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2章

11 現実世界に帰還して

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 ログアウトして現実に戻って来た僕は、体を起こして隣のベッドを確認する。

 ミレア・・・美鈴も体を起こしているが、とても眠そうだ。


「ふぁ・・・このまま眠りたい・・・」

「それは良いが、夕食はどうするんだ?」

「んーどうしよう・・・」


 昨夜あまり眠れなかったらしい美鈴は、今すぐにでも眠りたいほど眠いようだ。

 ただ、空腹も感じているため、食べたい気持ちもある、と。


「それなら、僕が作って置くから、その間は寝ているといいよ」

「うん・・・そうするね・・・。ありがとう、アスト兄・・・」


 ゲームでの呼び方が残っているが、まあいいだろう。

 とりあえずは夕食を作る。

 美鈴は・・・作り終えた時の気分次第で、食べるかどうかを決めれば良かろう。




 台所へ向かって冷蔵庫の中身を確認。


 ・・・ご飯とみそ汁、肉じゃが。


 シンプルだが、食べやすいものなので、おおよそは決定だ。






 丁度料理が完成したころ、美鈴が一階へ降りて来た。

 匂いを嗅ぎつけて来たのだろう。


「おおっ、肉じゃがだ。ありがとう、お兄ちゃん!」

「どういたしまして。さ、食べようか」

「はーい。いただきます!」

「いただきます」


 食事しながら、明日からの事について話す。


「美鈴は明日はどうするんだ?」

「明日?明日もFSOをやるよ?」


 まあ、そうだろうと思っていたので、それはいい。

 僕もやるつもりだからな。

 聞きたいのは、ゲーム内で何をやるか、ということだ。


「ん、装備を受け取った後はどうする?」

「んー?もう少し草原で狩りか、先へ進むか、迷うなぁ・・・」

「やっぱりそうだよな・・・」


 僕もそこで悩んでいたのだ。

 ファンタジー・スキル・オンラインは、世界を開拓していくのが目的。

 当然、先へ進むという選択肢もある。


「確か、一マス進むと難易度が上がるんだったよな・・・?」

「そうだよ。アライアの町は一マス目の中心で、草原がその周辺」

「マップでも確認したんだが、一マスだけでもかなり広いぞ?」

「草原を殆ど歩き尽くしても、まだ二割前後だもんね・・・」


 アライアの町から東西南北の四方向へ向かえるので、一方向は二割くらい。

 それだけの場所を踏破するというのは中々大変だ。


「それに、進むにしても、どの方向に行くかも迷うよな・・・」

「うーん、それもあるね・・・」


 僕としては東へ進んでみようかな、と考えているが、まだ未定だ。


「あと、のんびりし過ぎて後続に追いつかれてしまうのもね・・・」

「・・・まあ、分からないでもないが」


 美鈴は、やるからには全力投球が基本だし、負けるのも好きでは無い。

 トッププレイヤーになりたいのとは少し違うが、追いつかれたくないという感情にも嘘はあるまい。


 その向上心が、今ある美鈴の頭脳を形作るに至ったのだと予想している。

 決して悪いことではないのは間違いないので、特に思うところも無い。

 今まで悪い方向に作用したことなど、欠片も無いし、これからも大丈夫だ。


 僕は・・・やるからには勝ちたいし、負けたら悔しいと思うだろう。

 魔物にやられて死に戻ったりしたら、少し落ち込むかもしれない。

 つまり、血は繋がっていないが、兄妹ということだ。


 ハッキリそう言うのも恥ずかしいので、適当に言葉を濁しておいたが。

 美鈴もそれには気づいているだろうし、問題はあるまい。


「そういう訳で、もう少し草原で戦った後、私は北へ進もうかな」

「了解。それじゃあ、別行動ということでいいか?」

「いいよ。でも、また一緒に冒険しようね?」

「勿論。またよろしくな、美鈴」

「こちらこそよろしくね、お兄ちゃん!」


 とまあ、明日からの方針も決まった所で、完食。


「ふぅ・・・ごちそうさま。美味しかったよ、お兄ちゃん」

「お粗末様。それはなによりだな」


 美鈴はこの手の誉め言葉を欠かさない。

 本当に、できた妹である。


 僕がそう思っていると、美鈴が不思議そうに声を掛けて来た。


「何、お兄ちゃん。そんなに見つめて・・・ハッ!まさか私の魅力に気づいて!?」

「・・・何言ってんの?」


 美鈴が自らを抱き締めておののく振りをしている。

 毎度、よくやるものだな・・・。


「で、でも・・・私、お兄ちゃんなら・・・!」

「おい」


 何故そこで受け入れる方向に話が進むのか。

 何度やられても、これだけは慣れない。

 なまじ美少女であるために、心臓に悪いのだ・・・。


「冗談はさておき、お兄ちゃんは恋人つくらないの?」

「特に必要としていないからつくらないぞ」

「つくらない、かぁ・・・。つくれない、の間違いなんじゃないのかなー?」

「ぐはっ!?」


 痛い所をピンポイントで突いて来たな・・・。

 だが、やられたままの僕ではないぞ?


「美鈴、今度の食事にハバネロを混ぜてやろう」

「ちょっ!?それは嫌っ!」


 これで美鈴は疑心暗鬼になるだろう。

 他に思いつかなかったのだから、やることがセコイとか言わないでくれ・・・。


 その後、食事の片付けも終えて、先に自室へ戻って来た。






「ふふーん。お兄ちゃんはもうしばらく独り身かぁ・・・・・・やったね!」


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