4 / 6
4
本心①
しおりを挟む
「君があんなに淫らではしたない女だとは思わなかったよ」
部屋を訪ねてきた許嫁に突然そう吐き捨てられ、マリルは凍りついた。カイゼルは、隣国の第二王子だ――幼い頃、カイゼルの父王のたっての希望でマリルとの縁談がまとめられ、マリルが女王として即位すると同時に彼が王婿として迎えられる、という話になっていた。
マリルはあまり本気にしてはいなかった。両家の両親がなんとなく取り決めた話ではあったが、公式に発表されたことは一度もない。王宮でいまいち肩身の狭い第二王子をこちらへ厄介払いしようという相手側の意図が透けて見える――だから、両親は話を適当に合わせていたに違いないとマリルは思っていた。もしカイゼルが王子にふさわしい人柄や態度を備えるように成長していれば彼女ももう少し真剣に考えたかもしれないが、残念ながらそうはならなかった。両親亡き今、別に義理立てする必要もない。
とはいえ、正式に訪ねてきた以上は客には違いない。マリルは無礼な来訪の挨拶に眉をひそめる侍女にほほえみかけて宥めながらも、内心は早く帰ればいいのにと思わずにはいられなかった。
「久しぶりに来てくださったと思ったら、突然なんなの。いくら幼い頃から知った仲であっても、なんでも許されるということではないわ」
「ふん、ずいぶん上等な口を利くじゃないか……海の魔女の城で、娼婦の真似事をしてるくせに」
「カイゼル殿下! 」
侍女が堪りかねて口を挟もうとした。彼女をはじめ、マリルは周囲の信頼できる重臣たちに〈体液提供〉の事情を説明し、自分が城を空けている間の執務が滞らないようにしていた――事情を知っているものにしてみれば、マリルのしていることを〈はしたない〉などと罵られることを看過できなかったのだろう。マリルは自身の代わりを差し出すことができる立場にあったにもかかわらず、みずから魔女と契約して奉仕しているのだから。
どこから漏れたのだろう、とマリルは考えを巡らせた。国内に伝播するならまだしも、隣国に住む彼がなぜそんなことを知っているのだ?
カイゼルは鼻を鳴らした。
「今日もこれから行くのか? 」
「ええ。そういう契約だから」
「契約ねえ。さも仕方なさそうに言うが、本当はもう期待で股を濡らしているんじゃないのか? 」
侍女が絶句した――マリルは彼女に合図し、部屋を下がらせた。うら若い彼女に、これ以上品位のかけらもない罵り言葉を聴かせるわけにはいかない。侍女は主の危機を察してわずかに逡巡したが、マリルが頷くとようやく部屋を出て行った。
「しばらく見ないうちにずいぶんお上品なもの言いを覚えられたものね」
軽蔑を込めて言い捨て、少しずつベルデュランの城へつながる魔法陣の方へにじり寄る。カイゼルの訪問は突然だったので、いつも通りの時間に呼ばれるはずだ。さほど遠い未来ではないはず――。
カイゼルは唇を歪めた。酷薄な笑みのようにも、傲慢な怒りのようにも見えるその表情は、マリルにはただ恐ろしかった。カイゼルは尾のひとかきでマリルとの間を詰め、彼女の髪を掴んだ。
「汚らしい売女め! そんなに男が欲しければくれてやる……誰が自分の主人なのか、よく味わうがいい」
カイゼルはマリルを壁に押しつけ、すでに張りつめている自分の腰布をかなぐり捨てた。そこに屹立している凶悪な獲物をまともに目にして、マリルは心底ぞっとした。カイゼルの歪んだ欲望を象徴するかのように赤黒く立ち上がった男根は、異様にまがまがしく見えた。
カイゼルはマリルの腰布を引きちぎり、鱗に隠れた蜜壺にいきなり指を挿し入れてかき回した。彼を振りほどこうともがきながらも、メリルは痛みに顔を引きつらせた――信じられない。昔から自分本位な男だったが、まさかここまでとは。
繊細な粘膜を保護するために生じた潤いに、カイゼルは嬉々として声を上げた。
「見ろ! こんなに早く濡れてきた……乱暴にされるのがイイのか? とんだ変態だな」
「……無知な人って幸せね。自分に都合のいいことしか見えないんだもの」
もっと濡れろと言わんばかりにざくざくと指を突きこまれ、マリルは痛みを紛らわせるために言った。魔法陣が光りはじめる――マリルはカイゼルを突き飛ばして魔法陣に触れようとしたが、カイゼルはマリルに男根をねじ入れて彼女を犯した。痛い。痛い。
痛い!
