異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

閑話 アクアの贈り物

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 アクアは王都にて、一人で買い物に出かけていた。

 予定していた買い物を終えて、ふとクロトのことを思い出す。


(クロトさんに何か贈り物を・・・ですが、何でも持っていそうですね・・・。)


 クロトはありとあらゆる商品を開発している。

 そのため、珍しい物は大抵クロトの商品という惨状。

 何を贈って良いやら、頭を悩ませるアクア。


(クロトさんからは何度も贈り物を頂いていますし・・・。)


 自分が貰ってばかりというのは許容できないようだ。


 アクアはクロトから、ぬいぐるみや髪飾りなど、様々な物を貰っている。

 その全てが、アクアの欲しい物だったり、とても気に入る物だったり。

 満足できなかった事など一度たりとも無い。


 クロトの観察眼の賜物である。


 故にアクアは、自分もクロトが気に入る物を贈りたいと思っている。


 もっとも、クロトはアクアから貰った物なら、なんだって嬉しい。

 そしてそれは、アクアも同様なのだが、それには気づかない。


 気づいていても、より喜んでもらうために手を尽くすのだろう。

 本当に、アクアは良い女である。


(これも、駄目ですね・・・・・・え?あれ、は・・・クロトさん?)


 アクアは偶然にもクロトを見掛け、咄嗟に隠れてしまった。


 贈り物は、ある程度の驚きがあるから良い、というのがクロトの教え。

 そのため、贈り物を買いに来ているのがバレてはいけない。

 隠れたのは、そう思っての行動。


 クロトはアクアの傍を通り過ぎる。


(・・・見つかりませんでしたね。クロトさんは何処へ行くのでしょうか・・・?)


 アクアはクロトの行き先が気になって、ついつい後を付けてしまった。


 決してやましい意図で始めたのではない。

 だが、現在の行動にやましさが無いと説明しても、誰も信じないだろう。


 アクアもそれを理解したため、慌て始めた。


(これは決してやましい意図は無く、単純に気になっただけでして・・・!)


 心の中で誰に言い訳しているのやら。


 そんな時、クロトがとある路地に入って行った。

 そこは言うならば、大人の男性が通う店が並ぶ路地。


(えっ・・・・・・?)


 余りの出来事に、アクアの思考は停止してしまった。






 数十秒後、ようやく再起動。

 アクアは両手をバタバタさせて、あわあわしながら動揺を露わにした。


(ク、クロトさんがそういうお店にっ・・・。そんなっ・・・!?)


 アクアの表情は、どんどん悲しみに満ちてくる。


(わ、私が、クロトさんを満足させてあげられなかったからでしょうか・・・?)


 僅か数秒で、既にこの上ない悲壮感に包まれている。

 ここで、クロトの愛を疑ったり、クロトを責めたりしないのは、流石ではあるが。

 
(うぅ・・・クロトさん、私・・・!)


 アクアの瞳には涙が溜まっている。

 今にも泣きそうな状態と言っていい。

 クロトを満足させられない、自分の不甲斐なさを感じたがゆえの涙。


 そこへ、後ろから近づく者が。




「やあ、アクア。こんなところでどうしたのかな?」

「ひゃいっ!?!?」


 背後から突然肩を叩かれ、おまけにそこに居るのはクロト。

 驚くなという方が無理なのだろう。


「大丈夫、アクア?」

「は、はい・・・大丈夫です・・・!」


 驚きの余り、涙が零れてしまったので、全く大丈夫には見えないが。

 アクアが落ち着くのを待って、クロトは再び尋ねた。


「それでアクア、こんなところで何をしていたの?この路地って確か・・・。」

「そ、それはっ・・・!」


 大人のお店に興味があるなどと誤解されないように説明しようとした。

 だが、クロトの後をつけてきたなどと言えない。

 それに、クロトは後ろから来たではないか。


 アクアが何も言えずに口ごもっていると、クロトが得心いったような表情に。


「なるほどね。アクアはそういうお店に興味があったんだ・・・?」

「ちちち違いますっ!?決してそういう訳ではっ・・・!」

「じゃあ、何でここに居たの?」

「それ、は・・・・・・うぅ・・・!」


 何も言えないアクアを見て、クロトは笑みを浮かべ、諭すようにこう告げた。



「アクア、恥じる必要は無いんだよ?そういうのに興味のあるお年頃なんだし。」

「うぅ・・・はぃ・・・。」


 アクアはクロトに言い包められ、冤罪の自供をしてしまったのだった。






「まあ、後を付けるのは良くないという教訓だよね。」

「・・・えっ?クロトさん、気づいて居たんですか・・・!?」

「当たり前だよ。それに気づかないなんて、相当慌てていたみたいだね?」


 そう、全てはアクアがつけていることに気づいた、クロトのお仕置き。

 ちなみに、路地へ消えたクロトは分身である。


「すみませんでした、クロトさん・・・!」

「ああ。ちゃんと謝ったし、お仕置きも済んだ。もう気にしていないよ。」

「クロトさん・・・!」


 アクアはクロトに許して貰って一安心。










「ところで、アクアは町で何をしていたの・・・?」

「それは、クロトさんへの贈り物で迷ってしまって・・・。」


 アクアがクロトに事情を説明した。

 するとクロトは、こう言った。




「贈り物は・・・アクア自身ではダメかな・・・?」

「えっ、それって・・・・・・あぅ・・・///」




 その後、宿に帰った二人がどうなったかなど、言うまでも無いだろう。

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