ゴリラとシールド〜セクハラ上司に立ち向かう茜の成長記〜

滝川 千夏

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 寒くなってきた十一月。佐藤さんから企画部全員にメールが届いた。

『柿口さんは本日から休職して療養されることになりました。柿口さんのプロジェクトについては、引き継ぎ先の方へ個別にメールいたします』

 ――うつ病だ。メールを見た瞬間にわかった。部のメンバーも気づいているだろう。

 柿口さんは佐藤さんに意見を言える人だったから、強いと思っていたが、やはり、精神的に参っていたのだ。

 その週の企画一課の会議で、佐藤さんは柿口さんに関することを一切言及せずに、何もなかったかのようにふるまっていた。

 面接のときはフレンドリーで話しやすいと思った佐藤さん。実際に働きだすと、自分の意見に反対する人は徹底してつぶす、一対一の飲みを断っても誘ってくる、大変な上司だと判明した。


 年末の忙しい時期に、また佐藤さんから企画部全員へメールが送られてきた。

『僕が以前働いていた職場の同僚も呼んで、忘年会をやります。仕事の後なので業務外です。参加できる人は連絡ください』

 メールにある「業務外」は、私が以前飲みの誘いを断ったときに言ったものだ。私を意識して誘っているのか。もちろん行きたくないので、返信をしなかった。

 数日後に佐藤さんから個人あてにメールが届いた。

『会場の予約しなくちゃいけないから、今日中に参加可否教えて』

 参加しない人は連絡しなくてよいと思い返信はしていなかった。

『参加不可でお願いします』

 簡潔に返信すると『了解』とメールがすぐに返ってきた。

 これで、断ったのは三回目。もう誘われることはなくなるだろう。安心して途中だった仕事に取り掛かった。
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