身をよじると、頬を張り飛ばされた。しかし、その衝撃で指先が輝く魔法陣に届いた。マリルは一瞬でベルデュランの城へ運ばれ、彼女を迎えたラスティアンの腕の中へ倒れ込んだ。
「……マリルさま! 」
ラスティアンが聞いたこともないほど悲痛な声で叫ぶのが聞こえる。マリルは目を開けられなかった。殴られた頬が腫れ上がり、熱をもって疼く。無理に押さえつけられた体が軋む。もう脅威はないはずなのに、怖くて震えが止まらない。そのまま海底の白い砂地に崩れ落ちそうになったマリルを、ラスティアンの腕が支えた。
「――痛ッ! 」
彼に抱き上げられた途端、無理に暴かれた蜜口から引き裂かれるような鋭い痛みが走った。ラスティアンはぎくりと動きを止めた。マリルは必死に首を振った。
「あ、ち、違うの……あなたじゃなくて――」
「……いいえ、わたしが乱暴だったのでしょう。お許しください」
ラスティアンの腕にぎゅっと力がこもった。マリルはこみあげてくる涙を抑えることができず、ゆっくりと城の中へ運ばれていきながら、ラスティアンから見えないように静かに泣き続けた。
※ ※
いつの間にか気を失っていたようだ。マリルは背筋が凍りつくほど怒りに満ちた声で目を覚ました。ベルデュランの声だ……普段のおちゃらけた態度からは想像できないような、冷たい声だった。
「……信じらんないわね。本当にこの子、無理やり突っ込まれたってわけ」
「はい。膣口が裂けていました――頬に殴ったような跡もありましたし、ろくにほぐされもせず乱暴に……暴行されたとしか………」
「治療はできるわね? 」
「ええ、外傷は問題ありません。しかし――」
ラスティアンが言いよどんだのは、マリルと目が合ったからだ。
「マリルさま」
ふたりの顔に安堵の色が浮かぶ。マリルは起き上がろうとしたが、ベルデュランの触手が彼女を押し戻した。
「ノー、ノー、無理はダメよ。ラスが薬を塗ったばっかりだから、もう少しじっとしてましょうね。ほら、見て――あなたの母乳から作った傷薬。一発でよくなるわよ。なにしろ、極上の素材を使っているからね」
「そうなの……ありがとう」
ベルデュランが二枚貝の中に入れた白い膏薬を見せてくれた。ほのかに甘い匂いを漂わせるこってりとした薬は、お菓子の上のクリームにも見えた。
ベルデュランは触手でマリルの全身を優しく撫でながら尋ねた。
「どう? よかったら、何があったのかあたしたちに話してみない? 」
「え? 」
「女の子が全身ボロボロになって倒れ込んできたら、誰だって気になるでしょ! まして、あなたにはお世話になっているし……それにまあ、一応体液採取の母体として、あなたの体や心の状況はちゃんと知っておきたいのよね。快楽を感じながら分泌した母乳は甘くなるけど、恐怖や痛みを感じていると酸味がまわって質が落ちてしまうの」
柔らかな触手で子どものように抱き上げられてゆったりと心地よく揺らされると、指先まで強張っていたのが嘘のように心が和らいでいった。この場所に、彼女を傷つけるものは何ひとつない。
「カイゼル王子が訪ねてきたの……昔、親同士の口約束で許嫁になった人よ」
マリルが口を開いたので、ベルデュランは優しく相槌を打った。
「口約束ってことは、公式じゃないのね」
「ええ――わたしは、彼と結婚するつもりなんかないわ。あんなことされたらなおさら。なぜかは分からないけど、カイゼルはわたしがあなたたちに協力していることを知っていたみたい。部屋に入ってくるなり、娼婦だと罵られて……そのあと……。でも、時間になって魔法陣が光ったから、何とか逃げてこられたの」
「そう……辛かったわね」
ベルデュランはマリルをそっと寝台に戻し、ラスティアンに言った。
「ちょっとお城に行ってくるわ。王女さまのこと頼んだわよ。もしできるようなら、乳腺を刺激して最初の方の母乳を別に分けておいて。多分酸っぱいから」
「分かりました。お気をつけて」
ラスティアンは固い声で返事をし、師匠が姿を消すとマリルの方へ向き直った。
「お加減はいかがですか? 」
