三十路のΩ

甘塩ます☆

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 朝食を片付け、着替えを済ませる。
 雨は上がっていた。
 二人で一頭の馬に跨り、出かけた。

 もちろん伊織も乗馬は出来るのだが、デートだからと巴が聞かなかった。
 男同士で馬に二人乗りは少し、いや、すごく恥ずかしい。
 馬も嫌だろう。
 巴は痩せて見えるが、着痩せするだけだ。
 伊織程の筋肉ダルマではないが、ほどよく筋肉がついている。
 つまりは筋肉まで美しいという事である。
 胸板が厚いのだ。
 しっかりと抱きしめられる感覚に、伊織は安心感と緊張感という相反する感情を持ってしまう。
 さっきから胸がドキドキ鳴ってしまっているが、きっと巴さんには気づかれてしまっているだろう。

 恥ずかしい。

 
「巴さんて晴れ男ですよね。何ですか? そういう力を持ってるんですか?」

 何か話て気を紛らわせるしかない。
 しかし、天気にまで愛されてるとは、すさまじい人である。

「そんな訳ないだろう。空気と雲の動き、湿気やなんかで直ぐ晴れると読んでるだけだ」
「ああ、ただの天才でしたね」

 何でも読める男だった。

「先ずは晴れている内に伊織の引っ越し準備だな」
「追々で良いじゃないですか」
「駄目だ。今直ぐ一緒に住む。僕の家で」
「貴方は本当に強引な人で困ります」
「君が僕に甘いのが原因だな」
「責任転換やめてくださいね」

 そもそも引っ越し準備はデートなのだろうか。
 引っ越し準備って一人でするものだとおもうのだが。
 まぁ、見られて困る物も無いし、荷物も少ない伊織である。
 巴は一人で大豪邸に住んでいる訳だが、伊織は質素な1LDKのログハウスである。
 お風呂だって近くの湖で済ますぐらいだ。
 そもそも伊織は生まれが原因なのな、狭い所が安心する。
 巴さんの屋敷に狭い部屋が有るだろうか。
 衣装部屋とか?
 



 伊織のログハウスに着くと、取り敢えず巴には座ってもらい、お茶を出しておく。

「直ぐに荷物をそれなりにまとめるますから」
「僕も手伝うよ」
「持ってくのは着替えと日用品ぐらいで良いでしょう。直ぐにまとまります」
「そうか。本とか良いのか?」
「このままこの家を俺の図書室にしたら良いとおもいます」

 伊織のログハウスは何より本が多い。
 今でもすでに図書室ばりである。

「そうして結局この家に戻ってしまうパターンは無しにしてくれよ?」
「解ってますよ」

 困った様な声を出す巴にフフっと笑い、伊織はササッと荷物をまとめるのだった。
 本当に30分もかからない。
 本以外の私物は本当に少ないのだ。
 伊織はミニマリストである。

「本当にこれだけなのか?」

 伊織の荷物の少なさに驚く巴。
 服も5着ぐらいだけなのだが、そう言えば、伊織はよく同じ服を着ているな。
 
「ええ、もう十分ですよ。そんな遠く離れた場所でもないので、直ぐ来れるし」
「そう言ってこの家に戻られるのが嫌なんだ」
「心配性すぎませんか?」

 ちょっと不貞腐れたように言う巴が可愛く見えて、伊織はフフっと笑ってしまうのだった。

「家財道具はどうしましょうか、持って行きたいとしてもこのチェストぐらいですけど」

 さすがに自分の荷物をそのへんに投げておく理由にもいかない。
 何か入れるものが必要だろう。

「大事なチェストで無いのなら、チェストぐらい家にいくらでも有る。と、言うか、君と結婚しようと思った時に気が急きで、君の部屋を用意して有るんだ」

 恥ずかしげに言う巴。

「そうなんですか? 俺は狭い所が良いです。広くも八畳以内が良い」

 出来れば六畳が良い。

「伊織の家はこじんまりとしているからな。部屋は六畳にしたよ。寝室は一緒が良いから、ただの書斎部屋だしな」

 伊織は一人の時間を大事にするタイプだ。
 巴もちゃんと分けて考えていた。
 巴は四六時中一緒に居たって良いのだが伊織が嫌がって「家に帰る!」と、なるのは困る。
 そもそも伊織の嫌がる事は極力したくは無いのだ。
 なるべく伊織の心地良い居場所にしたい。

「有難うございます」

 あまりにも俺の事が分かりすぎている巴さん。
 素敵過ぎて怖い。
 かなり惚れ直す伊織だ。
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