異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

婚約指輪

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「そういう訳だから、マリアの婚約指輪はもう少しだけ待ってね?」

「よく分かりませんが、いくらでも待ちますわよ?」


 リンカと婚約した次の日、クロトは恋人たちに婚約指輪を渡した。

 リンカだけ特別扱いもアレなので、緊急で作成したのだ。


 あれからリンカは、幸せのあまり腰砕けになってしまった。

 その為、キス以上はしていない。


 その時間を使い、恋人たちの婚約指輪を作ったクロト。

 だが、今日までに全員分は作れなかった。

 そのための謝罪ということだ。


 マリアはいつまでも待つといった雰囲気でだが、頬が赤い。


「な、なあ、クロト?私には、その・・・無いのだろうか・・・?」


 一人だけ仲間外れを喰らったカレンは、泣きそうな顔でクロトに問い掛けた。

 アクアやヴィオラ、エメラは貰っており、マリアには謝罪。

 何故自分だけ何も無いのか、と思ってしまっても責められまい。


「勿論カレンにもあるよ。ただ、マリアよりも更に遅くなるから、言い辛くて。」

「っ・・・。」


 とても申し訳なさそうなクロトの表情に、カレンはムズムズしてしまった。

 いつもは男として完璧ゆえに、そのギャップは心をくすぐる。


「わ、私としては、いつでもいいからな・・・?」

「・・・うん、まあ、なるべく急ぐということで。」


 一つ一つの製作に、中々時間が掛かるので、仕方ない事だとは分かっている。

 だが、やはり待たせるのは申し訳ないので、歯切れが悪くなるのは避けられない。


「そ、そういえば、他に渡す人は居ないんですの・・・?」


 マリアがどんよりしているナツメの方を見ながら、気を利かせた発言をした。


「うん?もう居ないけど?渡すべき人には、渡してあるからね。」

「クロトっ!もう少し言い方を考えてくださいまし!」

「そうは言っても、可能性のある人には皆、渡してあるから・・・。」


 その言葉を聞いたナツメが、机に突っ伏してメソメソ泣き始めた。


「ナ、ナツメ!しっかりしてっ!」

「・・・・・・。」


 婚約祝いという体で休みを貰ったリンカが、ナツメをなぐさめる。

 だが、ナツメはショックのあまり何も言えないらしい。


 リンカの婚約報告を聞いたときは、誰よりも喜んでいた。

 喜び過ぎて、リンカを照れさせていたくらいなのだが。


 指輪の話になったら、自分が省かれていると思い、落ち込み始めた。

 そして、今のクロトによる発言がとどめになり、理解させられた。


 ああ、自分には可能性の欠片も無いのだ、と・・・。


 それは泣きたくもなるだろう。


 マリアはクロトに詰め寄り、カレンは困り顔に。

 一方、アクア、ヴィオラ、エメラの三人は、すまし顔だ。

 おおよそのところを察しているのだろう。


 結局、ナツメはリンカに励まされて、何とか立ち直った。


 しばらくして、マリアとカレンには、婚約指輪が渡された。

 ナツメは、羨ましそうな顔をしていたのだった。


 自分でやったことだが、流石に不憫に思ったクロトは、ナツメに提案した。


「ナツメ、デートしよ?」

「するでござるっ!」








 翌日、クロトは待ち合わせ場所に来たナツメを見て、絶句していた。


「ナツメ、その恰好は・・・?」

「皆に選んでもらったのでござるが・・・変でござるか・・・?」

「いや・・・そうでは無いけど・・・。」


 クロトはそんな返事しか出来ない。


 束ねた髪は解かれており、黒のロングヘアーに。

 服装は、カーディガンを羽織り、膝丈の緩やかなスカート。

 どこからどう見ても、清楚系美少女である。


 やや自信の無さそうな表情がまた、絶妙にマッチしている。

 リンカが頑張ってコーディネートしたのだろう。


 クロトは普段とのギャップに、不覚にもドキドキさせられてしまった。


「ナツメ・・・いつものように残念なままで居てもいいんだよ・・・?」

「そ、それは酷いでござるよっ・・・!」

「・・・・・・。」


 ナツメは、いつもより抑えられた声で、恥ずかしがりながらそう言った。

 ツッコミにもギャップがあり、尚更ドキドキさせられてしまったクロト。


 演じている風でも無いので、これもナツメの素だと言えるだろう。


(東国で見た、知的な姿も良かったけど、これは・・・やばいかも、ね・・・。)


 ナツメとどうこうなるとしても、まだまだ先だと思っていた。

 だがしかし、とんだ見当違いだったと思い知らされた。


 ナツメから残念さが無くなるだけで、ここまで変わるものなのか。

 一体、どんなアドバイスを受けたら、こんな風になるのやら。



 そんな訳で、ナツメとのデートは、予想外の始まり方をしたのであった。

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