ?」

ん?なんて言ったんだこいつ?
「ぎゅー」とか言ったか?酒の飲み過ぎで耳が遠くなったか…

「ぎゅーって、してください!」

「…」

どうやら俺は聞き間違えをしていなかったようだ。
しかしだ。しかし、、、ハグ…か

戸惑うことなんてない…
後輩をハグするなんてことは容易にできるはずだ。
何を動揺してるんだ俺!!
元気付けるためにぎゅーっとしてやれよ!!
ってかこいつが振られた時にも抱きしめてあげたじゃないか!!!

そう思いつつも、俺は赤い頬をして、上目使いでこっちを見つめるりょうやのことを、心のどこかで気になっていた。

「しょ、しょーがないな…」

「やった~!」

「守ってくれる」という言葉が正直気になるが、後輩を守ると言うのは先輩の勤めだ。

今座っていた椅子から降りると、そのまま軽く膝をつき、向かい側に座っていたりょうやを抱きしめた。
クリスマスイブの時に抱きしめたのとはまた違う感触。あの時は外にいた上に、厚着の上だったのに対し、今は浴衣の布地2枚しか間に挟んでいない。
肺が膨らみ、少しだけ押し返され、肺が縮み、少しだけ押し返す。
りょうやの体温を直に感じられるし、バクバクとはねる心臓の音まで聞こえる。

こんなんで気にするなという方がおかしい。
誰か代わりたい奴は…。いや、店長が立候補するかもしれないからここは譲らないでおこう。

10秒ほど抱きしめると、そのままそっと手を離す。
顔をあげてりょうやの顔をみると、やはり酒に酔ったヘラヘラな顔をしていた。

気にするまでなかったか。俺は何を考えてるんだろう。
と、多寡をくくった俺が、その時りょうやが頬に浮かべていたピンク色の原因、それが酒だけではないということを知るのはもう少し先のことだ。

続く
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