頬をゆっくりと辿る彼の指先は震えている。眉を寄せた苦しげな表情――マリルはラスティアンの頬に手を伸ばした。彼女自身の体の痛みは、すでにかなり和らいでいた。
「どうしたの、ラスティアン。どうしてあなたがそんなに辛そうなの? 」
「あなたが、傷を――」
ラスティアンは何か言おうとしたが、声が曇って続けられない様子だった。ややあって、彼は深い息をついた。
「わたしは、かつてカイゼル殿下の王宮に住んでいました――異形の奴隷として。そのときのことが思い出されて……あの傲慢で冷酷な方が仮とはいえあなたの許嫁で、あなたを暴行したなどと聞いては、とても………」
ラスティアンの手がマリルの手に重なろうとし、直前で固く握り込まれた。マリルは彼のこぶしの上にそっと手を重ねた。
ラスティアンは肩から力を抜いてほほえんだ。
「あの方は――いえ、王宮の方々はみなわたしの姿を嘲り、心ゆくまで嗤い、罵りました。……ですから、あなたにお目にかかって驚いたのです。王女であるあなたがわたしを厭わず、醜い姿を侮るどころか、才があると褒めてくださったのですから」
ラスティアンは母乳から作られた乳白色の薬を取り、マリルの体の傷に追加で塗り足した。小さな傷は、薬が触れただけで痕も残らず消えていった。
膣口の傷には、特に丁寧に薬が塗り込まれた。痛みはなかった――それどころか、彼の指が入り口をなぞると、性的な意図が込められていないと分かっているにも関わらずマリルの体は勝手に反応しはじめた。
「痛みはありませんか? 」
マリルが尾を揺らしたのを見咎めて、ラスティアンは言った。
「無理は禁物です。わたしとしては、今日は治療に専念していただきたいところですが……」
「ん……大丈夫よ。ベルデュランは母乳の質が変わっていないか気にしているんでしょう? 」
「しかし……」
「あなたになら、任せられるわ――」
抱きしめて。マリルが両腕を差し出して乞うと、ラスティアンは胸をつかれたように立ちすくみ、やがてゆっくりと両腕で彼女を抱きしめた。繊細な触手が全身を包み込み、宥めるように撫でてくる。さざ波のような穏やかな刺激にマリルは瞳を閉じ、ラスティアンの胸に体を預けた。
部屋を訪ねてきた許嫁に突然そう吐き捨てられ、マリルは凍りついた。カイゼルは、隣国の第二王子だ――幼い頃、カイゼルの父王のたっての希望でマリルとの縁談がまとめられ、マリルが女王として即位すると同時に彼が王婿として迎えられる、という話になっていた。
マリルはあまり本気にしてはいなかった。両家の両親がなんとなく取り決めた話ではあったが、公式に発表されたことは一度もない。王宮でいまいち肩身の狭い第二王子をこちらへ厄介払いしようという相手側の意図が透けて見える――だから、両親は話を適当に合わせていたに違いないとマリルは思っていた。もしカイゼルが王子にふさわしい人柄や態度を備えるように成長していれば彼女ももう少し真剣に考えたかもしれないが、残念ながらそうはならなかった。両親亡き今、別に義理立てする必要もない。
とはいえ、正式に訪ねてきた以上は客には違いない。マリルは無礼な来訪の挨拶に眉をひそめる侍女にほほえみかけて宥めながらも、内心は早く帰ればいいのにと思わずにはいられなかった。
「久しぶりに来てくださったと思ったら、突然なんなの。いくら幼い頃から知った仲であっても、なんでも許されるということではないわ」
「ふん、ずいぶん上等な口を利くじゃないか……海の魔女の城で、娼婦の真似事をしてるくせに」
「カイゼル殿下! 」
侍女が堪りかねて口を挟もうとした。彼女をはじめ、マリルは周囲の信頼できる重臣たちに〈体液提供〉の事情を説明し、自分が城を空けている間の執務が滞らないようにしていた――事情を知っているものにしてみれば、マリルのしていることを〈はしたない〉などと罵られることを看過できなかったのだろう。マリルは自身の代わりを差し出すことができる立場にあったにもかかわらず、みずから魔女と契約して奉仕しているのだから。
どこから漏れたのだろう、とマリルは考えを巡らせた。国内に伝播するならまだしも、隣国に住む彼がなぜそんなことを知っているのだ?
カイゼルは鼻を鳴らした。
「今日もこれから行くのか? 」
「ええ。そういう契約だから」
「契約ねえ。さも仕方なさそうに言うが、本当はもう期待で股を濡らしているんじゃないのか? 」
侍女が絶句した――マリルは彼女に合図し、部屋を下がらせた。うら若い彼女に、これ以上品位のかけらもない罵り言葉を聴かせるわけにはいかない。侍女は主の危機を察してわずかに逡巡したが、マリルが頷くとようやく部屋を出て行った。
「しばらく見ないうちにずいぶんお上品なもの言いを覚えられたものね」
軽蔑を込めて言い捨て、少しずつベルデュランの城へつながる魔法陣の方へにじり寄る。カイゼルの訪問は突然だったので、いつも通りの時間に呼ばれるはずだ。さほど遠い未来ではないはず――。
カイゼルは唇を歪めた。酷薄な笑みのようにも、傲慢な怒りのようにも見えるその表情は、マリルにはただ恐ろしかった。カイゼルは尾のひとかきでマリルとの間を詰め、彼女の髪を掴んだ。
「汚らしい売女め! そんなに男が欲しければくれてやる……誰が自分の主人なのか、よく味わうがいい」
カイゼルはマリルを壁に押しつけ、すでに張りつめている自分の腰布をかなぐり捨てた。そこに屹立している凶悪な獲物をまともに目にして、マリルは心底ぞっとした。カイゼルの歪んだ欲望を象徴するかのように赤黒く立ち上がった男根は、異様にまがまがしく見えた。
カイゼルはマリルの腰布を引きちぎり、鱗に隠れた蜜壺にいきなり指を挿し入れてかき回した。彼を振りほどこうともがきながらも、メリルは痛みに顔を引きつらせた――信じられない。昔から自分本位な男だったが、まさかここまでとは。
繊細な粘膜を保護するために生じた潤いに、カイゼルは嬉々として声を上げた。
「見ろ! こんなに早く濡れてきた……乱暴にされるのがイイのか? とんだ変態だな」
「……無知な人って幸せね。自分に都合のいいことしか見えないんだもの」
もっと濡れろと言わんばかりにざくざくと指を突きこまれ、マリルは痛みを紛らわせるために言った。魔法陣が光りはじめる――マリルはカイゼルを突き飛ばして魔法陣に触れようとしたが、カイゼルはマリルに男根をねじ入れて彼女を犯した。痛い。痛い。
痛い!
身をよじると、頬を張り飛ばされた。しかし、その衝撃で指先が輝く魔法陣に届いた。マリルは一瞬でベルデュランの城へ運ばれ、彼女を迎えたラスティアンの腕の中へ倒れ込んだ。
「……マリルさま! 」
ラスティアンが聞いたこともないほど悲痛な声で叫ぶのが聞こえる。マリルは目を開けられなかった。殴られた頬が腫れ上がり、熱をもって疼く。無理に押さえつけられた体が軋む。もう脅威はないはずなのに、怖くて震えが止まらない。そのまま海底の白い砂地に崩れ落ちそうになったマリルを、ラスティアンの腕が支えた。
「――痛ッ! 」
彼に抱き上げられた途端、無理に暴かれた蜜口から引き裂かれるような鋭い痛みが走った。ラスティアンはぎくりと動きを止めた。マリルは必死に首を振った。
「あ、ち、違うの……あなたじゃなくて――」
「……いいえ、わたしが乱暴だったのでしょう。お許しください」
ラスティアンの腕にぎゅっと力がこもった。マリルはこみあげてくる涙を抑えることができず、ゆっくりと城の中へ運ばれていきながら、ラスティアンから見えないように静かに泣き続けた。
※ ※
いつの間にか気を失っていたようだ。マリルは背筋が凍りつくほど怒りに満ちた声で目を覚ました。ベルデュランの声だ……普段のおちゃらけた態度からは想像できないような、冷たい声だった。
「……信じらんないわね。本当にこの子、無理やり突っ込まれたってわけ」
「はい。膣口が裂けていました――頬に殴ったような跡もありましたし、ろくにほぐされもせず乱暴に……暴行されたとしか………」
「治療はできるわね? 」
「ええ、外傷は問題ありません。しかし――」
ラスティアンが言いよどんだのは、マリルと目が合ったからだ。
「マリルさま」
ふたりの顔に安堵の色が浮かぶ。マリルは起き上がろうとしたが、ベルデュランの触手が彼女を押し戻した。
「ノー、ノー、無理はダメよ。ラスが薬を塗ったばっかりだから、もう少しじっとしてましょうね。ほら、見て――あなたの母乳から作った傷薬。一発でよくなるわよ。なにしろ、極上の素材を使っているからね」
「そうなの……ありがとう」
ベルデュランが二枚貝の中に入れた白い膏薬を見せてくれた。ほのかに甘い匂いを漂わせるこってりとした薬は、お菓子の上のクリームにも見えた。
