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4章

190 VS《太陽の王国》

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 それから十分が経過し、均衡は崩れつつあった。


「トリスタン、焦るな!突出しているぞ!」

「っ、すまん!」

「ああ・・・残念。もう少しで叩けたんだが」


 HP減少もあってか、精神的疲労が溜まり、徐々に動きから精彩が失われている。
 それをリーダーのアウルムがよく押しとどめているといった印象だ。
 戦闘においてもそうだが、指揮の面でも非常に優秀と言える。


「ライラ、そろそろだ!カウント五!」

「はいっ! ・・・『ガーディアン・オーラ』!」


 ガーディアン・オーラが切れたタイミングで、再発動。
 アウルムは正確にカウントしていたようだ。やりおる。

 だが、ここまでだ。


「ん・・・『フューチャー・アイズ』『ハイドウォーク』『シャドウムーブ』」

「消えたっ!?」


 更に、【魔力隠蔽】【気配隠蔽】【魔力察知】【気配察知】【消音】などを使用。
 そこに加速Lv1アーツ『アクセラレーション』も重ねて・・・!


「『パワースラッシュ・ドライブ』ッッ!!」


 まさに一撃必殺。
 トリスタンの首を刈り、悲鳴さえ上げさせないまま一撃で葬った。

 この大会中で加速を使ったのは初めてだ。
 こうしなければ均衡を崩すのにもっとかかったと思われる。


《マスタースキル【気配察知】【気配隠蔽】を確認しました》
《プレイヤースキルの条件達成を確認しました》
《取得可能スキルに【気配制御】が追加されました》


「なっ、トリスタンっ!?」

「全く動きが分かりませんでしたっ!!」

「強いとは聞いていたけど、ここまでだったなんて・・・!」


 アウルム、ライラ、シルフィアの順だ。
 ライラとシルフィアはサブマスターのポジションのようだな。

 ・・・ハーレム野郎とは言うまい。実態は違うとはいえ、ブーメランだ。

 とにもかくにも、これで均衡は崩れた。
 六人がかりでギリギリだったのだから、一人減れば戦線を維持できないだろう。

 さて、どうする?


「くっ、作戦変更!ライラは逃げろ!残りの四人で足止めだ!」

「アウルムさん!?一体何を・・・!」

「もう俺たちに勝ち目はない。なら、誰か一人でも生き延びさせる。今回は一番ダメージが少なくて前衛で一番強いライラが適任だ。みんな、アイテムを譲渡!隊列を組め!」


 そうきたか・・・。
 決勝トーナメントに一人でも残そうということか。

 確かに、この四人を無視して追いかけるとなるとリスクが高いしやりたくない。

 ライラは一瞬だけ迷いを見せたが、文句ひとつ言わずに隊列を組み直す一同を見て、逃げることを決心したようだ。
 いいギルドだな。どこぞの騎士団に爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい。


「みんな、ごめんなさいっ!私、必ず生き残るからっ!」


 ライラはこちらに背を向けて逃走を開始した。
 追撃は・・・やめておこう。


「・・・悪いけど、時間稼ぎに付き合ってもらうよ」

「癪ではあるが、仕方ない、か」


 そこから数分後、《太陽の王国》の四人は全滅した。


《第一職業が〖上級剣士Lv10〗になりました》
《熟練度が一定に達し【上級槍術】スキルがLv12になりました》
《熟練度が一定に達し【上級投擲術】スキルがLv7になりました》
《熟練度が一定に達し【火焔魔法】スキルがLv11になりました》
《熟練度が一定に達し【気配感知】スキルがLv11になりました》
《熟練度が一定に達し【魔力隠蔽】スキルがLv14になりました》
《熟練度が一定に達し【集撃】スキルがLv5になりました》
《熟練度が一定に達し【金剛力】スキルがLv15になりました》
《熟練度が一定に達し【城塞】スキルがLv4になりました》
《熟練度が一定に達し【魔気】スキルがLv10になりました》
《マスタースキル【照準】【視覚強化】を確認しました》
《プレイヤースキルの条件達成を確認しました》
《取得可能スキルに【鷹の目】が追加されました》


 相当な経験値と熟練度を稼げたようだ。色んな意味でいい戦いだった。

 新しいスキルは【気配制御】と【鷹の目】か。
 後者はクリティカル率向上とクリティカルダメージ向上の効果あり。
 前者は・・・説明を読む限り【気配隠蔽】と【気配察知】の複合上位互換だな。
 どちらも欲しいので取得しておく。合計4ポイント消費。

 どれどれ・・・おお、これはいいな。
 以前までと違ってほぼ意識せずとも気配の隠蔽と察知ができる・・・!
 特に察知の方は【気配感知】のスキルとも相乗効果があるようだ。
 範囲の【気配感知】と精度の【気配制御】といったところか。


『皆さんこんにちは。進行役のシステマです。残り一時間になりましたので、更にエリアを縮小します。今回は外側からの縮小になりますので、適宜広域マップでご確認ください』


 細かい検証は後回しにするとして、残り時間が一時間か。
 五百人斬りは厳しいかな?

 ん?この遠ざかる気配はライラのものか?
 そんなことまで分かるようになったとは、驚きだ。
 今まで気づかなかったが、気配にも個人差があるんだな。


 さて、移動しながらランキングの確認でも・・・って、何だこりゃあっ!?





 アストの状況

――――――――――――――――――――――――――――――――
『予選バトルロイヤル開催中!』 <残り一時間>

 ・参加人数 21611人 
 ・残り人数 3771人/21611人

 ・撃破人数 384 与ダメージ 76990 被ダメージ 0

 ・広域マップ確認
 ・回復アイテム使用
 ・ランキング閲覧
 ・―――
――――――――――――――――――――――――――――――――
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