kaleidoscope

しょこら

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kaleidoscope

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 もうすぐ彼女が来る。
 透夜とうやは闇夜に溶け込みながら、静かに目を閉じていた。


 聖なる夜に、地上に雪を降らせ、人々の願いを叶える。
 それは片翼の天使たちに与えられた使命である。
 二人一緒でなければならないこの仕事は、二人一緒でなければ成し得ることもできない。
 透夜と対の羽根を持つのは、美しい金髪と金の瞳の少女、深雪みゆき
 彼女によって、透夜が好む静寂は、あっという間に失われてしまう。
 彼女は明るく華やかな光で闇に沈む透夜を照らし出す。
 しかし、透夜はその輝きをいとわしいとは思わなかった。
 もうすぐ彼女が透夜の名前を呼ぶだろう。
 明るく、優しく、そしてほんの少しの甘えも含んだ声で。
 それまでは、闇のゆりかごに揺られながら、万華鏡の夢を見ていることにしよう。

 

 四季を統べる花園の王オルティスが最も愛している春の園には、穏やかな陽の光が辺りを照らしていた。
 美しく咲き乱れる色鮮やかな春の花に囲まれて、エアルは椅子にゆったりと背を預け、膨らみが目立つ腹部を愛しげに撫でていた。
 その横には、幼馴染みの少年が、地面に座り込みながら、興味深くその様子を見入っている。
「なあ、エアル。赤ちゃん、男かな、女かな?」
「……さあ、どうかしらね。でも、私はどちらでもかまわないわ」
 エアルは柔らかく微笑みながら答える。
 火の龍をその身の内に取り込んで以来、ウィルバートの成長は著しくゆっくりとしたものになってしまった。少女らしい幼さは多少残るものの、成人女性と言っても差し支えないエアルと並んで立つと、姉と弟のように見えてしまう。
 これは火の龍とウィルバートが融合を始めたからなのだろうとオルティスは言った。
 成長が止まってしまったわけではなく、緩やかになっただけなのだと。
 かつての想い人である少年をエアルはそっと見つめる。今はもう、淡い恋心は失われてしまったけれど、大切な存在であることに変わりはない。しかし、その身の内に神獣を住まわせて生きることになってしまった少年の運命を、エアルは案じずにはいられない。エアルはオルティスと出会って幸せになることができた。だから、ウィルバートにも幸せになってもらいたいのだ。
 待つことのできなかった自分が、何と身勝手なことを願うのだろうか。
 けれども、誰にどれほどそしられても、これだけは譲れない願いなのだ。
「俺、女の子が良いなぁ」
「あら、どうして?」
「女の子だったら、きっと、エアルに似てかわいいだろうからさ。俺が嫁さんに貰うんだ」
「まあ、なにそれ」
 エアルは目を丸くして驚き、次いで、くすくすと笑った。
 相変わらず突拍子もないことを言い出すものだとエアルは笑う。
「ウィルバート、そなたに私のかわいい娘はやらんぞ」
「陛下!?」
 どうやら、会話を聞いていたらしい。オルティスが花々の間から現れた。
 オルティスはエアルにはとろけるような微笑と抱擁を、ウィルバートには警護の労いを口にしたものの、まるで子供同士が喧嘩しあっているかのように、ウィルバートと睨み合う。
「何で? 良いじゃん!?」
「だめだ、だめだ。絶対、嫁にはやらんぞ」
「ケチだなぁ、お前」
「何がケチ、誰がケチだ。お前にも、誰にも嫁にはやらん」
「あ、あの……陛下、まだ娘だと決まったわけじゃ……」
 慌ててエアルが間に割って入る。
「いや、娘だ。決まっている。そうに違いない」
 どこまでも自信たっぷりのオルティスにエアルは半ば呆れながら、どうしてこんなにもむきになるのだろうかと思った。
「……いったい、何を根拠に?」
「私の勘だ」
「はぁ?」
「うっわー、それ、一番当てにならないよな」
「無礼者。娘といったら娘なのだ。きっとエアルによく似たかわいい娘だぞ」
「だから、それ、嫁にもらうって」
「それとは何だ、それとは!」
 唖然とするエアルの前で、再び二人の不毛な言い合いが繰り広げられていた。
 我に返ったエアルは、このままどこまでもエスカレートしていきそうな二人の言い争いに、大きくため息をつく。
「私は男の子でもかまいませんけど……」
 ささやき声に近かったはずなのに、オルティスもウィルバートも聞き取ったらしい。
「ふむ、男なら私の跡継ぎとして厳しく育てねばならんな。いやいや、うんうん。そうだな、私に似て良い男になるだろうが」
 自信たっぷりのオルティスの横で、ウィルバートは小さく舌打ちした。
「男じゃ嫁に貰えないじゃん」

 

 くるくると回る景色。
 光と影がさまざまに、その形を変えてゆく。

 くるくる、くるくる。
 透夜が回す万華鏡。
 いくつもの華の形、心の形。
 色鮮やかに、艶やかに。

 くるくる、くるくる。
 変わる景色。


 ふいに、何の前触れもなく、一条の光が闇を切り裂く。
 まばゆいばかりの光が透夜を照らし出す。
 闇夜に沈む透夜を、何の迷いもなく見つけ出す。
 そして、響く声。


「透夜」
 深雪が放つ光は、透夜の姿を露にする。
 漆黒の髪、深い闇色の瞳に星のような美しい銀の輝きを宿している 華奢きゃしゃな少年の姿を。右の背から深雪に呼応するかのように、純白の翼が現れる。
 そして透夜の前に現れたのは、愛らしい金髪の少女。美しい金の瞳がまっすぐに透夜を捕らえる。深雪の左の背に対の羽根が輝いていた。深雪も透夜も、ひとつの翼を分け合って生まれてきた片翼の天使なのだ。
「やあ、みゆ」
 透夜は羽根を震わせ、微笑した。彼女の名前は深雪というが、透夜はずっと「みゆ」と呼んでいる。
「元気だったかい?」
「ええ、もちろん。透夜も元気ね」
「まあね」
「何を見ていたの? 万華鏡?」
 深雪は透夜が手に握っている小さな銀の筒を目ざとく見つけていたらしく、すぐに尋ねてきた。
「そう。ガブリエルさまから貰ったんだ」
「みゆにも、見せて」
 銀の鎖がついてペンダントにもなっている万華鏡を深雪は嬉しそうに受け取ると、早速、覗き込んだ。
「何が見える?」
「ええと……ええっ、何、これ? 地上の……これは、日本だわ。なあに、これって万華鏡じゃないの?」
「万華鏡だよ。言ったろ? ガブリエルさまに貰ったって。普通の万華鏡じゃないって分かりきっているじゃないか」
 深雪はとても驚いていたが、万華鏡を気に入ったらしいことは、その顔を見ればすぐに分かった。珍しいおもちゃを手に入れた子供のように大はしゃぎで万華鏡を覗き込む。
「ガブリエルさまのお気に入りってとこかな。僕にも良く分からないけど、ある《瞬間》が閉じ込められているみたいだ」
 深雪からの返事はなかった。
 くるくると、中の景色に魅入られるようにして、万華鏡を回す深雪がそこにいた。

 

「ちょっと、司、聞いているの!? え? 何? ……もうーっ!」
 桜沢優一おおさわゆういちが、妹の小柄な後姿を微笑ましく見つめていると、隣を歩く千鶴ちづるが声をひそめながら話しかけてきた。
「司ちゃん、間に合うかしらね?」
 言っている内容は心配している言葉だったが、千鶴の表情は楽しげで、この状況を面白がっているように見えた。
「大丈夫だろう。司なら」
 とは言いつつも、深雪の電話の様子ではまだまだ時間がかかりそうな雰囲気である。
 司の力量に何の不安もないが、それでも一応は確認しておくべきかも知れない。
「深雪、ちょっと……」
 優一は背後から深雪のスマホを抜き取った。驚いた深雪が慌てて振り返る。
「司、何か手伝うことは?」
 前触れもなしに電話を代わり、尋ねてみると、返って来た言葉もやたら簡潔なものだった。
「わかった、さっさと片付けて来いよ」
 電話を切ってスマホを返すと、深雪は口を尖らせて拗ねていた。
 ふくれっ面で見上げてくる深雪の頭を撫でて宥める。
「すぐ来るってさ。そうむくれるなよ」
「司ちゃんなら一人でも大丈夫でしょう」
「大丈夫かもしれないけど、クリスマスまでお仕事しなくたって良いのに」
「まあまあ」
 せっかく皆でおいしいお店でお食事しようって前から約束していたのに、と深雪はぼやく。
「あちらさんにはクリスマスなんて関係がないからな」
「ついでに言うと、盆も正月もないわよね」
「もー、お兄ちゃんもお姉ちゃんもひどいよ。だって、どうして司ばっかりお仕事しなくちゃいないの?」
「今日はたまたま、近くに司がいたんだ。それに司が応援はいらないって言うんだから、仕方がないだろう」
「そうそう、下手に手を出すと怒られるからね、司ちゃんに」
「違うの! 今日のことだけじゃないの! いつもそうなんだもん。いつも一番に、行きたがるんだもん。わざわざ、危険な場所に……それがお仕事だってわかっているけど、でも……」
 深雪の声はだんだんと小さくなっていき、途切れてしまった。
 深雪は桜沢一族の中で、唯一、力を持たずに生まれてきた稀有な存在だが、一族の使命はよく理解している。それでも、やっぱり納得できないのだろう。どうして、司は、と。
「深雪、司はね……」
「いい。もう……分かっているから」
 頬を膨らませたまま、深雪はくるりと方向を変え、再び歩き出す。
「おい、深雪」
 ため息をつくと、隣で、千鶴がくすりと笑った。
「でも司ちゃんの周りの空気、最近、柔らかくなってきたわよ。深雪ちゃんのおかげかしらね」
「ああ、うん、そうだな」
 自分の力不足のせいで、両親は亡くなったのだと、自身を責め続け、心を凍らせている親友のかすかな変化を優一ももちろん気付いていた。少しずつでも、深雪がその凍った心を融かしてくれているのだろう。
 いつか、昔のように、明るく笑い声を上げる司に戻る日が来るようにと優一も願っている。
 ふと、冷たいものが優一の頬に触れた。
 雨かと思ったがそうではないらしい。
 前を歩く深雪がはしゃいだ声を上げた。
「あ、雪!!」
 深雪は嬉しそうに振り返ると、舞い落ちてくる雪をすくい上げるように両手を掲げた。
「知ってる? クリスマスに降る雪にお願いごとをすると、その願いは叶うんだって。天使様が叶えてくれるんだよ」
「へぇ、それは豪勢だな」
「優ちゃんたら、まったく本気にしてないわね」
 千鶴の言葉はとても意外だった。
 クリスマスに天使が願いを叶えるなんて、いまどき、子供だましにもならない気がする。
「じゃあ千鶴は雪に願い事をするの? 何を?」
 千鶴の願い事とはいったい何なのだろうかと、優一は気になった。
 千鶴は何故か驚いた顔で、珍しいことに一瞬言葉を失ったようだった。
「……私は、雪になんか願わないわ。それに、私の願いは……叶わないもの」
「どうして?」
「どうしても」
「天使サマでも無理なの?」
「無理ね」
「……即答だなぁ」
 そう言うと、千鶴は苦笑した。
「父と母が離婚するとか言い出すくらいに無理なことだもの」
「あー、それは、ないな」
「でしょ? ラブラブ、だもの」
 本当に両親の離婚を望んでいるとは思えないが、千鶴の沈んだ横顔が気になった。
「優ちゃんの願い事は何?」
「俺?」
 逆に問いかけられて、優一は戸惑った。
 絶え間なく降り続ける雪を手のひらで受け止める。それはすぐに融けて消えてしまった。
「この雪が願い事を叶えてくれるなんて信じられないけど」
 千鶴はくすくすと笑い出す。
「優ちゃんて、そういうところは現実的なのよね」
「そうかな? そりゃあ、願い事はあるけどさ……」
 深雪の言葉を信じられるほど子供ではないし、それほどおめでたくもない。だいたい二十歳をとっくに過ぎた大の男が、雪に願掛けしようとか本気で考えるものなのか。到底そうは思えない。
 それでも優一が願うことは、こんな風に、千鶴や深雪が笑っている平和が早く訪れることだ。家族が、司が、一族が、戦いから解放されて、笑顔でいられることができれば、それが一番良いと思う。
「でも、雪に願うって?」
「願えば叶うって深雪ちゃんは言っているわよ」
「うーん」
「クリスマスだから、ね」
「ふうん。クリスマスだから、か」
 優一は空を見上げる。
 自分の願うものは自分の力で手に入れる。この永遠に続く戦いを自分の代で終わらせる。それは願いというよりも誓いと言ったほうがあっているように思える。
 だから、叶わない願いを抱いている千鶴を哀れむわけではないけれど、本当に、この雪に願うことで叶うというのなら。
「じゃあ、千鶴の願いが叶いますように」
 驚いた顔で立ち止まる千鶴に優一は茶目っ気たっぷりに笑いかける。
「願えば叶うんだろ?」
「もう、優ちゃんったら……」
 千鶴は泣きそうな顔で笑いながら、抱きついて優一の耳元で囁いた。
「……ありがとう、優ちゃん」
 淡い雪が絶え間なく降り続いて、いつしか街を白く染め上げていた。


「信じる者は救われるって言うよ、お兄サン」
 深雪が見ている景色を共有しながら、透夜は面白そうに言った。万華鏡から顔を上げた深雪が顔を輝かせている。
 次に何を言い出すのか、すぐに想像がついた。
「ねぇ、この願い叶えてあげようよ」
「みゆ、さっきも言ったけど、これは万華鏡に閉じ込められている《瞬間》だよ。いつの願いなのか分からないのに」
「大丈夫。みんな同じ時間よ。つまり、今夜」
「未来が見える万華鏡だって?」
 深雪の能力を疑う余地はないが、透夜は大げさにため息をついた。
「結局はこうなるんだよね、いつも」
「あら、どうしたって雪を降らせることが私たちの役目だもの」
「はいはい。願いを叶える雪を降らせるのが僕たち片翼の天使たちの仕事だからね。それが誰のものでも構わないわけだし」
「ほら、透夜」
 ぶつぶつとぼやきながらも深雪の手をとって、透夜は一緒に空へと舞い上がる。
 空には満天の星。
 地上にも星のような灯火が見える。
 星々のはざまで、深雪は両手を重ね合わせて、小さな光を生み出す。目を閉じて、光を抱きしめる。そっと、大事なものを抱きしめるように。
 光がさらに輝きを増し、大きくなると、深雪はゆっくりと手を離した。
 光は、透夜と深雪の間をゆらゆらと揺らめきながら浮遊する。
 透夜と深雪はお互いに頷いて、手を重ね合わせる。
 光が満ちる瞬間がくる。


 それが二人の力。
 祈りの力。

        
     どうか、この光が届きますように。


 

 くるくる回る万華鏡。


 そしてまた、ここにも。

 

 涼やかな風が湖面を撫でて通り過ぎていく。緩やかな風と渡る鳥の声。
 まるでその空間だけ時を止めているかのようだった。そんな静謐せいひつな空気が漂っているのは、長い旅路の果てにたどり着く「永遠の湖」。
 人影もなく、湖は、静かに、そして穏やかに凪いでいた。


 フェルンはいつものように湖の周りをゆっくりと歩いていた。
 陽の光を受けて輝く湖水を眩しそうに眺める。
 どれほどの時が過ぎようとも、ここに扉がある限り、失われることのない湖。
 永遠に変わることのない景色だとフェルンは思っていた。
 美しいけれど、孤独を癒してはくれない。
 永遠に湖を見守り続けなくてはならない孤独は、フェルンの心を氷のように凍てつかせてしまった。
 他の何かを求めても、必ず失ってしまう。
 手の平から零れ落ちる砂のように、何も残らない。ただ寂しさと、より一層の孤独感だけが残るのだと。
 だから何も望まない。そう思っていた。
 シェーンに出会うまでは。

 フェルンはゆっくりと歩を進める。
 変わらぬ景色がずっと続いていくはずだったのに、昨日まではなかった景色がそこにはあった。
 白い花たちが群生して、一面に広がっている。
 それは花園の景色によく似ていた。溢れかえる花の香気がフェルンを包む。
 寒々として物悲しかった湖の周りには、一夜にして、たくさんの白百合が咲き乱れていた。

『あなたが私を受け入れてくれたから……』

 シェーンの言葉がフェルンの胸を震わせる。
 フェルンは静かに歩み寄り、一輪の百合に手を伸ばす。
 手折ることはしない。
 そうっと顔を近付けて、香りを楽しむ。
 これはシェーンの花だ。
 花園の乙女の力で咲かせたものだ。
 永遠に、湖とともに咲き続けるように、と。

『この花は私なの』

 両手を広げてシェーンは微笑む。
「シェーン」
 白百合が風に揺れる。まるで返事をしたようだった。フェルンはそれを見て、口元を綻ばせる。
『ね、これでもう寂しくないでしょう?』
「そうだな」
 たとえ、再び孤独に飲まれそうになっても、ここに来れば思い出せる。
 光を。
 思い出すことができる。
 生きていくことができる。
 この花たちはフェルンの背をそんな風に押してくれるように思えた。
 顔を上げると、風に舞って何かが降って来るのが見えた。
 ふわりふわりと揺られながら、舞い落ちるそれは、花びらのようにも、鳥の羽のようにも見えた。
 手を差し出し受け止めると、それはすぐに融けて消えた。
 白い、綿毛のような、雪。
「わぁ、フェルン、雪よ、見て!」
 振り返ると、シェーンが嬉しそうに両手を広げて空を見上げていた。
「シェーン」
「すごいわ。これ、なんだか、天使の羽根みたい。綺麗ね」
「そうだな。そういえば、雪に願うとその願いは叶うらしいぞ」
「そうなの?」
「聞いた話だから、保証はしないが……」
「それってヴィントから?」
 フェルンは頷く。
 シェーンは楽しそうにくすくす笑いながら駆け寄ってくると、暖かい手でフェルンの手をとった。
 そのぬくもりは生きてここにいる証。
 いつか必ず失われるぬくもりだと分かっている。
 けれど、それでも望んでしまったぬくもり。
「私はもう、一つ叶えてもらったから、いいわ、フェルン。ねぇ、湖の見回りはもう終わった?」
「ん……ああ」
「じゃあ、家に帰りましょう」
 シェーンの笑顔を眩しげに見つめる。
 輝かしい光。
 この光をフェルンは一生忘れないと思った。
 たとえ、一瞬の光でも、それを永遠に変えることだってできるはずだ。
 ヴィントがそうしたように。




 雪は音もなく降り続ける。
 凍ることのない湖の上にも、枯れることのない花の上にも、静かに降り続ける。

 

 願いを叶えるために。


 祈りが光に。
 光が雪に。

 天使の祈りは雪となって地上へと降る。
 




     聖なる夜に、奇跡は降る。

 


   どうか、

     あなたの願いが叶いますように。





                        終


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