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無垢
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誰も来ない湖の側の度墟に、少女と少年が暮らしていた。物心つく頃は、三人でいた記憶がある。
大男が、一日一食、食べ物を運んで来る以外は食べ物が無く、三人の子供は常に空腹で、ギラギラした目と痩せぎすな身体をしていた。
二人の男児と一人の女児は、大男を親だと思っていた。成長するにつれて、どうも違うようだと後になって解るのだが……。
一人の男児は、同じ食事を与えられているのに、発育が他の二人より遅く、知能も同じく、遅れていた。
幼さは残酷で、無邪気な“カンの悪い”男児を減らせば、【三人分の食事を、【二人で三人分】食べられると思った二人は、カンの悪い男児を湖に落とした。
大男は、一人減った事に特に気にもせず、食事はその日から二人分が日に一食となった。二人は、一人を減らしても意味が無いと分かり、協力して生きる事になった。
一日一食の内容は、少しだけ変わった。美味くはないが、量のある、紫っぽい肉になった。痩せこけた子供達は、それでも普通より痩せているが、少しましになった。
ある霧の濃い日に、町から5人組の、少年と少女
より少し年が上の男の子と女の子が湖にやって来た。こんな時、”お父さん”からは、魔墟にある、大きな白い布をかぶって、ゆらゆらしていなさいと言われていた。いつもはそうしていると、肝試しに来た人は逃げていくか、少年と少女に気付かずに去って行くかだった。
この日も、そうしている内に、悲鳴が聞こえて、全員が逃げたかに思えた。しかし、二人の男の子と女の子だけが戻って来たのだ。少年と少女は、大男に言われた通り、ゆらゆらしているしか無かった。
「君達。人間だろ?ホラ、触れるもの」男の子がそう言いながら布を取った時、少年と少女はどうしたら良いか分からずに、まだゆらゆらしていた。
「課、分かる?もうゆれてなくて大丈夫だよ」男の子にそう言われて、ようやく少女と少年はゆれるのをやめた。
それから、男の子は度々少年と少女を訪れるようになった。最初は廃墟に住んでいる子供への興味からだった。
会う度に、少年と少女が何も知らない。文字の読み書きもできない事が判ると、男の子は同情した。自分が教えてあげないといけない、使命感のようなものが男の子の心に芽生えていた。
常に腹を空かせている少年と少女に、男の子は食べられる木の実を教えたり、たまに家から食料をくすねて持って来てあげた。
ある日から、少年と少女の小さな指に、木の枝を握らせた。
「こうやって、地面に書いてみて?」と言い、二人に文字を教え始めた。最初はくにゃっと曲がった線だったのが、日に日に文字になって行った。少女の方が覚えが良かった。
【タべモノ】と、【オトウサン】だけだった少年と少女の世界は、男の子によって大きく広がった。
数ヶ月が経ち、二人は、本を読めるまでになった。
ただ、分からない言葉も多く、男の子に言葉の意味をよく聞くようになった。男の子は、貯金をはたいて、二人に辞典をプレゼントした。
「これで質問攻めにされずにすむな」
と男の子は軽口をたたいた。
その日から二人は辞典を“食べるように”読み始めた。最初は、辞典の見方を男の子にしばらく教えてもらっていたが、少年と少女は、言葉を自分たちの力で迎れるようになった。
それでも意味が分からない時だけ、聞くようになった。何となく、男の子の存在や、文字の事は大男に言ってはいけないような気がして、秋密にしていた。
1年が経つ頃には、本の世界から、大男が変である事に気付いた。
毎日、大男は音も立てずに廃墟に現れる。
手に持っているのは、布で出来たずた袋。生臭い匂いが、ふたりの皇腔に満ちる。
「今日の【タベモノ】だ」
湿った声で袋を床に投げる。それを無言で手に取り、何か分からない【タベモノ】をピチャピチャ食べ始める。
