妖符師少女の封印絵巻

リュース

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一章 妖符師誕生編

7 霊の溜まり場

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 結局のところ、心の声は敬語と砕けた口調が入り混じることになりました。
 話し言葉は、おおよそ砕けた口調ですが、時折敬語も混ざります。

 癖のようなものですから、諦めましょう。


「えっと・・・若葉さん、沢渡製糸と契約を結んでくれてありがとう」

「どういたしまして。あ、さん付けは要らないよ?」

「うっ・・・それは、まだ恥ずかしいというか・・・!」


 恥ずかしそうにもじもじしている凪沙さんはとても可愛らしいですね。
 呼び名は自然なものがいいですし、お互いにさん付けでも構いません。

 現在、凪沙さんの部屋にお邪魔しようとしています。
 何故かと言いますと、帰れなくなってしまったからですね。
 はい。話し込んで居たら終バスの時間を過ぎていました。

 お恥ずかしながら、沢渡さんの好意で一晩泊まらせていただくことに。
 どうせなら親睦を深めるために凪沙さんの部屋で、という提案を受けました。


「それじゃあ、狭い部屋だけど、上がって?」

「はい。失礼します」


 凪沙さんのお部屋は言うほど狭くもありませんでした。
 そして、二つほど気になることが。


「この制服は・・・桜台高校の制服・・・?」

「うん。来週から高校生だから・・・。あれ?でも何で知ってるの?」

「それはですね、私も同じ高校に通うからです」

「えっ、そうなの!?」


 ええ。そんなことで嘘なんて吐きませんよ。
 私の家にも同じ制服が用意されています。


「それじゃあ、来週から同じ高校の同級生・・・・・・やったぁ!!」


 両手でガッツポーズをしてとても嬉しそうにしている凪沙さん。
 私も同級生にお友達ができたのは大変嬉しいです。


「良かったぁ・・・。友達が出来るか不安で不安で・・・!
 あっ・・・ご、ごめんね!?私だけ興奮しちゃって・・・!」

「ううん、私も興奮してるから、お互い様だよ?」

「・・・よくよく見れば少し浮かれてるように見える、かも?」


 出会ってから直ぐに分かってもらえたのは嬉しいですね。

 私は無表情ではなく、普通に感情が表に出ます。
 ただ、両親曰く、私はいつも嬉しそうなので喜んでいるときは大きな変化が見えない、とのことです。
 慣れればちゃんと分かるとも言っていましたが。


「あ、もう寝る準備しよっか。もうじき日付が変わっちゃうから」

「何か手伝えることはあるかな・・・?」

「直ぐに終わるから大丈夫!ゆっくりしてて!」


 凪沙さんはそう言い残して部屋を出ていきました。
 春奈さんが用意してくださった予備に布団を取りに行ったのでしょう。

 一人になったところで、もう一つの気になる事について考えを巡らせます。
 部屋の中を見回してから一言。


「この部屋、低位霊が多いですね・・・」


 つい今しがた数えたら十体も居ました。
 ・・・驚きです。








 妖怪書に書いてあったことですが、所謂、霊の集まるスポットというものは実在するらしいです。
 地脈の流れが関わっているそうですが、詳細は不明。
 遥か昔は地脈を利用する術があったそうですが、今では途絶えたとのこと。
 妖符師自体が一度絶えてしまっているので仕方ありませんね。

 この鳥居町はその地脈の流れの合流点で、非常に霊が集まりやすく、悪霊が生まれやすい場所。
 妖符師が居ないとあっという間に災害が起こるレベルだとか。

 ですが、だからといって一つの部屋に十体というのは密度が高すぎです。


「・・・・・・あ」


 ふと気づいたのですが、低位霊は部屋の南側に多いですね。
 家の構造上、この部屋の南側にも部屋があるはずですが・・・。

 フォーンと契約したことで、私の五感は多少強化されています。
 集中することで、更に感覚を鋭くすることも可能です。

 凪沙さんと春奈さんが玄関で会話していた内容を聞き取れたのも、その五感強化のおかげですね。
 もっとも、流石に壁を透かして見ることはできませんが。

 妖怪書に、低位霊が狭い場所に沢山居れば、低位悪霊に変異しやすいというデータがあります。
 お隣の部屋、大丈夫なのでしょうか。


「おまたせ、布団持ってきたよ・・・!」

「ありがとうございます、凪沙さん。それで、一つ聞いてもいいかな?」

「うん、私に答えられることでよければ、何でも聞いて?」


 そう言ってくださったので、遠慮なく。


「この部屋の南側、こっちの隣に部屋はある?」

「え?・・・うん、お父さんの部屋があるけど・・・それがどうかしたの?」

「ううん、少し気になっただけだから、気にしないで?」


 凪沙さんは不思議そうな顔をしていましたが、納得してくれたようです。
 妖符師の秘密は門外不出、というほどではありませんが、やはりあまり知られない方がいいことのようですので誤魔化させていただきました。
 嘘を吐いてごめんなさい、凪沙さん。


 さて、凪沙さんのお父さん、修二さんの病気と何か関係があるのでしょうか?

 ・・・流石にこれだけでは情報不足ですね。
 かといって、勝手に家の中を歩き回るのは失礼ですから・・・難しいですね。

 こんな時、父と母はどうしていたんでしょうか・・・?

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