バッドエンドのその先に

つよけん

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第2章「伝説の剣の行方」

隠れ家

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 俺は日が沈んだ頃にファスト村へと到着していた。
 別に変わった様子もなく、いつもと変わらない寂れた田舎の村である。
 自分の感覚ではつい昨日の事の様に思えるが、ここを訪れるのは約2週間ぶりぐらいであろうか……。

「絶対にマスターは俺が死んだと思ってるだろうな。用事が済んだら後で酔い潰れる為に顔でも出しておくか」

 そんな事を小声でボソリと口に出しながら、自分が生活をしていた寝床へ向かった。
 俺はファスト村では嫌われ者としての扱いを受けている為、村の中では生活が極めて困難である。
 それだと何処で住んでいるんだと突っ込まれそうだが、その辺りは意外と簡単に解決された問題だ。
 村長が住んでいる少し大きめの木造の家を横切って、しばらく進んだ先にその場所は存在している。

「ここも相変わらず、まったく変わってない光景だな」

 変わってたら逆に怖いのだがな。
 その場所とは木々に囲まれた静かな空間。一本道がひたすら前に伸びていて所々に木造の看板が立っている。
 看板の内容には移動方法や攻撃方法、アイテムの使用方法などがあり、様々な初歩的要素が完結に説明されて書いてあった。
 要するにここは、チュートリアルマップなのである。
 現世からこっちの世界へ移動して、この場所を見た時は少し興奮したっけか。
 自分で作った世界その物の光景が、リアルで体験できるのだからテンションも上がるのも無理もない。
 だけど、こんな隠れ家的な使い方をするとか、当初の自分では思いもよらなかった事だけどな。
 俺はそんな事を思いながら、一本道を進んでいくとすぐにその場所は現れた。
 看板を横目で確認すると、宝箱の開け方と書いてある。
 いかにも銅貨5枚が入っていそうなボロボロの宝箱に手を掛けると、俺は一気に蓋を持ち上げて中身を確認した。

「えーっと……寝袋と着替え用の村人の服AとB……確かこの下の底敷きの下に……」

 我ながらいい隠し場所だなと思いながら、ボロボロの宝箱の中の物色を続ける。

「おっ、あったあった」

 俺は底に収納してあった小袋を素早く取り出し、耳元でシャリシャリと音を鳴らしてみた。
 ずっしりと重く感じてちゃんと中身は入っているようだ。問題はどれだけの金額が残っているかだな。
 随時確認さえしていれば悩む必要もなかったのだが、金銭面では大雑把な性格が裏目に出た形だ。
 そういえば金銭面はアリシアが工面してくれていたっけか。
 そのお金もすべてかつての仲間であるヴァッシュやパルフェに勝手に預けて自分は消息を絶ったわけだけど……。
 ダメだ……また過去の事を思い出してしまっている。
 俺は思いを振り切る為に、全力で横に首を振った。
 気を取り直して小袋を凝視するように目を見開くと、俺は少し覚悟の念を決めて一気に小袋の中身を開封する。
 地面に出来るだけ散らばらないように、ジャラジャラと音を立ててお金を散乱させた。
 それを手でかき集めて種類別に丁寧に餞別を始める。
 見た感じ銀貨が大半を占めているような気がした。金貨も見えていたが初見では1枚しか確認できていない。
 これはまずいのでは?と思いつつジャラジャラと丁寧に餞別をしていく。

「お!金貨2枚目発見!!」

 あと1枚を必死の想いで探すも、どうやらこれ以上金貨はなさそうだ。
 もっとあるイメージだったのだが、どれだけお酒につぎ込んだかが目に見えてわかる瞬間だな。
 とりあえず後はどれだけ銀貨が残っているかが問題である。
 
「……10枚の束を集めて」

 俺は銀貨を縦に10枚積むとその高さで残りの銀貨を横にそろえていく。
 2列3列と横に並べる事9列目。

「3枚足りない!!!」

 銅貨はどう考えても30枚程度しか無く、銀貨1枚にも満たない。
 一瞬だけガッカリするように肩を落としたが、残り銀貨3枚だ。言う程遠い金額でもないと気だるそうに顔を上げた。
 この異世界では3種類のお金稼ぎ方法が存在する。
 1番簡単な方法は、当たり前の事だが店で働く事だ。収入は低いが安定して稼げる。
 だけど、そんなにのんびりしてられないのが今の現実だ。
 2つ目の方法は魔物を討伐した時にたまに落とすレアアイテムや換金アイテムを売る事だ。
 高収入を期待できるのだがドロップ率が低く何日もかかってしまう場合もある。
 なんでそんな設定にしてしまったのか……リアルを求めた設定にするとかなんかとか自分で言ってた気もするが、今となってはその設定が自分自身の首を絞めている事に後悔を否めない。
 そして最後の3つ目は掲示板に張り出された依頼を遂行する事によって収入を得る方法だ。
 依頼系はめんどくさい物も多いが、約束された高収入を短期間で得る事が出来る期待の方法なのだ。
 1番高額な依頼だとブラックドラゴン2体の討伐だったかな……今のレベルだと簡単に捻り潰せるレベルであるのだが……実は1度終わってしまった依頼を2度と発注する事は不可能である。
 ましてや2年経っているのに以前の依頼が残っているのかも疑問ではあるが、そこはあると信じるしかないな。
 だけど簡単そうな高難易度系の依頼は、過去に魔王討伐の冒険の際にすべて消費していると思われる。
 問題は山積みだ。しかし、銀貨3枚程度の依頼ならば少しだけ厄介な物は残っている可能性があるかもしれない。
 今はそれに望みを託して明日の朝一にセカン街の掲示板を見に行くことにしよう。

 俺はそんなこんなで銅貨だけ残して小袋にお金を戻すと、元有った宝箱の底へと小袋を収納する。
 これだけ銅貨があれば酔い潰れるだけのお酒にはあり付けるだろう。
 今から考えるだけでもしばらくお酒が飲めていなかった体が、早く飲ませてくれと訴えかけている様に震えながら疼いている。
 根っからのアルコール依存症だと再確認させられた。
 現世に居た頃なんて全然飲めなかったのに、人は変われるとも実感させられる。
 あれだ!あくまでも目的は安眠のためだからな!安眠の為!
 そう思いながら、俺は奮い立って言葉を発する。

「よし!酒場に直行だ!」

 何もないチュートリアルマップの一本道に一人分の叫び声が広がった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 ファスト村の酒場近くまで到着する。
 ドアにはオープンと言う看板が下げてあり、窓には明かりがともっている。
 今日も客は誰もいないだろうと勝手に思いながら、酒場のドアをゆっくりと開いた。

「いらっしゃいませ♪」

 俺はその声を聞き、思わず扉を閉めてしまった。
 しかも聞き覚えのある声だったのだが……。
 俺は意を決して、もう一度酒場のドアを恐る恐る隙間を開ける様に開いた。
 ドアの隙間から目を見開いて中の様子をじっくりと伺うが、見える範囲には誰の存在も確認できない。

「あ、あれ?今クレアの声がした気がしたんだけど」

 俺はもう少し扉を開けて、中の様子を詳しく見ようとした時だった。
 突然視界が奪われ、両目に激痛が走る。
 俺はドアを放して後ろに飛びコケて、地面を這いつくばるように転げまわった。

「目がぁ!目がぁーー」
「必殺!目つぶし♪」

 やはりクレアの声で間違いなさそうだ。
 俺は状況を把握しようと指で突かれて真っ赤になっているであろう目をこじ開け、涙を浮かべながら必死に前を向いてみると。
 そこには際どいメイド服姿でピースをしながら、店の前で仁王立ちしているクレアの姿があった。
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