男の子が持って来てくれる、パンやスープと比べと、食べるのが辛くなるが、そうしないと殴られる。何かの肉である事だけが分かっていた。
翌朝、少女が「コレだ」と辞典のページをめくっ
た。「死臭ーシシュウ」「食肉ーショクニク」少年もまた、「指ーユビ」というページを出した。
「肉なら.“ブタとかウジとかあるけど..・・紫の指……だよな、コレ'」少年は、昨日こっそり隠しておいた食べ残しを日にかざした。【タべモノ】の分類ではない事だけが分かっていた。
「この事ってあの子にも…ヒミツにしてた方がイイよね……」
少女が言い。少年は黙って頷いた。【タベモノ】ではない事を、確かに知ってしまった。知ってしまうと、一日に一度の食事に、抵抗を感じるようになっていった。飢えていた何も知らない頃のようにはガツガツ食べられない。
「顔色が良いな」
ある晩、大男が二人を見て言った。少女は、表情を変えずに食べてるフリを出来たが、少年は
少し反応したのを、大男は見逃さなかった。
大男は急に、二人のねぐらを荒らし始めた。
板の下には辞典がある。少女は震えた。
「お父さん!」
と少年は叫んだが、大男に簡単に辞典が見つかってしまった。木箱は破壊され、寝ていた毛布は破られた。
「誰がやった!?誰がくれた!?」辞典を手にした大男が怒鳴った。少女は、耳をおさえてガクガク震えている。少年は、少女にしがみついて震えている。
「クソッ何も知らないままでいいのに」
大男は、辞典で二人を殴りつけた。罰を与えるために。
無表情で。二人の口の中が切れ、血を吐き腕が折れた。
ひとしきり殴ると、大男は二人の血がついた辞典を取り上げた。そしていつものように去って行った。
「すっげ一痛い…」
大男が去ったのが分かり、腕かばいながら少年が呟いた。
「私も。そんな事より、バレてる…」
少女が怯えた顔で焦って言った。
「何が?」
「あの男の子の存在が!バしたの!ついさっき……
辞典で!」
しかし二人は、男の子が“街”という遠い場所から来ている事しか知らない。来たら、知らせる他に手はなかった。
「来ちゃダメだー!!」
翌日、森からいつもの様子で来る男の子の影を見つけて、少年は別の方向に叫んだ。
少しでも大男に見つからないように。
「”お父さん”にバしたの!早く逃げてー!」少女も叫んだ。声が震えていて、男の子にもその緊張が伝わり、持って来ていたパンを落としてしまった。
「いたア」
低い声と共に、大男が現れた。幸い、男の子と少し離れている。
「お前が俺の肉達をダメにした奴か」
男の子の方を向き、大男が言う。その表情が、笑っていた。初めて見る、満面の笑みだ。大気味すぎて誰も、何も言えなくなった。
「二人共、昨日を折ったのに……もう治って
るよな……」
大男が言う。何故今その事を?確かに、二人共
腕の骨折が沿っている。そして、大男は語り始めた。どうして、二人に扉肉を食わせていたかを。
”人を食った人間を食べれば不老不死になるという言い伝えが、大男の生まれた村にあった。
確かに、小さな村なのに、老人はいない。
ただし、伝説の”不死”の部分は違った。大男の祖母が亡くなり、死ぬという柄念に、大男は怯えるようになった。
小さな村が戦禍でなくなり、一人になった大男は、湖の廃墟に子供を集めた。最初は十数人いた子供達に、人の肉だけを食わせた。
その子供の肉を、別の子供に食わせて、"不死"を作ろうとした。
次の代の子供達をさらって来て、前の子供の死体を食わせた。冷たい湖の水は、死体の保存にちょうど良い。
ただ、栄養が食らずに死に、感染症で死に、やがて、少女と少年だけが生きのびた。トライアンドエラーを繰り返し、”不死”に自分がなるための、完璧な肉を作っていたのだ。
「お前らは俺の【タベモノ】になるんだ。15才になったら完璧になるのに……ソイツが壊そうとしているーッ」
大男は笑顔のまま、歯を食いしばる音でミシミシ言わせながら、男の子の方に走り始める。
男の子は素早く、駆け出した。
「お父さんやめて!お願い!良い子にする」
そう言ってすがりついた少年を大男は捕らえ
「不死の兆候は見えているのに、もったいないな」
大男は岩を持つ。やめてと叫ぶ少年の頭を、岩で叩きつけた。ゴッというにぶい音。
「不死になり切れてなければな、頭を壊せば
死ぬんだ」
そう言って岩を叩きつける。骨が割れる。
叩きつける。脳が飛ぶ。
叩きつける。眼球が飛び出る。
少女は、何も言えず、恐怖で叫ぶ事も出来ずに見ていた。
大男の後ろに男の子が忍び寄るのが見えた。
鉄パイプを持って泣き顔で、大男に渾身の力で鉄パイプを何度もふるった。
カラン、と音を立て、鉄パイプを落とした男の子は、血に塗れていた。泣きながら、笑っていた。
「頭……壊したら死ぬって言ってたから」
ひどく涙を流しながら、少女に言った。少年は既に事切れていた。
「俺は人を殺した……だから、だから君の側にいられない、いるべきじゃない……ごめん、君のお父さんを……君は逃げて……」
男の子は膝をつき、自分の震える手を見つめて少女に言った。少女は、やっと立ち上がり、男の子をそっと抱きしめた。
「人が悲しい時って、こうするんだっけ?.....私もまだ小さい時に……お腹へってて、キョウダイを殺しちゃったの、同じだね」
少女の拙い言葉は、男の子を慰めようとしていた。
「私は、ここしか知らないから……どこにも行け
ない……」
少女が言うと、男の子はハッとなった。【逃げる】
を知らずに育ったのだ。
「一緒に逃げようか……」
男の子は涙を拭い、立ち上がった。
しばらく歩いて、開けた場所を見つけて、休憩した。男の子が焚いてくれたスープを、少女は吐いた。不味いわけでも、毒が入ってもいない。
「私……【タベモノ】じゃないと、今日は食べられ
ない……」
少女は呟いた。その目には、確信があった。
+教年、屍肉だけで育った体は、不死を得た結果、普通の食事では保てないものに変わってしまっていた。
二人の、不死の呪いを解く、長い旅が、始まろうとしていた。
大男が、一日一食、食べ物を運んで来る以外は食べ物が無く、三人の子供は常に空腹で、ギラギラした目と痩せぎすな身体をしていた。
二人の男児と一人の女児は、大男を親だと思っていた。成長するにつれて、どうも違うようだと後になって解るのだが……。
一人の男児は、同じ食事を与えられているのに、発育が他の二人より遅く、知能も同じく、遅れていた。
幼さは残酷で、無邪気な“カンの悪い”男児を減らせば、【三人分の食事を、【二人で三人分】食べられると思った二人は、カンの悪い男児を湖に落とした。
大男は、一人減った事に特に気にもせず、食事はその日から二人分が日に一食となった。二人は、一人を減らしても意味が無いと分かり、協力して生きる事になった。
一日一食の内容は、少しだけ変わった。美味くはないが、量のある、紫っぽい肉になった。痩せこけた子供達は、それでも普通より痩せているが、少しましになった。
ある霧の濃い日に、町から5人組の、少年と少女
より少し年が上の男の子と女の子が湖にやって来た。こんな時、”お父さん”からは、魔墟にある、大きな白い布をかぶって、ゆらゆらしていなさいと言われていた。いつもはそうしていると、肝試しに来た人は逃げていくか、少年と少女に気付かずに去って行くかだった。
この日も、そうしている内に、悲鳴が聞こえて、全員が逃げたかに思えた。しかし、二人の男の子と女の子だけが戻って来たのだ。少年と少女は、大男に言われた通り、ゆらゆらしているしか無かった。
「君達。人間だろ?ホラ、触れるもの」男の子がそう言いながら布を取った時、少年と少女はどうしたら良いか分からずに、まだゆらゆらしていた。
「課、分かる?もうゆれてなくて大丈夫だよ」男の子にそう言われて、ようやく少女と少年はゆれるのをやめた。
それから、男の子は度々少年と少女を訪れるようになった。最初は廃墟に住んでいる子供への興味からだった。
会う度に、少年と少女が何も知らない。文字の読み書きもできない事が判ると、男の子は同情した。自分が教えてあげないといけない、使命感のようなものが男の子の心に芽生えていた。
常に腹を空かせている少年と少女に、男の子は食べられる木の実を教えたり、たまに家から食料をくすねて持って来てあげた。
ある日から、少年と少女の小さな指に、木の枝を握らせた。
「こうやって、地面に書いてみて?」と言い、二人に文字を教え始めた。最初はくにゃっと曲がった線だったのが、日に日に文字になって行った。少女の方が覚えが良かった。
【タべモノ】と、【オトウサン】だけだった少年と少女の世界は、男の子によって大きく広がった。
数ヶ月が経ち、二人は、本を読めるまでになった。
ただ、分からない言葉も多く、男の子に言葉の意味をよく聞くようになった。男の子は、貯金をはたいて、二人に辞典をプレゼントした。
「これで質問攻めにされずにすむな」
と男の子は軽口をたたいた。
その日から二人は辞典を“食べるように”読み始めた。最初は、辞典の見方を男の子にしばらく教えてもらっていたが、少年と少女は、言葉を自分たちの力で迎れるようになった。
それでも意味が分からない時だけ、聞くようになった。何となく、男の子の存在や、文字の事は大男に言ってはいけないような気がして、秋密にしていた。
1年が経つ頃には、本の世界から、大男が変である事に気付いた。
毎日、大男は音も立てずに廃墟に現れる。
手に持っているのは、布で出来たずた袋。生臭い匂いが、ふたりの皇腔に満ちる。
「今日の【タベモノ】だ」
湿った声で袋を床に投げる。それを無言で手に取り、何か分からない【タベモノ】をピチャピチャ食べ始める。
男の子が持って来てくれる、パンやスープと比べと、食べるのが辛くなるが、そうしないと殴られる。何かの肉である事だけが分かっていた。
翌朝、少女が「コレだ」と辞典のページをめくっ
た。「死臭ーシシュウ」「食肉ーショクニク」少年もまた、「指ーユビ」というページを出した。
「肉なら.“ブタとかウジとかあるけど..・・紫の指……だよな、コレ'」少年は、昨日こっそり隠しておいた食べ残しを日にかざした。【タべモノ】の分類ではない事だけが分かっていた。
「この事ってあの子にも…ヒミツにしてた方がイイよね……」
少女が言い。少年は黙って頷いた。【タベモノ】ではない事を、確かに知ってしまった。知ってしまうと、一日に一度の食事に、抵抗を感じるようになっていった。飢えていた何も知らない頃のようにはガツガツ食べられない。
「顔色が良いな」
ある晩、大男が二人を見て言った。少女は、表情を変えずに食べてるフリを出来たが、少年は
少し反応したのを、大男は見逃さなかった。
大男は急に、二人のねぐらを荒らし始めた。
板の下には辞典がある。少女は震えた。
「お父さん!」
と少年は叫んだが、大男に簡単に辞典が見つかってしまった。木箱は破壊され、寝ていた毛布は破られた。
「誰がやった!?誰がくれた!?」辞典を手にした大男が怒鳴った。少女は、耳をおさえてガクガク震えている。少年は、少女にしがみついて震えている。
「クソッ何も知らないままでいいのに」
大男は、辞典で二人を殴りつけた。罰を与えるために。
無表情で。二人の口の中が切れ、血を吐き腕が折れた。
ひとしきり殴ると、大男は二人の血がついた辞典を取り上げた。そしていつものように去って行った。
「すっげ一痛い…」
大男が去ったのが分かり、腕かばいながら少年が呟いた。
「私も。そんな事より、バレてる…」
少女が怯えた顔で焦って言った。
「何が?」
「あの男の子の存在が!バしたの!ついさっき……
辞典で!」
しかし二人は、男の子が“街”という遠い場所から来ている事しか知らない。来たら、知らせる他に手はなかった。
「来ちゃダメだー!!」
翌日、森からいつもの様子で来る男の子の影を見つけて、少年は別の方向に叫んだ。
