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第1章「反魔王組織」
頭痛2
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「き、着替え終わったんだけど……。」
クレアは少しだけ声を震わせながら、何か含みのある言い方をする。
その声を聞いて俺と店主は同時に振り向こうとしたが……。
「ちょ、ちょっとまって!」
彼女は必死になって俺達を制止した。
そのままモジモジとしたような声で申し訳なさそうに喋りだす。
「トモキだけ振り向いてくれる?」
「何で俺だけ?」
俺は店主と横目を合わせて、目線で許しを得た。
何故に店主だけ振り向く事を許されなかったのかは、彼女の姿を見て直ぐに理解が出来る。
確かにそこには店主が用意したメイド服を着てるクレアが立っていた。
色は白と黒で構成されている。
別にそれだけの事ならば店主が見られても、何ら問題がないと思うのだが……。
気になる点は、その服の面積である。
メイド服を簡単にイメージすると大抵の人達は、きっちりとしたワンピースにエプロンを提げた構成を想像するであろう。
しかし、クレアが着ているものはワンピース型ではなく、トップスとスカートで分けられている。
それだけならば、まだ見られても大丈夫なのであろうが……。
問題があるとすれば……まずトップスは、胸の谷間を強調させる解放的な作りをしていた。
その中央に可愛い大きめのリボンが付いている。
首元には襟付きのチョーカーを付けて、両肩の柔肌が剥き出しとなっていた。
目線を徐々に下に降ろしていくと彼女のスレンダーボディがこれでもかと言わんばかりに、おヘソを筆頭にして腰のくびれが『こんにちわ』っと露出している。
更に下に目線を降ろすと、ミニスカートもちょっと特殊な構造をしていた。
肉付きの良い太もも上部から反対側の太もも上部を点で結び、そのまま数センチ上部へ扇状の曲線を描くようにして作られている。
なので……スカートから股下がバッチリと見えて、パンツが剥き出しとなっていた。
ザ・見せパンとは、まさにこの事だろう……。
その他にも目を引く足回りには、ガーターベルト、横柄ストライプのニーソックス、焦げ茶色でテカった厚底ローファー。
極め付けには……ただの白いエプロンかと思いきやレース生地で作られていて、薄っすらと下地が透けて見える仕様となっている。
その通り!このメイド服はとてつもなく目のやり場に困る作りとなっているのだ。
そんな姿でモジモジと右手で左肩を押さえて胸を隠し、左手でパンツが見えないように必死にスカートの裾を引っ張ったりと、彼女の内情がヒシヒシと伝わってくる。
着る物がないからと、このメイド服を半分押し付けたように着せてしまった事を少し後悔しつつ、店主には悪いが……最初に独り占め出来る幸せを胸いっぱいに噛み締めた……。
店主の奴め……どこでこんな物を手に入れたんだ……。
ん?ちょっと待て……何かがおかしい……。通常のメイド服はデザインしてもらったから存在しているはずなのだが、こんな娼館が着ている様なメイド服は、デザインしてもらっていない……。
この世界で独自に発展をとげて、このようなメイド服に進化したという事なのだろうか……。
……。
……って、注目すべき所は、その部分じゃないんだ……。
心の中であまりにも興奮してしまい、脳内で感情を取り乱してしまった。
なんだか取り乱したせいで先程コップで打ったおでこの奥も、段々と痛みが増していく気がする……。
そう……俺にだけ彼女はエロい姿を先に見せようとしていた訳ではない。
ショショ洞窟で一度拝見しているから言える事だが、彼女の身体には見るに堪えない無数の傷跡が露出している。
洞窟内では暗くてよく見えなかった部分もあり、改めてよく見ると女の子には相応しくない傷跡がくっきりとわかった。
「そんなにマジマジと見ないでよ……。」
「あ、あぁ……すまん……。」
俺があんまり見つめるものだから、クレアから恥ずかしそうに批判の声が出た。
兎にも角にも自分のエロい思想を無理やり押さえこんで打開策を考えてやらないと……。
そうだ、簡単な事じゃないか!
「俺に提案があるんだけど……。」
俺はクレアに真剣な眼差しを送る。
「鼻血出しながら、真剣な顔されても……。」
「えっ……。こ、これは!さっきのコップがおでこに当たった衝撃で……。」
「どうだか……。」
丁度持っていたタオルで、自分の鼻を拭く。
ほのかにいい香りがしたような気がした……。
「出来るかどうかは本体に聞かないと分からないけど、出来ると確証が取れたならマスターに振り向く許可をしてほしいんだ……。」
「これを隠せるの?」
「隠すというより治すと言ういい方が正しいかな。」
クレアは自分の傷をマジマジと見た後、心配そうに俺を見つめてくる。
それに答える様に、俺は自信を持って首を縦に振った。
「わかったわ……。でも確認って誰に確認するのよ?」
「聖霊に直接聞く。」
「え?聖霊?」
俺は手を前に出して、詠唱準備に取り掛かった。
「ジョーカーを倒した時にサラマンダーを見て、納得のいく説明が欲しいとか言ってたよね。」
「そうね……。」
「それなら直接聖霊を見てもらえる方が早いからな。あと、マスターにも聖霊の事を信じてもらえるように、ちゃんと説明したいしね。」
淡々と説明をした後に、俺はウィルの召喚詠唱を始める。
『地上に存在するすべての生命の灯の中に存在する聖霊よ…今ここに力を震わす事を願う…』
俺の周囲は光だし、初期起動は問題なく作動する。
詠唱って言葉を噛んだりテンポがズレたりしても、たまに発動しない時があるので、いつも緊張しながら喋らないとダメなんだよな。
使う機会がなかったとは言えど、ちゃんと詠唱を省略できるように努力しとくんだった……。
もうこれっきり使う事もないだろう……。
魔力量が増幅し安定した状態になった。
俺はそのまま一気に魔力を放出する。
『……我の前へ顕現せよ……ウィル・オ・ウィスプ!!』
店主の前で召喚された時よりも、光は若干だけ弱まったものだったが、それでも十分に眩しい。
クレアは眩しそうに片目を閉じて、直視しないようにもう一方の目を細めてウィルを見ていた。
後ろを向いているはずの店主さえも、反射光で眩しそうにしている。
召喚が終わると俺は直ぐにふらついて膝を床についた。
ジョーカー戦で1度使い切った魔力は、そんな簡単に回復はしないか……。
そのせいも重なってだろうが、頭痛がもう一段階酷くなった事は言うまでもない……。
正直……つらくなってきた。
「あれれ?トモキ殿。2度目の召喚とかも珍しいですね~。ご自分の治療ですか?」
「はぁ……はぁ……。俺は休めば何とかなる。それよりも聞きたい事がある。」
綺麗な高音域の声のウィルは、宙に横円を描きながら舞っていた。
「聞きたい事とは、何でございましょうか?」
「目の前にいる彼女の傷を癒す事は可能か?」
俺はクレアを指さして、ウィルに聞いた。
ウィルはすかさず、彼女に接近する。
「この子がサラマンダーが言ってた、アリシアそっくりな子ね。」
そういえば向こうの世界では、聖霊同士で交流は出来るんだっけか……。
クレアはウィルに近づかれた事によって、更に眩しそうに両目を閉じている。
「ま、眩しいってば!」
「おっと……これは、失礼……」
クレアの一言でウィルは、元の位置まで戻ってきた。
離れても眩しい事は変わりはしないけどね。
そして、俺に質問の結果をすぐに報告してくる。
「身体の傷については跡形もなく消し去る事ができますよー。」
「そうか!だってよ、よかったな!クレア。」
俺はクレアの方向を見て、祝福を述べた。
正直な所、ウィルに聞いて傷を治療出来ないと言われたらどうしようかと思っていた。
出来ると聞いて一安心する。
そんな俺の心を読み取って次の行動を予想したウィルは、すぐさま行動を起こす為に喋りだした。
「それでは治癒を開始させてもらっても、よろしかったでしょうか?」
「ちょ、ちょっと待って!話が突然すぎて信じられないんだけど……。」
クレアは少し動揺しながら、話についてこれていないらしい。
傷だらけの体とずっと嫌々で付き合っていたのだ……いきなり傷が無くなりますよと言われて『はい、やってください』とは二つ返事出来ないのも無理もない事だろう……。
「でも、傷は無くなってほしいだろ?」
「それは……そうだけど……。」
「一瞬で終わるし痛くもない。安心して消してもらえ。」
俺の一言に背中を押されたのか、クレアは少し考えた後に無言で頷いた。
その行動を見て出番が来たと、ウィルは宙を八の字に飛び回り質問をしてくる。
「それでは、準備はよろしいでしょうか?」
「あっ!ウィル……もうちょっとだけ、待ってくれ。」
「えぇっ!?」
飛び回ったウィルは俺の待て発言を聞いて、発光が目に見えて落ちこみ飛んでいる高度が若干だが下がった。
このままの状態でクレアの傷を癒してしまうと、店主にまたしても聖霊の事を信じてもらえない可能性がある。
「クレア。マスターに傷を癒すところを見せてやって欲しいのだが良いか?聖霊が本当に実在している事を証明したいんだ。」
「あまり……見られたくないけど……貴方が言うなら、仕方ないわね……。」
クレアは恥ずかしそうに小声で答える。
よし!これで準備は整ったな!