ベルデュランは触手でマリルの全身を優しく撫でながら尋ねた。
「どう? よかったら、何があったのかあたしたちに話してみない? 」
「え? 」
「女の子が全身ボロボロになって倒れ込んできたら、誰だって気になるでしょ! まして、あなたにはお世話になっているし……それにまあ、一応体液採取の母体として、あなたの体や心の状況はちゃんと知っておきたいのよね。快楽を感じながら分泌した母乳は甘くなるけど、恐怖や痛みを感じていると酸味がまわって質が落ちてしまうの」
柔らかな触手で子どものように抱き上げられてゆったりと心地よく揺らされると、指先まで強張っていたのが嘘のように心が和らいでいった。この場所に、彼女を傷つけるものは何ひとつない。
「カイゼル王子が訪ねてきたの……昔、親同士の口約束で許嫁になった人よ」
マリルが口を開いたので、ベルデュランは優しく相槌を打った。
「口約束ってことは、公式じゃないのね」
「ええ――わたしは、彼と結婚するつもりなんかないわ。あんなことされたらなおさら。なぜかは分からないけど、カイゼルはわたしがあなたたちに協力していることを知っていたみたい。部屋に入ってくるなり、娼婦だと罵られて……そのあと……。でも、時間になって魔法陣が光ったから、何とか逃げてこられたの」
「そう……辛かったわね」
ベルデュランはマリルをそっと寝台に戻し、ラスティアンに言った。
「ちょっとお城に行ってくるわ。王女さまのこと頼んだわよ。もしできるようなら、乳腺を刺激して最初の方の母乳を別に分けておいて。多分酸っぱいから」
「分かりました。お気をつけて」
ラスティアンは固い声で返事をし、師匠が姿を消すとマリルの方へ向き直った。
「お加減はいかがですか? 」
頬をゆっくりと辿る彼の指先は震えている。眉を寄せた苦しげな表情――マリルはラスティアンの頬に手を伸ばした。彼女自身の体の痛みは、すでにかなり和らいでいた。
「どうしたの、ラスティアン。どうしてあなたがそんなに辛そうなの? 」
「あなたが、傷を――」
ラスティアンは何か言おうとしたが、声が曇って続けられない様子だった。ややあって、彼は深い息をついた。
「わたしは、かつてカイゼル殿下の王宮に住んでいました――異形の奴隷として。そのときのことが思い出されて……あの傲慢で冷酷な方が仮とはいえあなたの許嫁で、あなたを暴行したなどと聞いては、とても………」
ラスティアンの手がマリルの手に重なろうとし、直前で固く握り込まれた。マリルは彼のこぶしの上にそっと手を重ねた。
ラスティアンは肩から力を抜いてほほえんだ。
「あの方は――いえ、王宮の方々はみなわたしの姿を嘲り、心ゆくまで嗤い、罵りました。……ですから、あなたにお目にかかって驚いたのです。王女であるあなたがわたしを厭わず、醜い姿を侮るどころか、才があると褒めてくださったのですから」
ラスティアンは母乳から作られた乳白色の薬を取り、マリルの体の傷に追加で塗り足した。小さな傷は、薬が触れただけで痕も残らず消えていった。
膣口の傷には、特に丁寧に薬が塗り込まれた。痛みはなかった――それどころか、彼の指が入り口をなぞると、性的な意図が込められていないと分かっているにも関わらずマリルの体は勝手に反応しはじめた。
「痛みはありませんか? 」
マリルが尾を揺らしたのを見咎めて、ラスティアンは言った。
「無理は禁物です。わたしとしては、今日は治療に専念していただきたいところですが……」
「ん……大丈夫よ。ベルデュランは母乳の質が変わっていないか気にしているんでしょう? 」
「しかし……」
「あなたになら、任せられるわ――」
抱きしめて。マリルが両腕を差し出して乞うと、ラスティアンは胸をつかれたように立ちすくみ、やがてゆっくりと両腕で彼女を抱きしめた。繊細な触手が全身を包み込み、宥めるように撫でてくる。さざ波のような穏やかな刺激にマリルは瞳を閉じ、ラスティアンの胸に体を預けた。
2
あなたにおすすめの小説
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
鬼より強い桃太郎(性的な意味で)
久保 ちはろ
恋愛
桃太郎の幼馴染の千夏は、彼に淡い恋心を抱きつつも、普段から女癖の悪い彼に辟易している。さらに、彼が鬼退治に行かないと言い放った日には、千夏の堪忍袋の緒も切れ、彼女は一人鬼ヶ島に向かう。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる