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第3章 ウツロ VS 万城目日和
第57話 異変
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黒龍館大学医学部精神科、内閣法制局長官・黒水小鷹が去ったあとの外来で。
「――っ」
科長・星川皐月は、コーヒーの入ったマグカップを床へ落とした。
「……」
飛び散った陶器の破片を、彼女は不思議そうに見つめた。
「なに? この感覚……」
胸騒ぎがする。
わき上がってくる焦燥感に、この女医はいらついた。
「これは確か、そう、あのときと同じ……まさか……」
デスクの上の端末が振動する。
「何よ? こんなときに……」
ディスプレイの文字列は甍田美吉良。
さきほどまでいた黒水小鷹と同じく、星川皐月の幼なじみだ。
現・内閣防衛大臣、そして刀子朱利の母。
「ったく」
彼女は端末をふんだくり、乱暴にタップした。
「美吉良、珍しいじゃない」
「皐月、湾岸の倉庫で、ウツロくんと万城目日和が戦いをはじめたわ」
「……」
甍田美吉良の声に、女医はぼう然とした。
「問題なのはそれよりも、雅ちゃんたちが人質に取られているということ」
「は……?」
「朱利や夕真くんまでいっしょのようだわ。わたしはいまそこに向かっている。あなたも急いで――」
電話が切れる。
星川皐月が話の途中で指を落としたのだ。
「そうか、なるほど……あのクソッタレ鏡月にさらわれたときと同じ、同じ感覚……」
端末に力がこもる。
「雅ちゃん……」
彼女はこの世の終わりのような表情をしている。
「万城目日和……おのれえええええっ……!」
背後から毒々しい緑色の「手」が飛び出す。
「殺してやるっ、殺してやるううううう! 万城目日和いいいいいっ!」
手は女医の体をすっぽりと包みこみ、拳の形になった。
「雅ちゃあああああんっ!」
診察室の窓ガラスを砕き、その手は南のほうへと飛んでいった――
「――っ」
科長・星川皐月は、コーヒーの入ったマグカップを床へ落とした。
「……」
飛び散った陶器の破片を、彼女は不思議そうに見つめた。
「なに? この感覚……」
胸騒ぎがする。
わき上がってくる焦燥感に、この女医はいらついた。
「これは確か、そう、あのときと同じ……まさか……」
デスクの上の端末が振動する。
「何よ? こんなときに……」
ディスプレイの文字列は甍田美吉良。
さきほどまでいた黒水小鷹と同じく、星川皐月の幼なじみだ。
現・内閣防衛大臣、そして刀子朱利の母。
「ったく」
彼女は端末をふんだくり、乱暴にタップした。
「美吉良、珍しいじゃない」
「皐月、湾岸の倉庫で、ウツロくんと万城目日和が戦いをはじめたわ」
「……」
甍田美吉良の声に、女医はぼう然とした。
「問題なのはそれよりも、雅ちゃんたちが人質に取られているということ」
「は……?」
「朱利や夕真くんまでいっしょのようだわ。わたしはいまそこに向かっている。あなたも急いで――」
電話が切れる。
星川皐月が話の途中で指を落としたのだ。
「そうか、なるほど……あのクソッタレ鏡月にさらわれたときと同じ、同じ感覚……」
端末に力がこもる。
「雅ちゃん……」
彼女はこの世の終わりのような表情をしている。
「万城目日和……おのれえええええっ……!」
背後から毒々しい緑色の「手」が飛び出す。
「殺してやるっ、殺してやるううううう! 万城目日和いいいいいっ!」
手は女医の体をすっぽりと包みこみ、拳の形になった。
「雅ちゃあああああんっ!」
診察室の窓ガラスを砕き、その手は南のほうへと飛んでいった――
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