だがしかし

帽子屋

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 店の裏は山道とは名ばかりの、それはそれは自然溢れる山の中のけもの道。整備なんてされていない。かろうじて、なんとなく、道っぽく見えるだけの通路。周りを見ればうっそうと木々や草が生い茂っている。正直、この現実離れした自然は、逢う魔が時を越えた別世界だと言われても何も不思議じゃない。後ろを振り返れば、木々が光を遮って作るトンネルの向こうに定食屋が小さく見える。まったくこの別世界へ続く道の入口、切符売り場みたいに見えた。そこにいる切符売りのおじさんのアドバイスときたら「鬼に食われるな」「気を付けろ」どういうことだよ。

だいたいオニが本当に鬼だったとして、どうやって気を付けるの?
気を付けろって言うぐらいなら、もっと具体的な対策を教えてほしいもんだよ?
なに? 金棒とか持ってるの? そんなん振り回されちゃったら、俺、どうしたらいいわけ?

俺は現実離れした自然の前に、ばかばかしくも至極真面目にオニ対策を考えていた。そんな俺の心中はまる無視で、俺を鬼に食われてしまうかもしれないこんなところに連れてきた張本人はひょいひょいと山を登っていく。

なんだあいつ。森の民か山の民かなんかなのか……。
俺がこんなに色々心配尽くしだってのに。あいつの暢気さときたら……。

ちきしょう。もう鬼でもくすのきの妖精さんでも、蜘蛛と猫の合体合成生命体でも出てきやがれ!
「神田! お前、どこまでいくわけ? 俺、どこに連れて行かれちゃうの?! バカンス、だよね?!」
俺の叫びに足を止めた神田は、こちらを向いて暢気そうに全く穏やかでないことを言いやがった。
「いいね~ きみ~ 声が大きくて助かるよ~ このあたりはね~ 月の輪熊よくでるから~」

くま? え?? 熊???

「かんだーー!!」
「な~に~?」
「先に言えーーー!!!」

俺の声量が増大したことは間違いない。それから歩行速度が著しく向上したことは言うまでもない。俺は必死だ!
「なんだ~ 早く歩けるじゃな~い その調子で目的地まで行こ~ れっつばかんす~」
俺は色んな意味を込めた眼光を放ち、神田を睨み付けたつもりだったが「お腹が満たされて元気になったんだね~ 良かった~ 気合十分~」と暢気バリアを張り巡らせている相手には、全く響かなかったようだ。
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