少しでも大男に見つからないように。
「”お父さん”にバしたの!早く逃げてー!」少女も叫んだ。声が震えていて、男の子にもその緊張が伝わり、持って来ていたパンを落としてしまった。
「いたア」
低い声と共に、大男が現れた。幸い、男の子と少し離れている。
「お前が俺の肉達をダメにした奴か」
男の子の方を向き、大男が言う。その表情が、笑っていた。初めて見る、満面の笑みだ。大気味すぎて誰も、何も言えなくなった。
「二人共、昨日を折ったのに……もう治って
るよな……」
大男が言う。何故今その事を?確かに、二人共
腕の骨折が沿っている。そして、大男は語り始めた。どうして、二人に扉肉を食わせていたかを。
”人を食った人間を食べれば不老不死になるという言い伝えが、大男の生まれた村にあった。
確かに、小さな村なのに、老人はいない。
ただし、伝説の”不死”の部分は違った。大男の祖母が亡くなり、死ぬという柄念に、大男は怯えるようになった。
小さな村が戦禍でなくなり、一人になった大男は、湖の廃墟に子供を集めた。最初は十数人いた子供達に、人の肉だけを食わせた。
その子供の肉を、別の子供に食わせて、"不死"を作ろうとした。
次の代の子供達をさらって来て、前の子供の死体を食わせた。冷たい湖の水は、死体の保存にちょうど良い。
ただ、栄養が食らずに死に、感染症で死に、やがて、少女と少年だけが生きのびた。トライアンドエラーを繰り返し、”不死”に自分がなるための、完璧な肉を作っていたのだ。
「お前らは俺の【タベモノ】になるんだ。15才になったら完璧になるのに……ソイツが壊そうとしているーッ」
大男は笑顔のまま、歯を食いしばる音でミシミシ言わせながら、男の子の方に走り始める。
男の子は素早く、駆け出した。
「お父さんやめて!お願い!良い子にする」
そう言ってすがりついた少年を大男は捕らえ
「不死の兆候は見えているのに、もったいないな」
大男は岩を持つ。やめてと叫ぶ少年の頭を、岩で叩きつけた。ゴッというにぶい音。
「不死になり切れてなければな、頭を壊せば
死ぬんだ」
そう言って岩を叩きつける。骨が割れる。
叩きつける。脳が飛ぶ。
叩きつける。眼球が飛び出る。
少女は、何も言えず、恐怖で叫ぶ事も出来ずに見ていた。
大男の後ろに男の子が忍び寄るのが見えた。
鉄パイプを持って泣き顔で、大男に渾身の力で鉄パイプを何度もふるった。
カラン、と音を立て、鉄パイプを落とした男の子は、血に塗れていた。泣きながら、笑っていた。
「頭……壊したら死ぬって言ってたから」
ひどく涙を流しながら、少女に言った。少年は既に事切れていた。
「俺は人を殺した……だから、だから君の側にいられない、いるべきじゃない……ごめん、君のお父さんを……君は逃げて……」
男の子は膝をつき、自分の震える手を見つめて少女に言った。少女は、やっと立ち上がり、男の子をそっと抱きしめた。
「人が悲しい時って、こうするんだっけ?.....私もまだ小さい時に……お腹へってて、キョウダイを殺しちゃったの、同じだね」
少女の拙い言葉は、男の子を慰めようとしていた。
「私は、ここしか知らないから……どこにも行け
ない……」
少女が言うと、男の子はハッとなった。【逃げる】
を知らずに育ったのだ。
「一緒に逃げようか……」
男の子は涙を拭い、立ち上がった。
しばらく歩いて、開けた場所を見つけて、休憩した。男の子が焚いてくれたスープを、少女は吐いた。不味いわけでも、毒が入ってもいない。
「私……【タベモノ】じゃないと、今日は食べられ
ない……」
少女は呟いた。その目には、確信があった。
+教年、屍肉だけで育った体は、不死を得た結果、普通の食事では保てないものに変わってしまっていた。
二人の、不死の呪いを解く、長い旅が、始まろうとしていた。
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