「マスター、振り返ってもいいぞ。」
「うわっ、やっぱり眩しくて何も見えない……。」
ずっと黙って背を向けていた店主は、こちらを向いて目を細めている。
目は自分で慣らしてくれよ。
店主の行動を見届けた後に、ウィルは今度こそと張り切って発光をやや強めた。
念には念を入れて、魔法発動前のウィルにある事を伝える。
「最後に自分が聖霊だと自己紹介してから、魔法を発動してくれ。」
「仰せのままに……。」
俺は実証がやっとできる事に安堵の顔を浮かべた。
その緩み切った顔と共に、急激に頭痛が激しさを増す。
もしや……この頭痛は……。
俺は頭痛に不穏をいだきつつも、ウィルはそんな事になっていると気付かずに話を進めていった。
「トモキ様に命じられたので、まずは自己紹介を……。私は聖霊のウィル・オ・ウィスプと申します。トモキ様の中で他の聖霊達と共に生活をしておりまして、他の人間の皆様に魔力を頂きながら生活をしています。このように具現化する事はトモキ様次第ですが、たまにこちら側にやってくる事もあると思いますので気兼ねなくウィルとお呼び下さいませ。」
ウィルの言葉と共に、光は徐々に発光を強めていく。
「それでは、失礼します。」
ウィルの言葉を聞いた直後クレアの身体へ接近して、カメラのフラッシュのような閃光を放つ。
俺達は前の召喚時と同様に、一瞬だけしか瞳を開けることが出来ない。
次に目を開いた時には発光により目に焼き付いた残像を残して、ウィルは姿を完全に消えていた。
「ほ、本当に消えてるわ……。」
クレアは自分の身体の傷がない事をまじまじと確認していた。
店主も考え深い顔をしながら、自分の体を見ているクレアを興味深そうに凝視している。
そんな2人の様子を俺は伺いつつ、額から大量の冷や汗を流していた。
そろそろ限界が来たようだ。
「ぬぐっっっ!?」
もしやと思った時に、この頭痛になってしまう予感はしていた。
クレアが捕まった時の予知と同じような痛みが、ドンっと強い痛みを俺の脳内に侵食させる。
急に感覚が研ぎ澄まされたようになって、目の前が白黒の映像へと変わった。
すべての物がスローモーションに見えてしまうようだった……。
前の頭痛と同様に痛みがゆっくりと引いていくのと同時に、映画のフィルムを細切れにしたような映像が脳裏に投影される。
ポニーテールの女の子が立っている映像。
恐らく出ていったナナに間違いない。
ここは山の頂上だろうか……雲のような白い物が、下に大きく広がっていた。
映像は前の時よりも、少し長く描写されているらしい。
次から次へと細切れの動画が再生させれていった。
何やらナナの頭上に大きな影が覆いかぶさるようにして映りだす。
これは何なんだ?
もう少し先を見せろ……。
もっと先だ!
……。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺は見たくない物を見て、突然叫びだした。
膝をついた状態で、無造作に力なく上半身が前へ倒れ込んでいく。
「ちょ、ちょっとどうしたの?」
「おい!しっかりしろ!」
クレアと店主は俺を心配そうな声で呼びかけられた。
倒れた時に顔面を強打した衝撃で、気を一時的に取り戻したが長くは続きそうにない。
意識があるうちに……もう一度だけ俺が見た細切れの映像を思い出したくもないのに思い出す。
巨大なドラゴンが上空から急降下をしてきて、ポニーテールの女の子を鋭利な爪で一瞬にして無残な肉片と化した……。
それを思い出したと同時に、俺は深い闇へと落ちていった。
クレアは少しだけ声を震わせながら、何か含みのある言い方をする。
その声を聞いて俺と店主は同時に振り向こうとしたが……。
「ちょ、ちょっとまって!」
彼女は必死になって俺達を制止した。
そのままモジモジとしたような声で申し訳なさそうに喋りだす。
「トモキだけ振り向いてくれる?」
「何で俺だけ?」
俺は店主と横目を合わせて、目線で許しを得た。
何故に店主だけ振り向く事を許されなかったのかは、彼女の姿を見て直ぐに理解が出来る。
確かにそこには店主が用意したメイド服を着てるクレアが立っていた。
色は白と黒で構成されている。
別にそれだけの事ならば店主が見られても、何ら問題がないと思うのだが……。
気になる点は、その服の面積である。
メイド服を簡単にイメージすると大抵の人達は、きっちりとしたワンピースにエプロンを提げた構成を想像するであろう。
しかし、クレアが着ているものはワンピース型ではなく、トップスとスカートで分けられている。
それだけならば、まだ見られても大丈夫なのであろうが……。
問題があるとすれば……まずトップスは、胸の谷間を強調させる解放的な作りをしていた。
その中央に可愛い大きめのリボンが付いている。
首元には襟付きのチョーカーを付けて、両肩の柔肌が剥き出しとなっていた。
目線を徐々に下に降ろしていくと彼女のスレンダーボディがこれでもかと言わんばかりに、おヘソを筆頭にして腰のくびれが『こんにちわ』っと露出している。
更に下に目線を降ろすと、ミニスカートもちょっと特殊な構造をしていた。
肉付きの良い太もも上部から反対側の太もも上部を点で結び、そのまま数センチ上部へ扇状の曲線を描くようにして作られている。
なので……スカートから股下がバッチリと見えて、パンツが剥き出しとなっていた。
ザ・見せパンとは、まさにこの事だろう……。
その他にも目を引く足回りには、ガーターベルト、横柄ストライプのニーソックス、焦げ茶色でテカった厚底ローファー。
極め付けには……ただの白いエプロンかと思いきやレース生地で作られていて、薄っすらと下地が透けて見える仕様となっている。
その通り!このメイド服はとてつもなく目のやり場に困る作りとなっているのだ。
そんな姿でモジモジと右手で左肩を押さえて胸を隠し、左手でパンツが見えないように必死にスカートの裾を引っ張ったりと、彼女の内情がヒシヒシと伝わってくる。
着る物がないからと、このメイド服を半分押し付けたように着せてしまった事を少し後悔しつつ、店主には悪いが……最初に独り占め出来る幸せを胸いっぱいに噛み締めた……。
店主の奴め……どこでこんな物を手に入れたんだ……。
ん?ちょっと待て……何かがおかしい……。通常のメイド服はデザインしてもらったから存在しているはずなのだが、こんな娼館が着ている様なメイド服は、デザインしてもらっていない……。
この世界で独自に発展をとげて、このようなメイド服に進化したという事なのだろうか……。
……。
……って、注目すべき所は、その部分じゃないんだ……。
心の中であまりにも興奮してしまい、脳内で感情を取り乱してしまった。
なんだか取り乱したせいで先程コップで打ったおでこの奥も、段々と痛みが増していく気がする……。
そう……俺にだけ彼女はエロい姿を先に見せようとしていた訳ではない。
ショショ洞窟で一度拝見しているから言える事だが、彼女の身体には見るに堪えない無数の傷跡が露出している。
洞窟内では暗くてよく見えなかった部分もあり、改めてよく見ると女の子には相応しくない傷跡がくっきりとわかった。
「そんなにマジマジと見ないでよ……。」
「あ、あぁ……すまん……。」
俺があんまり見つめるものだから、クレアから恥ずかしそうに批判の声が出た。
兎にも角にも自分のエロい思想を無理やり押さえこんで打開策を考えてやらないと……。
そうだ、簡単な事じゃないか!
「俺に提案があるんだけど……。」
俺はクレアに真剣な眼差しを送る。
「鼻血出しながら、真剣な顔されても……。」
「えっ……。こ、これは!さっきのコップがおでこに当たった衝撃で……。」
「どうだか……。」
丁度持っていたタオルで、自分の鼻を拭く。
ほのかにいい香りがしたような気がした……。
「出来るかどうかは本体に聞かないと分からないけど、出来ると確証が取れたならマスターに振り向く許可をしてほしいんだ……。」
「これを隠せるの?」
「隠すというより治すと言ういい方が正しいかな。」
クレアは自分の傷をマジマジと見た後、心配そうに俺を見つめてくる。
それに答える様に、俺は自信を持って首を縦に振った。
「わかったわ……。でも確認って誰に確認するのよ?」
「聖霊に直接聞く。」
「え?聖霊?」
俺は手を前に出して、詠唱準備に取り掛かった。
「ジョーカーを倒した時にサラマンダーを見て、納得のいく説明が欲しいとか言ってたよね。」
「そうね……。」
「それなら直接聖霊を見てもらえる方が早いからな。あと、マスターにも聖霊の事を信じてもらえるように、ちゃんと説明したいしね。」
淡々と説明をした後に、俺はウィルの召喚詠唱を始める。
『地上に存在するすべての生命の灯の中に存在する聖霊よ…今ここに力を震わす事を願う…』
俺の周囲は光だし、初期起動は問題なく作動する。
詠唱って言葉を噛んだりテンポがズレたりしても、たまに発動しない時があるので、いつも緊張しながら喋らないとダメなんだよな。
使う機会がなかったとは言えど、ちゃんと詠唱を省略できるように努力しとくんだった……。
もうこれっきり使う事もないだろう……。
魔力量が増幅し安定した状態になった。
俺はそのまま一気に魔力を放出する。
『……我の前へ顕現せよ……ウィル・オ・ウィスプ!!』
店主の前で召喚された時よりも、光は若干だけ弱まったものだったが、それでも十分に眩しい。
クレアは眩しそうに片目を閉じて、直視しないようにもう一方の目を細めてウィルを見ていた。
後ろを向いているはずの店主さえも、反射光で眩しそうにしている。
召喚が終わると俺は直ぐにふらついて膝を床についた。
ジョーカー戦で1度使い切った魔力は、そんな簡単に回復はしないか……。
そのせいも重なってだろうが、頭痛がもう一段階酷くなった事は言うまでもない……。
正直……つらくなってきた。
「あれれ?トモキ殿。2度目の召喚とかも珍しいですね~。ご自分の治療ですか?」
「はぁ……はぁ……。俺は休めば何とかなる。それよりも聞きたい事がある。」
綺麗な高音域の声のウィルは、宙に横円を描きながら舞っていた。
「聞きたい事とは、何でございましょうか?」
「目の前にいる彼女の傷を癒す事は可能か?」
俺はクレアを指さして、ウィルに聞いた。
ウィルはすかさず、彼女に接近する。
「この子がサラマンダーが言ってた、アリシアそっくりな子ね。」
そういえば向こうの世界では、聖霊同士で交流は出来るんだっけか……。
クレアはウィルに近づかれた事によって、更に眩しそうに両目を閉じている。
「ま、眩しいってば!」
「おっと……これは、失礼……」
クレアの一言でウィルは、元の位置まで戻ってきた。
離れても眩しい事は変わりはしないけどね。
そして、俺に質問の結果をすぐに報告してくる。
「身体の傷については跡形もなく消し去る事ができますよー。」
「そうか!だってよ、よかったな!クレア。」
俺はクレアの方向を見て、祝福を述べた。
正直な所、ウィルに聞いて傷を治療出来ないと言われたらどうしようかと思っていた。
出来ると聞いて一安心する。
そんな俺の心を読み取って次の行動を予想したウィルは、すぐさま行動を起こす為に喋りだした。
「それでは治癒を開始させてもらっても、よろしかったでしょうか?」
「ちょ、ちょっと待って!話が突然すぎて信じられないんだけど……。」
クレアは少し動揺しながら、話についてこれていないらしい。
傷だらけの体とずっと嫌々で付き合っていたのだ……いきなり傷が無くなりますよと言われて『はい、やってください』とは二つ返事出来ないのも無理もない事だろう……。
「でも、傷は無くなってほしいだろ?」
「それは……そうだけど……。」
「一瞬で終わるし痛くもない。安心して消してもらえ。」
俺の一言に背中を押されたのか、クレアは少し考えた後に無言で頷いた。
その行動を見て出番が来たと、ウィルは宙を八の字に飛び回り質問をしてくる。
「それでは、準備はよろしいでしょうか?」
「あっ!ウィル……もうちょっとだけ、待ってくれ。」
「えぇっ!?」
飛び回ったウィルは俺の待て発言を聞いて、発光が目に見えて落ちこみ飛んでいる高度が若干だが下がった。
このままの状態でクレアの傷を癒してしまうと、店主にまたしても聖霊の事を信じてもらえない可能性がある。
「クレア。マスターに傷を癒すところを見せてやって欲しいのだが良いか?聖霊が本当に実在している事を証明したいんだ。」
「あまり……見られたくないけど……貴方が言うなら、仕方ないわね……。」
クレアは恥ずかしそうに小声で答える。
よし!これで準備は整ったな!
