ゴリラとシールド〜セクハラ上司に立ち向かう茜の成長記〜

滝川 千夏

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 カップの上にコーヒーを入れたドリッパーを置いて、お湯を少しずつ注ぐ。無になってお湯を注ぐことに集中する。毎朝の心を落ち着かせる儀式だ。

 ーー大丈夫。どっちに転んでも私は大丈夫。

 平常心に戻った私は、コーヒーを飲みながら、今日の仕事の流れを確認する。

 今日は、競合他社とのコンペがある。企画一課の今年度目標達成に直結する大事なコンペだ。綿密なプレゼン準備をしたから、コンペを勝ち抜く自信はある。昨日は早く寝たから体調も万全だ。

 その日の自分の状態でのベストを尽くす。

 これも年末年始休暇に学び、今年から始めたことだ。

 完璧主義の私は、時々、できない自分に苛立ってしまう。しかし、調子が良い日もあれば調子が悪い日もある。その日の自分の状態でのベストを尽くせればいいのだ。

「白崎さん、おはよう」

 佐々木さんがカフェテリアに来た。

「おはようございます」

「今日はコンペだね。緊張してる?」

「少し。でも、しっかり準備したので、勝ち抜きます!」

 おどけてガッツポーズを見せる。

「白崎さんなら大丈夫よ。私、全然心配してないから。楽しみにしてるね」

 そう言うと、佐々木さんはコーヒーも入れずに去っていった。

 きっと、私を励ますためにカフェテリアまで来てくれたのだ。さりげない佐々木さんの心遣いに心が温かくなる。
 
 
 プレゼンは上手くいって、コンペを勝ち抜いた。

 佐々木さんや同僚達も拍手をして喜んでくれた。

「今日は私がおごる! みんなで飲みに行こう」

 佐々木さんがそう言うと、同僚はさらにテンションが上がって「いぇい!」とガッツポーズ。

 プレゼンに勝ち抜いて、企画一課の士気が上がったのか、同僚達も次の大手新規顧客へのコンペ準備に取り掛かり始めた。

 その日の飲み会に佐藤さんは参加しなかった。
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