無理です!!。乙女ゲームのヒロインからの正統派ライバル令嬢なんて務まりません! 残念JK残念令嬢に転生する

ひろくー

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ミニゲームの方が難しい

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 マジカル学園のダンス教室は広々として一面は鏡張りとなったかなり本格的な練習場だ。音楽が流れる室内では授業が始まる前から練習を始めている生徒もいた。常勤のダンス教師2名の他に後学期からはプロのペアがダンス講師としてサポートにつく。クリスマス舞踏会での社交ダンスがいかに大事かという事だ。
 ゲームアリスは粗末だとレッスン着を嘲笑われたりペアを組んで貰えず肩身が狭い思いをしたりというシーンがある位でダンスの練習している場面はあまり出てこない。
 授業が始まりクリスマス舞踏会のパートナーがクラス内にいる者は組んで、そうでない者は即席のペアを組んで練習を始めた。
 後学期からは皆、気合いを入れて練習していた。その中で実は現実アリスは教師お手製のステップマットを使いワルツの基本中の基本のステップをずっと反復練習していただけだった。最後に熊を犠牲にペア組んで踊ってみて終わり。しかし今日からはそうはいかない。元プロのダンス教師、ケビン、マリア・ソネガン姉弟先生はステップマットの練習を10分で切り上げさせた。
「さあ、マット無しでステップを踏みましょうね。上半身のキープも忘れずに。はいっ」
 周りではユリアンヌ達や他のクラスメイトがステップのタイミングやターンの足捌き等の一般的な指導をダンス講師から受けて踊っている。
 私だって皆みたいに優雅に踊れる、筈。だってステップマットで練習飽きる程したし、子供の頃から練習はしてる。
 透明なステップマットの上をいつも通り踏んでいけばいいのだ。
 大丈夫、クリアギリのレベルまで上げればOKなんだからその位ならやれば出来る。
 アリスは深呼吸すると右手を高く上げてから、
「行きますっ。1・2・3・いぃ~うわっ!」
 ドテッ。
 そもそも出来ない上に緊張でガチガチのアリスは4歩目で自らの足に躓いて転んだ。
『転んでも直ぐに立つっ』
「ハイッ」
 アリスはピョンと立ち上がった。
 ソネガン姉弟は平民で社交ダンスが必須ではないアリスに対し、踊る楽しさ重視で二年間で踊れる様になれば良いと考えて指導していた。母と違い優しく楽しくレッツダンス。
 しかし今日からは違う。
 教師人生で一番のダンスの才能が0どころかマイナスな生徒をクリスマス舞踏会で王族のパートナーとして恥をかかないレベルまで引き上げなくてはならない。
 マジ無理ゲー。
 しかし壊滅的なダンスセンスなりに真面目に練習していたこの子を見捨てる事は出来ない。本来ならとても名誉な輝かしい記憶になる筈のクリスマス舞踏会が人生の黒歴史になる事態だけは避けてあげなくては。
 運動神経は有る。出来ないのならば出来るまでやらせるまでだ。
 ソネガン先生ズは優雅な微笑みの下に静かな闘志を燃やしていた。
 直立不動アリスの背中に嫌な汗が流れる。
 上品な笑顔を絶やさないマリア先生が、優しいケビン先生が…。
 二人の背後に炎が見える。赤い炎じゃない。完全燃焼の青い炎。
 アリスはいつの間にかリングの上に立っていた。試合開始を告げるゴングがガンガン鳴っていた。
 だだだだ誰か…。
 救いを求めてアリスはターンのステップを反復練習するユリアンヌをリカルドと組んで踊るサーシャを仮のパートナーを組み踊るノーラと熊を振り返る。
 ぐいっ。
 マリアに両頬を両手で挟まれてアリスは無理矢理正面を向き直させらされた。
「アリスさ~ん、よそ見をしているヒマはありませんのよ。さあ、最初からやり直しよ」
「はっはいっ」
 頷くしかないアリス。
 クラリア様はミニゲームはダンスゲームだって言ったけど格闘技ゲームの間違いだ…。

 そして授業が終わり、アリスは、
「…」
 床の上にノビていた。
 その後ろではサーシャがアリスの蹴りを何度も受けたリカルドの介抱をしていた。その横でアリスの一本背負いをまともに食らい大の字でノビた熊の頬をユリアンヌがペシペシと叩いていた。
「アリス、ほら」
 ノーラが差し出す手を借りたアリスは起き上がろうとする。しかし体が言う事を全く聞かない。
 地獄がこんな所にあったなんて…。マジで鬼ムズが過ぎる。ゲーム本編よりミニゲームの方が難しいなんて有り?
「アリス嬢」
 その時、アリスの頭上から声がした。何とか視線を動かすと姉のマリアの肩を借りた弟のケビン先生がアリスに踏まれまくった足を引きずりながらこちらへ来ていた。
「?!」
 反射的にぴょんと立ち上がろうとしたアリスは途中で筋力切れを起こしその勢いのまま仰向けに倒れそうになる。慌ててノーラがそれを支えた。その為か正座状態になるアリス。神妙な態度に見えなくもないアリス。
 そんなアリスにケビンはにっこりと優しく微笑み掛けた。
「放課後のレッスンで今のおさらいをしますよ」
「?!」
 ソネガン先生ズの後ろからダンス講師の二人も顔を覗かせる。
「朝のレッスンは私達がバッチリ指導します。クリスマス舞踏会に向けて頑張りましょうね♪」
 朝、だと?放課後があるのに?
 4枚の笑顔の鬼面を前に、
「…はい、宜しくお願いします」
 アリスにはその返答以外に選択肢は無い。
 ミニゲームで躓いて本編のゲームクリア成らずとかそんなアホな事が有りそうで怖い。クラリア様に殺される…。

 当然、放課後のレッスンも厳しいモノだった。それは寮の門限ギリギリまで行われた。いつもは門限が早いと文句を言っていたアリスだが今日ほど門限が早い事を有難いと思った事はなかった。
 アリスがレッスンから戻る頃合いで階段の所に待機してくれていたノーラの手を借りて部屋まで戻ったアリスはそのままベッドに倒れ込もうとして、机の上に手紙が置かれているのに気付いた。
「?」
 アリスは物に掴まりながら机まで行くと手紙を手にその場に座り込んだ。それは母からの手紙だった。
 開封した手紙には、
「断われなかった以上は死ぬ気でダンスの練習をして王太子様に怪我をさせない事。それでもどうにもならない時は父さんが山で行方不明になるからそれを言い訳に休学して帰って来なさい」
 とあった。アリスは天井を一人仰いだ。
 いや、今頃ここでゲームの強制力とかマジで止めて。




 
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