「マスター、振り返ってもいいぞ。」
「うわっ、やっぱり眩しくて何も見えない……。」
ずっと黙って背を向けていた店主は、こちらを向いて目を細めている。
目は自分で慣らしてくれよ。
店主の行動を見届けた後に、ウィルは今度こそと張り切って発光をやや強めた。
念には念を入れて、魔法発動前のウィルにある事を伝える。
「最後に自分が聖霊だと自己紹介してから、魔法を発動してくれ。」
「仰せのままに……。」
俺は実証がやっとできる事に安堵の顔を浮かべた。
その緩み切った顔と共に、急激に頭痛が激しさを増す。
もしや……この頭痛は……。
俺は頭痛に不穏をいだきつつも、ウィルはそんな事になっていると気付かずに話を進めていった。
「トモキ様に命じられたので、まずは自己紹介を……。私は聖霊のウィル・オ・ウィスプと申します。トモキ様の中で他の聖霊達と共に生活をしておりまして、他の人間の皆様に魔力を頂きながら生活をしています。このように具現化する事はトモキ様次第ですが、たまにこちら側にやってくる事もあると思いますので気兼ねなくウィルとお呼び下さいませ。」
ウィルの言葉と共に、光は徐々に発光を強めていく。
「それでは、失礼します。」
ウィルの言葉を聞いた直後クレアの身体へ接近して、カメラのフラッシュのような閃光を放つ。
俺達は前の召喚時と同様に、一瞬だけしか瞳を開けることが出来ない。
次に目を開いた時には発光により目に焼き付いた残像を残して、ウィルは姿を完全に消えていた。
「ほ、本当に消えてるわ……。」
クレアは自分の身体の傷がない事をまじまじと確認していた。
店主も考え深い顔をしながら、自分の体を見ているクレアを興味深そうに凝視している。
そんな2人の様子を俺は伺いつつ、額から大量の冷や汗を流していた。
そろそろ限界が来たようだ。
「ぬぐっっっ!?」
もしやと思った時に、この頭痛になってしまう予感はしていた。
クレアが捕まった時の予知と同じような痛みが、ドンっと強い痛みを俺の脳内に侵食させる。
急に感覚が研ぎ澄まされたようになって、目の前が白黒の映像へと変わった。
すべての物がスローモーションに見えてしまうようだった……。
前の頭痛と同様に痛みがゆっくりと引いていくのと同時に、映画のフィルムを細切れにしたような映像が脳裏に投影される。
ポニーテールの女の子が立っている映像。
恐らく出ていったナナに間違いない。
ここは山の頂上だろうか……雲のような白い物が、下に大きく広がっていた。
映像は前の時よりも、少し長く描写されているらしい。
次から次へと細切れの動画が再生させれていった。
何やらナナの頭上に大きな影が覆いかぶさるようにして映りだす。
これは何なんだ?
もう少し先を見せろ……。
もっと先だ!
……。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺は見たくない物を見て、突然叫びだした。
膝をついた状態で、無造作に力なく上半身が前へ倒れ込んでいく。
「ちょ、ちょっとどうしたの?」
「おい!しっかりしろ!」
クレアと店主は俺を心配そうな声で呼びかけられた。
倒れた時に顔面を強打した衝撃で、気を一時的に取り戻したが長くは続きそうにない。
意識があるうちに……もう一度だけ俺が見た細切れの映像を思い出したくもないのに思い出す。
巨大なドラゴンが上空から急降下をしてきて、ポニーテールの女の子を鋭利な爪で一瞬にして無残な肉片と化した……。
それを思い出したと同時に、俺は深い闇へと落ちていった。
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