42 / 54
42
しおりを挟む
暫くそのまま様子を見ていた少年は「行こう」と言って俺の着物の袖を引き、踵を返して山の中へと歩き始めた。俺は引かれるまま少年に着いて行った。
足元で踏みつけられる土や草木の音、鳥や獣、虫の羽音。そして水の流れる音。無言で歩く森の中には多くの音が混じり、その中に俺は、ものものの最期の声を聴く。空腹を感じながら。だが、少し前を歩く少年は俺が着いてくるのを疑わない様子でどんどん歩を進めていくので、俺は声の主たちに『ごめん。後で必ず行くよ』と念じながらその背中を追った。
水の流れる音が次第に強く聴こえその匂いも濃くなり、少年が生い茂る葉をかき分けた向こうに川が見えた。そのすぐ近くでは、見上げた先から勢い良く水が落下している。滝から落ちた水が細かい粒子となって空気と混じり、光を反射させながら川面を踊るように流れていた。
「来いよ! 魚、よく獲れるんだ。でも、あんたみたいな鈍い奴には無理かもな」
少年は今来た道から少し高さのある川岸へぴょんと跳ねて降りると、俺を振り返って笑った。俺は、確かに生きてる魚を獲るのは無理だろうなあ。魚はすばっしっこいもんなあ。と思って頷いた。
「そっか。魚獲るより、お前、あの傷じゃ、まださすがに川には入れねえよな。ようやく歩けるぐらいだろ?」
少年は俺の足に視線を落とした。俺は心配そうな少年の前に、少年に倣ってぴょんと跳ねて下へ降りた。
「足、大丈夫なのか? 痛くねぇのか?」
驚いた少年に、俺は頷き大丈夫だと口の形を作って答えた。俺の喉からはまだ声は出なかった。
「声はまだ出ないんだな」
俺の喉元を見た少年に、俺は再び頷き心配するなとやはり声を出さずに言ってやった。
足元で踏みつけられる土や草木の音、鳥や獣、虫の羽音。そして水の流れる音。無言で歩く森の中には多くの音が混じり、その中に俺は、ものものの最期の声を聴く。空腹を感じながら。だが、少し前を歩く少年は俺が着いてくるのを疑わない様子でどんどん歩を進めていくので、俺は声の主たちに『ごめん。後で必ず行くよ』と念じながらその背中を追った。
水の流れる音が次第に強く聴こえその匂いも濃くなり、少年が生い茂る葉をかき分けた向こうに川が見えた。そのすぐ近くでは、見上げた先から勢い良く水が落下している。滝から落ちた水が細かい粒子となって空気と混じり、光を反射させながら川面を踊るように流れていた。
「来いよ! 魚、よく獲れるんだ。でも、あんたみたいな鈍い奴には無理かもな」
少年は今来た道から少し高さのある川岸へぴょんと跳ねて降りると、俺を振り返って笑った。俺は、確かに生きてる魚を獲るのは無理だろうなあ。魚はすばっしっこいもんなあ。と思って頷いた。
「そっか。魚獲るより、お前、あの傷じゃ、まださすがに川には入れねえよな。ようやく歩けるぐらいだろ?」
少年は俺の足に視線を落とした。俺は心配そうな少年の前に、少年に倣ってぴょんと跳ねて下へ降りた。
「足、大丈夫なのか? 痛くねぇのか?」
驚いた少年に、俺は頷き大丈夫だと口の形を作って答えた。俺の喉からはまだ声は出なかった。
「声はまだ出ないんだな」
俺の喉元を見た少年に、俺は再び頷き心配するなとやはり声を出さずに言ってやった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる